- 共催事業
カロク(禍録)をめぐる表現とネットワーク
各地に蓄積されてきた「過去の災禍の記録=禍録(カロク)」を読み込み、現在に応用するためのプロジェクト。災禍の歴史をたどり、地域の歴史を掘り起こし、それらに向き合う人々と出会い、話し合い、ワークショップや展示を通じて表現を行う場をつくることから、災間期をともに生きるためのネットワークづくりを目指している。





実績
東日本大震災以降、仙台を拠点として、災禍にまつわる記録を活用し、体験を語り継ぐための実践を行ってきた一般社団法人NOOK。2022年から活動拠点を東京に移し、これまで培ってきた知識や技術をいかし、災間期を生きるためのアートプロジェクト「カロクリサイクル」をスタートさせた。
2022年度は、「リサーチ」と「ネットワークの形成」を主軸として、事業発信やワークショップを実施。都内の災禍にまつわる歴史を探るため、東京都慰霊堂や都立第五福竜丸展示館など戦災や震災、水害等に関する施設への訪問やまち歩き、活動関係者へのヒアリングを行い、そこで得た気づきや考えをnote『カロク採訪記』で定期的に発信。ワークショップ参加メンバーも執筆に加わり、さまざまなネットワークが広がりつつある。オンライン番組『テレビノーク』では、各地の災禍のリサーチや記録活動に携わる担い手などさまざまなゲストを迎え、知見や技術を共有し合う場をつくった。これらのプログラムを各年度でも年間を通して実施し、2025年度までで『カロク採訪記』は26本の記事を発信、『テレビノーク』は38本を配信した。
また、過去の記録に触れたり、実際にリサーチや記録したりする活動を通して、新たな表現をつくるワークショップ「記録から表現をつくる」も開催した。絵画やテキストなどの記録物から表現を試みている実践者とフィールドワークを行ったり、参加者が関心のあるテーマを設定し、参加者が関心のあるテーマを掘り下げながらリサーチや制作を進め、記録から生まれる表現を探ったりすることに挑戦。2023年度からは参加者有志が、その成果を発表する展示も行ったが、これは2024年度、2025年度にも続き、参加者自身がチラシの作成に携わりイベントなども自主的におこなうようになっている。
そのほか、ふたつ以上の土地をオンラインでつなぎ、同時に映像や本などの資料を見て、ディスカッションを行う「カロク・リーディング・クラブ」や他団体と協働しながら江東区を中心とした災禍・防災・まちづくりに関する勉強会も実施しながら、対話を重ねるための場づくりと地域に根ざしたネットワークづくりを試みている。2023年度には東京と名古屋をオンラインでつなぎ関東大震災と伊勢湾台風の記録を読んで対話を行ったほか、「てつがくカフェ」を開催した。2025年度には、マーシャル諸島と佐渡島に暮らす同世代の二人による往復書簡『島しょかん通信』を実施。それぞれの島で生活を送りながら気づいたことを記録し、交換し合う形式で進められ、全10回の書簡をnoteに公開した。
2023年度からは江東区・大島四丁目団地内に構えた拠点「Studio 04(ぜろよん)」を中心に活動している。「窓」を巡る語りと写真で構成した展覧会「とある窓」では、公募で集まったリサーチャーは地域の人たちに話を聞き、文章にまとめ、展示用の冊子づくりまで行った。
2024年度に実施した展覧会「現代・江東ごみ百鬼夜行」では、区の歴史やごみに関する資料、新たに創作した物語などを展示。家庭のごみを持ち寄り「おばけ」をつくるワークショップを実施すると、会場にはこどもたちが制作した「ごみおばけ」が増えていった。展覧会の様子は江東区のLINEや情報番組などで地域の話題として取り上げられた。
2025年度には、東北、沖縄、広島、台湾、韓国、マレーシア、シンガポール、マーシャル諸島など、これまでに訪れた地域で聞いた戦争にまつわる語りや風景、残された記録をもとに、「戦争」と「戦後」を多角的に見つめ直すことを目的として、展覧会『歴史の蟹・戦後80年を歩く』を開催。戦争の終結後も続く社会的・歴史的影響を踏まえ、各地の資料や証言を編み直して展示し、来場者が記憶と記録を共有しながら対話と学びを深める場を創出した。戦後80年を生きる私たちが、過去の経験をいかに受け継ぎ未来へつなぐかを考える機会となった。また、本展は新たな取り組みとして「記録から表現をつくる」の参加メンバーとともに企画したもので、カロクリサイクルとしても新たな取り組みとなった。
開室日には、企画目当ての人だけでなく、近隣のこどもたちや外国籍の住民なども、本棚にある本を読んだり、おしゃべりをしたりするなど、さまざまな過ごし方をしている。
2026年度はアーツカウンシル東京の「拠点形成事業」として継続・実施する。
