くるとのおしらせ

神津島を舞台にしたアートプロジェクト『HAPPY TURN/神津島』の企画や、島の伝統、伝承、地域文化などを発信する定期刊行物です。2021年度までに28号を発行しました。活動拠点である「くると」での配布のほか、島内の各世帯へ一斉配布されています。

*クレジットは最新号のものです。

happening.|東京プロジェクトスタディ1 わたしの、あなたの、関わりをほぐす~共在・共創する新たな身体と思考を拓く~

「スタディ1 |わたしの、あなたの、関わりをほぐす〜共在・共創する新たな身体と思考を拓く〜」は、誰もが誰かの翻訳者であることを前提としながら、自分と異なる認識世界を持つ他者と共在・共創するコミュニケーションについて再考したプログラムです。

身体性や感覚が異なる者同士が意思を伝え合おうとして生まれた視覚身体言語(手話)、感覚をつなぐ伝達方法としての触手話、点字や手書き文字、音声ガイドなどの多様なコミュニケーションを起点に、一人ひとりの身体と記憶、ことばと感覚にまつわるディスカッションやワークショップ、リサーチを重ねました。

本書は、活動のなかで生まれた試行錯誤を紹介し、読者と新たなコミュニケーションを生むための一冊です。

視覚によらない ひとめぼれについて 考えてみよう

もくじ

Workshop 身体と思考をほぐす世界の捉え方
Recording notes 感覚や発見を書き記す
happening 新しいコミュニケーションの回路をつくる

旗を立てる―「東京で(国)境をこえる」3年間の記録

『東京で(国)境をこえる』は、多くの在留外国人が生活する東京において、「見えない国境(壁)」は存在するのかという問いを出発点に、異文化間の距離や接点を探り、在留外国人と日本人の日常的な出会いの場を生み出すことを目指すプロジェクトです。活動記録や制作物など、プロジェクトの3年間の記録を一冊にまとめました。

人と人とが体の底に共通して持つ交歓する力と笑顔とで、多くの人がより生きやすい社会を作りたい。そしてそれは、考えや理念を同じくする者同士ではなく、異なる他者が協働する歓びを知ったその先にあるのではないか。

(p.3)
もくじ

はじめに

Chapter 1  活動の記録 振り返って見えるもの
「東京で(国)境をこえる」準備会(2019〜2020)
「kyodo 20_30」(2020年度)
2020年度活動記録
「kyodo 20_30」(2021年度)
2021年度活動記録
「ここから展」
「意味をこえる身体へ:ショットムービープログラム」
「新大久保お散歩学派」
「話しあうプログラム サカイノコエカタ」

Chapter 2  制作物
2020年度
 「東京で(国)境をこえる」ロゴマーク
 「東京で(国)境をこえる」ホームページ(2020年度)
 「kyodo 20_30」制作ノート 01〜04
 「東京で(国)境をこえる」2020年度活動記録
2021年度
 「東京で(国)境をこえる」ホームページ(2021年度)
 「東京で(国)境をこえる」活動紹介カード
 「話しあうプログラム サカイノコエカタ」フライヤー
 kyodo 20_30 成果発表会「ここから展」フライヤー
 「東京で(国)境をこえる」はなんですか?(活動紹介動画)

事務局座談会
おわりに

YATOの絵本

『500年のcommonを考えるプロジェクト「YATO」』は、「すべて子ども中心」を理念とする『しぜんの国保育園』や東向山簗田寺を取り巻く町田市忠生地域の里山一帯を舞台に、地域について学びながら、500年後に続く人と場のあり方(=common)を考えるアートプロジェクトです。

本書は、YATOで大切にしていることやその活動イメージを、小学生に思い描いてもらえるように、YATOの活動で生まれたキャラクターや地域リサーチで学んだ年中行事などを絵本にしたものです。こどもから大人まで、「YATOの絵本」を手に取った方が、YATOが目指す「500年続くお祭り」を、一緒につくっていく仲間になってくれることを願っています。

こもれびに集う人と人 谷あいに響く声と声 土地の自然を体に感じ、文化を未来に手渡していく遠い昔から形づくられてきた谷戸の地で、500年続くお祭りが新たにはじまります。

