東京アートポイント計画の概要
アーツカウンシル東京が実施する「東京アートポイント計画」は、地域社会を担うNPO(※1)とともに、社会に対して新たな価値観や創造的な活動を生み出すためのさまざまな「アートポイント」(※2)をつくる事業です。
当たり前を問い直す、課題をみつける、異なる分野をつなぐ――そうしたアートの特性を活用し、実験的なアートプロジェクトをとおして、個人が豊かに生きていくための関係づくりや創造的な活動が生まれる仕組みづくりに取り組んできました。
また、そうした活動が継続するための環境整備にも力を入れてきました。東京アートポイント計画の現場にある課題や視点に伴走し、時代に応答した担い手づくりを続けてきた事業「Tokyo Art Research Lab」では、さまざまなプログラムやウェブサイトを運営。また、東京アートポイント計画の参加団体が広報やネットワークづくりなどの実務的な課題について共有する「事務局による事務局のためのジムのような勉強会(通称:ジムジム会)」、アートプロジェクトに関心を寄せる人々が集うイベント「Artpoint Meeting」などを実施。2024年には、これまでの手法やネットワークを活かすかたちで「東京都・区市町村連携事業」の所管が移行・統合しました。
そして2026年3月31日をもって、東京アートポイント計画は事業を終了します。また、アートプロジェクトを実践する人々のためのリサーチプログラムとして2011年にはじまり、現場の課題や社会状況に応答しながら学びの場をひらいてきたTokyo Art Research Labも事業を終了します。
※1:NPO法人のほか、一般社団法人、社会福祉法人など非営利型の組織を含みます。 ※2:アートポイントとは、アートプロジェクトが継続的に動いている場であり、その活動をつくる人々が集まる創造的な拠点のこと。アーティスト、運営スタッフ、ボランティア、参加者などさまざまな担い手により「アートポイント」は形成されると考えています。
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東京アートポイント計画のことはじめ
東京アートポイント計画は、東京都の文化政策として提案された「千の見世」を事業化するかたちで2009年に始動し、これまで約17年にわたり都内各所で63団体と50の事業を実施してきました
2019年3月に発行した『これからの文化を「10年単位」で語るために ―東京アートポイント計画 2009–2018― 』には、以下のようにあります。
東京アートポイント計画が発足したきっかけは、2006年に設立された「東京芸術文化評議会(以下、芸文評)」での議論にさかのぼる。芸文評は、東京都における文化振興のための施策に対する政策提言を行う知事の附属機関であり、招致が決定したオリンピックにおける文化プログラムの検討がはじまっていた。そこで話されていたのは、いかに多様な「文化の結び目」をつくり、世界に発信していくかということだった。当時2012 年に開催が決定していたロンドンオリンピックでは、「文化プログラム」を重視。スポーツを文化・教育と融合させ、生き方の創造を探求するというオリンピック精神に則り、文化プログラムによって未来に「レガシー(遺産)」を残すために何ができるかが求められていた。そして、都が国際オリンピック委員会(IOC)に対して提案した「立候補ファイル」に盛り込まれていたのが〈千の見世〉プロジェクトである。 このアイデアをまとめたのが、東京藝術大学音楽学部音楽環境創造科熊倉純子研究室だった。都と東京都歴史文化財団からの受託研究を受け、都市をまるごと使った〈千の見世〉という事業案を提出。これは、「見世」や「屋台」のような交流拠点が東京のあちこちに出現し、「千の結び目」をつくるという、新しい文化事業の姿を描いたものだった。世界を意識したからこそ、日本的なありようを考案したのである。熊倉は「1964年の東京オリンピックが首都高などのインフラをまちに残したように、今度は文化のインフラを残したい」という想いがあったと語る。 また、市民とアーティストをつなぐ専門スタッフの重要性、継続して文化事業を展開していくための恒常的な事務局設置の必要性、将来的に「アーツカウンシル」の雛形になることにも言及されていた。2008年8月の芸文評の部会資料では「単なる文化事業から、総合政策としての文化へ。文化政策及び文化事業に係る経費を、単なる経費としてではなく、“未来社会への投資”と位置づけ」と明確に書かれている。 そして、この構想を東京都と東京都歴史文化財団が「東京文化発信プロジェクト」の一環として事業化することになったのである。 出典:『これからの文化を「10年単位」で語るために ―東京アートポイント計画 2009–2018―』p.73「これまでの歩み 2008→2018 オリンピックと文化、世界の流れ」)
