アートプロジェクトでは、アーティストやスタッフ、参加者など多様な人たちが関わり、一期一会の創造性に満ちた現場が生まれます。アーティストが時間をかけて築き上げた地域住民との関係性や、彼らの真剣な眼差し、場の一体感などは、現場に居合わせてこそ感じることができる貴重な瞬間です。しかし、それらの瞬間のすべてを記録することはできません。アートプロジェクトの価値を、参加がかなわなかった人や後世の人々に残し継いでいくためには、どのように記録やアーカイブを進めていけばよいのでしょうか。
シリーズ最終回となる第4回では、映像ディレクターの須藤崇規氏、アーカスプロジェクトコーディネーターの石井瑞穂氏、PARADISE AIRエデュケーター/コーディネーターの金巻勲氏をゲストに迎え、アートプロジェクトにおける記録・アーカイブのあり方を考えます。須藤氏は、チェルフィッチュ『ゾウガメのソニックライフ』(2011年)、あいちトリエンナーレ2013『ほうほう堂@おつかい』など、舞台作品やアートプロジェクトの写真・映像の記録撮影を多数担当しており、記録・アーカイブの様々なノウハウを持っています。また、アーカスプロジェクトは、茨城県守谷市で20年以上に渡りアーティスト・イン・レジデンスを行ってきました。PARADISE AIRは、2013年に千葉県松戸市で始動した比較的新しいプロジェクトです。いずれも毎年多くの国際色豊かなアーティストが活動を行っており、日々記録データを蓄積し、そのアーカイブや広報・ドキュメント制作などへの活用方法を模索しています。
今回は、実際に記録・アーカイブに携わる方々にその注意点や心構えを学び、データの整理術や活用方法についてディスカッションも交えて考えていきます。アートプロジェクトの記録撮影のコツを知りたい方、継続するにつれて増えていくデータ整理や活用方法にお悩みの方など、みなさまのご参加をお待ちしております。
近年、障害のあるなしに関係なく、多様な人々が参加できる表現の場づくりや、社会包摂型のアートプロジェクトが増えています。なかでも〈ヨコハマ・パラトリエンナーレ〉(2014年〜)は、身体障害や知覚障害などさまざまな障害を抱える人を受け入れ、ダンサーや音楽家、サーカスアーティスト、詩人などとの共演や表現活動に先駆的に取り組んできました。
「アートプロジェクトの今を共有する」第4回となる最終回では、2017年に開催された「ヨコハマ・パラトリエンナーレ2017」で総合ディレクターを務めた栗栖良依さんのお話を伺います。かつて新潟・十日町や徳島・神山町で映画やパフォーマンス作品などの集団創作に携わっていた栗栖氏は、骨肉腫を患い右下肢機能を全廃したことを機に、障害福祉の世界に出会いました。以来、自身の経験をいかしながら、近年では、障害のある人を含む多様な人々が協働して表現・創作に挑戦することのできる機会の創出に取り組んでいます。
本講座では、2014年からの取り組みに加え、2020年に向けてのビジョンなどについてお話を伺いながら、多様な人たちがかかわることで生まれる、新たな表現の可能性について考えていきます。
アートプロジェクトの心構えや、広報・PR、運営、記録と評価/検証などをテーマに、アートプロジェクトの現場で求められる技術について掘り下げていく全4回の公開講座シリーズ「技術を深める」。
第3回は、アートプロジェクトにおけるリスクマネジメントに焦点を当てます。アーティスト、地域住民、一般参加者など、さまざまな人がかかわり、まちなかで展開するアートプロジェクトにおいて、運営者にはリスクマネジメントの視点が求められます。大きな音を出す場合は近隣住民への事前周知、道路や広場を使用するイベントでは許可申請も必要です。スタッフやボランティアに対する保険、混雑時の観客誘導を考慮する必要もあるでしょう。
今回のゲストには、市民参加型アートプロジェクト〈アートアクセスあだち 音まち千住の縁〉事務局長の吉田武司氏をお呼びします。千住のまちで7年続く、大巻伸嗣氏による《Memorial Rebirth 千住》などを事例にお話しいただきます。
アートプロジェクトが企画から実施にいたるまでには、どのようなリスクが潜んでいるのか、知見を参加者と共有し、見過ごされがちな運営の落とし穴についても、ワークをとおして考えます。本講座では、運営にまつわるリスクを想定しながら、かかわる人や物事を守るという視点からアートプロジェクトのリスクに向き合う技術を身につけます。