もくじ

YATO図鑑
YATOの年中行事
YATOのあゆみ

YATOの郷土詩

『500年のcommonを考えるプロジェクト「YATO」』は、「すべて子ども中心」を理念とする『しぜんの国保育園』や東向山簗田寺を取り巻く町田市忠生地域の里山一帯を舞台に、地域について学びながら、500年後に続く人と場の在り方(=common)を考えるアートプロジェクトです。

本書は、YATOの活動の一つ、忠生とその周辺に暮らす人たちに話を聞く「聞き書き」の記録をまとめたものです。この土地に生きたひとり一人の記憶を、500年先まで受け渡していこうと模索しながら、人々の語りを「郷土詩」というかたちに紡ぎ直しました。

語り手の姿をおぼろげにし、語られた時代を混在させることで、この土地が育んできた詩(うた)を浮かび上がらせることはできないか

(p.5)
もくじ

はじめに

第一章 龍の池
第二章 損な時代に生まれて
第三章 ある冬の情景
第四章 うちの親父のこと
第五章 新しい暮らしの古い習わし
第六章 騙すもの騙されるもの、食べられるものみんな
第七章 馴染んでゆく台所
第八章 この坂の上から
第九章 この谷の下から
第十章 流れを変える
ある視点1
第十一章 新しい人たち
やとのかんそく①
ある視点2
第十二章 緑はどこへ行った
やとのかんそく②
第十三章 光の池

おわりに

ファンファン倶楽部 「やってみる時間」をやってみるための本

これまで当たり前だと思っていた考えを解きほぐす「対話」を生み出し、地域の文化資源の活用から「学びの場」 を創出する『ファンタジア!ファンタジア!―生き方がかたちになったまち―』。その一環で実施している「ファンファン倶楽部」は、「安心して楽しく“もやもや”しよう」を合言葉に、気になること、やってみたいことをメンバーが持ち寄り、実験的なワークショップやディスカッションを行う企画。持ち寄ったものを全員で共有し、実践することで、めいめいの当たり前を解きほぐす方法を模索する取り組みです。

とにかく、一旦手を動かして目の前に現れた何かを見ることで、想像の通りにはいかないことがわかったり、そこから意外なことを思いつくことができたりする。

(p.1)
もくじ

はじめに
ファンファン倶楽部のあゆみ
これまでのやってみる時間
「私たちのエッセイを書く」でみんなが書いたエッセイ
おわりに

アートと名付けられない創造力へ向かって 「ファンタジア!ファンタジア!」が墨田で考えていること

それまで当たり前だと思っていた考えを解きほぐす「対話」を生み出し、地域の文化資源の活用から「学びの場」 を創出する『ファンタジア!ファンタジア!―生き方がかたちになったまち―(通称ファンファン)』。プロジェクトを実践するなかで感じた、アートに近接する、まちづくり、福祉、ケア、教育などとのあいだのモヤモヤについて言葉を綴りました。2021年度の活動記録に加え、ゲストとの鼎談や事務局メンバーの座談会等も収録しています。

微弱な創造力を、まちの中で、あるいは歴史の中で見つけていくためには、今まで自分たちが当たり前に信じてしまっていた「アート」の価値観やアートプロジェクトのある種の型について再考し、ときにはそれらを思いきって手放すことも必要でした。そうやって自分たち自身の〝当たり前〞 を疑い、想像の限界を更新していく作業こそが、ファンファンにとってのアートであり「安心して自分自身が変われる技術」だと言えるものです。

(p.13)
もくじ

はじめに 小さくやわらかな実践に引き寄せられて

Chapter 1
活動紹介:トナリのアトリエ

Chapter 2
座談会:社会課題を解決するとき、アートはどこにあるか?
―「活動」と「作品」の線引きをめぐって

Chapter 3
コラム:セツルメント運動から考えるアートプロジェクトの現在

Chapter 4
座談会:「手前から考える」ことから歩きだす
―2021 年度の活動を振り返って

おわりに 不確かさをひらき続ける意思表明として

ことばを壁にしない。「やさしい日本語」を使おう!

