区切りをつけると、次に進める。【ジムジム会 2025 #2 レポート】

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2026.03.27

執筆者 : 遠藤ジョバンニ

区切りをつけると、次に進める。【ジムジム会 2025 #2 レポート】の写真

東京アートポイント計画に参加する複数のアートプロジェクトの事務局が集い、活動を展開する際の手法や視点を学び合い、悩みや課題を共有し合う勉強会「ジムジム会(事務局による事務局のためのジムのような勉強会)」。

2026年2月16日、アーツカウンシル東京にて、2025年度の第2回ジムジム会を開催しました。事業再編に伴い、今年度いっぱいで終了する「東京アートポイント計画」。ジムジム会も今回が最終回です。共催団体6団体が一堂に介し、それぞれの事業の活動報告を行いました。

また、東京アートポイント計画(以下、アートポイント)の選定委員である4名、太下義之さん(文化政策研究者)、小山田徹さん(アーティスト/京都市立芸術大学 学長)、西村佳哲さん(プランニング・ディレクター/リビングワールド代表)、荻原康子さん(「隅田川 森羅万象 隅に夢」統括ディレクター)も同席し、それぞれのプロジェクトの現在地を見届けました。本記事では当日の模様をレポートします。

ジムジム会は2019年にはじまり、広報、事業評価、チームビルディング、アクセシビリティなど、アートプロジェクト運営にまつわる事務局のさまざまな悩みを議題として取り上げてきました。今回のテーマは「アートプロジェクトのひと区切り」。隣で一緒に走り続けてきた仲間たちが、それぞれがどのような活動を行い、どのような気づきを得てきたのか。これまでの取り組みを一つの区切りとして共有しました。

会場には、現在活動している共催団体の事務局メンバーをはじめ、アートポイントを卒業した先輩団体や、新たにかかわるプロジェクトメンバーなど総勢約40名が参加しました

角度を変えて、入り口をつくるACKT(アクト/アートセンタークニタチ)

まずは、国立近郊を拠点とするメンバーが中心となり、2021年度より活動を開始した「ACKT(アクト/アートセンタークニタチ)」(共催団体:一般社団法人ACKT)。多様な人々との出会いを通じて、まちとともに成長するプラットフォームづくりに向けた、今年度の活動について3つの柱となるプログラムの現在地を発表しました。

(写真左から)一般社団法人ACKT代表 丸山晶崇さん、事務局長 安藤涼さん

ひとつは、ACKTの活動拠点「さえき洋品●(てん)」がある谷保駅前の緑地帯を舞台に、コミュニティガーデンの手法を用いる参加型のガーデニングプログラム「GREEN GREETINGS」。緑地をみんなで手入れするだけでなく、プロのガーデナーを招いたトークイベントや群生していた植物を使った日用品づくりなど、その時季ごとの話題や植生を楽しめるワークショップを開催しました。アートではなくガーデニングを切り口にしたことで、普段とはまた違った属性の参加者ともかかわるきっかけができました。

また、公募型の長期プログラムとして展開している「ただの店」は、モノの売買などの“金銭”のやりとりではなく、“価値”を交換することをルールに店主を募り、自主的な活動から、人とのつながりやコミュニティの起点をつくる企画です。これまでに参加した店主たちは、ただの店で経験を積んで、国立市最大級のお祭り「天下市」への出店を実現するなど、プログラム参加者の「はじめの一歩」を応援する成果に結びついてきていると話しました。

ACKTは、国立を中心としたまちなかで行われるアートイベント「Kunitachi Art Center」の企画・運営も担当しています。今年は、開催前に国立第三小学校の図工教員と連携して、アーティストの田中彰さんを招いたワークショップを実施しました。会期中には、ワークショップで小学生たちが制作した作品をギャラリーで展示したほか、恒例のツアー企画や、KAC開始以来はじめてとなる国立駅南口駅前広場での展示も実施。かかわりしろを広げました。