また、同書には「千の見世」の基本実施計画案の一部が掲載されています。
出典:『これからの文化を「10年単位」で語るために ―東京アートポイント計画 2009–2018―』(p.74-75「[参考資料]東京藝術大学音楽学部音楽環境創造科熊倉純子研究室「はじめに」『受託研究 市民参加交流型アートポイント計画事業構築に向けた実施計画(平成20年度)〈千の見世〉基本実施計画案』2009年3月31 日」)
事業年表
2006年度
「東京芸術文化評議会」が設立され、2007年3月13日に「第1回 東京芸術文化評議会」が開催。オリンピック文化プログラムの検討が開始。第1期東京芸術文化評議会には、専門委員として、太下義之、熊倉純子らが参加。
2008年度
財団法人東京都歴史文化財団に、「東京文化発信プロジェクト室」が設立。
2009年度
東京文化発信プロジェクト室にて、東京都の文化政策として提案された<千の見世>を事業化し、「東京アートポイント計画」として始動。
2009年6月10日「第6回 東京芸術文化評議会」では、2016年東京オリンピック・パラリンピック招致のための立候補ファイルに掲載された「千の結び(Tokyo Thousands Knots)」について紹介があり、そのパイロット事業として「東京アートポイント計画」が取り上げられ、評議会の場で森司が事業説明をおこなう。
学生とアーティストによるアート交流プログラム(通称、SAP)を開始、2010年度まで実施し、その後の東京アートポイント計画につながる事業が生まれる。
2010年度
アーツ千代田3331に、レクチャーやアーカイブなどの拠点「ROOM302」を開室。アートプロジェクトを実践する人々のためのリサーチプログラム「Tokyo Art Research Lab(TARL)」が始動し、「つくる」「支える」「評価する」「伝える」「記録する」の5つのカテゴリーで、10講座を開催。
2011年度
東京アートポイント計画の手法を活用した東日本大震災の復興支援事業として「Art Support Tohoku-Tokyo(ASTT)」が始動。
2014年度
TARLの一環として「思考と技術と対話の学校」を開校。アートプロジェクトを動かすためのマネジメントの基礎を3年かけて学ぶ「基礎プログラム」を軸とした、通年のスクールプログラムを開始。
2015年度
東京文化発信プロジェクト室が「アーツカウンシル東京 」と組織統合し、東京アートポイント計画は「芸術文化創造・発信事業」として、TARLは「人材育成事業」として位置づけられた。
2016年度
東京アートポイント計画において、新規共催団体の公募を開始。
TARLではアートプロジェクトを担うすべての人のための「使えるラボ」を目指し、ウェブサイトをリニューアル。
2017年度
TARL「思考と技術と対話の学校」はコンセプトを新たに「“動かす人”から“紡ぐ人”の育成へ」とし、アートプロジェクトを他者に伝えるためのことばや体験づくりの技術を養うプログラムを開催。
2018年度
TARL「思考と技術と対話の学校」にてアートプロジェクトをつくる技術に力点を起き、「レクチャー」「ディスカッション」「スタディ」シリーズを始動。その中心的なプログラムとなる「東京プロジェクトスタディ 」では、“東京で何かを「つくる」としたら”という投げかけのもと、ナビゲーターと、公募で集まったメンバーがチームとなりスタディ(勉強、調査、研究、試作)を重ねる。
2019年度
これまで活動してきた知見をまとめた書籍『これからの文化を「10年単位」で語るために−東京アートポイント計画 2009-2018−』を発行。
2020年度
2021年3月、被災地支援事業「Art Support Tohoku-Tokyo(ASTT) 」が終了。
ROOM302に映像の収録・配信ができるスタジオ「STUDIO302」を開設。
2021年度
2022年2月、東京アートポイント計画にて、社会情勢への応答や来るべき社会への準備として「多文化・共生・コミュニケーション」「災間・減災・レジリエンス」という2つのテーマを設けて新規共催団体の公募を実施。
2022年度
TARL「思考と技術と対話の学校」の後継として、ウィズコロナ時代以降のアートプロジェクトに応答した学びの場づくりや、これから必要な技術について考える研究・開発、資料やプロジェクトの公開を軸としたウェブサイトの改修などに取り組む。
2023年3月、約10年にわたり東京アートポイント計画の活動拠点として運営してきたアーツ千代田3331「ROOM302」が閉室。
