わたしの、あなたの、関わりをほぐす〜共在・共創する新たな身体と思考を拓く〜

異なる感覚をもつ他者との新たなコミュニケーションの回路をひらく

わたしたちがコミュニケーションで用いる「言語」。口語や筆記文字のほかにも、視覚身体言語(手話)や触手話、点字、音声ガイドなど多様なコミュニケーションの手段が存在します。身体や感覚、思考の流れが違う世界を抱えながら、それでもともにあろうとするとき、そこにはさまざまな伝え方が発明されていきます。

2020年度に行なった「共在する身体と思考を巡って」を経て、「異なる感覚をもつ他者と、どうしたら新たなコミュニケーションの回路をひらくことができるのだろう?」という問いが生まれました。誰もが誰かの翻訳者であることを意識しながら「関係性のあり方」に着目し、一人ひとりの身体と記憶、言葉と感覚にまつわるディスカッションやワークショップ、リサーチを行います。

ナビゲーターは、手話を第一言語として用いてきた和田夏実(インタープリター)と、岡村成美(デザイナー)です。ゲストの南雲麻衣さん(パフォーマー/アーティスト)、藤本昌宏さん(ことばの研究者)、田畑快仁さん(触覚デザイナー)、太田琢人さん(武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科インテリア研究室 助手)と一緒に、自分自身の身体が何を考え、どのように他者と関係を紡ごうとしたのか。そして想いや思考を届けるためにはどのような方法があるのか、暗黙知をほぐすところからはじめます。

詳細

スケジュール

8月18日(水)
第1回 ガイダンス/自己紹介

8月22日(日)、29日(日)
第2回 ワークショップ 無意識の身体を意識する、ワークショップ 視覚身体言語の世界へ

ゲスト:南雲麻衣(パフォーマー/アーティスト)

9月12日(日)
第3回 ワークショップ 「恋」を翻訳する/触れる/伝え合う

ゲスト:藤本昌宏(ことばの研究者)

9月22日(水)
第4回 ワークショップ 秋の夜長に「恋の定義」を考える

ゲスト:田畑快仁(触覚デザイナー)

10月10日(日)
第5回 ワークショップ 触覚の世界に出会う/ともに歩く

10月31 日(日)
第6回 振り返り・ディスカッション・進捗共有

11月14日(日)
第7回 ワークショップ 「つくる⇄世界」に誘われる

ゲスト:太田琢人(武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科インテリア研究室 助手)

11月24日(水)、30日(火)
第8回 つくりながら考える「対話の広場」

12月5日(日) 、12日(日)、21日(火)、29日(水)
第9回 ディスカッション つくりたいものをときほぐす

1月10日(月)~2月10日(木)
第10回 クリエイション

2月11日(金・祝)〜13日(日)
第11回 展覧会『happening.』出会い・創発のための場をひらく

2月25日(金)・3月1日(火)
第12回 『happening.』振り返り会

3月6日(日)
第13回 振り返り会 「わたし」と「あなた」とスタディ1

進め方

  • メンバー全員での定例ディスカッションを月1~2回開催
  • 各回のディスカッションのあとに、自身の考えや問いを整理し、思考の変遷を記録するために作文(エッセイ、日記など)を書く
  • 希望に応じて、手話通訳や文字情報支援などの情報保障あり
  • コミュニケーションメディアの企画・開発では、必要に応じて制作サポートあり

会場

ROOM302(東京都千代田区外神田6-11-14-302[3331 Arts Chiyoda 3F])ほか

参加費

一般24,000円/学生16,000円

関連サイト

東京プロジェクトスタディ「わたしの、あなたの、関わりをほぐす 〜共在・共創する新たな身体と思考を拓く〜」ウェブサイト

ナビゲーターメッセージ(和田夏実)

関わりをほぐす

いつ、誰と、どこで、どんなふうに出会うのか。

日々誰かとすれ違い、出会いや協働の中で、その人らしさに触れ、その場でのわたしがうまれ、関係性の糸を編む。そこに関わりの種がうまれたとき、それを紡いでもいいし、種のままで置いておいてもいい。もしかするといつかどこかで、それは思いもよらない形で芽吹き、また紡がれるかもしれない。

スタディ1では、この「関係性の糸の在り方」に着目し、関係性を編んだり紡いだりするときの、身体や感覚や、そのときに何にあなたを記すのか、ということを考えてみたいと思います。

このスタディのナビゲーターであるわたしと岡村さんは、手話という言語をもちいる両親と、音声言語の社会のあいだで、視覚と音、身体と記号のあいだで、ゆらゆら揺れながら世界をつくってきました。日常の中で、伝え方の応用を繰り返していくことで、いろんな発見がありました。

家の2階にいても、別の部屋にいても、身体で話している家族の空気の揺れがうるさいほどに伝わってくること、手で話しているとき、その人自身がもつ記憶が溢れ出て像として視えること、ティッシュや軽い紙、ぬいぐるみを家族の視界に投げて振り向いてくれたときのつながった嬉しさ。

身体や感覚、思考の流れが違う世界で、共に在ろうとするとき、そこには様々な伝え方の発明がうみだされていきます。

本スタディは、この伝え方の発明を、身体と思考をほぐして、考えながらつくっていくことを目指しています。そのほぐし方のヒントを一緒に探るために、最初のゲストには信頼してやまない3名の方にお願いしました。手話する思考の身体、恋の解体、身体的境界はどこにあるのか。自分とは異なる身体や思考、言葉や触れること、そのまなざし。いつのまにか暗黙知となってしまっていることを、軽やかに崩して、ほぐすことから、共に在るための発明に取り組めたらと思います。

