応答するアートプロジェクト|ケーススタディ・ファイル

アートプロジェクトを詳細に見ることで、社会状況との連関を捉える

この10年で、わたしたちを取り巻く社会状況はめまぐるしく変化しました。これまでの考え方では捉えきれないような状況が次々と発生し、新たに炙り出される課題に応答するように、さまざまなアートプロジェクトが生まれました。しかしこのような状況は、どこかで一区切りつくようなものではなく、わたしたちはこれからもまた新しい状況に出会い、そのたびに自分たちの足元を見直し、生き方を更新する必要に迫られるでしょう。激しく変化し続けるこれからの時代に求められるアートプロジェクトとは、一体どのようなものなのでしょうか。

「新たな航路を切り開く」シリーズでは、2011年以降に生まれたアートプロジェクトと、それらをとりまく社会状況を振り返りながら、これからの時代に応答するアートプロジェクトのかたちを考えていきます。ナビゲーターは、人と環境の相互作用に焦点をあてながら、社会状況に応答して発生するアートプロジェクトをつぶさに見続けてきた芹沢高志さん(P3 art and environment 統括ディレクター)です。

ここでは、2011年以降に生まれた多様なアートプロジェクトを取り上げ、どのようにプロジェクトが発生し、続いてきたのか、これからどこへ向かおうとしているのかを実践者が語ります。ひとつひとつのアートプロジェクトを詳細に見ていくことで、社会状況とアートプロジェクトとの連関を捉えます。

2023年度 ラインアップ

スケジュール

【9月6日(水)公開】
File 09 釜ヶ崎のおじさんに教わった
ゲスト:上田假奈代(詩人/詩業家)

「学び合いたい人がいれば、そこが大学」として、2012 年より大阪市西成区釜ヶ崎でスタートした「釜ヶ崎芸術大学」。11年目を迎え、地域のさまざまな施設を会場に、天文学、哲学、美学など、年間約100の講座を開催しているこの大学のはじまりと、活動の広がりと出会い、これからの構想について。

【9月20日(水)公開】
File 10 大風呂敷を広げる
ゲスト:山岸清之進(プロジェクトFUKUSHIMA! 代表/ディレクター)

2011年の東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故を契機に、福島出身/在住の音楽家と詩人を代表とし、集まった福島県内外の有志によって立ち上げられた「プロジェクトFUKUSHIMA!」。各地から集まった布を縫い合わせた色とりどりの大風呂敷とともに広がるプロジェクトの変遷と現在について。

【10月4日(水)公開】
File 11 旅人として回路をつくる
ゲスト:小森はるか+瀬尾夏美(アートユニット)

2011年3月、ともに東北沿岸へボランティアに行ったことをきっかけに活動を開始したアートユニット小森はるか+瀬尾夏美。各地での対話の場づくりを行いながら、風景と人びとのことばの記録を軸に作品制作を続けるふたりの、活動を通した気づきや、広がりについて。

【10月18日(水)公開】
File 12 その場に”置かせてもらう”ために
ゲスト:平野真弓(Load na Dito Projects共同設立者/キュレーター)

フィリピン・マニラを拠点にインディペンデント・リサーチャー、キュレーターとして活動し、文脈に根付いたキュレーションの方法を探っている平野真弓さん。10年の活動から得たその土地の歴史や風土、社会と寄り添いながらリサーチを行う際の態度と向き合い方について。

【11月15日(水)公開】
File 13 声を刻む
ゲスト:A3BC(木版画アート・コレクティヴ)

反戦、反核をテーマに木版画を集団制作し、アート・アクティヴィズムを実践するアート・コレクティヴ 「A3BC」。個人が有機的につながる「コレクティブ」という形で、参加する誰もが自分の中の問いをもちより、対話し、表現することにチャレンジできる場をつくりだす、その草の根的な実践について。

Tokyo Art Research Lab YouTubeチャンネルにて公開しています。
※プログラムは変更となる場合がございます。

2022年度 ラインアップ

File 01 「イミグレーション・ミュージアム・東京」設立にむけて
ゲスト:岩井成昭(美術家/イミグレーション・ミュージアム・東京 主宰)

在留外国人の生活と文化背景を「適応・保持・融合」という三つの視座から捉えるプロジェクトを継続している岩井さんの、10年にわたる軌跡と今後の展望について。

File 02 クッションとしてのアート
ゲスト:滝沢達史(美術家)

放課後等デイサービス「ホハル」、アーツ前橋「表現の森」をはじめ、各地でさまざまな事情を抱えるこどもや若者との表現活動を行なってきた滝沢さん。活動を通じ「見る側の視点が優しくなれば」と語る滝沢さんにとっての「アート」や「アートプロジェクト」について。

File 03 “切実な創造力”のためのアートプロジェクト
ゲスト:青木彬(インディペンデント・キュレーター/一般社団法人藝と)

「ファンタジア!ファンタジア!ー生き方がかたちになったまちー」などプロジェクトのディレクションやキュレーションを行う青木さんによる、アートの歴史を読み解くだけでは見えてこない「切実な創造力」について。

File 04 これまでにない他者とのつながりかたの発明
ゲスト:アサダワタル(文化活動家)