共催終了後の来年度の見通しとしては、引き続き「Kunitachi Art Center」の運営や、小学校と協働したワークショッププログラムの継続、そして拠点「さえき洋品⚫︎」を国立在住の作家や近隣の大学生にシェアしながら運営していくと意気込みを語りました。

つくってきたのは場ではなく、関係多摩の未来の地勢図Cleaving Art Meeting

ACKTと同年度の2021年度よりスタートした「多摩の未来の地勢図 Cleaving Art Meeting」(共催団体:特定非営利活動法人アートフル・アクション)。多摩というまちを多角的な視点から確かめてみようと、5年間活動を続けてきました。

今年度は「ケアをパンクで考える/ケアをパンクに考える」というプログラムで、参加メンバーとの対話から訪れたい先・尋ねたい人・やってみたいことを決め、都内外のさまざまな場所に足を運びました。社会包摂や震災など、多彩なテーマで、ワークショップやトーク、レクチャー、フィールドワークなどを重ねました。

特定非営利活動法人アートフル・アクション 事務局長 宮下美穂さん

また、過去に共催事業として実施していた「小金井アートフル・アクション!(2011年~2020年度)」の頃から約15年間、小学校を活動の舞台の一つとしてきたアートフル・アクション。2025年度は昭島市立光華小学校に画家の弓指寛治さんをコーディネートし、その活動に伴走してきました。

(参考)東京アートポイント計画note|「アーティストが学校にやってきた」光華小学校×弓指寛治の取り組みレポート

弓指さんは光華小学校の4年2組のクラスの一員として週に3日学校に滞在。指導するのではなく、小学生と対等な存在として日々を過ごしながら、こどもたちと幅13mの絵画を制作しました。その滞在過程は、ドキュメント冊子『つくることを考えてみよう 表現のひろがりと可能性をめぐる』にまとまっています。弓指さんが滞在するなかで、こどもたちから寄せられた「楽しかった」という声がある一方、想定外のことも多く、教育関係者からは「価値観が揺さぶられることの多い時間だった」という意見も寄せられ、学校内外でのインパクトの強さがうかがえるプログラムとなりました。

今後は、基地のまちとして知られる昭島を一つのフィールドとして、こどもたちとのまち歩きのほか、その保護者にヒアリングを実施して、昭島の人々の暮らしに関するリサーチを本格化させていきたいと言う宮下さん。また、教育現場とのつながりから、教員の有志が集まった東京都図画工作研究会などが、拠点「KOGANEI ART SPOT シャトー2F」で研究会を開催することになりました。一方で同スペースでは不登校のこどもたち向けのワークショップも行っており、学校を飛び出し垣根を越えた交流がはじまろうとしています。

宮下さんは今年度の活動を振り返って「わたしたちは場をつくったのではなくて、関係をつくったのだなと思います」と話し、プロジェクトにかかわった人々のなかからも、さまざまな次の展開が見えはじめているという予感とともに報告を締めくくりました。

積み重ねたものを確かめて、また伝えて|KINOミーティング

“海外に(も)ルーツをもつ人たち”と協働する映像制作プロジェクト「KINOミーティング」(共催団体:一般社団法人パンタナル)。2022年度にスタートし、多様なルーツをもつ人たちとの映像制作を通して、あらたなコミュニケーションの手法や協働のあり方を発見するプログラムに取り組んできました。

(写真右)一般社団法人パンタナル 代表 阿部航太さん

2022年度から海外に(も)ルーツをもつ人々とともに映像制作ワークショップを積み重ね、2024年度にはオムニバス映画『オフライン・アワーズ』を制作、試写会を実施しました。

最終年度となる2025年度に特に力を入れたのは、これまでの活動で得た関係性や制作してきた作品を活用し、発信していくこと。活動をまとめたドキュメントブック『KINOミーティングアーカイブ 3』ではプロダクションノートや制作メンバーによる寄稿、作品レビューなどを掲載し、制作のプロセスやプロジェクト全体を振り返りつつ、これからKINOミーティングに出会うひとにもプロジェクトの全容を手渡せるよう、ドキュメントにまとめました。