そして、自分にとってしっくりくるメディアや伝え方の発明を、衣服や造形、石や紙、様々な方法で取り組み、拓いていく場がこのスタディ1です。

あなた自身の身体が何を考え、どう他者と関係を紡ごうとしたのか。

そして想いや思考を届けるためには、どんな方法があるのか。

これから出会う皆さんと、共に揺れながら、新しい景色に出会えますように。

ナビゲーターメッセージ(岡村成美)

聞き手:嘉原妙(スタディマネージャー)

 

Q1.自己紹介をお願いします。

A1.岡村成美です。デザイナー、ディレクターとして活動しています。2018年に『LOUD AIR』(ラウドエアー)というブランドを立ち上げ、手話を第一言語に、ファッション、オブジェ感覚などを制作。さまざまなジャンルを通して社会実験しています。

Q2.「わたしの、あなたの、関わりをほぐす〜共在・共創する身体と思考を拓く〜」は、自分と異なる認識世界、感覚世界を持つ人々と共在・共創するコミュニケーションを捉え直したり、そのコミュニケーションを促進・拡張していくような方法を探ろうとしたりするスタディです。岡村さんにとって、「異なる感覚を持つ他者」との向き合い方で意識されていることはありますか? また、そのときにどのような難しさやハードルを感じますか?

A2.よく観察するようにしているかもしれません。必ずしも正しい接し方というものは存在しないですが、自分なりの愛のある向き合い方をこころがけています。

普段、手話という言語で話すことが多いですが、異なる感覚や世界を見ている人にものすごく興味が湧きます。なので、よく相手を観察しますし、会話します。ゲストの藤本昌宏さん(ことばの研究者)と何日か話すことがあったのですが、見えない世界を見ている藤本さんは、人の声をかたちで覚えているとそうで、わたしは「角の取れた少し厚みのある四角」だと教えてくれました。

嬉しくて、帰ってすぐに絵を描きました。自分の知らない視点から自分を見てくれたことに感動したのを覚えています。わたしは、向き合い方の難しさやハードルは感じません。みんな違うのでそれでいいかな、と思います。

Q3.参加申込の際にみなさんにもお尋ねしている質問です。身体とコミュニケーション、言葉と感覚、コミュニケーションメディアに関連することで、いま、岡村さんが考えていることを教えてください。

A3.わたしは普段、衣服やオブジェを制作していますが、わたしのつくる服はよく二度と同じ着方ができないとか、着物のようだと言われることが多いです。自分で着物を着ることがありますが、洋服とは違う頭と身体の使い方をする気がしていて、わたしの服もそれと同じように、完成しても着ることを考える衣服でありたいなと思っています。自分の身体と向き合って着ていく。みんな異なる身体と感覚を持っていること、展示に来ていただいた方に自由にまずは着てもらうと、こちらが気づけることがたくさんあります。制作に他者とのコミュニケーションは欠かせません。

わたしは普段一人で運営をしていますが、制作において様々な職人さんにお願いしています。一着にたくさんの人がかかわっている、着るときに少しでもそう感じられたら大事な一着になるんじゃないかと信じてつくっています。

Q4.スタディのメインビジュアルを見たとき、表裏一体な感じ、メビウスの輪のような不思議な印象を受けました。

今回のメインビジュアルは、もうひとりのナビゲーターの和田夏実さんと一緒に撮影に出かけたとお聞きしました。そのとき、お二人でどのようなことを話しながら撮影されたのですか?

A4.メビウスの輪、いいですね。このビジュアルは、2020SSと2020AWの『LOUDAIR』のコレクションの一部です。どちらも和田さんと一緒に、どのような身体の使い方や映し方にするか話しながら撮影したものです。和田さんには、モデルさんがどんな表情や身体の使い方をするかを、会話のなかで導いてもらっています。身体を柔らかくしたり、切ない心にしたり。

ファッションのルックは服がよく見える写真が多いですが、『LOUDAIR』は結ぶ指先や服から見える足などを捉えた写真をよく撮ります。

和田さんとは、普段から柔らかいところについての会話をしています。おいしそうな夕日、エロい建物、かわいい言葉など。日常のいいなと思うものをクローズアップしていつもわたしたち自身が会話して楽しみながら撮影しています。

Q5.最後に、参加者に向けてメッセージをお願いします。

A5.今回はじめてナビゲーターを務めさせていただくことが決まり、とても光栄です。みなさんとお会いして感じたことを、わたしもわたしなりに最後にかたちにしたいと思っています。さまざまな感覚を持つゲストをお呼びして、リラックスしたり、考えて考えて紡いだり、自分と向き合ったり。たくさん使って最後にかたちにしましょう。

何ごとにも興味を持ち、理解しようと努力できる人、目を見て、向き合って会話できる人に参加していただけたら、最高なものができるのではないでしょうか。

みなさんとご一緒できることを楽しみにしています。

伝える・わかるを考える Interpret○▲□

「手話通訳」の視点で、コミュニケーションを捉え直す

アートプロジェクトの現場では、誰かと何かをはじめようとするとき、考えや視点の違いを理解しながら、互いのイメージを擦り合わせ、つくり方を議論します。そこで起きるコミュニケーションは、「言葉」に限ったものではありません。むしろ、表情やしぐさ、声色、動き、間など身体を用いた非言語の領域が、日々のコミュニケーションに大きな影響を与え、支えています。