こんにちは。
東京アートポイント計画 ジムジム会運営メンバーの村上です。
9月17日(金)に、ジムジム会の第2回目を開催しました。
今回はそのようすをお届けします。

ジムジム会は、2019年度より東京アートポイント計画が開催している〝事務局による事務局のためのジムのような勉強会〟です。
東京都内各地でアートプロジェクトを実施する東京アートポイント計画参加団体(※芸術文化や地域をテーマに活動するNPO法人や社団法人など)とともに、プロジェクト運営事務局に必要なテーマを学び合うネットワーキング型の勉強会です。

今回のテーマは、「ことばを壁にしない。『やさしい日本語』を使おう」

今回ジムジム会運営チームと一緒に企画を担当するのは『東京で(国)境をこえる』事務局の阿部七海(あべ ななみ)さんです。「ことばを壁にしない。『やさしい日本語』を使おう」をテーマに、開催しました。

「やさしい日本語」は、日本語学習中の外国人・言語発達の途上にあるこどもたち・聞こえに問題を持つ高齢者・さまざまな障害を抱えた方々などとのコミュニケーションに活用されている、簡単でわかりやすい日本語です。

しかし普段から無意識に日本語を活用している人にとって「やさしい日本語」は、一朝一夕で習得できるものではありません。『東京で(国)境をこえる』事務局もより多くの人と一緒にプロジェクトをするために、試行錯誤をしてきました。
そのなかで、東京アートポイント計画の他の現場にもぜひ知ってもらいたい、活用してほしいという思いから、今回この企画が生まれました。

● 東京で(国)境をこえるの取り組みは、こちらからも読むことができます → note記事「『やさしい日本語、やさしい気持ち』 kyodo 20_30のきろく#1」

今回はゲストとして、NPO法人YYJ・ゆるくてやさしい日本語のなかまたちから奥村三菜子(おくむら みなこ)さんをお招きし「やさしい日本語」の成り立ちや翻訳の心得を学んでいきました。

左から阿部さん、奥村さん、村上。

「やさしい日本語」の成り立ち

「やさしい日本語」は1995年の阪神淡路大震災の際に、多くの日本語を母語としない人が大切な情報を受け取ることができず二次被害や三次被害も被ったことなどがきっかけで生まれました。
つまり、大きな目的として“減災”という命にかかわる問題と立ち向かうために「やさしい日本語」は生まれたのです。
現在では観光事業や自治体の情報発信等でも使われていますが、何よりも“しっかり本意を伝えること”が重要になることは誕生以来変わりありません。

「やさしい日本語」を使うために大事なことは何?

次のステップ表は、普段の文言を「やさしい日本語」に作り直すための手順をまとめたものです。

「やさしい日本語」を作る/見直すためのステップでは、ステップ2【一番伝えたいことって、何?】がもっとも重要度の高い項目になっています。発信者が伝えたいことを理解することで、重要な情報を明確で間違いのないメッセージとして届けることが叶うのです。

例えば地震ならば、まず発信者は「地震がありました!」という事実を伝えたいはずです。
そして、その後に「すぐにげて!」というメッセージが続きます。

発信者が「自分は何を一番に伝えたいのか?」を理解することで、相手を的確にサポートすることができるのです。

「やさしい日本語」に書き換えてみよう!①《伝えたいことを選ぶ》

以上を把握した上で、ジムジム会に参加している9つのアートプロジェクトの概要文を「やさしい日本語」にしてみるワークをしました。

まずはステップ1【この一文、長いよね?】から取りかかります。

まずズラズラと長い文は対象者にとって理解するのがむずかしく、伝えたいことがずれてしまう可能性が増えてしまいます。そのため、まずは細かく区切ってみます。

そのときに重要なのが動詞で区切ること。
動詞で区切る=〝する〟〝ある〟〝記録する〟〝見舞われる〟などの動詞が登場したら、そこで区切る!
こうして短い文章にすることで、受け手に負担なく、そして間違ってメッセージが伝わらないよう予防することができるのです。

スライドを共有し、事務局ごとに作業を進める。

そしてステップ2【一番伝えたいことって、何?】を行います。
発信者がもっとも伝えたいことは何か。伝えたい相手を想像しながら考えます。

ステップ2をもとにステップ3【これ、なくても伝わるよね?】では専門的な単語を削除し、一文が簡単にストレートに伝わるよう吟味します。もっとも伝えたいメッセージ以外の情報は、大胆に消去することがコツなのです。

