エピソードが宝物!仲間と取り組む楽しい評価
執筆者 : 大内伸輔
2022.05.13
1月19日(水)に、ジムジム会の第4回を開催しました。今年は、東京アートポイント計画の共催団体が順々にホスト役となって、ジムジム会運営チームと一緒につくっています。
今回のホスト役は、「移動する中心|GAYA(以下、GAYA)」チーム。今年度からGAYAの担当となり、運営や広報などをGAYAチームと一緒に取り組んできたプログラムオフィサーの岡野恵未子が、当日の様子をレポートします。
ジムジム会は、2019年度より東京アートポイント計画が開催している〝事務局による事務局のためのジムのような勉強会〟です。
東京都内各地でアートプロジェクトを実施する東京アートポイント計画参加団体(※芸術文化や地域をテーマに活動するNPO法人や社団法人など)とともに、プロジェクト運営事務局に必要なテーマを学び合うネットワーキング型の勉強会です。
GAYAは、世田谷区内で収集・デジタル化されてきた、昭和の世田谷を映したホームムービーを活用して、語りの場をつくるコミュニティ・アーカイブプロジェクトです。8ミリフィルムに写された記録を、公募メンバーである「サンデー・インタビュアーズ」と見て、話して、さらに他の誰かに話を聞いたりしながら、自分たちの生きる「いま」を考えてきました。
そんなGAYAが悩んできたのは、事業の面白さや価値が外部になかなか伝わらないこと。以前から、事業を伝えていく必要性を感じつつも、その難しさの壁にぶつかっていました。
立場を恐れずに言うと、私も正直、事業担当になるまで、GAYAでどんなワクワクするエピソードが生まれ、どんなムーブメントが起き、その先に何が見えているのか、実感できていませんでした(同じ「東京アートポイント計画」という近い場所にいたのに)。
しかし、担当となり、事業へ携わってみると、市民メンバーの皆さんはとても積極的で、自主的にホームムービーに関するニッチな資料を見つけてきたり、ご自身の職場でプロジェクトを実践されたりしているし、事務局を含めたチームの中でのリアクションのやりとりも活発でした。プロジェクトをとおした「知見」や「体験」がチームとして蓄積・共有されていて、強いグルーヴ感を感じたのです。4月当初、「たしかにこの状況が伝わっていないのはすごく勿体ない!」と思ったことを覚えています。
中に入らないと、その面白さ、リアル感、グルーヴ感が分からない、というのは、GAYAに限らないことだと思います。今回のジムジム会でどんなことをすると良いのか、GAYAチームと話し合うなかで、GAYAメンバーの松本篤さんは「根本的に、自分たちのことを自分たちで伝えるって難しいと思うんです」と語りました。
そもそも、コロナ禍でイベントや対面での活動ができなくなり、より体験や交流がしづらくなる中で、みんな事業の伝え方に困ったのではないか。というか、そもそも、日常と地続きで展開しているアートプロジェクトとしては、コロナ前から困っている課題だったのではないか。
GAYAチームの七転八倒と試行錯誤から、他の団体のヒントになることがあるかもしれない。GAYAチームとしても、他の団体の試行錯誤を聞いてみたい。
GAYAチームの悩みを共有し、みんなで記録について考えるジムジム会、スタートです!