アートプロジェクトには、他ジャンルとの融合を図り、アーティストと市民の協働を可能にする多様な取り組みがあります。本シリーズ第3回は、食とアートを通して地域に関わる表現を行い、最近では市民の持続的なかかわりを生み出すための手法を模索するEAT&ART TAROさんをゲストにお迎えします。
おにぎりをおいしく食べるための運動会《おにぎりのための、毎週運動会》(いちはらアート×ミックス、2014年〜)、地元のお母さんたちがつくった食事を鑑賞者が味わうまでの一連の動きを演劇に仕立てた『上郷クローブ座レストラン』(大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ、2015年〜)など、これまで様々な地域でアートプロジェクトを行ってきたEAT&ART TAROさん。
去る10月22日まで開催されていた「奥能登国際芸術祭2017」では、《さいはての「キャバレー準備中」》を出品。会場にしたのは、見晴らしの良い海の眺望と、アールヌーボー調のしつらえが特徴の元レストランです。準備中のキャバレーという設定で飲食店の形態をとりつつ、アーティストが前面に出るのではなく、地元住民、観光客など、そこに集う人々のコミュニケーションや新たな活動を誘う場を生み出しました。興味深いのは、会期を終えてもこの場を残すことを目指し、地元住民が継続していける方法を模索している点です。今回はこの取り組みを事例として、アートプロジェクトの経緯や仕組みづくり、地元住民の反応や持続的にかかわる方法、今後のあり方などについて、お話を伺います。
公開講座シリーズ「技術を深める」(全4回予定)では、アートプロジェクトの心構えや、広報・PR、運営、記録と評価/検証などをテーマに、アートプロジェクトの現場で求められる技術について掘り下げていきます。
第2回は、今秋はじめて開催された「奥能登国際芸術祭2017」(石川県珠洲市)のコミュニケーションディレクター・福田敏也さんをゲストにお迎えし、「伝えるための技術」について考えます。広告コミュニケーション分野で、「多くの人に伝える」プロとして活躍されてきた福田さん。芸術祭の発信では、これまでとは異なるアプローチを試みました。
「日本の“最涯(さいはて)”から“最先端”の文化を創造する試み」としての芸術祭で、地域や芸術の価値をどう捉え、コミュニケーションをどう設計したのでしょうか。アート以外の現場にも精通したプロの視点から、アートプロジェクト独自の伝え方、その難しさや可能性、技術について考えます。
2017年も、実にさまざまな芸術祭やアートプロジェクトが行われています。それぞれに独自の取り組みがありますが、傍目にはなかなかわかり難いことも。また、会期終了後も継続している活動や、市民参加型のプログラムなど、関係者による情報発信がない限りはその様子を知る機会はほとんどありません。
「アートプロジェクトの今を共有する」第2回では、今年で2回目の開催となった「札幌国際芸術祭」に初回から関わる細川麻沙美さんをゲストに招くとともに、芸術祭やアートプロジェクトに携わる話題提供者を募り、それぞれの取り組みの特徴や、見どころについて話し合います。
音楽家・大友良英さんをゲストディレクターとして、美術家だけでなくさまざまな音楽家や市民とともにつくりあげられ、各所で日々即興的に活動するなどライブ性あふれる特徴がある「札幌国際芸術祭2017」。会期終了後の講座となりますが、会期を終えたからこそ聞ける振り返りやアートマネージメントの舞台裏にご興味のある方、ご自身で芸術祭やアートプロジェクトに携わっている方、ぜひご参加ください(イベント告知やチラシ配布も受付けます)。
「チームをつくる」「アイデアを膨らませる」「企画書を書く」「広報計画を立てる」「日々の活動を記録する」……アートプロジェクトのマネジメントには、アートそのものをかたちにするだけではなく、さまざまな要素が求められます。
全4回を予定しているこの「技術を深める」シリーズでは、アートプロジェクトを実現するにあたって必要な心構えや、多様な価値を伝えるための広報・PR、適切に場をつくりあげるための運営、継続的な活動に欠かせない記録と評価・検証などをテーマに、アートプロジェクトの現場で求められる技術について掘り下げていきます。
