「デジタル・アーカイブ」の現状
執筆者 : 佐藤李青
2017.01.24
2017.01.24
執筆者 : 佐藤李青
編集者の齋藤歩さんを講師にお迎えし、メディア編集/制作に関する視点や技術のレクチャーを実施しました。2014年度に制作した『思索雑感』を題材に、アーツカウンシル東京のスタッフと東京アートポイント計画の共催団体メンバーを対象として論点の整理や共有を行いました。2回に分けて実施したレクチャーでは、自分たちが報告書や記録集を制作することを想定し、他のスタッフと仕事を共有するための要点を出し合いました。ここでは、その要点を集約した「レクチャーまとめ」をご紹介します。
以下、強調されている項目は、参加者のなかで特に重要な項目として挙がってきたものです。
目的とイメージの共有
・業務発注者は制作物の前提、目的を整理し、編集者への依頼内容をまとめる。
・業務発注者は制作物の目的・納品日(納品先)・部数・文字数・版型・製本・イメージを編集者へ伝え、制作物の方向性・イメージ(コンセプト・使い方・機能など)を議論し、すりあわせ(共有)をする。つくるメディアの目的は全ての工程につながる(デザインルール、校正ルール、版型、発行方法など)。
・読者のアクションを考える(書き込みができるなど)。
・紙にすることでどう残るかを考える。流通を検討する。商業ベース(ISBN付与)か、学術ベースか。
・イメージの共有として「参考書籍」等を提示する。(関係するメンバーなどの)文脈をつくる。デザイナーのアイディアをふくらませるネタ(発想のタネ)を用意。モチベーションを高める工夫をする。
・打合せは確認事項などをペーパー1枚にまとめてのぞむ。
スケジュールと連絡系統
・スケジュールを確認。各工程の担当者をおさえる。スタートからゴールまで、いつ、誰が、何をするのかが一目で分かるようにする。
・スケジュール表は、作業(行動)レベルで記述することでイメージを共有しやすくなる。
・スケジュール感と体制(信頼関係)は深く関係する。
・座組の確認。誰が誰に連絡をするか。自分の担当を認識する。役割分担と連絡体制の確認と共有。
・連絡系統は1対1の関係をつくる(三角形を避ける)。
・各担当者(デザイナーなど)の選定。制作物の目的や特性に合致した人材、会社か確認(得意分野、過去作のリサーチ、見積もりなどから)。
工程表と素材整理
・全工程、それぞれの担当者を確認できる工程表があると、全員でゴールを共有できる。重複作業などを防げる。いつ空けておかなくてはいけないか確認できる。
・対応可能スケジュールを共有するとよい。お互いの日程を押さえ、動けない日程も共有。
・コンテンツの見せ方の確認をする。(構成含む)
・素材の整理はユニークIDをナンバリングする(ファイル名のつけ方)。写真と原稿が混在しないように整理。情報を使いやすく整理する。
・写真素材の整理をし、使用可か、法的なことも含め確認する。写真は撮影者と被写体双方の権利に注意する(著作権と肖像権)。
デザイナーとのやりとり
・デザイナーへの依頼時、イメージをきちんと伝えすりあわせをする。
・デザイナーなどは気に入った本のクレジットから探すのも手。
・ラフをもとにイメージのすりあわせの議論をする。制作物に適した構造をつくり、関係者間で共有する。
・関係者間でそれぞれの過去の仕事と関係づけるのもモチベーションを高めるのに有効。誰とつくるか、何をつくるかにストーリー(文脈)をつくり与える。
・仕様書は簡単でもつくる。台割もつくる。
・ページのフォーマットが出来たら、デザイナーに素材提供。
・デザイナー、印刷会社とはどのような形式(フォーマット)でデータを渡すのがよいか確認。データの全体像を伝える。
・初めての相手とは素材の一部を試しに送付してみるのも有効。
・デザイナーへの素材提供時は、プレーンテキスト(WordはNG)がよい。
・ほぼ仕様が固まったら一度早めに印刷所へ連絡。見積もりとスケジュールの確認。
・仕様の全体像が見えたところで、早めにデザイナーに仕様書をつくってもらう(スケジュールを参考に)。
・一次情報(発信者)に全てあたる(どんなに慣れている言葉だとしても、どんなに小さくものでも細かく、怠らない)。事実確認(固有名詞、日時、場所)。まずはウェブを活用する。
・ダブルチェック。校正方針の確認。表記ルールの整理。
・校正はとりまとめてデザイナーに渡す(編集者を介さず、著者からデザイナーへ直接渡さない)。
・校正戻しのタイミングで、口頭で確認したほうがよければ、関係者と会ってミーティングを行う。
・原稿整理でテキストのクオリティを上げておくことは、とにかく大事。対談やインタビューの場合、初校時にテキストデータも渡すとお互いにストレスは少ない。小見出しもつけておくと編集意図を汲んでもらいやすくなる。
・著者の個性をどう捉えるかを検討。表記のクセ、ブレにどこまで手をいれるか。原則、原稿(テキストや図版)を勝手に変えてはいけない(原稿は著作物)。
・原稿の催促は1週間前、3日前の2段階くらいで連絡。遅れそうならあらかじめ言ってもらえるように。
・デザインは好き嫌いでは判断しない。目的に立ち戻る。
・著者校正の直しが多いときは、スケジュールを確認しながら再校正を検討する。
・関係者のスケジュールの共有。不在状況の確認と確認日をの把握に努める(遅れない意識づけ)。予定通りに進行することが相互に緊張関係をもたらし、予定通りに進行する。進行が遅れると全体のモチベーションが下がる。担当者別・作業内容を細かく分類。ひとつまづき=1週間。
・編集の意向に沿わなければ、意を決して作家(寄稿者)へのリライトも要請する。
・赤字がぶつかったら編集判断としてよいか事前に共有しておく、もしくは優先順位を決めておく(基本的には著者を尊重)。
・印刷の設計図として、台割は必ずつくる。16ページ/8ページ単位で考える。
・印刷会社の選定(見積もり、仕様、部数、紙、カラー)。
・印刷会社のスケジュールを確保する。印刷会社は先におさえる=工場のラインをはやめに確保。年末・年度末は混雑するので要注意。
・紙を手配するタイミングも重要。
・製本を、どこまでこだわるか、こだわれるか議論する(工夫の意義)。コスト(単価)を見ておく。デザイナーのこだわりは正しいこだわりかを見極める。目的に沿ったこだわりなのか、ただの付加価値なのか、常に目的に立ち戻る。
・単価にあった説明・理由を用意しておく(妥当性の確認)。公的な事業の場合はコストに応じた説明が必要。
・素材・資料のフォルダ名称は、はじめを数字にしておくと検索しやすい(どのプロジェクトでも発生する要素は同じ番号にする。見積もり、台割り、進行表など)。
・色校はデータ上で見つけられない印刷の事故を防ぐ。
全体
・(進行上)どうやったらメンバーのストレスが減るか?を常に考える。
・デザイナーへの配慮(優しさ)が必要。
以上です。年度末に向けて記録集や制作物をつくる機会が増えると思います。その作業の確認と共有に、ぜひ、ご活用ください。
執筆:佐藤李青(アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー)