「幸せな現場づくり」のための研究会~働き方の育て方 アートの現場で共通認識をつくる~

全国各地では年間を通じて無数のアートプロジェクトや芸術祭が開催されています。その一方で、それらの運営を支える担い手たちの労働環境の整備は追いついておらず、多くの現場では担い手の専門性や雇用の問題が顕在化しつつあります。

「『幸せな現場づくり』のための研究会」では、文化事業・アートプロジェクトの担い手の働く環境をめぐるさまざまな問題と向き合いながら、2年間にわたり議論を重ね、その成果をまとめた本『働き方の育て方 アートの現場で共通認識をつくる』を発行しました。

今回は、その本の内容や活用法を紹介するとともに、アートの現場における働き方は今後どうあるべきかについて考えます。

詳細

「幸せな現場づくり」のための研究会とは

アートプロジェクトの現場における文化創造の基盤の充実及び担い手の専門性の向上、職域の認知向上に必要な言説とメソドロジーを提示する、『幸せな現場づくり』のための研究会。国内外の現場を経験してきたアート・コーディネーター、プランナー、コミュニティデザイナー、会計士という専門性の異なる研究会メンバーによって、現在進行形の現場の課題や可能性を議論し、言語化していきます。そこで発見された知識や視点をツール化し、共有することで、これから増加し多様化する担い手とともに「公共政策としての文化」を根付かせていくことを目指します。

「幸せな現場づくり」のための研究会(2016)

アートプロジェクトの現場における文化創造の基盤の充実及び担い手の専門性の向上、職域の認知向上に必要な言説とメソドロジーを提示する、「幸せな現場づくり」のための研究会。

1990年代にアーティスト主導で萌芽をみたアートプロジェクトは、2000年の越後妻有アートトリエンナーレの開始を皮切りに自治体主導による芸術祭規模への発展とともに増加し、現在では全国各地で多様な担い手によって開催されています。一方、1980年代から1990年代にかけて各地に建てられた美術館のようには制度化されておらず、多くの現場では担い手の専門性や雇用の問題が顕在化しつつあります。今後、東京2020オリンピック・パラリンピックに向けて文化プログラムの急増が予想されるなか、現場で働く人々が社会資本の強化の担い手として活躍していくためには何が必要なのでしょうか。

本プログラムでは、これまで国内外の現場を経験してきたアート・コーディネーター、プランナー、コミュニティデザイナー、会計士という専門性の異なる研究会メンバーによって、現在進行形の現場の課題や可能性を議論してきました。本年度は、研究会から発見された知識や視点を一冊の書籍として言語化することで、これからのアートの現場に必要な「共通認識」の形成に寄与することを目指します。

働き方の育て方 アートの現場で共通認識をつくる

国内外のアートプロジェクトの現場を経験してきたアート・コーディネーター、プランナー、コミュニティデザイナー、会計士という専門性の異なるメンバーが、アートの現場における「働き方」についての研究会を発足。2年間にわたって交わした「対話」と、そこから生まれた「共通言語をつくるための言葉」を一冊にまとめました。

もくじ

はじめに 継続を前提にした「働き方」を育てる 森司
研究員紹介 菊池宏子/帆足亜紀/若林朋子/山内真里

研究員対談 働き方編

TALK 1 アート「で」社会と関わるには?
菊池宏子×帆足亜紀×若林朋子
・働き方について考える
・身体知を「見える化」する
・時間をかけて関係性を育む

TALK 2 ゼネラルな働き方をつくるには?
帆足亜紀×若林朋子
・両者の違いを認めるところに関わる
・「営み」に関わるコストを考える
・マイノリティの価値観を担保する

TALK 3 専門家としてサポートするには?
菊池宏子×山内真理
・得意な分野で社会と関わる
・自分の専門性を定義する
・つくりたい社会をイメージする

COLUMN
キャリアの棚おろし 若林朋子
マイキャリアチャート

TALK4 お金「で」コミュニケーションするには?
若林朋子×山内真理
・予算書で近未来の設計図を描く
・資金調達で表現の場を獲得する
・自らの在りようを立ち止まって考える

TALK 5 アカウンタビリティを果たすには?
帆足亜紀×山内真理
・質的なものさしをつくる
・ジレンマを抱え続ける
・他者の視点を想像する

TALK 6 走りながらアーカイブするには?
菊池宏子×若林朋子
・記録だけではなく「記憶」を残す
・「 期間」と「対象」を設定する
・ミッションとアーカイブを対応させる

TALK 7 コミュニティづくりをするには?
菊池宏子×帆足亜紀
・代謝や循環が起きる仕組みをつくる
・コミュニティにおけるアカウンタビリティを問う
・「 耕す」という態度と技術を持つ

COLUMN
キャリアの棚おろし 若林朋子
マイキャリアチャート

共通認識をつくるための言葉
公共/コミュニティ・エンゲージメント/コミュニティ・エンゲージメントの構造/コミュニティ感覚/ミッション/評価/助成/予算要求/
決裁/会計/財務会計と管理会計/財務諸表/非営利/芸術・文化団体と税制/芸術・文化団体と監査/共通認識をつくるための言葉

おわりに Moving forward ―飾りじゃないのよ、文化は
研究員推薦図書