プロジェクト3年目となる2016年度の旅の地は、東京・竹芝港から1000km、24時間の航海の先に位置する小笠原諸島。この新しい旅とリサーチのキーワードは「Nodus(ノドス)」。「Nodus」とは、「接点、結び目、もつれ、難曲」など複層的な意味を含むラテン語です。小笠原の島々はもともと地理的に様々な文化圏が交錯する位置にあると同時に、大陸や大きな島と一度も繋がったことがない海洋島として固有の生態系を形成しています。歴史的には1830年代に捕鯨基地として欧米系開拓者達が入植して以来、日本とアメリカという国家・領土の最前線として、様々な経緯を経たことで言語や文化が複雑に絡み合っています独自の。
独自のクレオール的多様性、「Nodus」を含んだ小笠原にて、ゲストのリサーチ・ディレクターを迎え、複数のリサーチャーによるそれぞれの視点と考察の違い、それらが接触・交換する時に生まれる化学反応を観察・記録することに取り組みます。
詳細
リサーチ期間
2016年12月5日(月)〜12月16日(金)
旅するリサーチラボラトリーとは
近年、アートの現場において、リサーチをもとにした作品やプロジェクトが多く見受けられます。「旅するリサーチ・ラボラトリー」は特に他分野でも広く取り入れられているフィールドワーク的実践に着目し、ジャンルを問わず興味深いフィールドワークとアウトプットをされているさまざまなリサーチャー、各地の資料館、 美術館などを訪ね、リサーチ手法、アウトプットやそれらにまつわる作法に関するグループリサーチを2014年度からスタートしました。2014年度は山口から東京、2015年度は三重から北海道まで、ラボ自体が「旅」をしながらリサーチを重ねています。
関連リンク
2014年、2015年の取材日程、取材先一覧、ポッドキャスト番組のリンクなどは以下のウェブサイトにてご覧いただけます。
http://tabisurulab.wix.com/trlab
アートプロジェクトの現場における文化創造の基盤の充実及び担い手の専門性の向上、職域の認知向上に必要な言説とメソドロジーを提示する、「幸せな現場づくり」のための研究会。
1990年代にアーティスト主導で萌芽をみたアートプロジェクトは、2000年の越後妻有アートトリエンナーレの開始を皮切りに自治体主導による芸術祭規模への発展とともに増加し、現在では全国各地で多様な担い手によって開催されています。一方、1980年代から1990年代にかけて各地に建てられた美術館のようには制度化されておらず、多くの現場では担い手の専門性や雇用の問題が顕在化しつつあります。今後、東京2020オリンピック・パラリンピックに向けて文化プログラムの急増が予想されるなか、現場で働く人々が社会資本の強化の担い手として活躍していくためには何が必要なのでしょうか。
本プログラムでは、これまで国内外の現場を経験してきたアート・コーディネーター、プランナー、コミュニティデザイナー、会計士という専門性の異なる研究会メンバーによって、現在進行形の現場の課題や可能性を議論してきました。本年度は、研究会から発見された知識や視点を一冊の書籍として言語化することで、これからのアートの現場に必要な「共通認識」の形成に寄与することを目指します。
近年、東南アジアを中心としたアートプロジェクトの担い手のネットワークづくりが盛んになってきました。主に個人を介して形成されたネットワークを広く共有していくことは、現場の国際化にとって、ますます重要なものとなっています。
本プログラムでは、Art Center Ongoingの小川さんを中心に形成されてきた東南アジアのインディペンデントな拠点やオルタナティブな活動のネットワークをもとに、情報のプラットフォーム形成を試みます。またテキストは英訳も行うことで、各地の現場の担い手の双方向のネットワーク形成を目指します。
近年、日本各地で開催されている芸術祭には、文化施設等で展開される事業とは異なり、まちや地域で展開するアート活動における独自の知見が蓄積されています。しかし、数年に一度、一過性の「祭り」として実施する体制では、次の実践への知見が担い手の間で継承しづらい状況が生まれています。
本プログラムでは、これから芸術祭を担う人々が議論を重ねるための共通の基盤づくりを目指します。いま、芸術祭に取り組むことに、どのような意義があるのか。国際的な時流を読み解きながら、どのような方法を重視し、現場を組み立てていくべきなのか。あいちトリエンナーレ2016の芸術監督を務めた港千尋さんが、その経験と思考をまとめた『芸術祭ノート』を制作します。
近年、日本各地で増加するアートプロジェクトにおいては、その実施プロセスや成果等を可視化し、広く共有する目的でさまざまな形態の報告書やドキュメントブックなどが発行されています。それらの発行物は、書店販売など一般流通に乗らないものも多いため、制作だけでなく「届ける」ところまでを設計することが必要となります。
またドキュメントブックは、一つひとつのプログラムのみならず、それを生み出した母体となる団体やプロジェクトの理念や文脈が込められています。複数のプログラムを抱える活動において、そこに通底する価値を広く社会に伝えることは重要です。
