DOCUMENT302 アートプロジェクトの担い手たちのラボ ROOM302の記録 2009-2022

「ROOM302」は、東京都千代田区のアートセンター・アーツ千代田3331にあった活動拠点です。アーツカウンシル東京が運営し、イベントやレクチャー、展覧会、アーカイブ、打ち合わせ、あるいはさまざまな実験的な活動の舞台となりました。

2023年3月、アーツ千代田3331との契約終了に伴い、惜しまれながらもROOM302の運用に終止符を打ちました。本書では、14年にわたる「ROOM302」のありようを、数々の写真と、各年度の出来事をまとめたテキスト、この場所にゆかりのある人々からの寄稿によって辿ります。

この場所が常に完璧な環境だったわけではなく、整わせ過ぎない場所であったことが共通しているように思います。そしてまた、そうした“しつらえ”によってアートプロジェクトに必要となるコミュニケーションを運営者側に考えさせる役割を果たし続けていたのではないかと感じています。

(p.79)
目次
  • はじめに(櫻井駿介)
  • 足跡を辿る(大内伸輔)
  • 言葉を編む(鄭禹晨/長島確/瀬尾夏美/工藤安代/鈴木雄介/いわさわたかし/坂本有理/太下義之/齋藤彰英/佐藤慎也)
  • あとがきにかえて(森司)

「リスクを考える」とは?|アートプロジェクトの運営をひらく、○○のことば。

アートプロジェクトの運営にまつわる「ことば」を取り上げ、現場の運営を支えるために必要な視点を紹介する動画シリーズ「アートプロジェクトの運営をひらく、○○のことば。」から、「リスクを考える」を公開しました!

この動画では、東京アートポイント計画で、アートプロジェクトの中間支援に携わる専門スタッフ(プログラムオフィサー)が、『東京アートポイント計画が、アートプロジェクトを運営する「事務局」と話すときのことば。の本 <増補版>』(略して「ことば本」)から「ことば」を選んで、紹介しています。

2022年7月には、7本の動画を公開しましたが、今回の続編と合わせて14本の動画シリーズとなりました。この記事で取り上げる「リスクを考える」について、ことば本では以下のように書かれています。

リスクを考える:プロジェクトを守るためにリスクを想定し管理する

アートプロジェクトは、常にさまざまなリスクと隣り合わせである。これから起こるかもしれない危険に対し、いかなる事前策を講じるべきか、「リスクアセスメント」をしながら進めていこう。イベント実施時に事故やトラブルが発生したらどうするか。個人情報などの機密情報が漏洩したら? 制作物が著作権や肖像権など法に触れる可能性はないか? 潜在的リスクを洗いだすと、関係者間の緊急連絡網の作成や、リスク対策マニュアルの制定、近隣の病院や交番などの確認、各種保険への加入、定期的な研修の実施など、組織内でプロジェクトを守るためのルールづくりなど必要な対策がみえてくる。

リスクマネジメントは、プログラム実施よりも先行してとりかからなくてはいけない。現場や日常業務で事故、または事故の疑いのあるものが起こった際には、まず「一報(=簡潔な連絡)」を関係者に入れること。悪い情報ほどすぐに共有すること。緊急連絡網をかける練習をするなど、普段から、即時に連絡・共有のできる関係性を築いておくこともリスクマネジメントになる。

『東京アートポイント計画が、アートプロジェクトを運営する「事務局」と話すときのことば。の本<増補版>』アーツカウンシル東京、2020年、37頁より。本書は、以下のリンク先よりPDFダウンロードにてお読みいただけます。

東京アートポイント計画が、 アートプロジェクトを運営する「事務局」と話すときのことば。の本 <増補版>

アートプロジェクトに潜むリスクは、見えないものです。危険だと思っていないものはあらかじめ認識をすることができません。それでも、準備をする作業の工程の一つにリスクを「想定すること」「イメージすること」を入れておくことで、可視化すること、未然に防ぐための策を練ることができます。つまり「シミュレーション」です。ことば本31頁の「シミュレーション」から引用します。

イベント本番を迎える前に、準備が行き届いているかみなで現場を見回してみよう。タイムスケジュール、人員配置や役割分担表など当日の動きをまとめた資料をもとに、スタッフの動きを確認する。自分の担当だけでなく、ほかの人の動きも知っておくと、当日のフォローがしやすくなる。
               (中略)
だが、どれだけ事前準備を重ねても当日は想定外のことが必ず起こる。だからこそ、書面や口頭でイメージ を共有するだけでなく、実際の空間を体感しながら情報を身体化しておくことが、現場でのとっさの対応に生かされる。