2023年度
TARLをアーツカウンシル東京の人材育成事業から、東京アートポイント計画のインキュベーション機能として位置づける。それに伴い、東京アートポイント計画とTARLのウェブサイトを統合。
2024年度
2024年4月、東京アートポイント計画のこれまでの手法やネットワークを活かすかたちで、2023年度からはじまっていた「東京都・区市町村連携事業」の所管が移行・統合。
2025年1月、「年表を作る 2011年以降のアートプロジェクトを振り返る」の一環として、2022年度より制作を進めてきた年表をTARLウェブサイトにベータ版として公開。
2025年度
2025年11月、ユーザビリティの向上や、プラットフォームとしての機能を拡充すべくTokyo Art Research Labウェブサイトを「tarl.jp」としてアップデート。
2026年3月、「東京アートポイント計画」および「Tokyo Art Research Lab」が事業を終了。
共催事業一覧/変遷
東京アートポイント計画は2009年度から2025年度までの約17年間に、63団体と50件のプロジェクトを連携・実施してきました。
* 年間約100件のプログラムを実施 * 東京都・区市町村連携事業を含む
>共催事業の変遷はこちら(PDF)
共催団体数(2009~2025年度)|63団体
NPO :46
基礎自治体 :12(豊島区、荒川区、練馬区、足立区、小金井市、三宅村、国立市、西東京市、中野区、府中市、国分寺市、港区)
大学 :1(東京藝術大学音楽学部・大学院国際芸術創造研究科)
財団 :4(公益財団法人せたがや文化財団 生活工房、公益財団法人くにたち文化・スポーツ振興財団、公益財団法人港区スポーツふれあい文化健康財団、公益財団法人仙台市市民文化事業団)
共催事業数(2009~2025年度)|50事業
Tokyo Art Research Lab受講生数|約2000名
企画アドバイザリー委員会(2009~2014年度)
太下義之(2009~2014)
青木淳(2009~2014)
港千尋(2009~2014)
熊倉純子(2009~2010)
藤浩志(2009~2010)
小山田徹(2011~2014)
帆足亜紀(2011~2014)
外部評価委員(2011~2023年度)
芹沢高志(2011~2023)
帆足亜紀(2015~2016)
共催団体評価・選定会議委員(2015~2025年度)
太下義之(文化政策研究者)
小山田徹(アーティスト/京都市立芸術大学 教授)
西村佳哲(プランニング・ディレクター/リビングワールド 代表)
荻原康子(「隅田川 森羅万象 墨に夢」 統括ディレクター)
竹久侑(水戸芸術館 現代美術センター 芸術監督)
負担金(予算)の推移
>事業費の変遷はこちら(PDF)
東京アートポイント計画ディレクター/歴代プログラムオフィサー
ディレクター
歴代プログラムオフィサー(所属年度) 総勢27名
大内伸輔[おおうち・しんすけ/2009~2023]
渡辺真也[わたなべ・しんや/2009]
石田喜美[いしだ・きみ/2009~2010]
橋本誠[はしもと・まこと/2009~2011]
坂本有理[さかもと・ゆり/2010~2021] ※2022年度から社会共生担当
佐藤李青[さとう・りせい/2011~2025]
芦部玲奈[あしべ・れいな/2011~2016]
井尻貴子[いじり・たかこ/2012]
長尾聡子[ながお・さとこ/2012~2013]
熊谷薫[くまがい・かおる/2012~2013]
三田真由美[みた・まゆみ/2013~2015]
吉田武司[よしだ・たけし/2014]
古屋梨奈[ふるや・りな/2015]
中田一会[なかた・かずえ/2015~2017]
嘉原妙[よしはら・たえ/2015~2021]
上地里佳[うえち・りか/ 2016~2020]
村岡宏太[むらおか・こうた/2017~2018]
岡野恵未子[おかの・えみこ/2018~2022]
村上愛佳[むらかみ・まなか/2019~2021]
雨貝未来[あまがい・みき/2020~2021]
櫻井駿介[さくらい・しゅんすけ/2021~2025] ※2024年度から財団固有正規職員
小山冴子[おやま・さえこ/2022~]
川満ニキアン[かわみつ・にきあん/2022~2025] ※2026年度から社会共生担当
入江彩美[いりえ・あやみ/2021~2023]
大川直志[おおかわ・ただし/2024~]
岡本絢子[おかもと・あやこ/2024]
若山萌恵[わかやま・もえ/2025~]
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