当事者とともに振り返るアートプロジェクトのアーカイブ化の10年
Tokyo Art Research Lab(TARL)では、アート分野における調査・研究に取り組むNPO法人アート&ソサイエティ研究センターと、さまざまなアートプロジェクトの資料を収集するアーカイブセンターを共同で運営しており、2020年度に10年の節目を迎えます。この10年間に「プロジェクト型アートをいかにアーカイブしていくか」という当初からの課題は、テクノロジーの発展や表現の多様化に伴ってますます深まっています。
加えて、新型コロナウイルスの感染拡大状況下で各活動の一時中止が相次ぎ、プロジェクト存続の危機感の高まりとともに、アーカイブの重要性に再度注目が集まりました。2020年度には、その観点に基づきオンラインで動画を配信する「アート・アーカイブ・オンライン(AAO)」を実施しています。
今回は、アーカイブに関する過去の企画に参加いただいた方々をゲストに招き、これまでの10年間を振り返るクロストークを配信します。ゲストは、川俣正さん(アーティスト)、日比野克彦さん(アーティスト)、田口智子さん(東京藝術大学芸術資源保存修復研究センター特任研究員)、小田井真美さん(さっぽろ天神山アートスタジオAIRディレクター)、石井瑞穂さん(アートプロデューサー)、志村春海さん(Reborn-Art Festival 事務局スタッフ)、秋山伸さん(グラフィック・デザイナー)です。次の10年に向けて、アートの現場におけるアーカイブ活動の可能性をともに考えます。
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スケジュール
12月22日(水)
第0回 川俣正特別インタビュー
12月2日(木)
第1回 プロジェクトとしてアーカイブする/される 「日比野克彦を保存する」から見えてきたこと
1月20日(木)
第2回 アーカイブの「ことはじめ」と「つみかさね」 アートプロジェクトの現場で試みてきたこと
1月27日(木)
第3回 アーカイブをひらく エディション・ノルト:川俣正との協働とアート・ブック・アーカイヴ
関連サイト
Art Archive Online(AAO)クロストークYouTubeページ
映画制作を通じて、「新しいまち」の輪郭をともに探す
さまざまなルーツをもつ人々が暮らすまち、東京。多様な背景や価値観が混在していることは知っているものの、日常生活のなかで異なるルーツの人々が出会い、ともに何かを「つくる」機会は多くはありません。そうした背景から出発した2019年度の「Cross Way Tokyo 自己変容を通して、背景が異なる他者と関わる」を経て、今回は異なるルーツをもつ人々が、映画制作を通じて協働のための技法や新たな表現方法の開発を行います。
映画のテーマは、「新しいまち」。公募で集まった総勢17名のメンバーが「ドキュメンタリーの部」と「フィクションの部」にて、リサーチャー、撮影スタッフ、出演者など、映画製作上のさまざまな役割を担います。「ドキュメンタリーの部」では2チームに分かれ、国籍や使用する口語、日本語の習熟度などが異なるメンバー同士でインタビューや取材をし、まちなかでのフィールドワークをふまえたリサーチと映像制作を実施。そして「フィクションの部」では、ドキュメンタリーの部のリサーチ内容を反映させた脚本をもとに撮影し、一本の作品を生み出します。
最終回は、制作した映画の上映会を予定。異なるルーツをもつ人々との協働のかたちや、異文化が交じり合う「新しいまち」東京での、これからの暮らしについて考えます。
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スケジュール
9月3日(金) 19:00〜21:00
第1回(A期)ドキュメンタリーの部 自己紹介&グループディスカッション
9月4日(土) 13:00〜19:00
第2回 ドキュメンタリーの部(A期) シネマポートレイトをつくる
9月5日(日) 10:00〜17:00
第3回 ドキュメンタリーの部(A期) 他者のルーツをまちのなかに見出す
9月17日(金)19:00〜21:00
第4回 ドキュメンタリーの部(B期) 自己紹介&グループディスカッション
9月18日(土)10:00〜17:00
第5回 ドキュメンタリーの部(B期) シネマポートレイトをつくる
9月19日(日)10:00〜17:00
第6回 ドキュメンタリーの部(B期) 他者のルーツをまちのなかに見出す
10月30日(土)10:00〜17:00
第7回 フィクションの部 作品制作&撮影準備
11月7日(日)10:00〜18:00
第8回 フィクションの部 撮影リハーサル
11月13日(土)7:00〜18:30
