アートアクセスあだち 音まち千住の縁

「縁(えん)」を育み、つないでゆく

足立区制80周年記念事業をきっかけにはじまったアートプロジェクト、通称「音まち」。人とのつながりが希薄な現代社会において、アートを通じて新たな「縁(えん)」を生み出すことを目指している。下町情緒の残る足立区千住地域を中心に、市民やアーティスト、東京藝術大学の学生たちが協働して「音」をテーマとしたプログラムを複数実施している。

実績

2011年度、音まちのプログラムのひとつとして、無数のシャボン玉でまちの風景を変貌させる「Memorial Rebirth 千住」(通称、メモリバ)が千住の「いろは通り商店街」からはじまった。アーティストの大巻伸嗣のみならず、事務局スタッフや市民、足立区職員や東京藝術大学の学生たちが一丸となって共創するメモリバは、それ以降も毎年会場を変え、かかわり手を広げながら区内各所で実施している。現在ではメモリバを軸に多くの市民メンバーが立ち上がり、シャボン玉マシンを扱うテクニカルチーム「大巻電機 K.K.」や、オリジナルソング「しゃボンおどりの歌」を演奏や踊りで彩る「メモリバ音楽隊」や「ティーンズ楽団」など、メモリバ本番には100名を越えるスタッフが集まることも。音まちが目指す、現代における新たな「縁」が広がり続けている。

音まちではほかにも、作曲家の野村誠を中心にだじゃれをきっかけとした新たな作曲方法を開発・演奏する「千住だじゃれ音楽祭」や、日本に暮らす外国ルーツの人々の文化を知る「イミグレーション・ミュージアム・東京」など、それぞれのプログラムでアーティストと市民チームによる自主的な活動が続いている。2018年には、戦前に建てられた日本家屋を文化サロン「仲町の家(なかちょうのいえ)」としてひらき、近隣住民や観光客、学生、アーティスト、クリエイター、事務局メンバーたちが交流する場が生まれた。

2021年度には、音まち10年間の活動で育まれた「縁」の集大成ともいえる「千住・人情芸術祭」を開催。これまでも音まちで活躍してきた2人のアーティスト、友政麻理子とアサダワタルによる作品発表に加え、プロアマ問わず市民から出演者を公募した「1DAYパフォーマンス表現街」を企画。音まちの各プログラムを担う市民メンバーや、仲町の家の常連さん、足立区内外で活動する初参加者まで、約50組のパフォーマーが集結し、めいめいの表現を繰り広げた。

東京アートポイント計画との共催終了後も、NPOと足立区、東京藝術大学との共催は続き、まちなかでのアートプロジェクトを通じた「縁」づくりに取り組み続ける。2024年度からは区市町村連携のモデル事業として「Memorial Rebirth 千住」を共催で実施している。

※ 共催団体は下記の通り変遷

  • 2011~2013年度:東京藝術大学音楽学部、特定非営利活動法人やるネ、足立区
  • 2014~2015年度:東京藝術大学音楽学部、特定非営利活動法人音まち計画、足立区
  • 2016年度~:東京藝術大学音楽学部・大学院国際芸術創造研究科、特定非営利活動法人音まち計画、足立区

関連動画

大巻伸嗣「Memorial Rebirth 千住 2017 関屋」
2018年度 アートアクセスあだち 音まち千住の縁(ショートバージョン)
2018年度 アートアクセスあだち 音まち千住の縁(ロングバージョン)

小金井アートフル・アクション!

市民がアートと出会い、心豊かな生き方のきっかけをつくる

小金井市芸術文化振興計画推進事業として、小金井市をフィールドに、市民がアートと出会うことで、心豊かな生き方を追求するきっかけをつくることを目的とするプロジェクト。芸術文化によるまちづくりの検討や市民が事業にかかわる場づくりを行う。

実績

小金井市芸術文化振興計画をきっかけとして、2009年度に小金井アートフル・アクション!が始動する。東京アートポイント計画では、2011年度から数々のプログラムを共催した。2012年度からは市内の学校を中心に学校連携事業に取り組んできた。年間2〜3校を対象に、授業づくりの段階から先生たちと議論を重ね、市民スタッフとともに運営した。授業で使う材料をともに考え、道具の使い方を学び、さまざまな技術を試すことから、教科を横断したプログラムづくりがなされた。