「あれもこれもはゼロになる!」をモットーに、作業をしました。

「やさしい日本語」に書き換えてみよう!②「難解ワードに向き合う」

文が短く、情報を削ぎ落とすことができたら、次はステップ4【このことば、わかるかな?】です。
この作業は、むずかしい言葉を〝平たい言葉〟にしています。

例えば、今回多く見られたアートプロジェクトにまつわる難解ワードはこちら

日頃から使いまくりの言葉ばかりなので、戦慄しました……

抽象的な言葉を見つけたら、具体的=平たい言葉に変換していきます。

プログラムを展開します
⇒ プログラムがあります

など、シンプルにしても問題なく伝わります。
言葉のニュアンスによっては変換がむずかしく、時間がかかる作業です。

最後に、見直しであるステップ5【わかりやすく整えよう!】です。
これでやさしい日本語が完成します。

最後には一言キャッチフレーズもできあがりました

「やさしい日本語」を使う上で大切なこと

「やさしい日本語」に、正解はありません。

なぜならば、相手の立場や状況によって大きく変わるからです。発信者と受け手の関係によって言葉づかいは変わりますし、受け手側もそのときの状況によって欲しい情報は変わります。

だからこそ、必要になるのはたくましい想像力なのです。

伝えたい相手をしっかり想像し、言葉を想像力によって紡ぐことが必要です。発信者側は伝えたい思いをいつでも冷静に整理し、そして想像力によって客観的に言葉にしていく必要があるのだなと思いました。

今回はそんな「やさしい日本語」を使うための、はじめのステップとなりました。
頭がほぐされて、まっさらな気持ちで言葉と向き合う感覚を味わうことができたのではないでしょうか。
それぞれのアートプロジェクトで、新たな言葉への向き合い方が生まれるかもしれません。

参加者の声

・やさしくシンプルに表現するためには決心が必要だと感じました。

・「やさしい日本語」という切り口があると、自分たちのテキストも振り返りやすかった。「やさしくなる」と同時に、自分たちが大事にしようとしている表現のポイントも見えてきた気がする。

・整理した言葉は、自分でも話しやすいものになりました。

・「やさしい日本語」に書き換えるワークでは、同じチームでも各々大事にしている要素が違うという気づきがあり「これはゆずれない」という話し合いが盛り上がりました。

・ふだん書き慣れて/読み慣れてしまった文章が、いかに裸の王様?であったのかを痛感します。一方で「やさしい日本語」に書き換えるときに削ぎ落としてきたものたちに、どんな意味があったのか(本当に意味がなかっただけなのか)が気になりました。

執筆:村上愛佳(東京アートポイント計画 プログラムオフィサー)

※ジムジム会についての情報は東京アートポイント計画のnoteアカウントでもお読みいただけます。

事務局にとって、永遠の悩みかもしれない「記録」についてみんなで考える

1月19日(水)に、ジムジム会の第4回を開催しました。今年は、東京アートポイント計画の共催団体が順々にホスト役となって、ジムジム会運営チームと一緒につくっています。
今回のホスト役は、「移動する中心|GAYA(以下、GAYA)」チーム。今年度からGAYAの担当となり、運営や広報などをGAYAチームと一緒に取り組んできたプログラムオフィサーの岡野恵未子が、当日の様子をレポートします。

ジムジム会は、2019年度より東京アートポイント計画が開催している〝事務局による事務局のためのジムのような勉強会〟です。
東京都内各地でアートプロジェクトを実施する東京アートポイント計画参加団体(※芸術文化や地域をテーマに活動するNPO法人や社団法人など)とともに、プロジェクト運営事務局に必要なテーマを学び合うネットワーキング型の勉強会です。

記録を考えてきたチームだから、みんなと共有したいこと

GAYAは、世田谷区内で収集・デジタル化されてきた、昭和の世田谷を映したホームムービーを活用して、語りの場をつくるコミュニティ・アーカイブプロジェクトです。8ミリフィルムに写された記録を、公募メンバーである「サンデー・インタビュアーズ」と見て、話して、さらに他の誰かに話を聞いたりしながら、自分たちの生きる「いま」を考えてきました。

そんなGAYAが悩んできたのは、事業の面白さや価値が外部になかなか伝わらないこと。以前から、事業を伝えていく必要性を感じつつも、その難しさの壁にぶつかっていました。

