東京2020オリンピック・パラリンピックを控え、芸術祭やアートプロジェクトなど文化事業への期待は、益々高まりを見せています。その一方で、乱立する芸術祭のあり方とその差別化、持続可能なアートプロジェクトのあり方やそれを支える運営体制などの仕組みづくりは、引き続き大きな課題です。集中講座では、アートがもたらす気付きや可能性の意義を問い続け、実験的な活動に取り組むゲストを迎え、現在かれらが向き合う課題や挑戦を共有しながら、アートプロジェクトのこれからのあり方を探ります。
2016年秋、世界的なクラッシック音楽や現代アートのフェスティバル「アッセンブリッジ・ナゴヤ」が開催されました。アート部門の『パノラマ庭園ー動的生態系にしるすー』では、大人がゆっくり歩いて1時間ほどの名古屋港エリアを舞台に、まちや暮らしの伱間にアートが入りこんでいくようなプロジェクトを展開。さらに、各会場の立地や巡り方からは、単に作品を鑑賞するだけではなく、参加者の視点や感覚を能動的にする「体験の設計」が見られるなど、まちとアートの心地よいバランスを感じさせるものでした。
今回は、その取り組みと挑戦に着目しながら、プロジェクトの運営に迫ります。事業設計や運営体制、チームワーク、地域の人々との関係性の築き方など、事例にそって一つひとつ紐解きながら、持続可能なアートプロジェクトのあり方について考えます。
フィールドワークにおけるリサーチ手法、アウトプットやそれらにまつわる作法に関するグループリサーチを重ねてきた「旅するリサーチ・ラボラトリー」。3年目の旅のキーワードは「接点、結び目、もつれ、難曲」など複層的な意味を含むラテン語「Nodus(ノドス)」。旅の地は、東京・竹芝港から1000km、24時間の航海の先、様々な歴史と文化が交錯する小笠原諸島。3名のリサーチャーの視点と考察の違い、それらがどのように接触・交換し化学反応が起きるのか、自ら観察・記録することに取り組みました。
今回の報告会では、旅の準備や12日間の旅の軌跡をメンバーと振り返りながら、その取り組みをご紹介します。
東京2020オリンピック・パラリンピックを控え、芸術祭やアートプロジェクトなど文化事業への期待は、益々高まりをみせています。その一方で、乱立する芸術祭のあり方とその差別化、持続可能なアートプロジェクトの在り方やそれを支える運営体制などの仕組みづくりは、引き続き大きな課題です。集中講座では、アートがもたらす気付きや可能性の意義を問い続け、実験的な活動に取り組むゲストを迎え、現在かれらが向き合う課題や挑戦を共有しながら、アートプロジェクトのこれからのあり方を探ります。
2016年より毎年1組のアーティストと向き合い、別府で新作をつくり出す個展形式の芸術祭「in BEPPU」がはじまりました。それを主催しているのは、約10年間「別府現代芸術フェスティバル『混浴温泉世界』」を中心に、別府のまちを舞台にアーティストや地域の人々と協働しアートプロジェクトを展開してきたNPO法人BEPPU PROJECT。なぜ、多数のアーティストが参加する従来の芸術祭からシフトしたのでしょうか。
昨年開催した「目 In Beppu」の仕掛け人・山出淳也さん、アーティスト・目とともに紐解きながら、これからの芸術祭のあり方を問います。
「対話」は、「思考」「技術」を鍛えるための必須能力。プロジェクトの情報を共有し、さまざまな立場の人と協働し、新たな展開を切り開くための力です。アーティストと一年の活動をともにすることで、アートプロジェクトに必要な多角的視点と、企画・運営のための実践力、そして対話力を身につけます。
アーティストユニット「Nadegata Instant Party(中崎透+山城大督+野田智子)」、学びに伴走するスクールマネージャーとともに、意識的に時間をかけて学び合う基礎プログラムです。
「技術」は、会議の設定の仕方からプロジェクトの現場の仕切り方といった実務、記録をアーカイブ化し未来へ発信すること、また評価までのマネジメントフローなど、さまざまな局面で必要とされる事柄を遂行する能力のこと。
「演習問題」を通して、少人数のグループワークを実施。アートプロジェクトのはじまりから終わりまでのワークフローを学び、業務の必要性を理解した上で、現場で求められる技術を磨きます。
「思考」は、社会動向を見据え、どのようなプロジェクトが必要か、また、そのために必要なオペレーティングシステム(OS)を考える能力のこと。思考編では、授業や課題をとおして、「なぜアートプロジェクトを行うのか?」「社会的な課題に対してどのようにアプローチするのか?」「自分はどのようにかかわりたいか?」など問いを立てながら、アートプロジェクトが扱う領域のイメージを広げる考え方を学びます。
多彩な講師陣と、学びに伴走するスクールマネージャーとともに、意識的に時間をかけて学び合う基礎プログラムです。
全国各地では年間を通じて無数のアートプロジェクトや芸術祭が開催されています。その一方で、それらの運営を支える担い手たちの労働環境の整備は追いついておらず、多くの現場では担い手の専門性や雇用の問題が顕在化しつつあります。
「『幸せな現場づくり』のための研究会」では、文化事業・アートプロジェクトの担い手の働く環境をめぐるさまざまな問題と向き合いながら、2年間にわたり議論を重ね、その成果をまとめた本『働き方の育て方 アートの現場で共通認識をつくる』を発行しました。
今回は、その本の内容や活用法を紹介するとともに、アートの現場における働き方は今後どうあるべきかについて考えます。
詳細
「幸せな現場づくり」のための研究会とは
アートプロジェクトの現場における文化創造の基盤の充実及び担い手の専門性の向上、職域の認知向上に必要な言説とメソドロジーを提示する、『幸せな現場づくり』のための研究会。国内外の現場を経験してきたアート・コーディネーター、プランナー、コミュニティデザイナー、会計士という専門性の異なる研究会メンバーによって、現在進行形の現場の課題や可能性を議論し、言語化していきます。そこで発見された知識や視点をツール化し、共有することで、これから増加し多様化する担い手とともに「公共政策としての文化」を根付かせていくことを目指します。
アートプロジェクトの現場における文化創造の基盤の充実及び担い手の専門性の向上、職域の認知向上に必要な言説とメソドロジーを提示する、「幸せな現場づくり」のための研究会。
1990年代にアーティスト主導で萌芽をみたアートプロジェクトは、2000年の越後妻有アートトリエンナーレの開始を皮切りに自治体主導による芸術祭規模への発展とともに増加し、現在では全国各地で多様な担い手によって開催されています。一方、1980年代から1990年代にかけて各地に建てられた美術館のようには制度化されておらず、多くの現場では担い手の専門性や雇用の問題が顕在化しつつあります。今後、東京2020オリンピック・パラリンピックに向けて文化プログラムの急増が予想されるなか、現場で働く人々が社会資本の強化の担い手として活躍していくためには何が必要なのでしょうか。
本プログラムでは、これまで国内外の現場を経験してきたアート・コーディネーター、プランナー、コミュニティデザイナー、会計士という専門性の異なる研究会メンバーによって、現在進行形の現場の課題や可能性を議論してきました。本年度は、研究会から発見された知識や視点を一冊の書籍として言語化することで、これからのアートの現場に必要な「共通認識」の形成に寄与することを目指します。