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アートプロジェクトの事務局のための勉強会。今年のテーマはこれからの思考・アクションのための出会いの場!

2022.04.08

執筆者 : 村上愛佳

アートプロジェクトの事務局のための勉強会。今年のテーマはこれからの思考・アクションのための出会いの場!の写真

こんにちは。東京アートポイント計画 ジムジム会運営メンバーの村上です。2021年7月19日(月)、今年度初のジムジム会を開催しました。その様子をお届けいたします。

ジムジム会とは?

そもそも「ジムジム会」とは、2019年度より東京アートポイント計画によって開催されてきた「事務局による事務局のためのジムのような勉強会」です。東京都内各地でアートプロジェクトを実施する「東京アートポイント計画」参加団体(※芸術文化や地域をテーマに活動するNPO法人や社団法人など)とともに、プロジェクト運営事務局に必要なテーマを学び合うネットワーキング型の勉強会です。

※昨年までのレポートもこちらから。

今年のテーマは、これからの思考・アクションのための出会いの場!

そして2021年度は全5回「これからの思考・アクションのための出会いの場」をテーマに開催します。
それぞれのアートプロジェクト事務局のタイムリーな実践や関心を共有し、現場での課題をそれぞれの言葉でひらく。メンバー同士で話し合い、ときにゲストから知見を得ることでプロジェクトの次のアクションへつなげていきます。

さらに今年度から本格的にジムジム会で「UDトーク」を導入します。
UDトークとはコミュニケーションの「UD=ユニバーサルデザイン」を支援するアプリケーションツールです。Zoomと連携することでリアルタイム字幕を表示することができます(過去の実験記事はこちら)。
今後アートプロジェクトの各現場では、ろう者や日本語の聞き取りが不得意な方など、さまざまな人のサポート手段を増やしていきたいと考えています。ジムジム会で実践を重ねることで、精度の高いリアルタイム字幕のノウハウを溜めて各現場と共有していきます。

たとえば今回やってわかったことは、UDトークに合わせて参加者は早口になることなく「ゆっくりとはっきりとコメントを出す」ように意識することが重要であることです。また、聞き取りにくいアートプロジェクトの専門用語などは「単語登録機能」を使って、より使いやすくしていきます。

今年鍛えたい筋力(=事務力)!

そうしてはじまったジムジム会2021。初回は今年度から新たに東京アートポイント計画に加わった多摩の未来の地勢図 Cleaving Art MeetingACKT (アクト/アートセンタークニタチ)を合わせた9つのプロジェクトの各事務局が「今年鍛えたい筋力」を発表し合う会になりました。
アートプロジェクト運営にまつわる幅広い能力(=筋力)について各事務局から発表していきました。どんな言葉が交わされたのか、どんな話が上がったのかを抜粋してご紹介していきます。

「ワクワクインナーマッスル!」

「アートアクセスあだち 音まち千住の縁」通称「音まち」は2012年度の足立区制80周年記念事業をきっかけに、アートと音を通じた新たなコミュニケーションを生み出すことをめざす市民参加型のアートプロジェクトです。
そんな音まちも今年で10周年を迎えさまざまな岐路を考えるなか、プロジェクトの参加者たちからは「この活動が終わる気がしない!」という声が寄せられています。それはアーティストと参加者の間で今までにも、50~100年後を見越した話が交わされて来たからだと言います。
そんな市民やアーティストの“終わる気がしない気持ち”を受け止めるために、音まち事務局では「ワクワクインナーマッスル!」と題した筋力の向上を目指すことにしました。
実用的で隠されたインナーマッスルや体幹のような筋肉、音まち10年間だからこそ身についた根幹の部分を見つめ直し、遊び心を忘れずにプロジェクトのこれからの1歩を考えるための筋力です。