2012年度から2016年度にかけて、保育園でのプロジェクトも行われた。壁画制作や音楽、演劇の手法を用いたワークショップを実施。年を重ねるごとに父母会などの保護者を中心とした運営体制に移行していった。2017年度からは70歳以上のメンバーと映像制作を行う「えいちゃんくらぶ(映像メモリーちゃんぽんクラブ)」を開催。「市民」を対象とする事業として、未就学児や高齢者など通常のプログラムでは手の届きにくい層の人たちとのかかわりづくりを意識的に行ってきた。

2015年度からは文化活動家のアサダワタルをゲストディレクターとして「小金井と私 秘かな表現」を3年かけて実施した。最終年には公募で集まった「市民メディエイター」とアサダが、それぞれに小金井の「記憶」をテーマに遠足のコースをつくる「想起の遠足」を行った。2019年度からは、詩人の大崎清夏と振付家/ダンサーの砂連尾理をゲストアーティストに迎え、参加者の市民とともにまちなかでの企画を立案し、実施する「まちはみんなのミュージアム」に取り組んだ。いずれのプログラムも公募した市民が用意されたプログラムの参加者となるだけでなく、アーティストの手法を学びながら、時間をかけて、ともに試行錯誤を重ねて表現まで行うことが特徴である。

オーストラリア在住のアーティスト・呉夏枝(オ・ハジ)とは「越境/pen友プロジェクト」を2019年度に開始した。日本在住の外国にルーツをもつ「おばあさん」とノートを使った文通を重ね、その記憶をたどり、2020年度にはプロジェクトに伴走した参加者とともに「おばあさんのくらし 記憶の水脈をたどる展」を開催した。

複数年の時間をかけて、異なるプログラムが連動しながら進んだ事業の軌跡やかかわった人たちの声は『「やってみる、たちどまる、そしてまたはじめる」小金井アートフル・アクション!2009-2017活動記録』にまとめられている。また、東京アートポイント計画との共催の最終年には、事務局長の宮下美穂の対談や書き下ろしを収録した『氾濫原のautonomy|自己生成するデザイン』を発行。これまでの実践での気づきは、2021年度から始動した「多摩の未来の地勢図」へ引き継がれている。

※ 共催団体は下記の通り変遷

  • 2011年度:小金井アートフル・アクション!実行委員会
  • 2012~2020年度:小金井市、特定非営利活動法人アートフル・アクション

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TERATOTERA

ボランティアが創るアートプロジェクト

古くから多くのアーティストや作家が暮らし、若者の住みたいまちとして不動の人気を誇るJR中央線高円寺駅から国分寺駅区間を舞台にしたプロジェクト。2010年、Art Center Ongoing 代表の小川希を中心に始動。毎年、社会に応答したテーマを掲げ、まちなかで「TERATOTERA祭り」を開催し、現在進行形のアートを発信した。また、ボランティアスタッフ「テラッコ」による企画・運営を通じて、アートプロジェクトの人材育成にも取り組む。

実績

毎年開催した「TERATOTERA祭り」は、ボランティアスタッフ「テラッコ」の実践の場として、 2010年度より吉祥寺駅エリア、 2013年度より三鷹駅エリアで実施し、毎回ドキュメントブックを発行した。事業開始当初よりアートプロジェクトのノウハウを通年で学ぶ連続講座として 「アートプロジェクトの 0123 (オイッチニーサン)」を開講。座学と現場での実践を連動させながら、アートプロジェクトへ参画する人材の裾野を広げている。

2016年度からは、東南アジア諸国で活躍する若手アーティストを招聘し、地域と連携しながら作品制作から発表までを行う 「TERATOSEA (テラトセア)」がスタート。東南アジアからコレクティブのあり方を学び、自分たちのエリアでの実践に取り組んだ。

2018年度にはテラッコの歴代コアメンバー16名によるアート活動を支える組織「Teraccollective (テラッコレクティブ)」 を設立し、「TERATOTERA祭り」のテーマ設定から運営までを主体的に行った。また、武蔵野クリーンセンターや武蔵野プレイスなど、 武蔵野市による施設連携の要望に応えて、アートプログラムを共催するなど、公的な文化事業の担い手となった。

