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NEWS│2017.11.16

[レポート]公開講座「アートプロジェクトの今を共有する(第2回)」を開催しました

アートプロジェクトの今を共有する(第2回)のゲストには、10月1日に会期を終えたばかりの<札幌国際芸術祭2017>で事務局マネージャーを務められた、細川麻沙美さんをお迎えしました。

近年、日本各地で芸術祭が行われるなかで、それぞれの芸術祭は行政からのオーダーに応えつつも、独自性を求めて試行錯誤する傾向が見られます。音楽とのコラボレーションを試みた<Reborn-Art Festival>や、宇宙というカテゴリーに着目した<種子島宇宙芸術祭>などはその一例と言えるでしょう。<札幌国際芸術祭>もまた、初年度から音楽家をゲストディレクターに迎え、音楽と芸術の境界を探るような試みに特徴がありますが、手法も言語も違う異ジャンルが融合を図るには難しさもつきまといます。その困難に事務局がどのように向かい合ったのか、細川さんにお話をうかがいました。その様子をレポートいたします。

—札幌国際芸術祭2017が生まれる時

ゲストディレクターの大友良英さんが、芸術祭の企画の初期から名前をあげていたアーティストが、テニスコーツでした。ミュージシャンである彼らには、できあがったものを提示するのではなく、場にいる人を巻き込みながら、そこでしかできないことを試みてもらう活動を想定し、大友さんはここに「芸術祭ってなんだ?」という問いの糸口があると考えたようです。大友さんがこれまでの活動を通じて知り合った表現者たちと、大友さんの近著のタイトルでもある、まさしく「音楽と美術のあいだ」を探りながら、札幌の市民を企画段階から巻き込んでつくりあげられる芸術祭は、即興性の高いものになっていきました。

札幌国際芸術祭2017バンドメンバー(企画メンバー) 撮影:クスミエリカ 提供:札幌国際芸術祭実行委員会

—即興性を保ち、越境を可能にするための作法

イベントの即時性や即興性は参加者のワクワク感を増幅させますが、同時に事務局は、その開催速度に四苦八苦していました。アーティスト同士の直接的なやりとりから、急遽翌日にライブが行われるなど、日々同時多発的に行われるイベントの数々に、事前告知ができないばかりか、事務局も全貌を把握できていない状況。それでもアーティストや企画者の主体性にできる限り委ねる、という大友さんの意図を担保するため、事務局はできる限りルールを決めすぎず、先導するリーダーがある程度の道筋をつけ、最低限の予算と環境を整えたうえで自由な発想を促すよう努力しました。

札幌国際芸術祭2017前夜祭の様子 撮影:小牧寿里 提供:札幌国際芸術祭実行委員会

また今回の芸術祭では「音楽と美術のあいだ」のような表現やイベントを実現させるため、現場での模索が多く試みられたと感じているといいます。アーティスト自身はその間を簡単に越境する、というよりその意識なく表現をしていると思われますが、現場を支える側となると音楽と美術、双方のプロがいなければ、アーティストたちがストレスなく自由に越境していくことは難しいものです。仕事の進め方や共通言語も違う異業種間の意思疎通はなかなか困難で、どのように体制を組めばお互いのストレスを軽減できるのか、開催を通じて実践していました。

札幌国際芸術祭2017・事務局マネージャー細川麻沙美さん

事務局の動きは一般の方にはなかなか分からないものです。ですが、追われるような連日の現場対応に事務局は少人数で何とか対応しました。芸術祭の評価は、どうしても動員数や経済効果といった数字で測られがちですが、前回はかなわなかった市民参加を積極的に受け入れることで、メディアに取り上げられる機会も実際にかなり増えました。

コーディネーターを務めた橋本誠(左)と細川麻沙美さん(右)

—運営ボランティアを入れないことが可能にしたこと

前回の様々なボランティア活動の中には、会場の監視や運営もその活動に含まれていました。こういった時にただの労働となってしまうような活動は、その人員確保や調整に事務局が時間を取られることにもなりがちです。そのためコストがかかる部分もありますが、運営にはボランティアを入れずに運営会社に任せることにしました。事務局がそういった対応に終われることがなくなり、調整にかかっていた手間が省かれた結果、即興的なイベントに対応できる余裕を担保できた、と細川さんは感じているといいます。これは芸術祭を終えてから実感した新たな発見。ボランティア活動には、能動的な意思を持って参加してもらいたいと考え、前回から参加してくれている常連ボランティアを中心にディスカッションから始めました。時間を制限しないかたちで関わってもらうことができたうえに、活動に参加してもらう人には責任感をもって全うしてもらうことを可能にしました。

前回の芸術祭終了後にたちあがったSIAFラボは、ラウンジとプロジェクトルームを拠点に芸術祭のアーカイブや研究機能としての活動を続けており、引き続き次回開催に向けての活動の軸になっていきます。2020年の<札幌国際芸術祭>がどんなかたちに進化していくのか、期待しましょう。