「シミュレーション」解説

準備におけるリスクの可視化/資料化、いざという時に動くための情報の身体化。リスクを考える際には欠くことのできないポイントです。

また、今日的なリスクとして押さえておく必要のある事象として「個人情報の取り扱い」があります。東京アートポイント計画では2012年に個人情報流出事故を経験し、管理体制の見直しとチェックシートの開発を行いました。いつ、どんな時に事故の可能性があるのかを洗い出し、フローとしてチェックすることを習慣化しました。それは2023年の現在でも継続して行っています。経緯とチェックシートは『これからの文化を「10年単位」で語るために ― 東京アートポイント計画 2009-2018 ―』の102頁から105頁に掲載しています。

これからの文化を「10年単位」で語るために ― 東京アートポイント計画 2009-2018 ―

まちなか、ひいては現代社会が舞台となるアートプロジェクトは常に変化します。いつも同じ対策やルールが通用するとは限りません。その都度、状況を観察、シミュレーションし、場に応じたリスク検証をすること。意識的に考え方をアップデートしながらプロジェクトを守るための一手、さらにその先のもう一手を編み出してください。

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「決め方を決める」には?|アートプロジェクトの運営をひらく、○○のことば。

アートプロジェクトの運営にまつわる「ことば」を取り上げ、現場の運営を支えるために必要な視点を紹介する動画シリーズ「アートプロジェクトの運営をひらく、○○のことば。」から、「決め方を決める」を公開しました!

この動画では、東京アートポイント計画で、アートプロジェクトの中間支援に携わる専門スタッフ(プログラムオフィサー)が、『東京アートポイント計画が、アートプロジェクトを運営する「事務局」と話すときのことば。の本 <増補版>』(略して「ことば本」)から「ことば」を選んで、紹介しています。

2022年7月には、7本の動画を公開しましたが、今回の続編と合わせて14本の動画シリーズとなりました。この記事で取り上げる「決め方を決める」について、ことば本では以下のように書かれています。

決め方を決める:どのように物事を決めていくのか

複数人でプロジェクトを動かすときは、物事の決め方を確認しよう。現場担当の範疇で決められること。現場責任者の判断を仰ぐ必要があること。そして事務局長決裁が必要なこと。または、事務局会議や主催者会議、組織の理事会や総会といった、各所関係者による会議の場で協議の上、決めること。内容によって、その決め方はさまざまだといえる。チームで動くとき、物事を決める権限は個人に委ねられるのではなく、チーム全体でどのように判断していくかが問われる。関係者それぞれが、決定権限について把握することは、プロジェクト運営の際の混乱を避ける秘訣といえる。また、誰がどのように決めるのか、ということに加え、どのようにしたら決まったといえるのか、ということも確認が必要だ。

情報共有だけでは決まったことにはならない。よくありがちなのは、会議で話題を共有したらその事案は決定したと思ってしまうこと。相手との会話の上で、承認はきちんと取り付けよう。そうでないと、決まったと思っている人と、話を聞いただけ、と思っている人との間で認識がずれていき、トラブルのもととなるだろう。

『東京アートポイント計画が、アートプロジェクトを運営する「事務局」と話すときのことば。の本<増補版>』アーツカウンシル東京、2020年、20頁より。本書は、以下のリンク先よりPDFダウンロードにてお読みいただけます。

東京アートポイント計画が、 アートプロジェクトを運営する「事務局」と話すときのことば。の本 <増補版>

プロジェクトや会議をはじめるとき、「決め方を決める」習慣をつけておくことは、事業の舵取りをスムーズにする工夫のひとつです。
アートプロジェクトでは一時的なイベント参加者のみならず、ときには「関わりしろ」が広がって、一緒にプロジェクトを動かすメンバーが増えていくこともあります。

「関わりしろ」を増やそう。|アートプロジェクトの運営をひらく、〇〇のことば。

事務局だけではなく、そうして多くの考え方が集まるからこそ、お互いを気にしたり、話が脱線したり、決めようとしたことが決まらないまま会議が終わってしまった……そうした場面を見かけることも。