また、『オフライン・アワーズ』のドキュメンタリー映像の追加撮影・編集を実施し、ワークショップでの経験が参加者にとってどのようなものになったのかを記録しました。そのほか、「クリエイションの現場にみる多文化共生の実践」をテーマに「アートと多文化共生の研究会」のレクチャープログラムを実施。3年間で積み重ねてきた知見や感覚をテーマに関心のある人々と共有し、それぞれの活動を発展させていくための、課題や意見交換の場をひらきました。そのほかにも、制作した映画作品の上映パートナーを募集し、大学などの教育機関で合計4回の上映会を実施するなど、活動に広がりが生まれています。

現在は、KINOミーティングが培ったワークショッププログラムのノウハウをさまざまな人が活用できるよう『シネマポートレイト やりかたハンドブック』を手がけているほか、2月末には「語り」と「交差」をテーマとした映画祭「語る、交差する、そして映画が生まれる。」の準備を進めていると話しました。

自分自身とルーツの異なる他者とかかわるときに感じた“ハードル”。そこを出発点に、KINOミーティングのきっかけとなるプロジェクトが始動した2020年から、実に6年もの間つながっていたKINOミーティングのメンバー。今後は映像作品とアーカイブを活用して発信していくほか、ワークショップ参加者が主導となるシェアプロジェクトも走り出しています。「また別々のかたちでここへ戻ってきたとしても、この成果をうまく活用できるよう活動を続けていきたい」と阿部さんは結びました。

この空気感を同心円状に広げていく|野村誠 千住だじゃれ音楽祭「キタ!千住の1010人」

続いては、「アートアクセスあだち 音まち千住の縁」(共催団体:東京藝術大学音楽学部・大学院国際芸術創造研究科、 特定非営利活動法人音まち計画、足立区)です。「アートアクセスあだち 音まち千住の縁」は、足立区・東京藝術大学・特定非営利活動法人音まち計画が主催となり、千住地域を中心に「音」をテーマとした市民とアーティストが協働するプログラムを複数まちなかで展開しています。

(写真左から)(写真左から)特定非営利活動法人音まち計画 事務局 岡野恵未子さん、ディレクター 吉田武司さん、事務局長 長尾聡子さん。みな、アートポイントのプログラムオフィサー経験者です

2025年度は、プログラムの一つ「野村誠 千住だじゃれ音楽祭」の一環として開催する「キタ!千住の1010人」を、共催事業として実施しました。「キタ!千住の1010人」は、ディレクターである作曲家の野村誠さんを筆頭に、国内外のゲストアーティストと、公募演奏者が一堂に介する大規模な屋外コンサートです。野村さんは今回のテーマに「誰も排除しないこと」を掲げ、「千住」になぞらえて、多様な「1010人」が演奏者となり、それぞれの楽器や身体で演奏に参加しました。

プログラムでは、本番までに公募演奏者と計7回のリハーサルを行ったほか、近隣の小中学校や区民団体とのワークショップの機会を設け、地域に根付いたイベントになれるよう働きかけました。

また「良くも悪くも内輪感がある」というプロジェクトの雰囲気を逆手にとって、内輪感を徐々に広げていけるよう「コアを作り、そこから同心円状に関係性を広げていこう」と、さまざまな方法で関係性づくりに挑みました。事業に共感した団体との連携や、コアメンバーが生まれるような事前リハーサルの進め方を試みました。結果的に顔の見える関係性が生まれ、プログラムの参加者も増加。本番やリハーサルで主体的にほかの参加者に働きかける熱心な参加者も現れました。

さらに今回はアートポイントの共催事業のひとつ「めとてラボ」とも協働。これまで、なかなか参加する機会のなかった参加者たちが演奏を楽しめるように、リハーサルから試行錯誤を続けました。

