他者の記憶やまなざしを借りて、まちの姿を捉え直す
社会状況や人の営み、ときには自然災害によって移ろいゆく土地の風景。いま、わたしたちが目にしている風景は、どのような出来事の変遷を経て、形成されてきたのでしょうか。それをなぞろうと、他者の記憶や記録というフィルターを通して風景を眺め直したとき、「いま」の捉え方はどのように変容するでしょうか。
今回のゲストは、記録の少ない敗戦直後の東京の姿を探るため、米軍やアメリカ人個人によって撮影された写真を収集し、アメリカが見た「Tokyo」と日本人にとっての「東京」の差異に着目して研究を行ってきた佐藤洋一さんと、東日本大震災や戦争の記憶をもつ人やまちを訪ねたりしながら、そこで出会った風景や言葉を記述することで土地の記憶の継承に取り組む瀬尾夏美さんです。
いま見ている風景や知っている出来事について、視点をずらしたり、他者の記憶やまなざしに出会ったりすることで、わたしたちが生きる時代について考えることにつながりうるのか。史実からはこぼれ落ちてしまう声を、どのように継承しうることができるのか。このような問いを抱えながら、お二人が重ねてきた実践、そこから生まれた問題意識や可能性について話を伺います。
詳細
会場
ROOM302(東京都千代田区外神田6-11-14-302[3331 Arts Chiyoda 3F])
参加費
無料
多文化な暮らしをつくるための文化・芸術の可能性を考える
電車のなか、コンビニ、レストラン……日々の暮らしのなかで、異なる文化や言語をもつ人々と場をともにする機会が増えてきています。国境を越えて移動する人々が増加し、多様な文化が同居するいま、「移民」としてではなく、同じ土地に暮らす「わたしたち」となるには、どのような視点やアクションが必要なのでしょうか。
今回のテーマは、「違い」を「出会い」に変換する。「移民」の若者を異なる文化や国をつなぐ可能性をもった存在として捉え、多文化の居場所づくりの研究・実践を重ねる徳永智子さんと、多文化が混在する兵庫県新長田において、それぞれの文化をかけ合わせながら展開するパフォーマンスなどに取り組む横堀ふみさんをお迎えします。
「違う」ことで分断されたままにするのではなく、「新たな発見や出会い」としてつなげるための実践とは何か。同じ土地に暮らし、これからの社会を担っていく一人として、多様性を受け止めながら、これからの暮らしをつくっていくための文化・芸術の可能性を探ります。
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会場
ROOM302(東京都千代田区外神田6-11-14-302[3331 Arts Chiyoda 3F])
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住まいの空間や暮らしの仕組みをデザインして、家族を「ひらく」
月日を重ねるごとに、家族と「わたし」の関係性も、生じる問題も変わります。さらに家族を取り巻く社会すらも刻一刻と変わっていくなかで、自分たちなりの「家族のカタチ」を探ろうとするとき、どのような家のあり方や地域コミュニティとのかかわり方があるでしょうか。
あらためて「家族」を「一つの共同体」として捉え直そうとすることで、多くの人にとって自分ごとになっていく(あるいは、なっている)育児や介護に、例えば、家族のなかに「他者」を介入させるような、新しい視点を得られるのではないかと考えています。
今回のゲストは、自らの家族に生じた育児・介護の課題から端を発し、兵庫県新長田で介護サービス付きシェアハウス「はっぴーの家ろっけん」を運営する首藤義敬さん。そして、人々がゆるやかにつながる空間づくりを手がけ、プライベートでもその視点をいかして家族関係を編み直しているいわさわたかしさんです。「家族のカタチ」という、答えのない状況に向き合うお二人の思考と実践について、アートプロジェクトにおけるコミュニティや拠点形成のあり方と重ねながら話を伺います。
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ROOM302(東京都千代田区外神田6-11-14-302[3331 Arts Chiyoda 3F])
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建築やグラフィティの視点から、都市空間の「公私」の境界線を探る
アートプロジェクトはまちなかで行うことが多いため、「公共性」について考えさせられる場面に遭遇することがあります。日常生活のなかで「公」的な場所と「私」的な場所は、対比関係にあるものとして捉えがちです。しかし、「公=みんなのもの/場所」として捉えることで、「公」を一人ひとりの「私」が重なり合い、立ち上がっていくものとして考えることができるのではないでしょうか。
今回のゲストは、まちでの一人ひとりの行動や視点に変化を促すことで、都市の印象や公共空間に対する気づきにつなげるユニットmi-ri meter(アーティスト/建築家)と、ブラジルのグラフィテイロに関するフィールドワークを通じて「まちは誰のもの?」という問いをもち、文化人類学的アプローチから「公共性」を考える活動を行なっている阿部航太さん(デザイナー/文化人類学専攻)です。この2組に「公」と「私」との関係性について、それぞれの実践やリサーチについてお伺いします。
「公」と「私」の境界線とは何か。また、公共的な空間と自分との間に、居心地のよい距離感をつくるために必要な思考や身体性とは、どのようなものでしょうか。ゲストの思考と実践から、そのヒントを探ります。
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ROOM302(東京都千代田区外神田6-11-14-302[3331 Arts Chiyoda 3F])
参加費
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公共空間で音楽を展開するために、専門家の視点を交えて手法を探る
公共空間で「音楽」を展開するために、必要な条件とは何だろうか? 音楽が頻繁に用いられるアートプロジェクトやイベントをオープンな空間で実施する上で、周辺環境とどのように共生することができるだろうか?