第9回 フィクションの部 撮影
11月20日(土)8:00〜21:00
第10回 フィクションの部 撮影
11月27日(土)7:30〜21:00
第11回 フィクションの部 撮影
12月4日(土)7:00〜21:00
第12回 フィクションの部 撮影
2月27日(日)11:00〜16:30
最終回 映画『ニュー・トーキョー・ツアー』上映会
11:00〜12:30
- ワークショップ作品上映『自分のルーツをまちで見つける』 ※日英字幕あり
- 監督&メンバートーク「まちで見つけた自分と他者」
14:00〜16:30
- 映画上映『ニュー・トーキョー・ツアー』 ※日英字幕あり
- メイキング映像上映
- 監督&メンバートーク「映画をつくる前と後。わたしたちの変化」
9つのアートプロジェクトの実践から学び合う事務局の互助会
アートプロジェクトは、企画や広報、経理などを担当する事務局の人々によって支えられています。しかし現場は人手が不足しており、時間がないなかでやり方を模索し、それぞれが悩みを抱えながら活動しているのが多くの現状です。
そこで、2019年度から同じような悩みを抱える「東京アートポイント計画」に参加する団体が集まり、「事務局による事務局のためのジムのような勉強会(通称:ジムジム会)」を対面、オンラインと形式を変えて開催してきました。終了後も、自主的にそれぞれのアートプロジェクトがホストとなり、それぞれの特色から学び合う「続・ジムジム会」が続き、広報や活動方法などの実務的な課題を共有してきました。
2021年度は「これからの思考・アクションのための出会いの場」がテーマ。9つの事務局が順番にホスト役を務め、それぞれの実践などを共有し、次のアクションを考えます。
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スケジュール
7月19日(月)
第1回 今年鍛えたい筋力
9月17日(金)
第2回 ことばを壁にしない。やさしい日本語を使おう
発表:東京で(国)境をこえる
11月17日(水)
第3回 アートプロジェクトの「かかわり」をときほぐす
発表:500年のcommonを考えるプロジェクト「YATO」
1月19日(水)
第4回 アートプロジェクトの記録と記憶を巡る七転八倒
発表:移動する中心|GAYA
3月2日(水)
第5回 エピソードが宝物! 仲間と取り組む楽しい評価
発表:アートアクセスあだち 音まち千住の縁
関連サイト
東京アートポイント計画共催団体
「手話通訳」の視点で、コミュニケーションを捉え直す
アートプロジェクトの現場では、誰かと何かをはじめようとするとき、考えや視点の違いを理解しながら、互いのイメージを擦り合わせ、つくり方を議論します。そこで起きるコミュニケーションは、「言葉」に限ったものではありません。むしろ、表情やしぐさ、声色、動き、間など身体を用いた非言語の領域が、日々のコミュニケーションに大きな影響を与え、支えています。
そうした観点に立脚し、2020年度に開催したプロジェクト「共在する身体と思考を巡って-東京で他者と出会うために」にて、ナビゲーターを務めた和田夏実(インタープリター)が、「手話通訳」に焦点を当てて、通訳環境の新たな手法開発を試みます。
手話通訳とは、「視覚身体言語」と「音声書記言語」という異なる言語体系とメディア(声や文字、身体など)をもつ言葉を、手話通訳者自身の身体を通して翻訳し、伝達するコミュニケーション技術です。手話通訳者それぞれの身体知を語らうことから、アートプロジェクトへのアクセシビリティや情報保障のあり方について考察を深め、今後のアートプロジェクトの運営に必要な視点を見出します。
コロナ禍のアンケート調査をふまえた、アーカイブに関する映像コンテンツを制作
多くのアートプロジェクトでは、さまざまな人が集い、対話をしながら時間や場所を共有し、つくりあげていく手法がよくとられます。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大状況下で、その継続のあり方が議論され、アーカイブの重要性や、プロジェクトのオンライン対応の必要性が高まってきました。
そこで、アート分野における調査・研究に取り組むNPO法人アート&ソサイエティ研究センターの協力のもと、全国のアートプロジェクトにまつわる52団体に「アーカイブ運用」についてアンケート調査を行います。また、アーカイブに関するノウハウや活用方法の基礎知識をまとめた映像コンテンツ「エイ! エイ! オー!(アート・アーカイブ・オンライン)」を収録し、YouTubeで配信。これまでTokyo Art Research Lab(TARL)で研究してきたアーカイブの知見をいかして、オンラインでのコンテンツづくりを模索します。