動画で紹介したポイントのほかに、会議に臨むときには「何を決めるのか」を設定しなければなりません。以前の記事でも紹介した「会議の3点セット」を活用することで、みんなの現在地と向かうべき方向を整えることができるでしょう。

アジェンダは議論の向かう先を示すコンパスと地図になり、資料は議論の歩みを着実に進めるためのツールとなります。議事録は、議論の進捗を「なんとなく」ではなく具体的に記した位置情報となることでしょう。

「会議の3点セット」の記事より

「会議の3点セット」を揃えよう。|アートプロジェクトの運営をひらく、〇〇のことば。

会議だけではありません。例えば「広報」を計画するとき、あるいは「ドキュメント」をつくるときにも、誰に、何を届けたいのか、チームで考えて決める場が必要です。

「広報のデザイン」を考える。|アートプロジェクトの運営をひらく、〇〇のことば。

「ドキュメント」にまとめよう。|アートプロジェクトの運営をひらく、○○のことば

プロジェクトを運営していると、多くの「決める」瞬間が訪れます。だからこそ、事前に「決める」ための準備をしておくことで、業務的にも心理的にも負担を減らすことができるのだと思います。
ことば本に出てくる「決め方を決める」の解説には、情報共有という言葉が出てきました。

情報共有だけでは決まったことにはならない。よくありがちなのは、会議で話題を共有したらその事案は決定したと思ってしまうこと。相手との会話の上で、承認はきちんと取り付けよう。そうでないと、決まったと思っている人と、話を聞いただけ、と思っている人との間で認識がずれていき、トラブルのもととなるだろう。

「決め方を決める」解説

物事を決める前には「情報共有」が必要です。日頃から情報共有をするための工夫や設計を意識しておくと、いざというときにもスムーズに「決める」段階へと移ることができます。

「情報共有」を心がける。|アートプロジェクトの運営をひらく、○○のことば

このシリーズではさまざまな「ことば」を紹介していますが、それぞれの視点を重ねたり関係させたりしながら、プロジェクト運営の基盤づくりに役立てていただけたら嬉しいです。

アートプロジェクトの運営をひらく、◯◯のことば

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「句読点を打つ」ことを考える。|アートプロジェクトの運営をひらく、○○のことば。

アートプロジェクトの運営にまつわる「ことば」を取り上げ、現場の運営を支えるために必要な視点を紹介する動画シリーズ「アートプロジェクトの運営をひらく、○○のことば。」から、「句読点を打つ」を公開しました!

この動画では、東京アートポイント計画で、アートプロジェクトの中間支援に携わる専門スタッフ(プログラムオフィサー)が、『東京アートポイント計画が、アートプロジェクトを運営する「事務局」と話すときのことば。の本 <増補版>』(略して「ことば本」)から「ことば」を選んで、紹介しています。

2022年7月には、7本の動画を公開しましたが、今回の続編と合わせて14本の動画シリーズとなりました。この記事で取り上げる「句読点を打つ」について、ことば本では以下のように書かれています。

句読点を打つ:メリハリをつけながら動く

「締め切り」はプロジェクトの動きにドライブをかけてくれる大事な要素。対外的な締め切りがなくても、チーム内で設定しよう。日々の活動に、締め切りという「句読点」を打ちながら進んでいくことも、持続的な活動の土壌をつくることにつながる

明確な締め切りのない業務にも自ら終止符を打ってみる。イベントは本番がきたら終わるが、日々の事務局業務はずっと続いていく。四半期ごとに区切って、振り返りの場を設定したり、年度ごとにいったんまとめるなどリズムをつけていくことが有効だ。

また、怒涛のようにイベントが集中するときは、その分しっかり休んでリフレッシュするなど、メリハリをつけながら仕事に取り組もう。そうでないと、疲労がどんどんたまっていくのはもちろんのこと、惰性で動いてしまう危険性がある。忙しくがんばった結果がプロジェクトの仕上がりにダイレクトに反映することもあり、ついつい休む間も忘れて夢中になることもあるが、倒れてしまったら事務局にとっては大打撃。「休むのも仕事」と考え、しっかりオフの時間をつくろう。

『東京アートポイント計画が、アートプロジェクトを運営する「事務局」と話すときのことば。の本<増補版>』アーツカウンシル東京、2020年、29頁より。本書は、以下のリンク先よりPDFダウンロードにてお読みいただけます。