東京プロジェクトスタディ2018「Music For A Space 東京から聴こえてくる音楽」でナビゲーターを務めた清宮陵一(VINYLSOYUZ LLC 代表/NPO法人トッピングイースト 理事長)が、公共空間で音を出す際の条件について、まちづくり、医療、法律、宗教、サウンドにまつわる5名の専門家へインタビューを行います。
飯石藍さん(公共空間プロデューサー)、稲葉俊郎さん(医師)、齋藤貴弘さん(弁護士)、近江正典さん(僧侶)、ZAKさん(サウンドエンジニア)の多角的な視点を介して得た現場に応用可能な論点を、公開編集会議を行って一冊にまとめます。
多種多様なドキュメントブックの「届け方」をデザインする
アートプロジェクトの現場では、さまざまなかたちの報告書やドキュメントブックが発行されています。ただし、それらの発行物は、書店販売などの一般流通に乗らないものも多いため、制作だけでなく「届ける」ところまでを設計することが必要です。
多種多様な形態で、それぞれ異なる目的をもつドキュメントブックを、どのように届ければ手に取ってくれたり、効果的に活用したりしてもらえるのか? 資料の流通に適したデザインとは何か? 東京アートポイント計画では、川村格夫さん(デザイナー)とともに各年度に発行した成果物をまとめ、その届け方をデザインするプロジェクトを行っています。受け取る人のことを想像しながら、パッケージデザインや同封するレターを開発します。
2019年度は成果物をひと袋にまとめパッキングしました。
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進め方
- 同封する発行物の仕様を確認する
- 発送する箱の仕様や梱包方法の検討
- 発送までの作業行程の設計
- パッケージと同封するレターのデザイン・制作
家族から戦争体験を聞き、「継承」についての展示と対話の場をつくる
もっとも身近な「家族」という存在。自分が生まれる前の時代や出来事について、語られたことや聞けたことがある一方で、近しい間柄だからこそ話せなかったことや、知りたくても聞けなかったことがあるかもしれません。
今回は、2018年に開催した「部屋しかないところからラボを建てる」の実践編として、家庭内で行われてきた戦争体験の継承について考える展示と対話の場をつくります。東日本大震災以降、仙台を拠点に土地と協働しながら記録をつくる一般社団法人NOOKの瀬尾夏美(アーティスト)、小森はるか(映像作家)、磯崎未菜(アーティスト)が、「部屋しかないところからラボを建てる」の参加メンバーからなる「かたつむり」とともに、第二次世界大戦を経験した祖母の話を息子と孫が聞くための場をつくり、その様子を映像化します。
先の戦争が終わってから74年が経ち、戦争を体験した人々が少なくなっていくことは、体験者の声を介して、世代を超えた語り継ぎの機会がなくなっていくことでもあります。東京大空襲を経験した東京において、戦争体験者の子や孫と企画者が「いまあらためて何を聞きたいか」を話し合い、体験者本人へのインタビューを行うことで、新たな語りの生成の実践と、「家族内継承」という営み自体の検証を行い、これからの時代の「継承」について思考を深めます。
*このプロジェクトは、「厄災に向き合う術(すべ)としてのアート」の一部として実施しました。
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進め方
- 展覧会づくりに向けた議論
- 家族間でのインタビューの場づくり
- 展覧会と関連イベントの企画・制作
展覧会
日時:2019年9月19日(木)〜23日(月・祝)13:00~18:00
会場:ROOM302(東京都千代田区外神田 6-11-14-302 [3331 Arts Chiyoda 3F])
関連イベント
9月21日(土)14:00〜15:00 ギャラリーツアー
本展企画メンバーが解説を行うツアー。
ナビゲーター:柳河加奈子(かたつむり)、磯崎未菜(NOOK)
定員:15名
15:00〜18:00 公開会議「これからの継承を考える」