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スケジュール
1月29日(土)
第1回 イントロダクション
1月29日(土)
第2回 現状調査
2月12日(金)
第3回 アーカイブのプランニング
2月12日(金)
第4回 目録作成
2月19日(金)
第5回 デジタルデータの保存
4月30日(金)
第6回 オンライン・ヒアリング
会場
ROOM302(東京都千代田区外神田6-11-14-302 [3331 Arts Chiyoda 3F])
関連サイト
エイ! エイ! オー! YouTubeページ
事務局ごとの知恵を持ち寄り、現場の悩みを解きほぐすオンライン互助会
アートプロジェクトは、企画や広報、経理などを担当する事務局の人々によって支えられています。しかし現場は人手が不足しており、時間がないなかでやり方を模索し、それぞれが悩みを抱えながら活動しているのが多くの現状です。
そこで、2019年度から同じような悩みを抱える「東京アートポイント計画」に参加する団体が集まり、「事務局による事務局のためのジムのような勉強会(通称:ジムジム会)」をひらき、広報やウェブサイト制作などの実務的な課題について共有してきました。そして、2020年4月の緊急事態宣言以降、アートプロジェクトは活動の大幅な変更を余儀なくされました。事務局も、これまでの課題に加えて、オンラインを前提とした関係者間のコミュニケーションや企画など、新しい課題に直面しています。
今回のテーマは、社会状況に応じたアートプロジェクト運営。会の方針は「現場の状況と社会状況を反映し、柔軟にプログラムを組む」「レクチャー形式ではなく、相互に助け合う互助会的な場とする」「得た知見や生まれたアイデアは、公共知としてオープンにしていく」ことです。それぞれの事務局が抱える課題や実践を共有しながら、コロナ禍以降のアートプロジェクトのあり方や可能性を考えます。
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スケジュール
5月13日(水)
第1回 集えない状況でどう集う? お互いの状況を共有しよう
発表:アートアクセスあだち 音まち千住の縁
ファンタジア!ファンタジア! -生き方がかたちになったまち-
6月17日(水)
第2回 あの手この手でつながるには? コロナ状況下でのアートプロジェクトを考える
発表:小金井アートフル・アクション!
HAPPY TURN/神津島
7月20日(月)
第3回 アートプロジェクトの再始動。新たな日常でどうはじめる?
発表:500年のcommonを考えるプロジェクト「YATO」
東京で(国)境をこえる
TERATOTERA
8月19日(水)
第4回 いまだからできること、わかること。アートプロジェクトの知恵を持ち寄る
発表:移動する中心|GAYA
Artist Collective Fuchu [ACF]
Art Support Tohoku-Tokyo(ASTT)
9月22日(火)
第5回 困ったら、お互いに聞いてみる。助け合う場を続けていこう
*プログラム終了後も、プロジェクト事務局が自主的にホスト役をつとめる「続・ジムジム会」が行われました。
続・ジムジム会
関連サイト
東京アートポイント計画共催団体
全国各地のアートマネージャーが悩みを持ち寄るオンライン「互助会」
アートプロジェクトは、さまざまな担い手によって支えられ、それぞれの地域で交流を生み出す契機になっています。一方で、「互助会」のように、ほかの地域のプロジェクトと実務的な課題を共有し、ネットワークを育む機会は意外と少ないかもしれません。
今回は、過去のTokyo Art Research Lab(TARL)の参加者を中心に、全国各地の文化事業にかかわるアートマネージャーがオンラインで集まって、各現場の悩みや課題を共有し、議論する「つどつど会」(都度集うアートマネージャー連絡会議)をひらきます。
話題は、組織体制や目標設定、活動記録の残し方、コロナ禍における企画・広報の方法など。現場の課題や知見を共有し、中間支援に必要とされる視点や仕組みづくりへの糸口を見つけることが目的です。最終回には、大分県別府市で15年以上に渡り文化事業や地域振興、観光振興のプロジェクトを手掛けるNPO法人BEPPU PROJECT代表の山出淳也さんをゲストに迎え、メンバーからの質疑応答を実施します。
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スケジュール
11月25日(水)17:00〜19:00
第1回 自己紹介
12月16日(水)17:00〜19:00
第2回 悩みを持ち寄る