東京アートポイント計画が、 アートプロジェクトを運営する「事務局」と話すときのことば。の本 <増補版>

「句読点を打つ」。これは比喩ですが、プロジェクト運営においては「メリハリをつける」、とか「システム、リズムをつくる」という意味をイメージしています。

なぜ、句読点を打つことが必要なのか? それは、プロジェクトを持続的なものにしていくためです。プロジェクトの目的に立ち返りながら、やるべきことの優先度や〆切を決めたり、日々の業務の中にプロジェクトの記録や振り返りができるシステムを組み込んだり。プロジェクトの現在地を見直し、メンバー間で共有・議論できる時間を意識的につくることで、少し先を見据えたプロジェクト運営ができるのではないでしょうか。

句読点の例①話すべき話題を考えて会議を設計する

メンバーで集まると、各プログラムの進捗共有から関連情報のおすすめ、新しいアイディア…など話はつきません。どの話も大切ですが、ついつい進捗共有だけで会議が終わってしまった、なんてことも。そのために、会議のなかで話題ごとに時間を区切ったり、話題によって別日に設定するなど、いつまでに何を話さないといけないかをスケジューリングしながら進めていくのもおすすめです。

▲あるプロジェクトでは、企画のブレストや中長期計画を立てる「企画会議」、運営面の振り返りを行う「事務局会議」、東京アートポイント計画のスタッフと行う「PO会議」などをそれぞれ定例化しています。

句読点の例②日々の記録をリズム化する

「としまアートステーション構想」というプロジェクトでは、「普段の活動に記録の要素を組み込むことで 、身構えずに取り組める記録の仕方」を意識し、記録の取り方を工夫していました。活動名 、日付 、時間を記載したイベントのPOP を、イベント終了後にそのままファイリングして実施内容のログとしたり、Facebookで実施レポートを投稿したら、それを出力してファイリングしたり…と、「○○をしたら○○をする」というリズムをつくっていました。

▼発行物『思考と技術と対話の学校 基礎プログラム2 [技術編] 2016 アートプロジェクトの現場で使える27の技術』にて、事例を紹介しています。

思考と技術と対話の学校 基礎プログラム2 [技術編] 2016 アートプロジェクトの現場で使える27の技術

また、「HAPPY TURN/神津島」では、拠点開室時に日報をつけています。日報をつけるハードルを下げるためにフォーマットを改善していき、1日ごとに1シート、紙に記録するスタイルで運用しているそうです。

プロジェクト事務局にとって、永遠の悩みかもしれない。「記録」についてみんなで考えた!【ジムジム会2021 #04レポート】

句読点の例③ドキュメントづくりを通して、プロジェクトを振り返る

2009年度から2020年度まで中央線沿線で展開していたプロジェクト「TERATOTERA」は、毎年度末に1冊ドキュメントをつくり続けてきました。さらに、2020年度は、12年目の総まとめとしてのドキュメント制作に着手。制作にあたっては、歴代のボランティアスタッフがオンライン上で対話を重ね、過去一年度ごとに振り返り会を実施。情報量が多く、まとめるのに悩んだ一方、振り返りをきっかけに離れていたメンバーが参加してくれた、という、プロジェクトの価値や影響を感じさせるエピソードもあったそうです。

TERATOTERA 2010→2020 ボランティアが創ったアートプロジェクト

また、東京アートポイント計画では、事業10周年企画として開催した展覧会の立ち上がりから実施に至るまでの試行錯誤を、企画の統括をしたスタッフの視点で振り返ったドキュメントの発行も行いました。

10年を伝えるための101日 「東京アートポイント計画 ことばと本の展覧会」ドキュメントレポート

プログラムとして「振り返り」を積極的に組み込むことは、日々の実践の成果や想いをプロジェクト内外の人々と共有し、成果を深める機会ともなりうる。多様な人々と現場をつくり上げるアートプロジェクトの運営だからこそ、ともに日々の歩みを振り返ることが、次の一歩を深めることへつながるのである。

『東京アートポイント計画が、 アートプロジェクトを運営する
「事務局」と話すときのことば。の本 <増補版>』
p.74「振り返り」

思いやアイディアが溢れていても、ずっと走り続けていては、活動自体も、関わる人たちも、息切れしてしまいます。せっかく生まれたプロジェクトの種をじっくり育てていくために、ときどき足を止めて一呼吸して、自分たちのプロジェクトを見直す時間が必要なのではないか、と思います。