第1回は、2016年度に「思考と技術と対話の学校」の実施を通して制作した冊子『アートプロジェクトの現場で使える27の技術』を教材として活用しながら、実践ワークを通して、いくつかの技術を押さえます。特に、アートプロジェクトの現場に入って日が浅い事務局スタッフなどが、日々現場で直面しているであろうさまざまな悩みに対して、役立ちそうな視点を共有します。柔軟な対応が求められるアートプロジェクトの現場で、自分の役割や立ち位置を捉え直す機会としてもご活用いただけます。
東京2020オリンピック・パラリンピックを控え、芸術祭やアートプロジェクトなど文化事業への注目が高まっています。その一方で、近年新設・リニューアルしている文化施設の中には、アーティストの滞在制作やアートプロジェクトの実践などを通して、地域との関わりも重視した活動を行う例が増えつつあります。
全4回を予定している「アートプロジェクトの今を共有する」シリーズでは、各回にゲストを招き、アートプロジェクトの最新の事例や2020年以後のあり方を考えていきます。
第1回は「これからの文化施設とアートプロジェクト」をテーマとして、4月にグランドオープンしたばかりの太田市美術館・図書館の立ち上げと展覧会企画等にかかわっている小金沢智さんにその事例をうかがい、参加者の間で意見交換を行います。同テーマの実践例等を語っていただける話題提供者も募集します。文化事業やアートプロジェクトの運営に関心のあるみなさま、ぜひご参加ください。
東京2020オリンピック・パラリンピックを控え、芸術祭やアートプロジェクトなど文化事業への期待は、益々高まりを見せています。その一方で、乱立する芸術祭のあり方とその差別化、持続可能なアートプロジェクトのあり方やそれを支える運営体制などの仕組みづくりは、引き続き大きな課題です。集中講座では、アートがもたらす気付きや可能性の意義を問い続け、実験的な活動に取り組むゲストを迎え、現在かれらが向き合う課題や挑戦を共有しながら、アートプロジェクトのこれからのあり方を探ります。文化事業やアートプロジェクトの運営に関心のあるみなさま、ぜひお越しください。
2016年秋、世界的なクラッシック音楽や現代アートのフェスティバル「アッセンブリッジ・ナゴヤ」が開催されました。アート部門の『パノラマ庭園ー動的生態系にしるすー』では、大人がゆっくり歩いて1時間ほどの名古屋港エリアを舞台に、まちや暮らしの伱間にアートが入りこんでいくようなプロジェクトを展開。さらに、各会場の立地や巡り方からは、単に作品を鑑賞するだけではなく、参加者の視点や感覚を能動的にする「体験の設計」が見られるなど、まちとアートの心地よいバランスを感じさせるものでした。今回は、その取り組みと挑戦に着目しながら、プロジェクトの運営に迫ります。事業設計や運営体制、チームワーク、地域の人々との関係性の築き方など、事例にそって一つひとつ紐解きながら、持続可能なアートプロジェクトのあり方について考えます。
東京2020オリンピック・パラリンピックを控え、芸術祭やアートプロジェクトなど文化事業への期待は、益々高まりをみせています。その一方で、乱立する芸術祭のあり方とその差別化、持続可能なアートプロジェクトの在り方やそれを支える運営体制などの仕組みづくりは、引き続き大きな課題です。集中講座では、アートがもたらす気付きや可能性の意義を問い続け、実験的な活動に取り組むゲストを迎え、現在かれらが向き合う課題や挑戦を共有しながら、アートプロジェクトのこれからのあり方を探ります。文化事業やアートプロジェクトの運営に関心のあるみなさま、ぜひお越しください。
2016年より毎年1組のアーティストと向き合い、別府で新作をつくり出す個展形式の芸術祭「in BEPPU」がはじまりました。それを主催しているのは、約10年間「別府現代芸術フェスティバル『混浴温泉世界』」を中心に、別府のまちを舞台にアーティストや地域の人々と協働しアートプロジェクトを展開してきたNPO法人BEPPU PROJECT。なぜ、多数のアーティストが参加する従来の芸術祭からシフトしたのでしょうか。
昨年開催した「目 In Beppu」の仕掛け人・山出淳也さん、アーティスト・目とともに紐解きながら、これからの芸術祭のあり方を問います。