本展のテーマとなった出来事の「継承」について、かたつむりとNOOKのメンバーが集い、企画の実践を通して考えたことから、今後の活動について会議する。
定員:15名
9月22日(日)15:00〜17:00 てつがくカフェ
「家族に聞けること、聞けないことってなんだろう?」をテーマに、対話を通してそれぞれの考えを深める。
ファシリテーター:八木まどか(かたつむり)
定員:15名
関連サイト
東京プロジェクトスタディウェブサイト
9つのアートプロジェクトの実践から学び合う事務局の互助会
アートプロジェクトは、企画や広報、経理などを担当する事務局の人々によって支えられています。しかし現場は人手が不足しており、時間がないなかでやり方を模索し、それぞれが悩みを抱えながら活動しているのが多くの現状です。
「事務局による事務局のためのジムのような勉強会」(通称:ジムジム会)は、テーマも実施エリアも携わる人々もさまざまなアートプロジェクトの工夫やこだわり、葛藤を共有しながら、互いに学び合うための場です。
2019年度は「アートプロジェクトの広報とは?」をテーマに、ウェブサイトやSNS、本のつくり方や使い方について議論を深めました。
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スケジュール
9月20日
第1回 “広報”をやめる/ウェブサイトのつくりかた・つかいかた
10月16日
第2回 リズムを刻む/定期レターのつくりかた・つかいかた
ゲスト:加藤甫(写真家)
11月22日
第3回 打って出る/NPOの届けかた・つなぎかた
ゲスト:入谷佐知(認定NPO法人D×P)
12月18日
第4回 手段を選ぶ/SNSのつかいかた・つづけかた
ゲスト:モリジュンヤ(株式会社インクワイア)
1月8日
第5回 編み集める/本のつくりかた・つかいかた
ゲスト:川村庸子(編集者)
中間支援にまつわる言葉を語らい、深める
文化事業には時間が必要です。土地のことを知る。人と人との関係を築く。いろんな方法を試す。そうして、ゆっくりと醸成される価値があります。とはいえ、そこに至るまでの道のりは、さまざまな人と「ことば」を介して事業の意義を共有し、一つひとつの実践を積み重ねていくことが求められます。
2009年に始動した「東京アートポイント計画」は2018年に10年目を迎えました。都内の47のNPOとともに38件のアートプロジェクトを展開してきました。プロジェクトの立ち上げから複数年をかけて、年間を通した持続可能な活動を支援すること。それぞれの活動には、専門スタッフであるプログラムオフィサーが伴走し、個々の事業だけでなく、中間支援の仕組みづくりも行ってきました。
今回は、東京アートポイント計画の10年にわたる試行錯誤をまとめた『これからの文化を「10年単位」で語るために―東京アートポイント計画2009-2018―』に登場する「ことば」について語り合います。ゲストとともに議論を深め、時間をかけて文化事業を育むための新たな「ことば」づくりも試みます。
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スケジュール
2019年9月10日(火)
第1回 徹底解説! 東京アートポイント計画 中間支援の仕組みを分解する
東京アートポイント計画とは何か? アートプロジェクトの現場では何が起こっているのか? よりよい実践につなげるために必要なこととは? これまでの実践から見えてきた、さまざまな「条件」を、約200冊のドキュメントを紹介しながら、共有します。
2019年9月17日(火)
第2回 文化政策の流れを比べてみる 「10年単位」で起こること
文化事業の背景にある文化政策の流れを意識しながら、東京アートポイント計画の10年の歴史を読み解きます。そして、他地域の文化政策の歩みと重ねてみることで時間をかけることで生まれる実践の可能性をディスカッションします。
ゲスト:鬼木和浩(横浜市文化観光局文化振興課 施設担当課長(主任調査員))
2019年9月25日(水)
第3回 アーティストは何をつくっているのか?