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ファンタジア!ファンタジア!ー生き方がかたちになったまちーとは

それまで当たり前だと思っていた考えを解きほぐす「対話」を生み出し、地域の文化資源の活用から「学びの場」 を創出する『ファンタジア!ファンタジア!―生き方がかたちになったまち―(通称ファンファン)』。つくることを楽しむための拠点「藝とスタジオ」や、これまで開発してきた一人一人の創造力と向き合うコミュニケーションプログラムなど、ファンファンの取り組みを紹介するパンフレットです。

オンライン座談会「誰かと一緒にウェブサイトをつくるために必要なことはなんだろう?」

ウェブサイト制作のプロセスや、それぞれの段階で押さえておくべき課題、チームで制作に取り組むポイントをまとめたガイドブック『アートプロジェクトのためのウェブサイト制作 コ・クリエイションの手引き』の内容をもとにしたオンライン座談会です。

それぞれの立場からウェブサイト制作に関わる人々が集まり、日頃感じる「もやもや」を持ち寄りながら「誰かと一緒にウェブサイトをつくる」ことについて考えます。

つくることを考えてみよう 竹編

『多摩の未来の地勢図 Cleaving Art Meeting』の「ざいしらべ 図工 ― 技術と素材について考える」の一環として、多摩地域の小学校図工専科の先生や子どもたちと実施した活動をもとに、身近な素材を知り、加工や造形をして楽しむ方法を紹介するものです。

古くから人の暮らしの身近に存在してきた「竹」をテーマに、竹に関する知識や歴史、伐り方、加工の仕方、扱い方の事例や道具について触れています。

図画工作は、予定された解答や成果を求めるのではなく、身体を通した思考の過程という意味でも、大きな可能性を秘めた時間なのではないか

(p.1)
目次

竹と暮らし
身近な竹を知る
竹を伐る前に
竹を伐る
割り竹をつくる
ひごをつくる
結ぶ
竹で行灯をつくる<基本型>
竹で大きな建物をつくる
道具とともに
子どもと竹

シネマポートレイト 映像作品

「シネマポートレイト」は、Tokyo Art Research Lab の一環として実施した「Multicultural Film Making(MFM)」にて開発した手法です。海外に(も)ルーツをもつ人たちを対象に、映像制作のワークショップを展開するアートプロジェクト『KINOミーティング』では、その手法をブラッシュアップしながら継続してプログラムを実施しています。

まちを歩きながら自らの個人的なエピソードを語り、立場を交換して他者の話を聞くというプロセスは、作品制作のための行為を越えて、参加者同士の関係構築へとつながります。

詳細

関連リンク

KINOミーティングの公式Vimeoで作品を公開しています

仲間や先輩と手を取り合って次を考える。

東京アートポイント計画に参加するアートプロジェクトの事務局たちが集い、定期的に行っている勉強会「ジムジム会(事務局による事務局のためのジムのような勉強会)」。2022年12月にひらかれた第5回は、アーツ千代田3331のROOM302にて、9つのプロジェクトから30名近くのメンバーが集まり、久しぶりに対面で顔を合わせました。

今回のテーマは「ジムジム会2022 歳末学び合い〜解決のヒントはおとなりさんがもっている〜」。2022年夏から秋にかけて、各プロジェクトの事務局メンバーはそれぞれがもつ課題や興味関心にあわせて、東京アートポイント計画にかかわる団体や、以前かかわっていた団体を訪問するヒアリングを実施しました。

ヒアリングは、各事務局の個別具体的な疑問や課題を出発点にして、「このプロジェクトの手法がいまの我々にとって参考になりそう!」「似たようなテーマを扱っている先輩事務局は、どうやってプロジェクトを展開していったのか具体的に聞いてみたい!」と、トピックの洗い出しをしたうえで、話を聞きにいく団体を決定しました。

今回のジムジム会では、それぞれがヒアリングで得られた感触・気づき・学びを、ほかの事務局へ「おすそわけ」すべく、話を聞いたチームと聞かれたチームとで壇上に上がって報告しました。「どんな視点で、なぜ、どんなことを聞いたのか」「どんなことを知れたのか」「ヒアリングを受けて、自分たちの活動について新しい気づきがあったか」この3つを軸に、アーツカウンシル東京の担当プログラムオフィサー(PO)も交えて発表した当日の模様を、レポート形式でお伝えします。

