2025年2月22日(土)から24日(月・休)の3日間、Tokyo Art Research Labは足立区北千住にある古民家・仲町の家で「東京を“再読”する :(Re)reading Tokyo」を開催しました。

「東京を“再読”する :(Re)reading Tokyo」とは
目の前のものを見つめ、当たり前だと思っていることを問い直しながら、自身との関係性をあらためて読み返す行為を「再読」と呼んでいます。これは、北海道十勝地域の芽武(メム)を舞台にしたプロジェクト“memu earth lab”で実践されている活動です。memu earth labでは、自然物、動物、建物、道具など、さまざまなものを対象にして「再読」を試みています。
「東京を“再読”する :(Re)reading Tokyo」は、Tokyo Art Research Lab(通称:TARL)のプロジェクトです。TARLとは、当たり前を問い直す、課題を見つける、異なる分野をつなぐ――そうしたアートの特性をいかし、個人が豊かに生きていくためのよりよい関係や仕組み、コミュニティづくりを目指す研究・開発の取り組みです。
「当たり前」に捉えている事物に対して足を止め、別の見方で、つぶさに見てみる、あるいは聴いてみること。そのものがもつ可能性をあらためて読みとること。そういった「再読」の時間をもつことによって、わたしたちは暮らしのなかに新たな発見や、探求の種を見つけることができるのではないでしょうか。
そうした視点を起点に、「東京を再読する:(Re)reading Tokyo」では、北海道十勝地域の芽武(めむ)の近自然環境を舞台に「再読」の実践を続けるmemu earth labの森下有さんと、東京という都市環境において再読をすることの意味や、その可能性、また普段の生活においても実践が継続する方法について話し合ってきました。

また、東京での「再読」を試みる足がかりとして、水がつくり出す地形や風景を被写体に、撮影・制作に取り組むアーティストの齋藤彰英さんとフィールドワークを行い、再読という観点から見えてくる風景や、作品というアウトプットのありように目を向けてきました。

仲町の家での展示について
本展では、仲町の家を対象に実験的に行った「再読」の試みやプロセスを、ものの対比や映像、トークによって紹介しています。
東京という場所で「再読」を実践する可能性は何か。わたしたちは、どのように探求に取り組むことができるのか。来ていただいたみなさんとコミュニケーションを交わしながら、ともに考える3日間となりました。
企画の実施にあたっては、デザイナーとして浦川彰太さんが参加し、浦川さんにとっての「仲町の家」の再読を通じてDMやポスター、パンフレットを制作しています。



会場となった「仲町の家」に存在しているものを対象に、メンバーそれぞれ向き合いながら企画を進めました。





会期の3日間には、アーティストや建築関係者、研究者、学生、ご近所の方、観光で足を延ばした方など、100人を超える方々にお越しいただきました。また、企画の準備には仲町の家の事務局スタッフや、コンシェルジュの方々、東京藝術大学の学生にもサポートいただいています。


3本の木
屋内に入ると、まず目につくのは居間の中央に立つ「3本の木」です。森下さんが置いたのは、挽いた木、割った木、朽ちる木という、さまざまな表情の木。それぞれの木の前には、実際に手に取ることのできる小さな木も置かれています。







展示仲町の家3Dスキャンデータ
普段は気づかない、じっくりと見ることのない視点に立つきっかけとして、SAKIYA株式会社の山口大翔さんに協力いただき「3Dデータ」を作成しました。来場者は実際にマウスをつかって、画面のなかを自由に移動することができます。



「きわにもぐる、きわにはく」
長時間露光撮影による写真を映像時間軸上に並べて制作した、齋藤さんによる19分の映像が小さな部屋に展示されています。2023年に制作した作品を改変し、仲町の家での試験的な展示のために制作したものです。


仲町に浮かぶ石(仮)
仲町の家の奥にある茶室では、齋藤さんによる写真インスタレーションを展示しました。素材は、仲町の家で拾った石。雨水が土を洗い流し、ケヤキの足元から顔を出していました。





会期を終えて
森下さんとの対話や齋藤さんとのリサーチを経て、「仲町の家」をあらためて見つめてみたことで、これまで気が付かなかった風景の細部に気づいたり、地理や歴史を含めて対象を考えてみたりと、この家の捉え方に変化が生まれました。
そうして会期中に来場していただいた方々や、仲町の家のスタッフの方々とも、展示されているものや、元々この場所にあったものをきっかけに対話や思考を深めることのできた3日間となりました。
参加者の声
- 仲町の家が好きなので、とても楽しく拝見しました。家の雰囲気と展示の内容がシンクロしててとても素晴らしいです。
- 仲町の家の空間がいつもと全く違う目線で見えるようになってきて、とてもおもしろかったです。こう見てみると、木と石(と土)とで構成されている空間ですね。
- 「再読」って何だろう?と思って参加して、参加者の意見がいろいろあって楽しかった。
- どうしても、人間中心的な思考で自然を捉えたり、コントローラブルなものにしようとしてしまいがちだが、1本の木がどうなっているのか、ぐっと近づいてみることで、もしかしたら、人間中心的な思考を少し手放せるのかもしれない、自然との距離や対峙の仕方に幅をもてるかもと希望すら覚えました。
- このようなアプローチだと、様々な人が集まることができておもしろいと思いました。コミュニティをアートでつくる(つくるというのもおかしいかもですが)面白味を感じました。
生活のなかでふと立ち止まり、ものごとに目を向け、触り、耳を傾ける。そうして自分にとっての新たな視点に出会う時間は、アーティストや研究者のみのものではなく、多くの人の暮らしの中にも立ち上がるはずです。
執筆:櫻井駿介、小山冴子
写真:齋藤彰英 *マークを除く
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東京を“再読”する :(Re)reading Tokyo
日時: 2025年2月22日[土]~24日[月・休] 10:00~17:00
会場: 仲町の家(東京都足立区千住仲町29-1)
企画運営:森下有、齋藤彰英、櫻井駿介、小山冴子
デザイン:浦川彰太
主催:東京都、公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京
※本企画は「アートアクセスあだち 音まち千住の縁 拠点形成事業 パイロットプログラム」の一環で実施しました。
