地域の人々が活動に参加したくなる空間とは?(APM#06)
執筆者 : 小林拓水
2018.09.25
(写真左から)ローカルライフマガジン『雛形』の編集長・森若奈さん、きてん企画室コミュニケーションプランナー・中田一会さん、東京アートポイント計画ディレクター・森司。
2019年1月26日、東京文化会館大会議室にて、東京アートポイント計画のトークシリーズ「Artpoint Meeting」を開催しました。第7回のテーマは、「プロジェクトを拡げる『メディア』のつかいかた」。
アートプロジェクトを豊かに育てていくには、その想いを共有する「メディア」が重要です。特に「小さな活動」においては、適切な規模を設定し、密度の高い活動をしつつ、そこで得た体験や知識を外部に向けて開くことが求められます。今回のArtpoint Meetingでは新聞やテレビのような大きなメディア(マスメディア)ではなく、みずから企画し、ことばを編む「小さなメディア」に着目して、そのつかいかたを考えました。
*イベントの企画意図についてはこちらの記事もご覧ください
アートプロジェクトで「メディアをつかう」とは? Artpoint Meeting #07 企画の裏側(東京アートポイント計画通信)
ローカルライフマガジン『雛形』編集長・森若奈さん、コミュニケーションプランナー・中田一会さんをゲストに迎え、さまざまな角度から小さな活動とメディアの関係について考えました。
イベントは、ゲストそれぞれのプレゼンテーションからスタート。
森若奈さんには、『雛形』での記事のつくりかたやメディアづくりの考え方を共有いただきました。編集という仕事がどのような役割を果たし、どのような点を大切にしているのか。プロジェクトとメディアの関係とはどうあるべきか。『雛形』以外にも、奥能登国際芸術祭のフリーペーパー「おくノート」や、伊勢神宮外宮参道のおみくじ型メディア「伊勢の道しるべ」など、多彩なアプローチをご紹介いただきました。
続いて、中田一会さんには、広報コミュニケーションの立場から、組織/プロジェクトと情報発信の関係についてお話しいただきました。組織や個人みずからメディアを持ち、運営するようになった時代においては、「事業=やっていること」と「情報発信=言っていること」のバランスに気を配ることが重要。設計の際に行うアプローチからその考え方を紐解いていただきました。
後半のトークセッションと質疑応答では、編集と広報それぞれの立場から共通点・相違点を眺め、メディアとプロジェクトの関係について思考を深めていきました。
話題に上がったのは、取材対象とのコミュニケーションで気をつけていること、チームを組む際の考え方、原稿の赤字の入れ方、品質の捉え方、終了を予期したメディアの立ち上げ方法など。実践者ならではの具体的なエピソードが多く語られました。
ゲスト両方に共通していたのは、「プロジェクト(活動)とメディア(情報発信)は切り離されるものではなく、メディアづくりも活動の一部である」という考え方。メディアづくりは、人と人とをつなぐコミュニケーション活動にも企画を通したリサーチにもなり、何よりプロジェクトに宿る意思や言葉を共有していく手段です。
アートプロジェクトを通し、豊かな関係性を紡いでいくためにも、メディアは重要だと改めて確認した一日でした。
東京アートポイント計画「Artpoint Meeting」では、今後もアートプロジェクトや地域での活動にまつわるテーマを取り上げ、考えていきます。次回もどうかお楽しみに!
(撮影:加藤 甫)