そうした観点に立脚し、2020年度に開催したプロジェクト「共在する身体と思考を巡って-東京で他者と出会うために」にて、ナビゲーターを務めた和田夏実(インタープリター)が、「手話通訳」に焦点を当てて、通訳環境の新たな手法開発を試みます。

手話通訳とは、「視覚身体言語」と「音声書記言語」という異なる言語体系とメディア(声や文字、身体など)をもつ言葉を、手話通訳者自身の身体を通して翻訳し、伝達するコミュニケーション技術です。手話通訳者それぞれの身体知を語らうことから、アートプロジェクトへのアクセシビリティや情報保障のあり方について考察を深め、今後のアートプロジェクトの運営に必要な視点を見出します。

アート・アーカイブ・オンライン

コロナ禍のアンケート調査をふまえた、アーカイブに関する映像コンテンツを制作

多くのアートプロジェクトでは、さまざまな人が集い、対話をしながら時間や場所を共有し、つくりあげていく手法がよくとられます。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大状況下で、その継続のあり方が議論され、アーカイブの重要性や、プロジェクトのオンライン対応の必要性が高まってきました。

そこで、アート分野における調査・研究に取り組むNPO法人アート&ソサイエティ研究センターの協力のもと、全国のアートプロジェクトにまつわる52団体に「アーカイブ運用」についてアンケート調査を行います。また、アーカイブに関するノウハウや活用方法の基礎知識をまとめた映像コンテンツ「エイ! エイ! オー!(アート・アーカイブ・オンライン)」を収録し、YouTubeで配信。これまでTokyo Art Research Lab(TARL)で研究してきたアーカイブの知見をいかして、オンラインでのコンテンツづくりを模索します。

詳細

スケジュール

1月29日(土)
第1回 イントロダクション

1月29日(土)
第2回 現状調査

2月12日(金)
第3回 アーカイブのプランニング

2月12日(金)
第4回 目録作成

2月19日(金)
第5回 デジタルデータの保存

4月30日(金)
第6回 オンライン・ヒアリング

会場

ROOM302(東京都千代田区外神田6-11-14-302 [3331 Arts Chiyoda 3F])

関連サイト

エイ! エイ! オー! YouTubeページ

メディア/レターの届け方 2020→2021

多種多様なドキュメントブックの「届け方」をデザインする

アートプロジェクトの現場では、さまざまなかたちの報告書やドキュメントブックが発行されています。ただし、それらの発行物は、書店販売などの一般流通に乗らないものも多いため、制作だけでなく「届ける」ところまでを設計することが必要です。

多種多様な形態で、それぞれ異なる目的をもつドキュメントブックを、どのように届ければ手に取ってくれたり、効果的に活用したりしてもらえるのか? 資料の流通に適したデザインとは何か? 東京アートポイント計画では、川村格夫さん(デザイナー)とともに各年度に発行した成果物をまとめ、その届け方をデザインするプロジェクトを行っています。受け取る人のことを想像しながら、パッケージデザインや同封するレターを開発します。

2020年度は成果物をひと箱に梱包ました。箱には各冊子から抜粋した、アートプロジェクトの現場で生まれた「ことば」を印刷しています。

詳細

進め方

  • 同封する発行物の仕様を確認する
  • 発送する箱の仕様や梱包方法の検討
  • 発送までの作業行程の設計
  • パッケージと同封するレターのデザイン・制作

Cross Way Tokyo 自己変容を通して、背景が異なる他者と関わる

メディアづくりを通して、自分とは異なるルーツをもつ人とかかわる

自分とは異なるルーツをもつ人とコミュニケーションをとろうとするとき、何かしらのハードルを感じる人は少なくないのではないでしょうか。さまざまな背景をもつ人々が暮らす東京では、誰しもが日々のなかで自分とは異なるルーツをもつ人々とすれ違っているはず。もしそうした人々とかかわりをもちたいと思ったとき、どのように関係性を築くことができるでしょうか。専門的な技術やイベントを介した出会い方だけではなく、それぞれの日常の延長線上で実践できることを考えたいと思っています。

文化人類学的なアプローチをもちながら、多岐にわたるデザインワークを行う阿部航太(デザイナー)をナビゲーターに、背景の異なる他者とかかわろうとするときに自身のなかでハードルとなっている要素とは何かについて向き合います。

ゲストに、海老原周子さん(一般社団法人kuriya代表、通訳)、金村詩恩さん(ライター/エッセイスト)、川瀬慈さん(映像人類学者)を迎え、レクチャーやフィードバックを受けつつ、インプットとアウトプットを重ねます。最終的に、各メンバーの関心や課題意識を軸にしたメディアの立ち上げを目指して、その過程で自身の思考を更新していくことを試みます。

詳細

スケジュール

8月22日(土)
第1回 自己紹介/ディスカッション わたしにとっての「移民」とは

9月5日(土)
第2回 レクチャー 移民を取り巻く構造を現場から学ぶ

ゲスト:海老原周子 (一般社団法人kuriya代表/通訳)

