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REPORT

レクチャー1「徹底解体!アートプロジェクト」 第1回レポート

公開日│2018.08.21

みなさま、はじめまして、レクチャーシリーズ「徹底解体!アートプロジェクト」レポート担当の高木諒一と申します。このレポートでは、前半に講義内容の一部をピックアップし、後半は参加者として私がレクチャーから考えたことをお届けします。このレポートを通して、少しでもアートプロジェクトについて考えるきっかけやヒントをお伝え出来ればと思います。

このレクチャーシリーズでは「徹底解体!アートプロジェクト」の看板通り、「アートプロジェクト」という言葉から「表現」と「それを支える環境」を軸に過去30年の実践を振り返り、これからの実践を考えていきます。ナビゲーターを担当するのは、現代美術家の北澤潤とアーツカウンシル東京の佐藤李青です。

まず、レクチャーはコンセプトについて、ナビゲーターメッセージを確認することからスタートしました。
北澤潤 ナビゲーターメッセージ
佐藤李青 ナビゲーターメッセージ

北澤のナビゲーターメッセージにあるように会場のROOM302は「STUDY ROOM」として空間づくりがなされており、たくさんの資料に囲まれたなか、あたかも図書館の一角で行うゼミのような雰囲気となりました。

さて、今回のレクチャーでは事例の対象範囲を90年代に設定し、その10年間のアートプロジェクトを見ていきました。ただ事例を扱うのではなく、コンセプト、目線や論点についても触れながら2人の対話は進められました。前半はアートプロジェクトを次の4つの視点から、いくつかの事例を振り返りました。

1.プロジェクトのはじまり
2.パブリックアートからアートプロジェクトへ
3.続けること、委ねること 仕掛けとしてのアートプロジェクト
4.アートプロジェクトの転換点としての1999年

レクチャー前半の板書

「プロジェクトのはじまり」では大規模化したアート作品としてのプロジェクトとして、クリスト&ジャンヌ=クロード、蔡國強を紹介しました。プロジェクトの期間、規模、経費が大きくなる中で、作家がどのように状況をつくったのか、また参加者、鑑賞者などオーディエンスの立場が変容していることなどが語られました。

「パブリックアートからアートプロジェクトへ」では都市とアートの関係について「ファーレ立川」、「新宿アイランドアート計画」を取り上げました。野外彫刻の展開と都市・社会状況の文脈からの議論に触れながら、「プロジェクトのはじまり」でも取り上げた作家との比較も行われました。たとえば、ここでのパブリックアートの作品はプロジェクト型の作家ではなく、空間に設置するだけで完結するものが多かったなどです。その文脈からの転換点として、たほりつこ『注文の多い楽農園』に触れ、作品に住民が参加すること、それに対する参加者の認識やプロジェクトの継続を議論するポイントとして取り上げました。

「続けること、委ねること 仕掛けとしてのプロジェクト」では川俣正、藤浩志の活動について、ナビゲーターの北澤は「作品と社会の境界線みたいなところでの試み」を行い、それが「活動のリソースになっている」と話を始めました。アートと教育や医療などの領域を横断し、その交じり合いを言葉にしていく試みを行っていたのではないかと、ナビゲーターの読み解きが広がりました。作品や場をつくっていくプロセスを重要視し、トークやアーカイブという手法を使うことで言葉を追いかける、そうした態度があるのではないか、という話も出ました。

「アートプロジェクトの転換点としての1999年」ではアートプロジェクトのイメージが確立した地点を1999年に設定し、東京藝術大学先端芸術表現研究科、取手アートプロジェクト、ミュージアム・シティ・プロジェクトとヴォッヘンクラウズールの活動などに触れました。課題解決のためにアートの手法を利用するソーシャリー・エンゲージド・アートといわれる欧米の実践と日本のアートプロジェクトの重なるところと異なるところの議論が、この頃に先行して起きていたのではないかというやり取りも行われました。

会場にはレクチャーの関連資料も配架されていた

レクチャーの後半は、ナビゲーター北澤自身のプロジェクトとコンセプトについて振り返りました。こへび隊として関わった「越後妻有アートトリエンナーレ 大地の芸術祭」や『明後日新聞社文化事業部』での五代目編集長としての経験といった原体験から始まり、『浮島』『リビングルーム』『DAILY LIFE』といったプロジェクトが話題となりました。現場を積み重ねるなかで試していたことやその経過から気付いたこと、そして、それらを言葉にしていくことについて語られました。

レクチャー後半の板書
北澤の退任挨拶が掲載された『明後日新聞』

今回のレクチャーを受けて、私は「アートプロジェクトの整理、体系化をこのレクチャーの「言葉」を使用して進めること」を実践してみたいと思いました。レクチャーに参加した実感と、北澤潤のナビゲーターメッセージから振り返って考えてみると、このレクチャーは「『アートプロジェクト』という言葉が時間をかけて構築されていく上で、肉付けとなった多くの実例を、『現場、評価、批評などの実践での言葉』を切っ先として解体していた」と思います。

レクチャーではアートプロジェクトを4つの視点に分類しましたが、2人のナビゲーターの対話には、ほかにもトピックとなる言葉がたくさん使われていました。たとえば「プロジェクトの主体は誰か」、「作品・プロジェクトは完結しているか、続いていくのか、どこで終わるのか」、「記録の方法はどうか」、「鑑賞者・参加者はどこまで、何を見ることができるのか」などです。このトピックは取り上げた各々のプロジェクトの特徴について語られたものですが、これは他の事例をみるポイントにもなります。今後のレクチャーで「アートプロジェクトの整理、体系化をこのレクチャーの「言葉」を使用して進めること」、そしてまた、トピックを自分で考え、設定することで自身の関心や興味を再認識していきたいと思いました。

参加者には当日の資料を入れるためのフォルダが配布された
印字された日付は北澤が『DAILY LIFE』で使っているもの
「自習」のための数多くの資料が用意されていた
参加者は自由に書き込み、レクチャー終了後に回収、スキャン後に返却された

(執筆:高木諒一/写真:CULTURE