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あってないけど、あっている(BSBの活動レポート・後編)

2021.02.19

執筆者 : 岡野恵未子

あってないけど、あっている(BSBの活動レポート・後編)の写真

2020年のBSB

前回のレポートでも少しお知らせしたように、「伴奏型支援バンド(BSB)」(※)の2020年は、思い描いていた活動から変更せざるを得ず、「現地(いわき)には行かずに、東京からいわきに向けて、いまできること」の試行錯誤の積み重ねでした。

※いわき市の復興団地で行われているアートプロジェクト「ラジオ下神白 あのときあのまちの音楽からいまここへ」(以下、「ラジオ下神白」)と連動して活動する、住民の方々の「メモリーソング」のバック演奏を行うバンド。2019年度のTokyo Art Research Lab「研究・開発」プログラムによって結成した。

例えば、団地の住民さんに届けるため、みなさんのメモリーソングをレコーディングしたり。

BSB初となる、ミュージックビデオの撮影にも挑戦しました。ミュージックビデオの背景は、団地住民の方からご提供いただいた、思い出の写真のスライドショーになっており、住民さんおよび現地チームである一般社団法人Tecoチームとの協働作品。この映像に団地の住民さんのコーラスが重なり、完成・公開する予定です。

オンライン報奏会|第2回「2019年の報奏 とりわけ伴奏型支援バンド(BSB)編」開催!

夏のレコーディング、秋のミュージックビデオ撮影に続いて行ったのが、「オンライン報奏会」。今年度は、Tokyo Art Research Labのプログラムとして、プロジェクトの様子を伝える報告会シリーズ「オンライン報奏会2020」を展開しています。その第2回目を、BSB特集として、2020年の12月27日(日)に実施しました。

当日は、「ラジオ下神白」ディレクターのアサダワタルさんと、メンバーとがトークを行ったり、バンドが生演奏をしたり。
ハイライトは、オンラインで東京といわきを繋ぎ、東京ではBSBが演奏を、いわきでは団地住民の小泉いみ子さんがボーカルを担当し、カラオケのように重ね合わせるコーナーです。

※当日の詳細については、アサダワタルさんのレポートに記されています。ぜひご覧ください。

経験豊富な配信・音響チームも、“オンラインでのカラオケ”は前代未聞の取り組み。「何のシステムを使うのが良いか」「どう配線をつないだらいいか」「現地でもテクニカルのサポートが必要だ」「互いに音が遅れて届くのを見越して、出力のタイミングを調整しよう」など、
配信直前まで試行錯誤を重ねました。

あってないけど、あっている

いみ子さんの歌と、BSBの演奏は、いわゆる“ぴったり正確な演奏”ではなく、大きくズレたり、リカバリーしたりしながらのセッションですが、「なんだか、あっている」という感覚に陥りました。

それは、全力で歌を歌ういみ子さん、いみ子さんに演奏を届けようとするBSB、という双方向のものすごい歩み寄りが可視化され、画面上で創出できたからではないかと感じます。

あってないけど、あっている。

もともと、オンラインのカラオケをすること自体は目的ではないけれども、そのある種、すごく非効率で、目的的ではない「仕掛け」が新しい体験を生み出し、それが画面の外側の人にも体験を共有するひとつのメディアになっていく…

1年前のクリスマス会の後のように、実践したことの手応えをじわりと感じたプログラムでした。ディレクターのアサダワタルさんも、レポートの中でこう述べています。

そこでひとつ大事にしたいのは、問題なくオンラインでやることよりも、「それでもつながろうとする意思のプロセスを如実に表現できるかどうか」だと確信しました。それは、今回の小泉いみ子さんとBSBの間でわずかながらも表現できたのではないかと思っています。

オンライン報奏会「2019年の報奏 とりわけ伴奏型支援バンド(BSB)編」

2020年度の最終回となるオンライン報奏会は、2021年2月23日(火・祝)に開催されます。震災からもうすぐ10年ということで、これまで、およびこれからの本プロジェクトを振り返り、今後の展開を考える時期。ゲストには、震災後に福島の方々との交流を盛んに行ってきた作家・クリエイターのいとうせいこうさんをお招きし、本プログラムディレクターのアサダワタルさん(文化活動家)が、「表現・想像力・支援」というテーマで対談を行います。

ぜひ、ご覧ください!


執筆:岡野恵未子(アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー/Tokyo Art Research Lab「研究・開発」プログラム担当/BSBメンバー)

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