9月26日(土)
第3回 ディスカッション/ワーク ハードルを越えるための「態度」を探る

10月10日(土)
第4回 レクチャー/ワークショップ 上野のまちで、他者の存在に目を凝らす

ゲスト:金村詩恩 (ライター/エッセイスト)

10月24日(土)
第5回 ディスカッション/ワーク 身の回りの日常を他者の視点で捉え直す

11月14日(土)
合同共有会

11月21日(土)
第6回 レクチャー/ワークショップ メディアの構築性を学ぶ

ゲスト:川瀬慈 (映像人類学者)

12月5日(土)
第7回 分科会

12月19日(土)
第8回 ディスカッション/ワーク トライアル作品制作で得たもの

1月9日(土)
第9回 ワークショップ 原点に立ち返り、本制作への助走を開始

1月17日(日)~2月7日(日)
第10回 メディア制作 課題を潰しながら、制作のギアを上げる

1月31日(日)
合同共有会

2月27日(土)
第11回 メディア制作

ゲスト:金村詩恩 (ライター/エッセイスト)
川瀬慈 (映像人類学者)

3月28日(日)
第12回 8か月間の歩みを振り返る。そして5年後の自分へ

会場

ROOM302(東京都千代田区外神田6-11-14-302[3331 Arts Chiyoda 3F])ほか

参加費

一般30,000円/学生20,000円

関連サイト

東京プロジェクトスタディウェブサイト

ナビゲーターメッセージ(阿部航太)

このスタディの基本的な姿勢は、「自分が変わる」ことを楽しむことです。もちろん、とてもセンシティブなトピックに取り組むことになりますし、その過程で自分自身の未熟な部分に直面することにもなるでしょう。それでも自分が起点となり、他者と関わりながら変化していく豊かさを楽しんでいきたいと思います。

また、このスタディではさまざまな思考方法と出会うことで、自身の世界をとらえなおしてみることを試みます。座学だけではなく、外に出てまちを歩いたり、手を動かしたり、メンバーそれぞれの興味や特技を活かし、実践を重ねながら考えていきます。

このスタディのテーマは、海外に(も)ルーツを持つ人たちに対する私自身の迷いがそのまま反映されています。おそらく似たような思いを抱えている人もいるのではないでしょうか? メンバーの方々と一緒になって、悩み、考え、つくっていくことで、ここでの経験を言語的な理解だけにとどめず、日々の生活の中に落とし込んでいくことができたらと思っています。

スタディマネージャーメッセージ(上地里佳)

「移民」や「海外ルーツの人々」ということばをよく聞くようになり、わたし自身、日々の暮らしのなかで異なる文化や言語をもつ人々と場をともにする機会が増えてきているのを感じます。距離としては近づいているのに、コミュニケーションをとろうとするとき何か失礼なことを言ってしまうのではないかと悩んでしまう。相手を思うほどにコミュニケーションが億劫になりがちになる。その感覚をどう越えて、新たな関係性を築く一歩をつくっていけるのか、このスタディで探っていきたいと思います。

阿部さんのナビゲーターメッセージでも触れていますが、この問いは、わたしたちの日常生活が、多様で、複雑な、他者とのかかわりが満ちていることを再認識することからはじまるように思います。例えば、普段何気なく使っているものや食べているもの、ことばや技術など、自身の日常生活をつぶさに見てみること。これまでの歴史を学ぶことや、実践者の方々の話を聞いてみることなど。

そんな試行錯誤のなかで思考をやわらかくしながら、背景が異なる他者と出会い、関係性を築いていく態度や方法を探っていければと思います。最終的には「態度と実践方法」をまとめたメディアを立ち上げて発信することを通して、じんわりと自らを変容させていく時間を、わたし自身も含め、スタディメンバーとともにつくっていければと思います。

東京プロジェクトスタディ紹介映像

プロジェクト紹介映像

トーキョー・スカルプチャー・プロジェクト 2027年ミュンスターへの旅

コロナ禍の東京で、いま可能なパフォーマンスのかたちを見つけ出す

トーキョー・スカルプチャー・プロジェクトは、10年に1度の芸術祭「ミュンスター・スカルプチャー・プロジェクト」を参照しながら、「彫刻・パフォーマンス」をキーワードに2018年度からはじまりました。その後、2年にわたり「東京彫刻計画」というフィクションの設定を使って、まちなかの公共彫刻についてリサーチすることで「公共」について考えています。

そうしたなか、新型コロナウイルスの感染拡大が起きました。他者や社会に対してどのように接し、どのようにいるか。わたしたちの日々の「パフォーマンス」も、強制的に変化しました。「東京で何かを“つくる”としたら」という問いは、いままで以上に難しいものになったのではないでしょうか。

今回は、ナビゲーターの居間theater(パフォーマンスプジェクト)と佐藤慎也(建築家)とともに、現在の東京で、どのようなパフォーマンスが可能なのか、感染者数や情勢を鑑みつつ、オンラインと対面を織り交ぜて考えます。ゲストアーティストによるワークショップを通じてパフォーマンス・建築・彫刻・映像・サウンドアート・写真など、それぞれのつくり方に触れ、自分の手を動かします。最終的に「検査」をテーマにした小作品「パフォーマンス検査キット」の制作を行うことを目指します。