「サンデー・インタビュアーズ」活動日の様子(画像は2019年度)。最近の活動は、noteの連載記事「SIは見た」や、「サンデー・インタビュアーズをめぐるドキュメント」(文=橋本倫史)で発信している。

立場を恐れずに言うと、私も正直、事業担当になるまで、GAYAでどんなワクワクするエピソードが生まれ、どんなムーブメントが起き、その先に何が見えているのか、実感できていませんでした(同じ「東京アートポイント計画」という近い場所にいたのに)。
しかし、担当となり、事業へ携わってみると、市民メンバーの皆さんはとても積極的で、自主的にホームムービーに関するニッチな資料を見つけてきたり、ご自身の職場でプロジェクトを実践されたりしているし、事務局を含めたチームの中でのリアクションのやりとりも活発でした。プロジェクトをとおした「知見」や「体験」がチームとして蓄積・共有されていて、強いグルーヴ感を感じたのです。4月当初、「たしかにこの状況が伝わっていないのはすごく勿体ない!」と思ったことを覚えています。

中に入らないと、その面白さ、リアル感、グルーヴ感が分からない、というのは、GAYAに限らないことだと思います。今回のジムジム会でどんなことをすると良いのか、GAYAチームと話し合うなかで、GAYAメンバーの松本篤さんは「根本的に、自分たちのことを自分たちで伝えるって難しいと思うんです」と語りました。

そもそも、コロナ禍でイベントや対面での活動ができなくなり、より体験や交流がしづらくなる中で、みんな事業の伝え方に困ったのではないか。というか、そもそも、日常と地続きで展開しているアートプロジェクトとしては、コロナ前から困っている課題だったのではないか。

GAYAチームの七転八倒と試行錯誤から、他の団体のヒントになることがあるかもしれない。GAYAチームとしても、他の団体の試行錯誤を聞いてみたい。
GAYAチームの悩みを共有し、みんなで記録について考えるジムジム会、スタートです!

身近な仲間にプログラムを体験してもらおう

ジムジム会ではまず、GAYAで普段行っているように、とあるホームムービーを他の事務局メンバーと見ることから始めました。「松陰神社、双葉園、雪の日」という昭和50年撮影の映像を見ながら、気づいたことをチャットや発言で述べていきます。「縄飛びを『縄』でしてる!」「神津島はいまも縄で遊んでますよ」「撮影者はお父さんですかねえ」などと、盛り上がりながら映像を観ました。

ジムジム会は、普段なかなか忙しくて参加できない他の事業のことを知る機会でもあります。「ホームムービーを見て話すんですよ」と言っても、やってみないとそれって何が面白いのか、どういうことが起きるのか、実感できないかもしれません。他の団体の人にGAYAの取り組みを体感してもらうコーナーを設けたことで、まずは身近にいる方から事業を知ってもらうきっかけとなったかなと思います。

伝わらない課題を分析し、次のアクションに

続いて、GAYAから実践共有の時間。事務局の水野雄太さんが、この3年間の「記録」にまつわる試行錯誤を紹介していきます。

まず1年目。1年目でやろうとしたことは、企画・運営メンバーが「自分で記録する」ことでした。しかし、記録以外にもたくさんやることがあるメンバーにとって、記録をまとめる時間をつくるのは難しいこと。うまくいきませんでした。
それを受けて2年目のやったことは、「できたものをそのまま記録する」です。たしかに事務局の負担は減った。けれども、編集のフィルターを通さなかったことで、外の人が見た時に分かりやすいものにはなりませんでした。

3度目の正直の2021年度。「できたものをそのまま記録する+だれかに記録してもらう」の2軸で挑戦してみました。活動のなかでのメンバーの発言を拾って、ライトに編集し、note記事とハンドアウト「SIは見た」を作成。さらに、ライターの橋本倫史さんに通年で伴走してもらい、橋本さん視点で活動を綴る連載「サンデー・インタビュアーズをめぐるドキュメント」を行っています。

GAYAのこの3年の試行錯誤。

事務局メンバー個人の得意不得意といった問題も考慮しながらの緻密な分析に、「事務局の個人個人の特性と、お金や時間の掛け方を調整するという話が、整理の仕方としてとても考えやすい」という声が他の団体からあがりました。

