デジタルアーカイブ・プロジェクト2015

本プロジェクトでは、アートプロジェクトの現場を担う小規模組織や個人が、持続可能な活動を実現させるためのデジタルアーカイブ・システムの研究と開発を行います。

Tokyo Art Research Labでは、2014年度に「東京アートポイント計画」に参加している各事務局の協力を仰ぎ、現場ニーズをヒアリングしながら、オープンソース・ソフトウェアを基盤にアーカイブ・システムを開発し、導入・運用を試験的に試みました。本年度は、これまでの成果や試験導入から浮かび上がった課題を踏まえ、より一般にも開かれ、現場で使いやすいアーカイブ・システムのサービス開発に取り組みます。

アートプロジェクトの「言葉」を編む(2015)

アートプロジェクトを実施、検証するうえでの理念や考え方にまつわる「言葉」の基盤を整備するプログラムです。現場の価値を表現し、その意義を広く共有し、長く検証の対象となるためのテキストやメディアのあり方を研究しています。その一環として、2013年度よりアートプロジェクトを語る上で重要となるテキストの著者を招き、その執筆意図や背景を伺い、読解するための公開研究会を全7回開催してきました。

また、テキストの収集過程では、1990年代以降のアートプロジェクトの検証にはウェブサイトに残された情報が重要であることが明らかになりました。しかし、一部のウェブサイトはサーバーの運営や無料サービスの利用などによりアクセスが困難となっています。これらの情報を広く共有し、長く保存するための方策を検証するため、2014年度は、美術家の藤浩志氏が10年書き溜めたブログ「Report 藤浩志企画制作室」から抜粋したテキスト集『思索雑感/Image Trash」2004-2015──校正用ノート』を制作しました。

これまでの経緯を踏まえ、2015年度は「言葉」を共有し、残すためのメディア制作の技術に焦点をあてます。具体的には『思索雑感』に込められた問題意識と、その制作過程を紐解きながら、編集の技術の共有とアーカイブの視点からウェブサイトを含めたメディアでの情報の残し方を考えます。

P+ARCHIVE(ピー プラス アーカイブ)(2015)

「地域・社会に関わるアート」に関心のある市民や学生、研究者が情報収集をおこなうことができるアート・アーカイブを構築・公開する「P+ARCHIVEセンター」の運営と、アート・プロジェクトを記録、アーカイブ化するノウハウの提供を行うことで、「地域・社会にかかわるアート」のプラットフォームを創出することを目指しています。

2015年度はアーカイブを実践するための入門書『アート・アーカイブの便利帖』を制作しました。本書は、アーカイブの考え方やスキルを包括的に取り上げた『アート・アーカイブガイドブック β版』とアーカイブのスキルをツール化した『アート・アーカイブ・キット』の知見を活用しています。

AKITEN運営マニュアル[空きテナントを使ったアートプロジェクト]

「AKITEN」は、文化や産業など地域の独自性を持ったコンテンツを空きテナントに持ち込み、アート、デザインの力でそれらの魅力を地域の内外へと発信していくプロジェクトです。誰もが空きテナントを使えるシステムを構築し、空きテナントをまちづくりのツールとして活用していきます。本誌では、これまで実施してきた事業を紹介しながら、プロジェクトの運営手順についてまとめました。

もくじ

はじめに

1 AKITENのしくみ
2 AKITENの活動事例
3 AKITENを運営しよう
4 資料集 AKITEN2014

おわりに

大島イイもの(2015)

時代を経て伝えられてきたものや、土地のくらしに根づいてきたものなど、伊豆大島でつくられた特産品や島にゆかりのある作品を集め、それらのつくり手のストーリーとともに紹介します。

もくじ

大島イイもの 特産品
椿油
椿
くさや
御神火焼酎
明日葉
牛乳煎餅
牛乳
島のり・はんばのり
パッションフルーツ
椿一刀彫り
ソーメン絞り

大島イイもの 復興
〈ホテル椿園女将・語り部〉 清水勝子
〈アーティスト〉佐々木久枝 〈イラストレーター〉 青木賢吾

大島イイもの 未来
椿かおる島〈映像作品〉
島の女たち(仮)〈映像作品〉

伊豆大島、どんなところ?

「つくる」でつながる新しいコミュニティ by TOKYO FABBERS

『TOKYO FABBERS』は、多彩な文化創造・発信地である渋谷および周辺エリアにおいて、デジタルファブリケーションを活用した、新しいものづくりコミュニティの創出を目指すプロジェクトです。

本書では、コミュニティづくりのために「これまでしてきたこと」「いまできること」「これからしていくこと」を紹介しています。

Picnic ピクニック形式パフォーマンス公演『威風DoDo』

『威風DoDo』は、隅田川を臨むように建っていた建造物「汐入タワー(都立汐入公園内)」とその周辺を舞台とした、ピクニック形式のパフォーマンス公演です。一般公募による出演者「アナター」をはじめ、若手パフォーマンス集団「フラワーズ」やさまざまなジャンルで活躍する若手アーティスト、地域住民らとの共創によってつくり上げられ、当日は総勢100名の出演者が汐入タワー周辺に集いました。本書は、ピクニックをより深く味わうためのツールとして制作されました。