詳細

スケジュール

9月2日(水)
第1回 オリエンテーションと自己紹介 『トーキョー・スカルプチャー・プロジェクト』に向けて

9月27日(水)
第2回 遠足 すみだ向島EXPO 2020をめぐる

10月18日(日)
第3回 ワークショップ 空想地図をつくりながらつかむ都市のリアリティ

ゲスト:今和泉隆行さん(空想地図作家)

10月23日(金)~10月25日(日)
第4回 ワークショップ 「それ」以外をリサーチして、つくる

ゲスト:トチアキタイヨウ(ダンサー/振付家/演出家)

10月28日(水)
第5回 振り返りとディスカッション 「つくること」への思考を広げる

10月31日(土)~11月7日(土)
第6回 ワークショップ 一方的に音を受け取る「手段」を考える

ゲスト:大和田俊(アーティスト)

11月11日(水)
第7回 振り返りとディスカッション 「問い」をひらく、「トーキョー」を想う

11月14日(土)
合同共有会

12月11日(金)~12月13日(日)
第8回 ワークショップ デートをして、シナリオを書き、上演してみる

ゲスト:友政麻理子(現代美術家/映像作家)

12月16日(水)
第9回 振り返りとディスカッション 「デート」の振り返りと最後のクリエイションに向けて

1月22日(金)~3月7日(日)
第10回 クリエイション 変化する社会状況のなかでつくる

1月31日(日)
合同共有会

3月8日(月)~3月20日(土)
第11回 郵送上演 『パフォーマンス検査(キット)』

4月17日(土)
第12回 上演時間をつなぎあわせるような最後の振り返り

会場

ROOM302(東京都千代田区外神田6-11-14-302[3331 Arts Chiyoda 3F])ほか

参加費

一般30,000円/学生20,000円

関連サイト

東京プロジェクトスタディウェブサイト

ナビゲーターメッセージ(居間 theater +佐藤慎也)

このスタディは、「ミュンスター・スカルプチャー・プロジェクト」という10年に1度の芸術祭を参照しながら、彫刻・パフォーマンスというキーワードに据えて2018年から始まりました。2年にわたり「東京彫刻計画」というフィクションの設定を使って、街なかの公共彫刻のリサーチをおこなったり、「公共」について、そこから派生して「東京の工事」について考えたりしてきました。

そしてその過程で、パフォーミングアート(舞台芸術)と美術における「パフォーマンス」の境界線が融解していること、一方で、文脈やつくりかた・考えかたの部分では明らかに違いや差があることが、あらためて実感レベルでわかってきました。さて今年度はスタディの軸をどのようにしようかというところ、新型コロナウイルスの感染が拡大してきました。

“東京で何かを「つくる」としたら”。この問いかけは大きすぎて、いま、何かをつくるにも難しい気がします。さらには、昨年度の活動キーワードのひとつだった「公共」ということばも、いまのこの状況下ではやはり捉えきれない。

一方で、外出自粛の状況下では、これまでにあった(けれど見ていなかった、露呈していなかった)さまざまな社会的な問題が、浮き彫りになりました。私たちはあらゆる問題の最中にあって、これから、どのような目線で、何の・誰のために、どのような態度でつくっていくのか。居間 theaterは「パフォーマンスプロジェクト」ですが、じゃあいま、どんなパフォーマンス作品が可能なのだろうか……。

答えはすぐには出ないでしょうが、このプログラムはスタディですから、参加者のみなさんと一緒に試行錯誤を重ねて、考えていきたいと思います。

そしてそのために、今年度は何人かのアーティストにもお力を借ります。いくつかのジャンルのアーティストにお越しいただき、小さいワークをすることで、それぞれのアーティストのつくりかたを垣間見させていただく予定です。

もちろん、過去のスタディに参加していなくても全くかまいません。アーティストが何かをつくる過程を「知って」、自分で実際に手や頭や体を動かしながら、つくることを一緒に「やってみて」、その過程で得たなかでの問い、もやもや、発見などを共有して「考える」。そういう作業をやってみます。

そして、そういう小さい作業の積み重ねが、「東京」で何かを「つくる」ことに繋がると思うのです。

スタディマネージャーメッセージ(大内伸輔+村上愛佳)

パフォーマンスがやりにくい時代。彫刻が攻撃される時代。ナビゲーターたちが2017年にミュンスターで描いた夢は、こんな時代にどのような姿で立ち上がるのでしょうか?

既存のシチュエーションを飛び越えてきたナビゲーターが、変わりつつある東京の風景や人と向き合う姿に同行しましょう。

今回は居間 theaterと佐藤慎也さんに加え、4人のアーティストをゲストに迎えました。5回に渡るワークショップを通して、パフォーマンス・建築・彫刻・映像・サウンドアート・写真などさまざまなメディアに参加者たちは触れていきます。

変わりゆく世界、変わりゆく表現に立ち向かうナビゲーターの強い想いを側で感じ、自身のなかで生まれた新たな問いや発見を深めていきましょう。

東京プロジェクトスタディ紹介映像
スタディ紹介映像

共在する身体と思考を巡って 東京で他者と出会うために

非言語のコミュニケーションやその身体性について議論を深める

アートプロジェクトの現場では、誰かと何かをはじめようとするとき、考えや視点の違いを理解しながら、互いのイメージを擦り合わせ、つくり方を議論します。そこで起きるコミュニケーションは、「言葉」に限ったものではありません。むしろ、表情やしぐさ、声色、動き、間など身体を用いた非言語の領域が、日々のコミュニケーションに大きな影響を与え、支えています。