何かをやるには、「企画、人、お金、時間」が必要です。何を、どのバランスでやるかが大事。「東京アートポイント計画が、アートプロジェクトを運営する「事務局」と話すときのことば。の本 <増補版>」より。

どんな記録に取り組んでいる? 事例の共有

続いて各団体から相互に事例共有です。事業のなかで最近制作した冊子やパンフレット、ウェブサイトのURLなどを持ち寄り、発表していきます。どんな議論がされたか、いくつかご紹介します。

記録のしかたはルール化しやすいけど、使いかたはルール化しづらい。

「HAPPY TURN/神津島」では、拠点開室時に日報をつけています。日報をつけるハードルを下げるためにフォーマットを改善していき、現在は1日ごとに1シート、紙に記録するスタイル。ただ、記録したものを何に使うか、というところまで至っていないのがモヤモヤしているとのこと。

それを受けて、GAYAメンバー松本さんは、「月に1回くらい、『日誌を読む会』をやったらどうですか」と、内部での情報共有ツールとして活用するというアイディアを提案しました。

「HAPPY TURN/神津島」では、拠点運営メンバーが日報をつけている。

記録するだけじゃなくて、二度美味しくする。

実際に、つくった記録を「使って」いるもありました。例えば、「ファンタジア!ファンタジア!−生き方がかたちになったまち−」は、2020年度、事務局内の記録・コミュニケーションツールとして使っていた「Google keep」を記憶の頼りにしながら、ドキュメントを制作したり。「アートアクセスあだち 音まち千住の縁」では、ワークショップの記録映像を、単なるアーカイブではなく、「映像音楽作品」というかたちに再編したものを公開しています。

伴走者がいてくれると助かる!

事務局メンバー以外の人が、記録や広報メンバーで事業に携わることでやりやすくなった!という声も上がりました。自分たちだけでやっているとどうしても、記録の優先順位を下げてしまったり、スケジュールを管理しきれなかったりすることも出てきますし、価値を言語化するのも難しいものです。しかし、「Artist Collective Fuchu[ACF]」冊子づくりに編集者の方が入ってもらったことで進めやすかったという事例や、「500年のcommonを考えるプロジェクト『YATO』」では映像作家の波田野州平さんが事業に伴走し、ワークショップ等を映像で記録、ショートムービー等を公開しているという事例の共有がありました。

挨拶する際に使っている、「Artist Collective Fuchu[ACF]」で制作した冊子。

参加したみなさんの声

  • HAPPY TURNはいつでも前を向いて走りすぎていて、振り返って話したり、考えたり、じっくり何かを作ったりすることがなかなかないので(振り返らない病)記録をもとに振り返る活動や、今まで起こったことを残すことについて考えていきたいと思いました。その前に記録を取ることに価値があるかどうかについても考えたいと思います。(誰のために何を残すのかなど。)
  • 「記録」の使い方というところはファンファンでももっと意識したいなと思いました。ジムジム会の記録もつくれそうですね!
  • 事務局の個人個人の特性と、お金や時間の掛け方を調整するという話が、整理の仕方としてとても考えやすいなと思いました。運営がうまくいっていないという問題はぼんやりと、でも確実に存在していて、それへの対処を冷静に分析することについて、改めて考えると日々全然できていないなと思いました。
  • アーカイブについての難しさは日々感じているので、年度末などに実際のアーカイブが揃ったらそれを前にしてフィジカルイベントでやっても良さそうだと思いました。

今回のジムジム会では、「記録」をどうつくるか、どう使うかの実践を共有しました。とても難しい問題ですが、上記で紹介したものの他にも、「オンラインだと、相手に面白さが伝わっているかどうか分からない」「紙媒体をつくるのは大変だけど、届いている実感がある」など、共通した悩みが色々と発見できました。また、実践共有を経て、事務局の得意技が透けて見えたように思います。なかなかそこまではできないけれど、記録の先の「使いかた」までを考えていけると、新たな可能性が出てくるのかもしれません。引き続き、みんなで考えていければと思います!

執筆:岡野恵未子(東京アートポイント計画 プログラムオフィサー)

※ジムジム会についての情報は東京アートポイント計画のnoteアカウントでもお読みいただけます。