アーティストは、一体、何をつくっているのでしょうか? 複数年の時間をかけることで現場では何が起こるのか? 新しい手法や未見の表現を扱う「創造」活動を軸に掲げる文化事業において、どのように「アート」を語っていけばよいのか? 現場の風景から紐解きます。
ゲスト:アサダワタル(文化活動家)
会場
3331 Arts Chiyoda 3F ROOM302(東京都千代田区外神田6-11-14-302)
参加費
各1,000円
ナビゲーターメッセージ(佐藤李青)
今年の春に『これからの文化を「10年単位」で語るために―東京アートポイント計画2009-2018―』(以下、本書)を発刊しました。わたしたちが2009年から取り組んできた「東京アートポイント計画」の10年の試行錯誤から獲得した知見を収録した一冊です。今回のレクチャーシリーズは本書の「ことば」を使い倒そうという企画です。
本書はわたしたちの軌跡を伝えるだけでなく、それが各地の実践の後押しになることを願ってつくりました。すでに取り組んだ実例として使ってもらうことで、これからの実践に踏み出す足掛かりにしてほしいと思っています。
たとえば、
実践するとこんなこと起こるんです。なので、やってみましょう!
持続的な活動にはこんなものが必要なんです。なので、用意しましょう!
成果が出るには、このくらい時間がかかるんです。なので、続けましょう!
そういう会話が本書を介して生まれてほしい。今回のレクチャーシリーズにかける想いも同様です。
レクチャー第1回は、大内伸輔(アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー)がスピーカーを務めます。東京アートポイント計画の設立当初から事業を担ってきた大内より、本書のセクション1「中間支援の9の条件」を中心に、普段はなかなか見えにくい東京アートポイント計画の中間支援の仕組みやアートプロジェクトの現場をつくる条件にまつわる「ことば」をひらきます。本書に収まり切らなかった実例も交えてお送りします。
第2回は、ゲストに鬼木和浩さん(横浜市文化観光局文化振興課 施設担当課長(主任調査員))をゲストにお迎えします。本書のセクション2「これまでの歩み2008→2018」を使い、東京アートポイント計画の歩みを文化政策とのつながりから振り返ります。鬼木さんより文化政策の流れや横浜での実例を伺いながら、文化事業と文化政策の影響関係や紐づけるための「ことば」を探ります。
第3回は、アサダワタルさん(文化活動家)をゲストにお迎えし、ご自身が携わるアートプロジェクトを立ち上げ、動かすときに、どのような「ことば」を使っているのかをお伺いします。本書に収録した東京アートポイント計画の現場の「アート」や「アーティスト」にも触れながら、「創造」を軸とした文化事業の語り方を深めます。
各回で募集はしていますが、全回通しで受講いただくのがおすすめです。参加者のみなさんとも「ことば」を交わす時間を取りたいと思っています。ぜひ、ふるってのご参加をお待ちしております!
以下のテキストも活用していく予定です。
福島の復興公営住宅の住民さんの、思い出の曲を奏でるバンドメンバー募集!
アーツカウンシル東京では、2011年7月から東京アートポイント計画の手法を使った被災地支援事業「Art Support Tohoku-Tokyo(ASTT)」を行ってきました。その一環で、2016年からアサダワタルさん(文化活動家)を中心に、福島県復興公営団地・下神白(しもかじろ)団地に暮らす住民さんに、まちの思い出とメモリーソングについて話を聞き、それをラジオ番組風のCDに編集し、団地内限定で200世帯へ一軒一軒届けるプロジェクト「ラジオ下神白」を行っています。
今回は、住民さんたちの「メモリーソング」のバック演奏をする「伴走型支援バンド」のメンバーを募集します! 団地を訪問し、メモリーソングとエピソードを聞き、都内のスタジオで練習。2020年3月までに住民さんの合唱を支えるバンドになることを目指します。
遠く離れた土地で、音楽を通じて一人ひとりの「わたし」と出会い、かかわっていくことは可能なのか。東京にいながら、東北の災禍とのかかわり方を探ります。
*このプロジェクトは、「厄災に向き合う術(すべ)としてのアート」の一部として実施しました。
詳細
スケジュール
- 7月下旬に都内でメンバー顔合わせ
- 8月に団地への最初の訪問
- 月1回、都内でスタジオ練習
- 団地集会場で開催するクリスマス会にて、初演予定
参加資格
- ギター、ベース、キーボード、管楽器などの演奏経験が多少なりともあること(ただし、技術は問いません)
- 福島県いわき市内の復興公営住宅に通えること(1泊2日を3回程度)
- 都内で定期的にスタジオ練習ができること(平日夜や土日に、月1回3時間程度)
- 懐メロに関心があること
- 性別や年齢不問