ホームムービーというアーカイブの活用から、現代を捉えてみる

まずは、「めとてラボ」「移動する中心|GAYA(以下、GAYA)の発表から。このグループは、「アーカイブ」をテーマに、お互いにヒアリングを行いました。

視覚言語(日本の手話)で話すろう者、難聴者、CODA(ろう者の親をもつ聴者)が主体となり、自らの感覚や言語を起点とする創発の場づくりに取り組む「めとてラボ」。共催1年目となる今年度は、異なる身体性の人がともにいられる「場」づくりに向けたリサーチを重点的に実施しました。

プロジェクトを行いながら、「手話のアーカイブ」もテーマに上がってきています。手話は、ニュース映像などの記録以外に、その時代・その地域でいきた人々の暮らしのなかでつかわれている様子がなかなか残っていません。また、時代の変化とともに、言語である手話自体も常に変化しているため、記録に残らないことで忘れさられていく表現もあります。そのなかで、めとてラボでは現在、ある家族の手話での日常会話を収めたホームムービーを見つけたことをきっかけに、生活のなかにある手話のアーカイブを収集したり活用したりする試みを画策中です。

・「めとてラボ」アーツカウンシル東京公式ウェブサイト

GAYAは、8ミリフィルムに残された昭和のホームムービーを囲み、アーカイブから語りの場をつくるプロジェクトです。今年度は他領域との協働をすすめ、活動地域である世田谷区内の医療関係者らと連携した映像活用方法の開発なども行っています。運営団体であるremoは、GAYAとは別の事業の一環で、視覚障害がある方と映像鑑賞をする取り組みを続けており、さまざまな身体性や背景をもつ方と映像を活用していく可能性を探っています。

・「移動する中心|GAYA」公式ウェブサイト

ヒアリングではごく私的な記録であるホームムービーを他者とともに鑑賞することで、どんな気づきがあるのか、GAYAの取り組み共有をもとにディスカッションを行いました。ホームムービーを囲みながら対話することで、そこに直接は映っていない記憶や時代の雰囲気、歴史の断片が現れます。それをふまえて、アーカイブから滲み出てくる豊かな文化を感じられる可能性などについて、両者で意見交換をしました。また、アーカイブ映像の活用実践の先輩であるGAYAがもつ、映像を取り扱う上での注意点や運営・企画面での知見は、めとてラボのこれからのプログラムでも参考になり、「今後、なにかのかたちで協力できるかも」という話も。GAYAにとっても企画を一緒に考えることは新しいチャレンジになっていきそうです。今後の相互協力関係の可能性を感じられるヒアリングとなりました。

異なる防災へのアプローチに学び、次の展開を一緒に考える

NPO法人プラス・アーツの事務所にて。

被災地に蓄積されてきた記録物(禍録=カロク)をもとに、防災にかかわる知識や表現技術・課題などをさまざまな手法で伝え、災禍と災禍の間(災間)を生きる人々が、次に備えられるようなネットワークの形成を目指す「カロクリサイクル」。共催1年目の今年度は、ワークショップの開催や配信番組、リサーチの様子をまとめたレポートなどを積極的に発信しました。

ヒアリングでは、2009~2011年まで東京アートポイント計画の共催事業だった「イザ!カエルキャラバン!in東京」の運営団体、NPO法人プラス・アーツを訪問。同じく災禍を扱うプロジェクトの先輩から、防災の楽しさをアート的な視点で伝える事業のデザインや、地域の人たちとの持続可能な運営の仕組みづくりについて学びました。プラス・アーツの活動と比較して、場の開き方や参加者の対象年齢も異なるカロクリサイクル。今後は、このヒアリングから生まれた関係性をいかして、双方の都内の活動拠点である江東区での連携を探っていくことになりそうです。

・「カロクリサイクル」アーツカウンシル東京公式ウェブサイト

・「NPO法人プラス・アーツ」公式ウェブサイト

さまざまな協働先とつながり、持続可能な事業運営の姿を描く

多摩地域を舞台にプログラムを展開する「多摩の未来の地勢図 Cleaving Art Meeting(以下、地勢図)は、府中市で活動する「Artist Collective Fuchu[ACF](以下、ACF)を訪問。自分たちのミッションを、他の事務局の活動を知ることで見直したいと考え、まずは“ご近所”であるACFに、どんな活動をしているかなどを話しにいきました。現在は、ACFのメンバーが地勢図の活動にも参加するなどの行き来もはじまり、連携も強まっているそうです。