ジムジム会ではまず、GAYAで普段行っているように、とあるホームムービーを他の事務局メンバーと見ることから始めました。「松陰神社、双葉園、雪の日」という昭和50年撮影の映像を見ながら、気づいたことをチャットや発言で述べていきます。「縄飛びを『縄』でしてる!」「神津島はいまも縄で遊んでますよ」「撮影者はお父さんですかねえ」などと、盛り上がりながら映像を観ました。
ジムジム会は、普段なかなか忙しくて参加できない他の事業のことを知る機会でもあります。「ホームムービーを見て話すんですよ」と言っても、やってみないとそれって何が面白いのか、どういうことが起きるのか、実感できないかもしれません。他の団体の人にGAYAの取り組みを体感してもらうコーナーを設けたことで、まずは身近にいる方から事業を知ってもらうきっかけとなったかなと思います。
続いて、GAYAから実践共有の時間。事務局の水野雄太さんが、この3年間の「記録」にまつわる試行錯誤を紹介していきます。
まず1年目。1年目でやろうとしたことは、企画・運営メンバーが「自分で記録する」ことでした。しかし、記録以外にもたくさんやることがあるメンバーにとって、記録をまとめる時間をつくるのは難しいこと。うまくいきませんでした。
それを受けて2年目のやったことは、「できたものをそのまま記録する」です。たしかに事務局の負担は減った。けれども、編集のフィルターを通さなかったことで、外の人が見た時に分かりやすいものにはなりませんでした。
3度目の正直の2021年度。「できたものをそのまま記録する+だれかに記録してもらう」の2軸で挑戦してみました。活動のなかでのメンバーの発言を拾って、ライトに編集し、note記事とハンドアウト「SIは見た」を作成。さらに、ライターの橋本倫史さんに通年で伴走してもらい、橋本さん視点で活動を綴る連載「サンデー・インタビュアーズをめぐるドキュメント」を行っています。
事務局メンバー個人の得意不得意といった問題も考慮しながらの緻密な分析に、「事務局の個人個人の特性と、お金や時間の掛け方を調整するという話が、整理の仕方としてとても考えやすい」という声が他の団体からあがりました。
続いて各団体から相互に事例共有です。事業のなかで最近制作した冊子やパンフレット、ウェブサイトのURLなどを持ち寄り、発表していきます。どんな議論がされたか、いくつかご紹介します。
記録のしかたはルール化しやすいけど、使いかたはルール化しづらい。
「HAPPY TURN/神津島」では、拠点開室時に日報をつけています。日報をつけるハードルを下げるためにフォーマットを改善していき、現在は1日ごとに1シート、紙に記録するスタイル。ただ、記録したものを何に使うか、というところまで至っていないのがモヤモヤしているとのこと。
それを受けて、GAYAメンバー松本さんは、「月に1回くらい、『日誌を読む会』をやったらどうですか」と、内部での情報共有ツールとして活用するというアイディアを提案しました。
実際に、つくった記録を「使って」いるもありました。例えば、「ファンタジア!ファンタジア!−生き方がかたちになったまち−」は、2020年度、事務局内の記録・コミュニケーションツールとして使っていた「Google keep」を記憶の頼りにしながら、ドキュメントを制作したり。「アートアクセスあだち 音まち千住の縁」では、ワークショップの記録映像を、単なるアーカイブではなく、「映像音楽作品」というかたちに再編したものを公開しています。
事務局メンバー以外の人が、記録や広報メンバーで事業に携わることでやりやすくなった!という声も上がりました。自分たちだけでやっているとどうしても、記録の優先順位を下げてしまったり、スケジュールを管理しきれなかったりすることも出てきますし、価値を言語化するのも難しいものです。しかし、「Artist Collective Fuchu[ACF]」の冊子づくりに編集者の方が入ってもらったことで進めやすかったという事例や、「500年のcommonを考えるプロジェクト『YATO』」では映像作家の波田野州平さんが事業に伴走し、ワークショップ等を映像で記録、ショートムービー等を公開しているという事例の共有がありました。
今回のジムジム会では、「記録」をどうつくるか、どう使うかの実践を共有しました。とても難しい問題ですが、上記で紹介したものの他にも、「オンラインだと、相手に面白さが伝わっているかどうか分からない」「紙媒体をつくるのは大変だけど、届いている実感がある」など、共通した悩みが色々と発見できました。また、実践共有を経て、事務局の得意技が透けて見えたように思います。なかなかそこまではできないけれど、記録の先の「使いかた」までを考えていけると、新たな可能性が出てくるのかもしれません。引き続き、みんなで考えていければと思います!
執筆:岡野恵未子(東京アートポイント計画 プログラムオフィサー)
※ジムジム会についての情報は東京アートポイント計画のnoteアカウントでもお読みいただけます。