1月18日(月)17:00〜19:00
第3回 悩みを持ち寄る
2月17日(水)17:00〜19:00
第4回 これまでの悩みからまた悩んでみる
3月3日(水)17:00〜19:00
第5回 BEPPU PROJECT 山出淳也さんに尋ねる
福島と東京、それぞれの場所でつながり続ける
2020年4月、緊急事態宣言が発出されて以降、多くのアートプロジェクトが中断し、同時にオンラインを含む新たな手法を検討すべきなのか、議論を余儀なくされました。アートプロジェクトの現場へ足を運ぶことが難しい状況で、それぞれの場所にいながら、プロジェクトを成立させるために、どのような手立てがあるのでしょうか。
アサダワタルさん(文化活動家)を中心に、福島県いわき市にある県営復興団地・下神白(しもかじろ)団地で行われているプロジェクト「ラジオ下神白 あのときあのまちの音楽からいまここへ」も、現地訪問が困難になり、オンラインでの開催方法を模索しています。
2016年からはじまったこの取り組みでは、住民が住んでいたかつてのまちの記憶を、馴染み深い音楽とともに収録するラジオ番組を制作し、それらをラジオCDとして住民限定に配布・リリース。こうした活動を軸に、立場の異なる住民同士やふるさとの交流を試みています。
また2019年には、住民の「メモリーソング」のバック演奏を行う「伴奏型支援バンド(BSB)」を結成。関東在住のミュージシャンが団地住民のもとに伺い、現地から遠く離れているからこそ音楽を通じた「想像力」で、住民との関係を深めてきました。
そして2020年。コロナ禍においてオンライン訪問を継続しつつ、「会えない」という状況だからこそできる「表現×支援」の関係をより深く見つめながら、3回シリーズの報告会を行います。音楽をかけながら行うラジオ風トークを軸に、記録映像の上映、またBSBによる演奏、住民との中継コーナーなどを実施。「報」告会でありながら、演「奏」会でもあるオンラインの場づくりです。
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スケジュール
9月22日(火)14:00〜16:00
第1回 2017年〜2018年の報奏
12月27日(日)14:00〜16:00
第2回 2019年の報奏 とりわけ伴奏型支援バンド(BSB)編
2月23日(火)14:00〜16:00
第3回 表現・想像力・支援編
ゲスト:いとうせいこうさん
関連サイト
ラジオ下神白プロジェクトウェブサイト
アートプロジェクトの持続的な「組織」のあり方を記録から探る
アートプロジェクトの持続的な運営に必要な「組織」のありようとは、どのようなものでしょうか? これまでの実践のアーカイブを紐解き、声を集め、いまに必要な視点の抽出を試みます。
1990年代に萌芽し、2000年代以降に広がった日本各地のアートプロジェクトや芸術祭。2020年代を迎える現在、数十年にわたって継続してきた「組織」の事例も増えてきました。今回は、2019年に設立30年を迎えたP3 art and environment(1989年設立、代表:芹沢高志)に焦点を合わせ、その活動の転換点となった、とかち国際現代アート展「デメーテル」(2002年)に着目します。
2018年度の「アーカイブを『再』起動する」の議論をもとに、関係者へのアンケート、インタビューなどを通して、当時の記録の収集と読み解きを行い、この一連の活動を架空の編集室「デメーテル・ステーション」と見立て、P3が所蔵する「デメーテル」の運営資料を起点に議論を重ねます。
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進め方
- アーカイブ資料の調査
- 組織の沿革を整理
- 関係者インタビュー
- 関係者のエピソードを収集
公共空間で音楽を展開するために、専門家の視点を交えて手法を探る
公共空間で「音楽」を展開するために、必要な条件とは何だろうか? 音楽が頻繁に用いられるアートプロジェクトやイベントをオープンな空間で実施する上で、周辺環境とどのように共生することができるだろうか?
東京プロジェクトスタディ2018「Music For A Space 東京から聴こえてくる音楽」でナビゲーターを務めた清宮陵一(VINYLSOYUZ LLC 代表/NPO法人トッピングイースト 理事長)が、公共空間で音を出す際の条件について、まちづくり、医療、法律、宗教、サウンドにまつわる5名の専門家へインタビューを行います。
飯石藍さん(公共空間プロデューサー)、稲葉俊郎さん(医師)、齋藤貴弘さん(弁護士)、近江正典さん(僧侶)、ZAKさん(サウンドエンジニア)の多角的な視点を介して得た現場に応用可能な論点を、公開編集会議を行って一冊にまとめます。