・「多摩の未来の地勢図 cleaving art meeting」公式ウェブサイト

・「Artist Collective Fuchu[ACF]」公式ウェブサイト

墨田区でプロジェクトを展開する「ファンタジア!ファンタジア!-生き方がかたちになったまち-」は、事務局やプロジェクトの運営、チームのディレクションについてなどを、先輩である地勢図に聞きました。地勢図は共催2年目ですが、運営するNPOは10年以上活動を続けており、長期的な展開についてのヒントをもらいました。

・「ファンタジア!ファンタジア!-生き方がかたちになったまち-」公式ウェブサイト

壇上では、拠点運営の方法や、行政をはじめとする外部機関とどう連携しているか、事業パートナーと自分たちのミッションをどう重ね合わせているか、それぞれの試行錯誤や工夫なども共有。3つの事務局はそれぞれ、運営者の世代も、運営団体としての経験値もさまざま。東京アートポイント計画のネットワークをとおして、プロジェクト同士で質問しあったり、相談できたりする環境があることの大切さにもあらためて気づいたヒアリングでした。

プロジェクト参画までの手立てを先輩に聞く

音まち計画の拠点で、展覧会の会場にもなった「仲町の家」にてヒアリング。

海外に(も)ルーツをもつ人々と映像制作のワークショップを通じて、多文化交流の新たなプログラムの開発を目指す「KINOミーティング」。共催1年目となる今年度は池袋と葛飾で2回のワークショップを実施しました。

ヒアリング先は、2011~2021年度まで共催していた「アートアクセスあだち 音まち千住の縁」を運営するNPO法人音まち計画。国内に在留する海外ルーツの人々の、日本での日常生活に焦点をあてたプログラム「イミグレーション・ミュージアム・東京」では、多国籍美術展「Cultural BYO…ね!」を12月に開催していました。KINOミーティングのメンバーは、展覧会を視察し、会場となった仲町の家でヒアリングを行いました。

・「KINOミーティング」公式Facebookページ

・「アートアクセスあだち 音まち千住の縁」公式ウェブサイト

「多文化共生」がテーマの両プロジェクト。ヒアリングでは、展示作品の公募方法や、幅広い参加者を募るための広報戦略、地域にある外国人コミュニティとの関係性のつくり方、海外ルーツをもたない方のプロジェクトへの参画方法に関する話題が上がり、「一度つくった関係性が冷めない工夫」がプログラムを豊かにするポイントになりそう、という手ごたえを感じた時間になりました。

プロジェクトを500年続ける徹底した仕組みづくりに触れる

YATOの拠点である町田市の簗田寺にて。

国立市で、行政と連携してアートプロジェクトを実施する「ACKT (アクト/アートセンタークニタチ)(以下、ACKT)と、神津島で人々が島に愛着をもち、当事者としてかかわる土壌を育むことを目指す「HAPPY TURN/神津島(以下、HAPPY TURN)。この2つの事務局は、昨年度まで東京アートポイント計画として展開した「500年のcommonを考えるプロジェクト『YATO』」の運営団体である、社会福祉法人東香会に話を聞きにいきました。

ACKTは、プロジェクト2年目。今年度は活動拠点の調査を進めつつ、遊休地にテントを張り道行く人々とのかかわりや接点をつくる「・と -TENTO-」や、地域の資源をつかって土器をつくるワークショップを開催。共催6年目となるHAPPY TURNは、拠点運営を軸にアーティストプログラムや、教育機関との連携などを進めました。これから拠点をひらくために準備しているACKTと、すでにある拠点「くると」をどう運営・維持したらよいか考えているHAPPY TURN。拠点や場のひらき方や続け方を探っている両事務局は、そのヒントを得に、YATOの拠点である町田市の簗田寺を訪れました。