2020年度のTERATOTERA祭りは、「Collective ~共生の次代~」をテーマに、東南アジアと日本から6組のアート・コレク ティブを東京に招聘する予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、オンラインにて開催。この状況下でそれぞれのコレクティブがどのように過ごし、何を考え、どのような 作品を発表するか、その話し合いの様子をYouTubeで公開し、 作品ができるまでのプロセスの情報発信にも力を入れた。

そして、2020年には任意団体であった「Teraccollective」が一般社団法人化。東京アートポイント計画との共催終了後も「アートプロジェクトの 0123」など、TERATOTERAの事業を引き継いで展開している。

※ 共催団体は下記の通り変遷

  • 2009~2012年度:一般社団法人TERATOTERA
  • 2013年度〜:一般社団法人Ongoing

関連動画

TERATOTERA祭り2018(Long version)
TERATOTERA祭り2018 (Short version)
TERATOTERA祭り2017(Long version)
TERATOTERA祭り2017 (Short version)

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トッピングイースト

まちを舞台に音や音楽との新しいかかわり方を開発していく

下町観光開発などで日々進化し続ける東東京エリアにおいて、CDを買ったり、ライブやカラオケに行ったりして楽しむだけではない、まちなかでの音楽とのかかわり方を開発する。パブリックな場所での音楽の展開可能性や適正規模を考えるプログラムや、音楽プログラムへの多様な参加手法を探るプログラムを展開した。

実績

アートプロジェクトという手法だからこそ挑戦できる「音」や「音楽」とのかかわり方を模索するため、2014年にスタート。主に3つのプログラムを軸に展開した。

「ほくさい音楽博」は、こどもたちにスティールパンやガムラン、義太夫といった世界中の響きの美しい音楽に触れてもらうプログラム。公募で参加者を募集し、プロフェッショナルな音楽家とともに、年1回の発表会に向けて、練習を重ねていく。発表会では、このお披露目のほか、オーストラリアやアフリカの民族楽器、サンバのカーニバルの楽器と衣装など、世界中の楽器や音楽を体験できる参加型プログラムも実施した。回を重ねるなかで、毎年のように参加するこどもたちや、保護者が主体となってイベントをサポートする仕組み「みまもり隊」が生まれ、音楽を通じてこどもが主役となるオルタナティブなコミュニティへとつながった。

アーティスト・和田永による「エレクトロニコス・ファンタスティコス!」は、使われなくなった電化製品を用いて新たな楽器を制作し、奏法を編み出し、オーケストラを目指すプログラム。ブラウン管テレビを用いた「ブラウン管ガムラン」、扇風機を用いた「扇風琴」などを開発し、都内外のさまざまなイベントで披露してきた。楽器の開発やシステム改善、パフォーマンス内容の企画などは、アーティストだけではなく、市民チーム「Nicos Orchest-Lab(ニコス・オーケストラボ)」のメンバーであるエンジニアやプレイヤーとともに行っている。「Nicos Orchest-Lab」は、東京アートポイント計画として実施した東京チームだけではなく、茨城や京都、さらにはリンツ(オーストリア)にも市民を中心にチームが発足し、音楽を通じて世界にネットワークが広がっている。

「BLOOMING EAST」は、音楽家が東東京をフィールドに、アーティストが自らの興味関心をもとにリサーチをしていくプログラム。コトリンゴ、コムアイ、寺尾紗穂といった女性音楽家が東東京でさまざまな人々に出会い、「戦災孤児と教会」や「移民」など、土地の歴史や社会問題と向き合ったテーマでリサーチを重ねた。リサーチの試行錯誤をもとに、トークセッションやまちを巡り、リサーチの軌跡を辿るプログラムなども行った。