新型コロナウイルスの感染拡大を経たいま、互いに目を見つめ、相手の息づかいを感じ、何気ないしぐさを眺めながら話をする、そんな当たり前のことが気軽にできなくなりました。そうした状況だからこそ、あらためて「コミュニケーション」や「身体性」について考えられることがあるのではないでしょうか。

今回は、和田夏実さん(インタープリター)、南雲麻衣さん(ダンサー)、加藤甫さん(写真家)の3名のナビゲーターとともに、身体性の異なる人々の世界に触れ、「言葉だけではない」コミュニケーションのあり方について考えていきます。ゲストは、米内山陽子さん(劇作家/演出家/舞台手話通訳家)、田中結夏さん(舞台人/舞台手話通訳者/手話通訳者)、関川航平さん(美術作家)です。

詳細

スケジュール

8月23日(日)
第1回 ガイダンス お互いの顔が見えないまま「出会う」「ともにある」

9月13日(日)
第2回 ワークショップ わたしたちは本当に出会ったのだろうか

10月4日(日)
第3回 ワークショップ 撮る/撮られるから、他者の無意識に触れる

10月31日(土)
第4回 ディスカッション それぞれのもやもやから出会う

11月14日(土)
合同共有会

11月28日(土)
第5回 ワークショップ
フィクションを織り交ぜながら、自分の分岐点について書く

12月6日(日)
第6回 トーク 翻訳する身体と思考を巡って

ゲスト:米内山陽子(劇作家/演出家/舞台手話通訳家)
田中結夏(舞台人/舞台手話通訳者/手話通訳者)

12月20日(日)
第7回 トーク 既存の「自己紹介」の手前にあるものとは?

ゲスト:関川航平(美術作家)

1月10日(日)
第8回 ディスカッション わかりやすさ/伝わるはやさだけにとらわれない言葉を味わう

1月31日(日)
合同共有会

2月7日(日)
第9回 オンライン鑑賞 南雲麻衣のパフォーマンスから「フィクションを織り交ぜる」を考える

2月14日(日)
第10回 プレゼンテーション これまでの経験を表す

3月14日(日)
第11回 試作展示 誰にもなれない自分の身体に、一番近いコミュニケーションのあり方とは

進め方

  • メンバー全員での定例ディスカッション会を月1回開催
  • 各回のディスカッションのあとに、自身の考えや問いを整理し、思考の変遷を記録するために作文(エッセイ、日記など)を書く
  • 当面の間は、オンライン実施の予定だが、状況に応じてROOM302(3331 Arts Chiyoda内)で実施する場合がある
  • メンバーは、ROOM302にて自主活動を行うことが可能

会場

ROOM302(東京都千代田区外神田6-11-14-302[3331 Arts Chiyoda 3F])ほか

参加費

一般30,000円/学生20,000円

関連サイト

東京プロジェクトスタディウェブサイト

ナビゲーターメッセージ(和田夏実)

「他者と出会うこと。」まだ先行きの見えない、大きな変化の中で、私たちは互いにどんな風に出会い、どうしたらその人らしさを知ることができるのか、そんなとっても身近で、とっても壮大な実験に、ようこそ。

私は、コーダと呼ばれる両親がろうの聴こえるこどもとして生まれ、手話を第一言語にして育ちました。手話という手で空間に描くように構成される言語と、音や文字で線状に紡がれる日本語という音声言語。それぞれの間で、インタープレート(通訳)していく中で、こどもながら、全然伝わっていないのではないか?! という場面に数多く遭遇しました。それは言語自体の翻訳の難しさももちろんですが、温度や空気、気配といったその人らしさを構成するものを、誰かが介在して伝えることの難しさでもありました。

マスクや画面、透明のビニルシート。私たちを守り、隔てるもので、受け取りにくくなってしまったものが想像以上にたくさんあることに、日々驚いています。けれども同時に、それは今まで知らぬ間に受け取っていた、その人らしさがたくさんあったことに、気づいた機会でもありました。

南雲さんと直接会って手話で会話したり、実験したりしていた時に、ぽこっと生まれていた会話の空間(たぶんまんまるの空気の球みたいな形をしていたと思う)が、画面を介すると時間のズレや目線に気づけず、一緒にいる感覚がしないこと(四角くてガチッとした箱に入って、パラレルワールドの先の彼女に話しかけている感じがする)。会議で話し始めるタイミングをどうにもつかめず、「あっ、どうぞ。」という機会が増えたこと。そういえば、小さな頃、どうにも電話を信じることができなかった5歳の私は、何に恐れていて、何があったら信じることができたんだろう、と考えたりします。

ここは毎日の中のコミュニケーションの中に生まれるほんの少しの違和感について、みんなで話し合い考えることを目指した、プロジェクトスタディです。南雲さんの手話もダンスをも現すからだ、写真を撮ることと視覚的な会話について考えている加藤さん。3人と、スタディチーム、そしてこれから出会う、皆さんと。

ざらざらとした不思議に出会い、これは「リズム」の話かしら。「意識」の方向の話かしら。と考えたり、ともになんだろう、と悩み、ともに絵を描いたり、写真を撮ってみたらどうだろう! とつくったりする、そんな実験にご一緒できたら嬉しいです。