もくじ

ピクニック形式パフォーマンス公演『威風DoDo』へようこそ

主な出演者たち
フラワーズ―企画の中心となったアーティスト集団
ソケリッサ―スペシャルゲストとして招かれた<新人Hソケリッサ!>
アナター―地球の上に堂々と立つ人々

ちょり語録 富塚絵美へのインタビューより抜粋

会場をつなぐ構成要素

遊び 大西健太郎による「風遊び」

風景画 藤田龍平のレジャーシート

星空 井川丹が誘う宇宙

企画の背景を探る ピクニック形式の批評は可能か

資料 汐入の歴史と現在

プロジェクト日誌―本番までの歩み

つくりかた研究所の問題集

『長島確のつくりかた研究所:だれかのみたゆめ』は、研究員の自治によるユニークかつ多彩な研究活動を通して、既存の方法論ではカバーしきれない「つくりかた」を発明・検証するプロジェクトです。今後のアートプロジェクトに多角的に貢献できる人材を育成することを目指しています。

本書は、プロジェクトの3年間の記録や研究員の文章をまとめ、それぞれの研究員たちが「つくりかた」を考えるなかで直面した「問い」を集めました。

もくじ

まえがき

1 アイディア
2 諸問題(理念的な)
3 研究室など

中野成樹
つくりかたの共有
つくりかたの思想史
客者評判記
エスノドラマ
土地の記憶
東京23区
うごきかた
寺山
川瀬一絵
環境音楽
さばきかた
テレビ
アーカイブ
須藤崇規
経理
小澤英実
大川原脩平

年表
あとがき
索引

TERATOTERA 2015 DOCUMENT

JR中央線の高円寺・吉祥寺・国分寺という「3つの寺」をつなぐ地域で展開しているアートプロジェクト『TERATOTERA(テラトテラ)』。2015年度も引き続き地域との連携を図り、場所や内容を変えながらたくさんの企画を実施してきました。

東小金井高架下でのトークから始まり、夏は小金井公園にある江戸東京たてもの園での音楽ライブ、秋は西荻窪を舞台とした滞在型の制作発表、そして冬には三鷹駅周辺を舞台にした大型展覧会を開催。また、こうしたイベントに併行し、アーティストやキュレーターに向けた英語のレクチャーなども実施してきました。

すべての企画はTERAKKO(テラッコ)と呼ばれるボランティアスタッフが中心的な役割を担っており、本書のほとんどがテラッコたちの言葉によって構成されています。

もくじ

TERATOTERAについて

はじめに
年間のイベントスケジュール

TERATOTERA SOUND FES. −音の陽炎−

西荻レヂデンス ‖:幽霊トリオをうつ:‖

アートプロジェクトで789(なやむ)

TERATOTERA祭り 2015 −Sprout−
プレイベント
アート
ライブ
演劇

作家プロフィール
アンケート集計

TERA English

TERAKKOの活動

おわりに

ART BRIDGE Issue 03 Spring 2016

Art Bridge Instituteは、アートが現代社会においてジャンルを横断しながら、人と人のつながりをつくり出してゆくことについて、その研究や実践に取り組んでいます。機関誌『ART BRIDGE』では、地域の問題に向き合い、交流を生み出すアートプロジェクトや、生きる技術としての「アート」のいまをリサーチします。

特集は「地球がささやく時 WHOLE EARTH WHISPERING」。時間や空間を超える印刷物、フォーラム「言葉の宇宙船 印刷物と思想の共有をめぐって」の記録や、自然と対話するように行われるアートプロジェクトなどについて深めます。

もくじ

CONTENTS
Forum
Art Bridge Institute フォーラム
言葉の宇宙船 印刷物と思想の共有をめぐって 芹沢高志+港 千尋

ART BRIDGEが出会った言葉の宇宙船

Bridge Talk 08
ブリッジの作り方シリーズ08
いいたてミュージアム編 モノが語る記憶と未来 小林めぐみ

Column 01
風の惑星 港 千尋

Bridge Talk 09
ブリッジの作り方シリーズ09
精神の〈北〉へ編 東北を見出す旅路 丸山芳子

Contribution 01
旅の途中に 佐藤李青

Bridge Talk 10
ブリッジの作り方シリーズ10
地霊編 後ろ姿から見た地球の風景 スザンヌ・ムーニー

Bridge Story
BRIDGE STORY
ラウンドテーブル2015→2016 関川 歩

Column 02
見えない橋 港 千尋

Feature
岡部昌生 被爆樹から被曝樹へ 港 千尋

被爆樹に触れて

Interview
風土とテクノロジーの結婚 新たな自由民権運動へ向けて 赤坂憲雄

Column 03
未来からの信号 港 千尋

Contribution 02
文化運動としてのリサーチ ブリギータ・イサベラ

Report 01
記憶の地図─場所を再確認するできごと 呂 孟恂

Report 02
『ART BRIDGE』に連れて行ってもらった 関川 歩

Report 03
二つの時間に生きた人々の痕跡 三重県 相おう差さつなます編 齋藤彰英

編集後記