共催が終了する2025年度以降も「野村誠 千住だじゃれ音楽祭」は継続していきます。とくに、全7回のリハーサルが楽しかったという声が多く寄せられたため、リハーサルを「みんなで集まれる場」と位置づけて、いつしか来るかもしれない本番に向けて練習を継続していくと宣言しました。

記録が生んだつながりが、新しい記録を呼んでくる|カロクリサイクル

2022年度よりスタートし、各地に蓄積されてきた過去の災禍の記録(=カロク)を読み込み、現在に応用可能な知見を探すプロジェクト「カロクリサイクル」(共催団体:一般社団法人NOOK)。江東区大島の拠点「Studio 04」を中心に、実際に現地へ足を運び、記録から得た感触を、展覧会やワークショップなどの形式に落とし込んできました。

(写真左から)一般社団法人NOOK 代表理事 瀬尾夏美さん、事務局 関優花さん

今年度は展覧会「歴史の蟹:戦後80年を歩く」を開催しました。これまでに訪れた国内外さまざまな地域での「戦争」にまつわる語りや風景、残された記録をまとめ「戦争」と「戦後」を多角的に見つめ直す展覧会です。展覧会に参加したのは、カロクリサイクルのメンバーのほか、毎年夏に開催する、「記録から表現をつくる」ワークショップ参加者・経験者3名。リサーチの手法や興味の分野が重なるメンバーで、約1年のあいだ各地域での戦争の歴史などについて学びながら展示をつくりました。
また、これまで実施してきた「記録から表現をつくる」のワークショップには総勢50名が参加し、それぞれの視点で「記録から表現をつくれるようになった人がこの世界に50人生まれた」という意味でも、一つの成果を感じられるものになりました。

拠点形成の取り組みでは、大島四丁目団地の一角にあるStudio 04を通じて、拠点を管理運営するUR都市機構とも継続してコミュニケーションをとってきました。当初は立場が異なることで生まれていた文化事業へのまなざしの違いも、4年という歳月のなかで、この事業の価値や意義を共有できるようになってきたと瀬尾さんは語ります。その発展形として、「カロクリサイクル」の事務局である一般社団法人NOOKはURとさらに連携を進め、情報誌『住んでる』を制作。2026年1月に創刊号が発行されました。NOOKらしい地域の営みや語りをベースにした視点から、東京に住むさまざまな人々の暮らしに焦点をあてたメディアを編んで届けていきます。

さらに、地震被害を受けた能登半島を東京から応援するコミュニティ活動「のと部」も部員が150名に達したほか、月に一度、さまざまなトークゲストを招き、公式YouTubeチャンネルで配信する「テレビノーク」なども続けています。

カロクリサイクルやNOOKの活動が「プログラムでつながった人々の特技や知見が活用される場として機能してきている」ことに着目して、今後は、技術を共有する勉強会や読書会のようなかたちで“場”を開いていこうと画策中です。拠点のある団地に住む人々を対象としたプログラムにも挑戦していきたいと述べました。

協働から活動がふくらんでいく|めとてラボ

2022年度にスタートし、「視覚言語で生きる“私”」という考え方を大切にしている「めとてラボ」(共催団体:一般社団法人ooo)。ろう者・聴者関係なく、視覚言語(日本手話)で生きる人々の文化や、その文化と出会うことによって起こる変化をすくいあげるようなプロジェクトを手がけています。

(写真左から)一般社団法人ooo 根本和德さん、保科隼希さん、南雲麻衣さん

発表ではまず、「アーカイブプロジェクト」をとりあげました。手話やろう者の生活文化をどうアーカイブしたらいいのか、その手法と活用について模索するプロジェクトで、その一環で「ホームビデオ鑑賞会」を実施しています。今年度は、アートポイントの卒業団体との協働にも積極的に取り組みました。アーティスト・コレクティヴ・フチュウ(ACF)のメンバーが立ち上げ、自宅に眠る8mmフィルムの上映会を行っている「むさし府中アルキヴィオ」や、ホームムービーを用いて暮らしを紐解くプロジェクトをしていた「移動する中心|GAYA」のメンバーとつながり、協力を得ながらプログラムを発展させていきました。