ナビゲーターメッセージ(南雲麻衣)

このコロナの影響で、私たちの身の回りのコミュニケーションが少し変化していきました。

第一にマスクをして会話することの困難さ。私の場合ですが、口元が見えなくても人工内耳を使用すれば大体聞き取れます。けれど、言葉を理解する前に、この人はどんな気持ちでこのことを言ったのかをその人の声色からは判断することができないことに気づきました。マスクの奥にある表情が隠れてみえないことにもどかしい気持ちでいます。

ちょっと難しい話をし始めるときに変な顔をする人や、言葉に迷っているときに口をパクパクさせる人など、言葉だけではないところ、その人の顔の表情からも、人間は無意識に情報を読み取っているのではないでしょうか。

これまで苦もなくコミュニケーションできていた人も、マスクやフェイスガードによって声が届かないことを実感することが増えたのではないでしょうか。サービス業では、接客中に身振りなどで伝えようとするパワーが以前より増してきたと思います。私は、マスクからのぞく笑顔に、目尻の皺に注目する癖が身についてしまいました(笑)。

第二に、テクノロジーの進歩により、手話という視覚言語にテクノロジーが追いついてきた感覚があります。巷で流行っているオンライン飲み会や遠隔講演会などは、コロナ禍以降から盛り上がりを見せています。また、手話がわからない人もわかるように字幕を付けるなど、当事者側から発信するアクセシビリティも見られるようになりました。リモートの手話講座はいつも満員だそうです。これまでなかったことでした。

手話とテクノロジーの相性の良さと便益性を発見できたのと同時に、手話という言語は身体をも伴う言語であることを、私のなかで改めて実感しています。オンライン上では、相手の身体がそこにないせいなのか、立体ではない二面の画面であるせいなのか、相手をマークして投げる会話のキャッチボールが、いつもよりうまくキャッチできず戸惑う感覚があります。それはまるで、全力疾走しながら、会話を受け止めている感覚になり、あとから疲労感と物足りなさを感じます。

コミュニケーションの以前に、一人一人の身体や表情がそこに「在る」というリアリティが、ある一定の期間に急速に薄れました。今はその状況を互いにシェアリングできたことで、これまで見えてこなかったものをなんとなく掴みかけているところです。それが一体なんなのか、一人でもやもやしているのではなく、スタディという名前を借りて参加者とともに探してみたい。みんなが同じ状況に立たされた「共在感覚」と一人ひとりの異なる身体を、しぼりだしながらも言葉にして記録し、後世に残すことに大変意味があるのではないかと思います。

インタープリターである和田夏実さんとは、何年も前から手話の先にある視覚身体言語の面白さや、感覚が異なる者の環世界など話し合って、ワークショッププログラムなどを作ってきました。私の手話を翻訳し、音声言語に伝える彼女のパーソナリティを信頼しています。バックグラウンドが違う私たちが二人三脚でやってきたこともこのスタディで発揮できたらと思います。

ナビゲーターメッセージ(加藤甫)

写真を撮っている時、僕には写したい「所作のポイント」みたいなものがあります。それはわかりやすい決定的瞬間的なものではなく、意識と無意識の中間くらいの、撮る側と撮られる側どちらかの主張が強すぎない、ちょうどいい塩梅の自我の入り方。そういうものを撮ることが僕は「写真」らしいと考えています。撮影者として、所作やたたずまい、人がただ居ることなどから感じる「なにか」。普段ファインダー越しに考えていることの正体っていったいなんなんだろう? ということをテーマに扱っていきたいと思っています。それは、「共存する身体」であったり、「他者」であったり、「コミュニケーション」を考えることに通じるはずです。

いま僕は、6歳になるダウン症の息子と暮らしています。

彼は発育が遅く、まだ言葉を話すことはできません。話せないけれどもちろん意思はあって、その意思の発し方は独特です。ジェスチャーや音、文脈などを使って伝えようとします。彼の発露を「どう受け」「どう返す」のか、僕自身も想像力を駆使しながら試行錯誤する毎日です。

彼らは「療育」と呼ばれる、発育の遅れを補うための訓練を受けています。社会で生きていくために、他人とコミュニケーションが取れるように。そこに立ち会い、息子の成長を嬉しく見ている反面、なぜ彼らはそのままでは生きていけないのだろうと思うことがあります。

「成長」ってなんだ? 社会に適応していくことばかりが「成長」なのだろうか?

コミュニケーションにおいて、発する側だけでなく受ける側のありようも、同じように大切な気がします。だから、このスタディでは身体と視覚を主な手がかりに、コミュニケーションの受け方についても考えていきたいと思っています。

スタディマネージャーメッセージ(嘉原妙)

思い立ってあの人に会いに行く、隣に座って、声色や表情、その人がまとう空気に触れながら話をきく。そういう当たり前のことが、こんなにも愛しいと感じていたんだと気づく日々です。2020年春から、わたしたちが目にする暮らしの風景は一変しました。マスク、ビニールシート、パーテーション、消毒液の香り、透明の膜で覆われた暮らしの風景は、人と人、人と社会の距離を物理的にも、心理的にも、どんどんと遠ざけていくようで心許ない気持ちになります。こんなにも遠ざかった者同士が、ちゃんともう一度出会うことができるのだろうか。そもそも、こうなるずっと前から、わたしたちは他者とちゃんと出会ってきていたのだろうか。分断の肌触りを日々体感しながら、そんな問いをわたしは抱えてぐらぐらと揺れています。

