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アートプロジェクトの「体験を紡ぐ」

2018.05.29

アートプロジェクトの「体験を紡ぐ」の写真

アートプロジェクトや作品について語るガイドツアーやトークプログラム、活動を伝えるためのメディアや場づくりなどをテーマとする連続講座「体験を紡ぐ」。2017年7月から2018年1月の間、全14回にわたって開催してきた通年の学びの様子をご紹介します。

興味・関心を共にする受講生とサポート体制

7月8日。もうひとつの連続講座「言葉を紡ぐ」と合同でキックオフ。20代から40代、前年度に開催していた「基礎プログラム」受講生や、既にボランティアや仕事で関わる方など、アートプロジェクトへの興味・関心を強く持つ10名の受講生が集まりました。ここに講座を伴走する2名のスクールマネージャーが加わり、授業のポイントや予習・課題作成のための情報提供など学びのサポートをしました。

紡ぐための準備運動

多様な実践例を知る準備運動から授業は始まりました。小金井の現場で活動中のアサダワタルさんによる、まちを歩きながら自身の記憶と風景を重ねるワークショップや、L PACK.さんによるランチタイムを利用しながらの活動紹介は、このコースならでは。授業というより現場そのものに近い体験の後に、その時間を振り返り、受講生自身の手により紡ぐアプローチの可能性を考えることで思考を解しました。

スクールマネージャーからは、紡ぐ時に意識したいポイントとして価値化・言語化・距離化・体験化・意識化というキーワードを提示。課題では、これまでに受講生が取り組んできた「紡ぐ」体験について考えてもらいながら、授業で学んでいくポイントを共有しました。

L PACK.と共に過ごしたランチタイムではコーヒーのドリップも体験。

体験を紡ぐ実践(ガイドツアー編)

前半で力を入れたのがガイドツアーの実践企画。別コース「言葉を紡ぐ」の受講生を対象に、「興味はあるが詳しくない知人を連れていく」という設定で取り組みました。

横浜臨海部や横浜創造界隈の活動についての基礎知識をおさえ、〈黄金町バザール〉をはじめとする事例や様々な拠点、人に出会うフィールドワークなど、2人1組で授業外の時間も使いながら企画やリサーチを進め、プラン発表を経てブラッシュアップした5つの内容で実践に取り組みました。
(1)横浜アートプロジェクトの実践を巡る~寿町と黄金町の奏でるブルース~
(2)こがねちょう のきさきアートツアー
(3)台湾の作品と対話ツアー
(4)はけのみち散歩~横浜の土を踏む、川に尋ねる、声と出会う~
(5)横浜の間(ま)をめぐるツアー
参加者からのフィードバックを受け、振り返りも行うことで手応えや改善点を確認しました。

「こがねちょう のきさきアートツアー」の様子。

体験を紡ぐ実践(紙メディア編)

後半では、ガイドツアーとは異なる複数のアプローチに取り組みました。まずは、ガイドツアー編と同じく、横浜創造界隈とアートプロジェクトを対象としながら、紙媒体を通して伝える企画を検討。影山裕樹さんのレクチャーとワークショップを通して、伝える相手を具体的にイメージしながら媒体の仕様やトーンを考えていく術を学びました。それを生かして『ウラヨコ界隈(β版)』というネーミングでフリーペーパーの原稿制作や画像のセレクト作業などに取り組み、編集やデザインのプロセスを体験しました。
また、できあがったフリーペーパーを知人に配布しフィードバックを受け、振り返りも行うことで手応えや改善点を確認しました。

影山裕樹さんによる媒体企画ワークショップの様子

体験を紡ぐ実践(場づくり:〈MOTサテライト〉編)

ガイドツアー編では受講生が今ひとつ踏み込むことができなかった、アートプロジェクトや作品そのものと向き合うということを重視しながら、鑑賞者の体験を豊かにするための各種プログラムの検討を行いました。清澄白河を舞台にした〈MOTサテライト 2017秋 むすぶ風景〉を3グループに分かれてリサーチ・フィールドワークし、会場を訪れた観客にどのような体験プログラムが提供できるのかを考え、プロジェクトを企画した学芸員の小高日香理さんにその内容をプレゼンテーションしました。企画の意図や、それぞれの作品がどのようなプロセスを経て完成、展示されているのか。またすでに行われている取り組みについても知ることで、企画への理解度や、紡ぐ立場の設定が重要になることを改めて実感する機会となりました。

〈MOTサテライト〉フィールドワークの様子。

体験を紡ぐ実践(場づくり:〈TERATOTERA祭り〉編)

〈MOTサテライト〉編同様、アートプロジェクトや作品そのものへの理解を深めるための体験とは何かをテーマにトークプログラムの企画を検討。三鷹を舞台にした〈TERATOTERA祭り2017〉について語り合う場づくりをしました。ボランティア「テラッコ」として運営に関わった4名を招き、以下の3テーマで対話。受講生は担当パートごとに場のファシリテートをしました。
(1)コミュニティ
(2)祭り
(3)政治性(Neo-political)
言語化しがたい作品の魅力や、わかりにくい制作プロセス、アーティストの制作時の様子などをテラッコに語ってもらい意見を交わすことで、お互いに〈TERATOTERA祭り〉に対する理解を深める機会となりました。

TERATOTERAボランティア「テラッコ」とのトーク。

体験を紡ぐ実践(自主企画・調査編)

受講生それぞれの興味を深めるために、「体験を紡ぐ」様々な自主企画や調査にも取り組みました。それぞれのテーマとアプローチを定め、リサーチを中心にした人、実践につなげるための実験をした人、実践と検証を繰り返した人、実施を前提に企画をつくりこんだ人、それぞれに修了後の活動などに生かすための可能性を探りました。

自主企画や調査の結果を共有した最終回の様子。

自主企画・調査一覧

授業の内容、ゲスト情報、受講生の声などは「思考と技術と対話の学校2017 アニュアルレポート」でご覧いただけます。

<開催概要>
日程:2017年7月8日(ガイダンス)、7月15日、7月29日、8月19日、8月26日、9月2日、9月23日、10月14日、10月28日、11月11日、12月2日、12月16日、2018年1月6日、1月13日(全14回・すべて土曜日)10:15~17:00
会場:ROOM302(東京都千代田区外神田6-11-14-302 [3331 Arts Chiyoda 3F])、ノマドプロダクション事務所(東京都文京区春日2-14-9 SPICE)ほか
対象:アートプロジェクトの現場に既に関わっており自らの専門分野として言葉や体験を「紡ぐ力」を磨きたい人
参加費:一般:60,000円 学生:40,000円
定員:15名程度
スクールマネージャー:坂田太郎(P3 art and environment リサーチャー/サイト・イン・レジデンス)、野崎美樹(SLOW LABELプロジェクトマネージャー/コーディネーター)

プロジェクトについて

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