コミュニティやケアの領域で「これまでにない他者とのつながりかた」を実践するアサダさん。「役割を脱ぐ」ような動き方や、些細な日常に目を向け、寄り添う活動の原点はどこにあるのか、プロジェクトでのまなざしやふるまいなどについて。

File 05 動かされるという経験 〈揺れ〉を他なるものに
ゲスト:清水チナツ(インディペンデント・キュレーター/PUMPQUAKES)

「3がつ11にちをわすれないためにセンター」の立ち上げや市民・作家との協働、独立後のメキシコ・オアハカでのリサーチ経験などを踏まえながら、仙台の地から見えるこの10年の景色について。

File 06 「みんなの劇場」の未来=広場×味噌屋?! 〜THEATER for ALLの実践から〜
ゲスト:中村茜(株式会社precog代表取締役)

バリアフリー・多言語翻訳対応のオンライン動画配信プラットフォーム「THEATRE for ALL」プロデューサーの中村さん。多様な観客層に向けて、アクセシビリティを高めた作品の届け方と、新たな作品の生み出し方、「みんなの劇場」の少し先の未来について。

File 07 『わたしは思い出す』について
ゲスト:松本篤(NPO法人remoメンバー/AHA!世話人)

『はな子のいる風景』『わたしは思い出す』など、「市井の人びとの記録」に着目し、独自のアーカイブ像を模索してきた松本さん。その発想の源や、影響を受けたこと・人物、プロジェクトのインプットやアウトプット方法などについて。

File 08 表現と活動ーこのめちゃくちゃな世界で何を祈るのか
ゲスト:キュンチョメ(アートユニット)

東日本大震災を契機に、ホンマエリさんとナブチさんによって結成されたアートユニット・キュンチョメ。自身のこれまでの活動と、制作とは異なる活動である『表現の現場調査団』について。

岩井成昭|「イミグレーション・ミュージアム・東京」設立にむけて
滝沢達史|クッションとしてのアート
青木彬|“切実な創造力”のためのアートプロジェクト
アサダワタル|これまでにない他者とのつながりかたの発明
清水チナツ|動かされるという経験 〈揺れ〉を他なるものに
中村茜|「みんなの劇場」の未来=広場×味噌屋?! 〜THEATER for ALLの実践から〜
松本篤|『わたしは思い出す』について
キュンチョメ|表現と活動ーこのめちゃくちゃな世界で何を祈るのか
上田假奈代|釜ヶ崎のおじさんに教わった
山岸清之進|大風呂敷を広げる
小森はるか+瀬尾夏美|旅人として回路をつくる
平野真弓|その場に”置かせてもらう”ために
A3BC|声を刻む

年表を作る 2011年以降のアートプロジェクトを振り返る

実践者の視点から10年の軌跡を辿り、新たな時代を思考するための手がかりを探す

この10年で、わたしたちを取り巻く社会状況はめまぐるしく変化しました。これまでの考え方では捉えきれないような状況が次々と発生し、新たに炙り出される課題に応答するように、さまざまなアートプロジェクトが生まれました。しかしこのような状況は、どこかで一区切りつくようなものではなく、わたしたちはこれからもまた新しい状況に出会い、そのたびに自分たちの足元を見直し、生き方を更新する必要に迫られるでしょう。激しく変化し続けるこれからの時代に求められるアートプロジェクトとは、一体どのようなものなのでしょうか。

「新たな航路を切り開く」シリーズでは、2011年以降に生まれたアートプロジェクトと、それらをとりまく社会状況を振り返りながら、これからの時代に応答するアートプロジェクトのかたちを考えていきます。ナビゲーターは、人と環境の相互作用に焦点をあてながら、社会状況に応答して発生するアートプロジェクトをつぶさに見続けてきた芹沢高志さん(P3 art and environment 統括ディレクター)です。

ここでは、2011年以降に生まれたアートプロジェクトを俯瞰し、年表を制作します。同シリーズでのプロジェクト「アートプロジェクトと社会を紐解く5つの視点」や、「ケーススタディ・ファイル」、演習ゲストとの対話の中で得た実践者たちの視点も組み込みながら、社会にひらかれ、成長を遂げるものとして更新していきます。年表をつくるなかで、プロジェクト間のつながりや、社会との関係、コミュニティとのかかわりなど、新たな分類が見えてくるはずです。

詳細

進め方

  • 「新たな航路を切り開く」の各プログラムの進行に合わせて、リサーチメンバーで内容を検討しながら年表を制作
  • 2011年以降のアートプロジェクトについての事例を調査
  • 社会的な出来事とアートプロジェクトの連関を検討
  • 10年を俯瞰する年表として事例を精査し、整理
  • 年表から見えてくるトピックを洗い出し、「新しい文脈」の発見
  • ウェブサイトでの年表の実装方法を検討

シネマポートレイト 映像作品

「シネマポートレイト」は、Tokyo Art Research Lab の一環として実施した「Multicultural Film Making(MFM)」にて開発した手法です。海外に(も)ルーツをもつ人たちを対象に、映像制作のワークショップを展開するアートプロジェクト『KINOミーティング』では、その手法をブラッシュアップしながら継続してプログラムを実施しています。

まちを歩きながら自らの個人的なエピソードを語り、立場を交換して他者の話を聞くというプロセスは、作品制作のための行為を越えて、参加者同士の関係構築へとつながります。

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関連リンク

KINOミーティングの公式Vimeoで作品を公開しています