また、「デフスペースリサーチ」では、ろう者の独自の行動様式やろう文化を生かした空間デザイン(=デフスペースデザイン)について考えるワークショップを開催しました。視覚言語は情報が「見える」位置にあることが、とても重要です。ワークショップでは建築関係の雑誌をコラージュしながら、ろう者が生きやすい暮らしのレイアウトについて考えました。

「つなぐラボ」では、「キタ!千住の1010人」との協働に取り組みました。これまで培ってきた手話通訳や情報保障の観点だけでなく、エンターテインメントとしても「とにかく誰もが目で見て自然と楽しめる環境や場所を作ろう」と、だじゃれ音楽の翻訳に挑戦しました。手話通訳は通常1名が情報を伝達しますが、当日はメンバー3名で身ぶり手ぶりを加えて、手話がわからなくても視覚的に楽しめる、新しいつなぎかたを模索しました。

「イマジナリー」プロジェクトでは、頭の中の想像を手話や身体表現で伝え合う体験型展示「イマジナリー!」を開催しました。「想像」を表現した4つの映像作品を受けて参加者が自分の身体を使って表現するプログラムや、参加者同士で表情や身ぶり手ぶりでコミュニケーションをとり合うゲームなどを企画・実施しました。展示期間中はろう者のガイドも常駐し、手話がわからない人もジェスチャーで、この場に参加できるよう工夫しました。

2025年度を振り返って「さまざまな団体とつながって活動していくと、そこからさらに次へとつながる好循環が生まれる」と、共催団体同士の横のつながりから、活動の広がりを実感しためとてラボ。来年度は広報・PRに力を入れて種を蒔きながら、企画の初期段階からの協働にチャレンジしたいと語りました。「つなぐラボ」で得た手応えをさらに発展させていくべく、「音まち」チームとも次に向けた相談をはじめているそうです。

卒業団体のこれまでと、新しい仲間のこれからも

会場にはアートポイントの卒業団体で、2024年度より東京都・区市町村連携事業に取り組んでいる「アーティスト・コレクティヴ・フチュウ(ACF)」の事務局メンバーも駆けつけました。

NPO法人アーティスト・コレクティヴ・フチュウ 事務局長 新井有佐さん

前回のジムジム会にホスト役として登場したACF。府中市・アーツカウンシル東京とともに「共生社会」をテーマに取り組んできた2年間の連携事業も、今年が最終年度です。「最初から共生社会のモデルになるような場をつくろうとしていたわけじゃなかったんです」と新井さんが述べるように、ACF自身も共生社会とはなにか、プログラムのなかで出会った人々から学び、影響を受けながら、自治体と一緒にそのあるべき姿について模索していきました。

そこで得た感覚や知見を、ACFが発明してきたワークショッププログラムのなかに組み込むことで、結果としてろう者を含めた、さまざまな人たちとの豊かな時間が生まれたのではないかと、この協働の2年間を振り返りました。

(写真左から)建築設計事務所スタジオメガネ 代表 横溝敦さん、宮澤祐子さん

また、今年度からTokyo Art Research Lab(TARL)の枠組みでプロジェクトを開始させた建築設計事務所「スタジオメガネ」の横溝さん・宮澤さんも登壇しました。2018年に多摩ニュータウンの中心に位置する落合団地商店街に拠点「STOA」をオープンさせたスタジオメガネ。古本やキッチンスペース、駄菓子コーナーなど、地域の人々がゆるやかにかかわれるオルタナティブ空間を、アーティストやクリエイターと協働しながらまちなかで展開しています。

