エピソードが宝物!仲間と取り組む楽しい評価
執筆者 : 大内伸輔
2022.05.13
こんにちは。
東京アートポイント計画 ジムジム会運営メンバーの村上です。
9月17日(金)に、ジムジム会の第2回目を開催しました。
今回はそのようすをお届けします。
ジムジム会は、2019年度より東京アートポイント計画が開催している〝事務局による事務局のためのジムのような勉強会〟です。
東京都内各地でアートプロジェクトを実施する東京アートポイント計画参加団体(※芸術文化や地域をテーマに活動するNPO法人や社団法人など)とともに、プロジェクト運営事務局に必要なテーマを学び合うネットワーキング型の勉強会です。
今回ジムジム会運営チームと一緒に企画を担当するのは『東京で(国)境をこえる』事務局の阿部七海(あべ ななみ)さんです。「ことばを壁にしない。『やさしい日本語』を使おう」をテーマに、開催しました。
「やさしい日本語」は、日本語学習中の外国人・言語発達の途上にあるこどもたち・聞こえに問題を持つ高齢者・さまざまな障害を抱えた方々などとのコミュニケーションに活用されている、簡単でわかりやすい日本語です。
しかし普段から無意識に日本語を活用している人にとって「やさしい日本語」は、一朝一夕で習得できるものではありません。『東京で(国)境をこえる』事務局もより多くの人と一緒にプロジェクトをするために、試行錯誤をしてきました。
そのなかで、東京アートポイント計画の他の現場にもぜひ知ってもらいたい、活用してほしいという思いから、今回この企画が生まれました。
● 東京で(国)境をこえるの取り組みは、こちらからも読むことができます → note記事「『やさしい日本語、やさしい気持ち』 kyodo 20_30のきろく#1」
今回はゲストとして、NPO法人YYJ・ゆるくてやさしい日本語のなかまたちから奥村三菜子(おくむら みなこ)さんをお招きし「やさしい日本語」の成り立ちや翻訳の心得を学んでいきました。
「やさしい日本語」は1995年の阪神淡路大震災の際に、多くの日本語を母語としない人が大切な情報を受け取ることができず二次被害や三次被害も被ったことなどがきっかけで生まれました。
つまり、大きな目的として“減災”という命にかかわる問題と立ち向かうために「やさしい日本語」は生まれたのです。
現在では観光事業や自治体の情報発信等でも使われていますが、何よりも“しっかり本意を伝えること”が重要になることは誕生以来変わりありません。
次のステップ表は、普段の文言を「やさしい日本語」に作り直すための手順をまとめたものです。
「やさしい日本語」を作る/見直すためのステップでは、ステップ2【一番伝えたいことって、何?】がもっとも重要度の高い項目になっています。発信者が伝えたいことを理解することで、重要な情報を明確で間違いのないメッセージとして届けることが叶うのです。
例えば地震ならば、まず発信者は「地震がありました!」という事実を伝えたいはずです。
そして、その後に「すぐにげて!」というメッセージが続きます。
発信者が「自分は何を一番に伝えたいのか?」を理解することで、相手を的確にサポートすることができるのです。
以上を把握した上で、ジムジム会に参加している9つのアートプロジェクトの概要文を「やさしい日本語」にしてみるワークをしました。
まずはステップ1【この一文、長いよね?】から取りかかります。
まずズラズラと長い文は対象者にとって理解するのがむずかしく、伝えたいことがずれてしまう可能性が増えてしまいます。そのため、まずは細かく区切ってみます。
そのときに重要なのが動詞で区切ること。
動詞で区切る=〝する〟〝ある〟〝記録する〟〝見舞われる〟などの動詞が登場したら、そこで区切る!
こうして短い文章にすることで、受け手に負担なく、そして間違ってメッセージが伝わらないよう予防することができるのです。
そしてステップ2【一番伝えたいことって、何?】を行います。
発信者がもっとも伝えたいことは何か。伝えたい相手を想像しながら考えます。
ステップ2をもとにステップ3【これ、なくても伝わるよね?】では専門的な単語を削除し、一文が簡単にストレートに伝わるよう吟味します。もっとも伝えたいメッセージ以外の情報は、大胆に消去することがコツなのです。
「あれもこれもはゼロになる!」をモットーに、作業をしました。
文が短く、情報を削ぎ落とすことができたら、次はステップ4【このことば、わかるかな?】です。
この作業は、むずかしい言葉を〝平たい言葉〟にしています。
例えば、今回多く見られたアートプロジェクトにまつわる難解ワードはこちら
日頃から使いまくりの言葉ばかりなので、戦慄しました……
抽象的な言葉を見つけたら、具体的=平たい言葉に変換していきます。
プログラムを展開します。
⇒ プログラムがあります。
など、シンプルにしても問題なく伝わります。
言葉のニュアンスによっては変換がむずかしく、時間がかかる作業です。
最後に、見直しであるステップ5【わかりやすく整えよう!】です。
これでやさしい日本語が完成します。
「やさしい日本語」に、正解はありません。
なぜならば、相手の立場や状況によって大きく変わるからです。発信者と受け手の関係によって言葉づかいは変わりますし、受け手側もそのときの状況によって欲しい情報は変わります。
だからこそ、必要になるのはたくましい想像力なのです。
伝えたい相手をしっかり想像し、言葉を想像力によって紡ぐことが必要です。発信者側は伝えたい思いをいつでも冷静に整理し、そして想像力によって客観的に言葉にしていく必要があるのだなと思いました。
今回はそんな「やさしい日本語」を使うための、はじめのステップとなりました。
頭がほぐされて、まっさらな気持ちで言葉と向き合う感覚を味わうことができたのではないでしょうか。
それぞれのアートプロジェクトで、新たな言葉への向き合い方が生まれるかもしれません。
・やさしくシンプルに表現するためには決心が必要だと感じました。
・「やさしい日本語」という切り口があると、自分たちのテキストも振り返りやすかった。「やさしくなる」と同時に、自分たちが大事にしようとしている表現のポイントも見えてきた気がする。
・整理した言葉は、自分でも話しやすいものになりました。
・「やさしい日本語」に書き換えるワークでは、同じチームでも各々大事にしている要素が違うという気づきがあり「これはゆずれない」という話し合いが盛り上がりました。
・ふだん書き慣れて/読み慣れてしまった文章が、いかに裸の王様?であったのかを痛感します。一方で「やさしい日本語」に書き換えるときに削ぎ落としてきたものたちに、どんな意味があったのか(本当に意味がなかっただけなのか)が気になりました。
執筆:村上愛佳(東京アートポイント計画 プログラムオフィサー)
※ジムジム会についての情報は東京アートポイント計画のnoteアカウントでもお読みいただけます。