「背筋を鍛える」

「HAPPY TURN/神津島」は東京都伊豆諸島の神津島で、島民から移住志願者そして支援者などさまざまな立場の人同士がつながりあうことで生まれる変化や機会「HAPPY TURN」(幸せなターン)のかたちを探るアートプロジェクトです。そんなHAPPY TURN/神津島事務局は「背筋を鍛える」ことを目指します。背筋は腹筋のように目立った筋肉ではありません。しかし弱まれば身体の歪みによるさまざまな不具合を引き起こす、大変重要な部位です。
つまり活動を続ける、伝えるための「後ろを振り返る」ための背筋のような筋力が重要なのです。HAPPY TURN/神津島では日々さまざまなことが起きていますが「記録」を取れていないことが多く、それでは運営の課題を次につなげることができないのではないか、という意見が上がっています。そのため今年度は背筋=振り返るための筋肉・事務力を鍛えることに決まりました。こんな時代だからこそ振り返り、未来に向かって情報や技術を蓄積していける事務局を目指していきます。

HAPPY TURN/神津島の日常はこちらからもご覧になれます。

「ファンファン伝える筋」「先を見据える筋」

「ファンタジア!ファンタジア!-生き方がかたちになったまち-」通称「ファンファン」は2000年代初頭の住民主導のアートプロジェクトがきっかけとなり現在でも多くのクリエイターが集まる墨田区北東部(通称墨東エリア)で、2018年から「学び」をテーマに対話を通して人々が豊かに生きる方法を探るアートプロジェクトです。
そんなファンファンでは今年度の鍛える筋力として二つを挙げました。

一つ目は「ファンファン伝える筋」
今年度から新しくファンファンの担当になったプログラムオフィサーと話す際、ファンファン事務局が共有してきた感覚的な話・言葉が通じにくいということが起きていました。
それは外に向けてファンファンを伝えるときの障壁となっているのではないか? そんな問題意識から今年度は外部向けリーフレットを制作し、その制作を通して“ファンファンらしさ”を言語化し記録する=伝える技術を鍛えることになりました。

二つ目が「先を見据える筋」
そもそも今年のファンファンのテーマが「100年の記録・記憶」。そのプログラムのひとつとして「スミログ」が開催されています。スミログではこれまで墨田区で行われてきたアートプロジェクト等の記録をまとめるのと同時に「記憶する」という行為そのものの意味を考えていきます。このプログラムを通して、ファンファンも “100年先の誰か”を想像しながら、自身の活動でどんな記録を残せるのか考える=しっかりと先を見据えられる筋力を鍛えられるよう目指すことになりました。

おわりに

参加した多くの事務局から自分たちの未来のプロジェクトのあり方を考えるための運営力を鍛えたい、という声が出てきたように思います。
その背景には、昨今の忙しなく変わりゆく状況もあるのかもしれません。COVID-19の影響によりアートプロジェクトの現場でこれまで行われてきた対面での交流は、ZoomやYouTubeなどのオンラインツールを使ったものになっています。
ジムジム会のなかでも「オンラインで以前にも増して素早くミーティングが進むようになり、直近の事柄ばかりがフォーカスされ解決されていく。それではアートプロジェクト運営に必要な長期の目線を事務局員が持ちにくいのではないか」という声もありました。
この時代だからこそ先を見据え、プロジェクトのことを考えるためにはどうしたらいいのか? ジムジム会に参加する約30人のメンバーで集い、次の一手をともに話しながら考えていきます。

今回の「今年鍛えたい筋肉」でそれぞれの団体の課題感や関心のあるテーマを持ち寄ることができました。次回からは、そのなかからテーマを絞り深めていきます。

ジムジム会2021は(写真左から)東京アートポイント計画のプログラムオフィサー 櫻井駿介、大内伸輔、村上愛佳が運営していきます。

(つづく)

執筆:村上愛佳(東京アートポイント計画 プログラムオフィサー)

※ジムジム会についての情報は東京アートポイント計画のnoteアカウントでもお読みいただけます。

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