TARLでは、地図を見ると駅から向かって縦方向に開発されている多摩ニュータウンに「暮らしの横道」という横線を引きなおし、新しい側面からまちを見直すことで、このまちの暮らしや文化を捉え直すという試みを行い、マップを制作しました。今後、成果を引き継いで、地域での実践に移るべく、準備を進めています。

交差点からそれぞれの次の場所へ、アートプロジェクトのひと区切り

共催事業6団体と、卒業後も地域で精力的に活動を続けるNPO、そしてこれからプロジェクトをはじめるチームと、都内各地の仲間たちの現在地を確認しあったジムジム会。今回は、成果だけでなく、現場で走りながら考えた試行錯誤のプロセスや、そこで生まれ広がっていく関係性についても多く語られていたのが印象的でした。選考委員の方々からのコメントを、紹介します。

「隅田川 森羅万象 隅に夢」統括ディレクター 荻原康子さん

萩原さん:熱量や苦労した点、次にどこへ向かおうとしているのか直接うかがえてよかったです。プロジェクトの共通点として「関係性」や「コミュニケーション」という、かかわることにまつわる言葉が出てきていて、それぞれのやり方で共催期間中にかかわりしろのつくりかたを探って深めてきたんだなと思いました。そしてこれからも三者三様に、広がっていくんだろうなと期待しています。継続することの大切さを、各プロジェクトから感じました。

プランニング・ディレクター/リビングワールド代表 西村佳哲さん

西村さん:委員会ではいつもジムジム会の話題が出るので、いちファンとして今回実際に足を運べて嬉しかったです。必ずどんなものにも終わりがあります。そのとき、事業そのものが掲げていた目標に達しているかということ以上に、かかわった一人ひとりが育っているか、そして関係を結んだ線の数が増えているかということも大切なポイントです。そこから必ず次のものが生まれてきます。

アーティスト/京都市立芸術大学 学長 小山田徹さん

小山田さん:行政や公の性質を帯びた活動をするとき、必ずタイトルと目的がセットとなってプログラムはスタートし、行政はそれを一定の「成果」として受け取ることも多いです。しかし現場では、主目的ではないほうで、おもしろいことが起こっていたりする。副次的に起こることのなかにこそ大事なことが隠れている、これが本質だと思います。だからカロクリサイクルのように、社会の要請に自分たちのやりたいことをうまく擬態させて、いい活動を続けていってほしいですね。

文化政策研究者 太下義之さん

太下さん:スタジオメガネの小さな拠点をもって住区を結び直していくという着眼点が非常にいいですね。これこそがわたしたちが取り組んでいる東京アートポイント計画の原点なんじゃないかと思いますし、ひと区切りのタイミングで、もう一度こういう原点に回帰できるのは非常にいいことだと思います。

東京アートポイント計画は2009年よりはじまり、はや17年。これまでに63団体と50件のプロジェクトを連携・実施してきました。

閉会のあいさつをする東京アートポイント計画 ディレクター森司

そのなかでジムジム会は「交差点」のような場所でもありました。独自のテーマと手法で進むアートプロジェクトの事務局同士が、活動の足を一瞬だけ止めて、言葉を交わし、またそれぞれの行先へと戻っていく――。開催初期は事務局の悩みの種が話題にあがり、情報交換や励まし合う時間になっていました。そこからアートポイントのフェーズが進むにつれて、話題は徐々に、それぞれの活動報告が中心に。井戸端会議のような場から、肩を並べる事務局同士で現在地を確認する定期連絡の場へと変化していきました。

今年度のジムジム会も終わりを迎えますが、「ジムジム会」の経験は既に、都内各地で活動するアートプロジェクト事務局のメンバーそれぞれのなかに息づいているはずです。もし道に迷ったときは、ぜひジムジム会という「交差点」のことを思い出してみてください。解決のヒントは案外、“おとなりさん”がもっているかもしれません。

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