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REPORT

アートプロジェクトのアーカイブ運用に関するアンケート_実施レポート

公開日|2021.01.25

「アセンブル3|アート・アーカイブ・オンライン」では、オンライン対応の必要性が高まった現在において、アートプロジェクトの現場では事業資料をどう活用し、何が課題となっているのかを探るため、全国のアートプロジェクト関係団体を対象にアンケートを実施しました。

アンケート概要

実施期間: 2020年11月13日(金)~12月4日(金)
調査内容: アートプロジェクト活動に関わる団体が、コロナ禍の現在おかれている状況、ならびにアートプロジェクト活動のアーカイブに取り組むうえでの課題について
調査対象: 全国のアートプロジェクト実施団体、アートプロジェクト運営に関わる団体
調査方法: Questantフォームによる回答・集計
回答数:52件(有効回答率100%)
運営:特定非営利活動法人アート&ソサイエティ研究センター

新型コロナウイルス感染拡大の影響について

「新型コロナウイルス感染拡大が活動に影響を受けたか」という質問に対しては、「通常通り」の回答が5.8%だったのに対し、「延期・縮小などの影響(75.0%)」「オンライン開催に切り替え(61.5%)」「中止(予定含む)51.9%」など、多くの団体が影響を受けていました。

また、上記の影響を受けて、「ウェブサイトのコンテンツ拡充(53.1%)」や「活動再開後に向けた準備(44.9%)」、「保管している資料の整理(26.5%)」など、状況に対応しながら活動を行っていたようです。

デジタル環境へのシフトについて

アンケート実施団体は、92.3%が独自のウェブサイトを運用していました。さらにSNSアカウントを活用しているのが88.5%、動画配信を行っているのが48.1%の団体でした。

事業での発行物の公開方法については、ウェブサイトの場合は「全てしている(19.2%)/一部している(53.8%)/していない(23.1%)」。希望者へのデータ配布は「全てしている(7.7%)/一部している(50.0%)/していない(38.5%)」。
印刷版の配布は「全てしている(23.1%)/一部している(51.9%)/していない(5.8%)」と、約半数の団体が発行物をデジタルコンテンツとして活用していることが分かりました。

一方、活動記録に関わるデジタルコンテンツの公開方法について伺うと、「様々な方法で積極的に活用している(46.2%)」「主にSNSで活用している(48.1%)」という実践の一方で、「権利処理に不安がある(26.9%)」「予算や人員に余裕がない(32.7%)」といった課題もあがりました。

~アンケートより抜粋~

「活動の記録をデジタルで保存したり公開することについて、期待していることや課題だと思うことを自由にご記入ください。」

・課題は、デジタル化するための人件費を含む費用をどうやって工面するのか、また、デジタイズしたものが元の書類などの完全な複製となっているのかどうかを確認し、リスト化などするアーカイビング業務量がどの程度のものになるのかを算出しにくく、対費用効果が割り出せないこと。 また、期待することは一度完全にデジタイズすれば、大幅な事務所スペースの削減ができることと、インターネット上での公開や利用が容易になることなど。

・デジタルデータの保存方法や保存メディアが刻一刻と変わる中、どのメディアに保存して、バックアップをどうとるか?

・活動記録のデジタルでの保存は行っていきたいと考えているが、現状人員が不足しており手が回っていない。 公開活用については積極的に考えていきたいが、人員不足の他に、人にどのようにこのプロジェクトの情報が伝わることがコンセプトに適しているかをもう少し議論したいと思っている。事業のコンセプトや雰囲気を伝えるためには単なるPDFでの公開だけでなく、サイトのデザインや構造から検討したく、そのための予算や人員の確保は課題。

・資料の扱いに詳しくない行政職員に公開非公開の判断を委ねにくい。司書のような保管責任者/専門家の不在は課題。全国の活動資料を一括で預けられる受け皿および保存フォーマット・バックアップともなる別の保管先があると助かります。

・デジタル公開した際に画像の無断使用が何度か過去にあったため、公開には少し躊躇している。

資料の整理・保存・共有について

アンケートでは保管している資料の種類や、その方法についても調査しました。

多くの団体が「記録写真・映像・録音(90.4%)」や「発行物(86.5%)」、「報告書(86.5%)」、「会計関連の文書(82.7%)」などを廃棄せずに残していました。
その他、「会場図面」や「アンケート用紙」、「日誌」や「メディアクリッピング」などは団体によって保管の方針にばらつきが見られました。

資料の保管にあたっては、63.5%の団体が事務所で保管しているのに対し、事務所にスペースがなく、担当者が手分けして保管しているケース(7.7%)や、事務所が退去や縮小(予定含む)したケース(5.8%)など、安定した保管場所確保にかかる課題も見えました。

また、「共有棚があり、スタッフ間で共有ができている(57.1%)」、「重要資料や、個人情報を含む資料は保管に注意している(69.0%)」などに取り組めている団体が半数以上の一方で、「保存年限を決めるなど、整理のルール化ができている(28.6%)」は3割ほどにとどまりました。

デジタル資料については、「クラウドに保存(55.8%)」、「共有ハードディスクに保存(55.8%)」が多く、次いで「個人のパソコンに保存(38.5%)」が続きました。
デジタル資料の管理では「フォルダー階層を作っている(57.7%)」、「定期的にデータを整理している(36.5%)」というルールに基づいた運用も見られました。

~アンケートより抜粋~

「資料の整理・保存・共有について、課題だと考えていることを自由にご記入ください。」

・デジタル媒体、物理媒体ともに保存スペースが慢性的に不足している。管理コストも増大するため、保存するものの適切なボリュームと廃棄ルールが課題。必ずルールに組み込めない資料も発生する。 また昨今のデジタル技術の変化は目覚ましく、技術的な更新をどう取り入れていくかも難しい。

専任のスタッフがいないと、情報の整理、保存は難しい。ただためているだけの状態。

・資料が増えていくなかで、それを検索・活用できる状態にすること。物理的に保管する場所が限られてくること。活動終了時にそのための時間をさくこと。

今後期待するプログラム

アンケートの最後では、「今後アーカイブに関するノウハウなどを紹介するオンラインプログラムの実施を予定しています。 どのような内容を期待しますか?」という質問をさせていただきました。

~回答例(抜粋)~

・今後の活動の改善に生かせる内容で、人手や予算などが十分でなくても負担感なく取り組める具体的なノウハウ
・団体をまたいで維持されるアーカイブの共有事例など
・情報共有しやすいアーカイブのコツ
・検索のためのタグやキーワード設定について


今回のアンケート調査で浮かび上がった、アートプロジェクトの現場ではアーカイブ運用に関してどのようなノウハウや情報が必要されているのかという点については、Tokyo Art Research Labの今後のプログラムでも生かしてまいります。

アンケートにご協力いただいた皆さま、ありがとうございました。