東京アートポイント計画との共催終了後も、本事業の実績をいかし、地域や社会状況に応答したプログラムを行なっている。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の文化プログラムとして実施された「Tokyo Tokyo FESTIVAL スペシャル13」の一環として、アートプロジェクト「隅田川怒涛」を開催。コロナ禍により、当初想定していた墨田川流域を舞台にした形態から、オンライン開催への変更を余儀なくされたものの、地域にゆかりのある音楽家やアーティストが数多く参加。共催期間に行ったプロジェクトを発展させたプログラムをはじめ、ライブ配信やオンラインワークショップ、展示インスタレーションなどを行った。また、「隅田川怒涛」を行うなかでメンバーが感じた気づきや問いについて、アーティストやライター、行政職員などさまざな人と対話した記録『隅田川自治β ダイヤローグ』をウェブサイトにて公開した。

2021年からは、地域のこどもたちが家や学校以外でも安心して過ごすための居場所づくり事業をスタート。ワークショップやフードパントリーを通じて、こどもを支える地域の人々や音楽・文化芸術とのつながりを生み出すことに引き続き取り組んでいる。

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「光の蘇生」プロジェクト-counter void再生をめぐって

3.11後の日本社会における、作品の再点灯のあり方を問う

東日本大震災を契機に、2011年3月13日に消灯した、六本木・けやき坂に常設されている宮島達男のパブリックアート作品《Counter Void》。3.11に対する思いや記憶が移り変わるなか、人々に問いと気づきを生み出すシンボルとして、この作品を再点灯させると同時に、未来の生き方や人間のあり方を考えるために勉強会などを実施。2015年度に特定非営利活動法人インビジブルを立ち上げ、「リライトプロジェクト」としてさまざまなプログラムに取り組む。

4メートルくらいの白く光っている壁面に、黒いデジタル数字が大きく映し出されている。その前に人影が何人か立っている
宮島達男《Counter Void》2003年 テレビ朝日所蔵作品  ネオン、ガラス、アルミニウム、ほか 5 X 50 m 撮影:勝又邦彦 写真協力:SCAI THE BATHHOUSE

AKITEN

空きテナントの新たな活用方法を探り、まちの担い手を増やす

商店街の空きテナントに、文化や産業など地域の独自性のあるコンテンツを持ち込むことで、テナントの新たな活用方法を試しながら、それらの魅力をアートとデザインの力で地域内外に発信していくプロジェクト。ワークショップや空きテナントを使ったプロジェクトを運営するための冊子『AKITEN 運営マニュアル』の制作や、空きテナントの活用を考える人々をつなぐウェブサイトづくりなどを行い、まちの担い手づくりとプラットフォームの整備に取り組む。

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TOKYO FABBERS

デジタル時代のものづくりの担い手によるコミュニティ創出

「デジタルファブリケーション (FAB)」を活用した、新しいものづくりのコミュニティ創出に取り組むプロジェクト。渋谷エリアに点在するものづくり拠点がネットワークをつくり、参加型のトークイベントやワークショップを通じて新時代のものづくりを促進することを目指す。ものづくりを通じて人と人をつなぎ、日常の課題を解決していく人々を 「FABBER (ファバー)」と位置づけ、リサーチプログラム「FABBERS インタビュー」や社会課題解決型ものづくりプログラム「FABBERS’ ACTION PROJECT」などを実施した。

三原色[ミハライロ]

島にかかわる多様な世代をつなぐ場づくり

東京都の島しょ部である大島を舞台に、学び、気づきの場をつくるプロジェクト。大島を支えてきた世代・大島で生まれ育ちこれからを担う世代・興味を持ち大島へ訪れる多様な世代を繋げることを目的とする。島外からの講師を招いたトークイベントや、地域資源を再確認するプログラム、フリーペーパー『12class』の発行など、デザインやアートの視点から活気溢れる地域づくりを目指す。

東京迂回路研究

“生き抜くための技法”としての「迂回路」を探る

社会における人々の「多様性」(diversity)と 「境界」(division)に 関する諸問題に対し、「対話」と「表現」を通じ、“生き抜くための技法”としての「迂回路」(diver-sion) を研究するプロジェクト。障害者就労継続支援B型事業所と協働したワークショップ開発や、「言葉を交わし、言葉をつむぐ」をテーマにしたワークショップ・ライブ・トークセッションなどを実施。障害・ケア・労働・住処・ジェンダーやセクシュアリティ・国籍など、さまざまな背景や境界線を揺れ動く人々とアートの関係性を探り、さらにアートそのものの境界をも探る。

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