・「ACKT (アクト/アートセンタークニタチ)」公式ウェブサイト

・「HAPPY TURN/神津島」公式ウェブサイト

・「500年のcommonを考えるプロジェクト『YATO』」公式ウェブサイト

まずお寺に到着してYATOのディレクターである齋藤紘良さんに言われたのは「では、一緒に掃除しましょう」。みんなで庭の掃除をしてみると、お寺や里山の雰囲気が徐々に伝わってきて、この場所について自然と意識が向いていきました。YATOは「500年つづくcommonを考える」を掲げ、町田市忠生地域の寺院と里山を中心にこどもたちを対象にしたお祭り「YATOの縁日」や、ワークショップを開催してきました(2017〜2021年度共催)。東京アートポイント計画として共催した期間を振り返り、齋藤さんは「やるべきことのリズムができた」「拠点であるお寺や里山を自分の場所だと思ってもらえるようなものにしていきたいし、そのための取り組みを続けています」と話したそうです。

最初の掃除を通して、YATOが「500年」のスパンでやろうとしていることを身をもって体感した、と、ヒアリングに参加したメンバーは語ります。さまざまな人が、多様な関わり方でお寺や里山を訪れるようになる、いわば「アクセスポイント」をつくる工夫や事業展開から、人を巻き込み、活動を長く続けるための仕組みづくりを学びました。

拠点や活動で、排除せず受け止める

地勢図メンバーの森山さん(左)が、神津島の小学校でリサーチする様子。

報告の最後を締めくくるのは、多摩と神津島という地域性の異なる場所でそれぞれにアートプロジェクトを実践する2団体。ヒアリングを希望した地勢図メンバーが、実際に「HAPPY TURN/神津島」の拠点「くると」を訪れました。

こどもたちの生きる力や、それを育む教育に焦点をあてたプログラム「ざいしらべ」を行っている地勢図のメンバーは日々、多摩の地域性や人々の暮らしぶりを、どう活動へ反映させていくべきか考えています。そこで、地勢図で進めている図工教員と連携したプロジェクトのヒントを得るべく、多摩と環境の異なる神津島がどのような教育環境にあるのか、離島という限られたコミュニティのなかでのこどもたちがどう暮らしているのかといった様子や、拠点運営の様子、これまでで変わったことなどの聞き取りを実施しました。

ヒアリングを振り返りながら、HAPPY TURN事務局メンバーの中村さんは「地勢図の方に、この場所をどういう場所にしたいかと聞かれたので、拠点ではとにかく排除をしたくない、という話をしました。家では自由にできないこどもたちも、『くると』では自由に振る舞えるように、ひとまず受け止めてから考えるようにしています」と語りました。同事務局メンバーの飯島さんは「『島の人にちゃんと見られるようとしなくちゃ』と思うあまり、自分が頑固になってしまったり、自分の判断で人を排除しようとしてしまうようなことがありました。いまはそこから変わって『くるととしてはどうしようか?』と、地域のお母さんたちや移住者も巻き込みながらみんなで意見をもち寄って話し合える局面にやっと来ました」と話しました。

「教育」をテーマにはじまったヒアリングでしたが、交流のなかで、地域を舞台に行われるアートプロジェクトが、拠点や活動をひらいていくために大切なこととはなにか、再確認する時間にもなりました。

当日は情報保障として手話通訳(写真右)が導入されていました。

これからも、学び合いの輪をひろげたい!

2019年度からスタートしたジムジム会。これまでは広報や事業評価などの「共通する大きなテーマや参考事例」をピックアップして、他の事務局とともにディスカッションをしたり、ゲストのトークに耳を傾けたりする機会をつくってきました。
ヒアリングでは、そこからもう少し踏み込んだ「それぞれの事業に即した実践的なこと」を話し合う機会になって、事務局同士のつながりも強まり、次の展開や手ごたえを感じたメンバーも多かったのではないでしょうか。

参加者からは、「先輩プロジェクトの話を聞いて、それぞれに時間的なスケールが大きく驚きました。自分達の事業をどのようなスパンで想定するか、今後考えていくきっかけとなりました」という感想や、「実際にやっていることが違っていても、まちや人とのかかわりのなかで通ずるものが、アートプロジェクトの運営のなかでもあるのだとあらためて実感しました」などの声が集まりました。

都内各地で、それぞれの視点からアートプロジェクトに取り組む事務局のメンバーたち。活動が違うからこそ自分たちの活動への気づきが得られたり、違っているけれども共通し合うことが見つかったりします。来年以降の「ジムジム会」は、どんな学びや展開が待っているのでしょうか。

(執筆:遠藤ジョバンニ

(撮影:加藤甫 *1、2、4、8、9、10枚目)