本プログラムではアートプロジェクトから生まれた「言葉」(報告書やドキュメントブックなどの発行物)の届け方の手法を研究・開発します。今年度はアーツカウンシル東京の取り組みから「東京アートポイント計画」「Tokyo Art Research Lab」「Art Support Tohoku-Tokyo(東京都による芸術文化を活用した被災地支援事業)」「TURN」を取り上げ、その発行物を届けるためのメディア開発(パッケージ及びレター)を行います。
アートプロジェクトの現場における文化創造の基盤の充実及び担い手の専門性の向上、職域の認知向上に必要な言説とメソドロジーを提示する、「幸せな現場づくり」のための研究会。
1990年代にアーティスト主導で萌芽をみたアートプロジェクトは、2000年の越後妻有アートトリエンナーレの開始を皮切りに自治体主導による芸術祭規模への発展とともに増加し、現在では全国各地で多様な担い手によって開催されています。一方、1980年代から1990年代にかけて各地に建てられた美術館のようには制度化されておらず、多くの現場では担い手の専門性や雇用の問題が顕在化しつつあります。今後、2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて文化プログラムの急増が予想される中、現場で働く人々が社会資本の強化の担い手として活躍していくためには何が必要なのでしょうか。
本プログラムでは、これまで国内外の現場を経験してきたアート・コーディネーター、プランナー、コミュニティデザイナー、会計士という専門性の異なる研究会メンバーによって、現在進行形の現場の課題や可能性を議論し、言語化していきます。そこで発見された知識や視点をツール化し、共有することで、これから増加し多様化する担い手とともに「公共政策としての文化」を根付かせていくことを目指します。
近年、アートの現場において、リサーチをもとにした作品やプロジェクトが多く見受けられます。「旅するリサーチ・ラボラトリー」 は特に他分野でも広く取り入れられているフィールドワーク的実践に着目し、ジャンルを問わず興味深いフィールドワークとアウトプットをされているさまざまなリサーチャー、各地の資料館、 美術館などを訪ね、リサーチ手法、アウトプットやそれらにまつわる作法に関するグループリサーチを2014年からスタートさせました。
2年目の2015年、「旅と歌・詩(うた)」、「旅と地図」、「出来事を留める方法」をキーワードに、再びレンタカーに乗り、12日間の旅を企画。1年目の経験から、あらためて短期リサーチとしての「旅」という点を意識し、移動車内の時間をフィールドワークのための考察、咀嚼の場とし「編集・制作会議」をすすめるのみならず、「ゲストシート」を設けゲストと一緒に旅をしながらのロングインタビューを試みました。さらにフィールドワークからのアウトプット実践として、車内を録音スタジオに見立て、ポッドキャスト番組を録音、旅中に編集し配信しました。
本プロジェクトでは、2013年度に制作された成果物『日本型アートプロジェクトの歴史と現在 1990年→2012年』及び、「『日本型アートプロジェクトの歴史と現在1990年→2012年』翻訳プロジェクト」において制作された成果物をもとに、日本型アートプロジェクトについて海外に向けて紹介することを目指し、英訳テキストの制作に取り組みます。
また、2014年度「『日本型アートプロジェクトの歴史と現在1990年→2012年』を読む」の講座記録を副読本(レポート)としてまとめ、ウェブ等を通じて広く発信します。
本プロジェクトでは、アートプロジェクトの現場を担う小規模組織や個人が、持続可能な活動を実現させるためのデジタルアーカイブ・システムの研究と開発を行います。
Tokyo Art Research Labでは、2014年度に「東京アートポイント計画」に参加している各事務局の協力を仰ぎ、現場ニーズをヒアリングしながら、オープンソース・ソフトウェアを基盤にアーカイブ・システムを開発し、導入・運用を試験的に試みました。本年度は、これまでの成果や試験導入から浮かび上がった課題を踏まえ、より一般にも開かれ、現場で使いやすいアーカイブ・システムのサービス開発に取り組みます。
アートプロジェクトを実施、検証するうえでの理念や考え方にまつわる「言葉」の基盤を整備するプログラムです。現場の価値を表現し、その意義を広く共有し、長く検証の対象となるためのテキストやメディアのあり方を研究しています。その一環として、2013年度よりアートプロジェクトを語る上で重要となるテキストの著者を招き、その執筆意図や背景を伺い、読解するための公開研究会を全7回開催してきました。
また、テキストの収集過程では、1990年代以降のアートプロジェクトの検証にはウェブサイトに残された情報が重要であることが明らかになりました。しかし、一部のウェブサイトはサーバーの運営や無料サービスの利用などによりアクセスが困難となっています。これらの情報を広く共有し、長く保存するための方策を検証するため、2014年度は、美術家の藤浩志氏が10年書き溜めたブログ「Report 藤浩志企画制作室」から抜粋したテキスト集『思索雑感/Image Trash」2004-2015──校正用ノート』を制作しました。
これまでの経緯を踏まえ、2015年度は「言葉」を共有し、残すためのメディア制作の技術に焦点をあてます。具体的には『思索雑感』に込められた問題意識と、その制作過程を紐解きながら、編集の技術の共有とアーカイブの視点からウェブサイトを含めたメディアでの情報の残し方を考えます。