大げさかもしれないけれど、人は、生きていく上で、自分とは異なる他者の存在を知ること、また、そこにその人が「いる」んだと実感することが、自分自身の存在を確かめる拠り所となっているのではないかと思うようになりました。そして、その人とコミュニケーションを重ね、互いの考えや感覚の違いにハッとして、ときには喜んだり、悲しんだりしながら、自分と他者との距離感を知っていくこと。この人と人との「間」の部分に触れようと手を伸ばすふるまいは、他者と出会うときのヒントになるんじゃないか、そんなことをぐるぐると考えています。

今回、インタープリター(通訳者/解釈者)の和田夏実さん、ダンサーの南雲麻衣さん、写真家の加藤甫さんという3名のナビゲーターと共に、「身体」を軸に「コミュニケーション」にかかわる実験・実践を重ねていくスタディを立ち上げました。ナビゲーターの3名、運営チーム、そして参加者のみなさんと、それぞれの異なる身体性や眼差しを交換したり、ときにはぶつけ合ったりしながら、わたしたち一人ひとりの「間」にある「何か」への触れ方、ふるまい、他者を想像する新たな方法やとっかかりのようなものを一緒に探ってみたいと思っています。

東京プロジェクトスタディ紹介映像
スタディ紹介映像

アーカイブを再生(play)するーデメーテル・ステーション

アートプロジェクトの持続的な「組織」のあり方を記録から探る

アートプロジェクトの持続的な運営に必要な「組織」のありようとは、どのようなものでしょうか? これまでの実践のアーカイブを紐解き、声を集め、いまに必要な視点の抽出を試みます。

1990年代に萌芽し、2000年代以降に広がった日本各地のアートプロジェクトや芸術祭。2020年代を迎える現在、数十年にわたって継続してきた「組織」の事例も増えてきました。今回は、2019年に設立30年を迎えたP3 art and environment(1989年設立、代表:芹沢高志)に焦点を合わせ、その活動の転換点となった、とかち国際現代アート展「デメーテル」(2002年)に着目します。

2018年度の「アーカイブを『再』起動する」の議論をもとに、関係者へのアンケート、インタビューなどを通して、当時の記録の収集と読み解きを行い、この一連の活動を架空の編集室「デメーテル・ステーション」と見立て、P3が所蔵する「デメーテル」の運営資料を起点に議論を重ねます。

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進め方

  • アーカイブ資料の調査
  • 組織の沿革を整理
  • 関係者インタビュー
  • 関係者のエピソードを収集

記憶・記録を紡ぐことから、いまはどう映る? 見えないものを想像するために

他者の記憶やまなざしを借りて、まちの姿を捉え直す

社会状況や人の営み、ときには自然災害によって移ろいゆく土地の風景。いま、わたしたちが目にしている風景は、どのような出来事の変遷を経て、形成されてきたのでしょうか。それをなぞろうと、他者の記憶や記録というフィルターを通して風景を眺め直したとき、「いま」の捉え方はどのように変容するでしょうか。

今回のゲストは、記録の少ない敗戦直後の東京の姿を探るため、米軍やアメリカ人個人によって撮影された写真を収集し、アメリカが見た「Tokyo」と日本人にとっての「東京」の差異に着目して研究を行ってきた佐藤洋一さんと、東日本大震災や戦争の記憶をもつ人やまちを訪ねたりしながら、そこで出会った風景や言葉を記述することで土地の記憶の継承に取り組む瀬尾夏美さんです。

いま見ている風景や知っている出来事について、視点をずらしたり、他者の記憶やまなざしに出会ったりすることで、わたしたちが生きる時代について考えることにつながりうるのか。史実からはこぼれ落ちてしまう声を、どのように継承しうることができるのか。このような問いを抱えながら、お二人が重ねてきた実践、そこから生まれた問題意識や可能性について話を伺います。

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会場

ROOM302(東京都千代田区外神田6-11-14-302[3331 Arts Chiyoda 3F])

参加費

無料

ゆるやかに混ざり合う社会はどう生まれる? 「違い」を「出会い」に変換する

多文化な暮らしをつくるための文化・芸術の可能性を考える

電車のなか、コンビニ、レストラン……日々の暮らしのなかで、異なる文化や言語をもつ人々と場をともにする機会が増えてきています。国境を越えて移動する人々が増加し、多様な文化が同居するいま、「移民」としてではなく、同じ土地に暮らす「わたしたち」となるには、どのような視点やアクションが必要なのでしょうか。

今回のテーマは、「違い」を「出会い」に変換する。「移民」の若者を異なる文化や国をつなぐ可能性をもった存在として捉え、多文化の居場所づくりの研究・実践を重ねる徳永智子さんと、多文化が混在する兵庫県新長田において、それぞれの文化をかけ合わせながら展開するパフォーマンスなどに取り組む横堀ふみさんをお迎えします。

「違う」ことで分断されたままにするのではなく、「新たな発見や出会い」としてつなげるための実践とは何か。同じ土地に暮らし、これからの社会を担っていく一人として、多様性を受け止めながら、これからの暮らしをつくっていくための文化・芸術の可能性を探ります。

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会場

ROOM302(東京都千代田区外神田6-11-14-302[3331 Arts Chiyoda 3F])

参加費

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