「第3コーナー」のつくりかた:記録・編集・アーカイブ

――「プロジェクトの運営を競技場のトラック1周にたとえるならば、準備から実施までが、ちょうどトラック半周の第2コーナーといえるだろう。そして、第3コーナー以降は、記録や調査をもとに活動を振り返り、その成果を関係者へ報告し、検証・評価する段階である。プロジェクトを持続的に展開するためには、この第3コーナー以降が重要だ」
『東京アートポイント計画が、アートプロジェクトを運営する「事務局」と話すときのことば。の本<増補版>』アーツカウンシル東京、2017年、68頁より)

「第3コーナー」(記録・編集・アーカイブ)の実践として、2018年度に事業実施から10年目を迎える東京アートポイント計画を事例に『10年史(仮)』の企画編集、記録の整理やアーカイブ構築の準備を進めます。これらの作業を通して、Tokyo Art Research Lab研究・開発が積み重ねてきた知見の再検証を試みます。

詳細

概要

Tokyo Art Research Lab 研究・開発では『アートプロジェクトの運営ガイドライン(運用版)』の「ブレインストーミング→企画・準備・実施→報告・検証・評価」という運営サイクルの見方にのっとりながら、「企画・準備・実施」と「報告・検証・評価」の間にあるアーカイブや記録、調査に重点的に取り組んできました。

また、記録を活用し、実践の価値を広く共有するための言葉の編集方法や、メディアの届け方も検討してきました。これらの知見を活用し、本プログラムを実施します。

※本プログラムは「アートプロジェクトのつかまえかた:評価の視点/検証の手法」「地域と文化と制度の研究会」と連動し、展開します。

技術を深める(第3回)

アートプロジェクトの心構えや、広報・PR、運営、記録と評価/検証などをテーマに、アートプロジェクトの現場で求められる技術について掘り下げていく全4回の公開講座シリーズ「技術を深める」。

第3回は、アートプロジェクトにおけるリスクマネジメントに焦点を当てます。アーティスト、地域住民、一般参加者など、さまざまな人がかかわり、まちなかで展開するアートプロジェクトにおいて、運営者にはリスクマネジメントの視点が求められます。大きな音を出す場合は近隣住民への事前周知、道路や広場を使用するイベントでは許可申請も必要です。スタッフやボランティアに対する保険、混雑時の観客誘導を考慮する必要もあるでしょう。

今回のゲストには、市民参加型アートプロジェクト〈アートアクセスあだち 音まち千住の縁〉事務局長の吉田武司さんをお呼びします。千住のまちで7年続く、大巻伸嗣《Memorial Rebirth 千住》などを事例にお話しいただきます。

アートプロジェクトが企画から実施にいたるまでには、どのようなリスクが潜んでいるのか、知見を参加者と共有し、見過ごされがちな運営の落とし穴についても、ワークをとおして考えます。本講座では、運営にまつわるリスクを想定しながら、かかわる人や物事を守るという視点からアートプロジェクトのリスクに向き合う技術を身につけます。

アートプロジェクトの今を共有する(第3回)

アートプロジェクトには、他ジャンルとの融合を図り、アーティストと市民の協働を可能にする多様な取り組みがあります。本シリーズ第3回は、食とアートを通して地域に関わる表現を行い、最近では市民の持続的なかかわりを生み出すための手法を模索するEAT&ART TAROさんをゲストにお迎えします。

おにぎりをおいしく食べるための運動会《おにぎりのための、毎週運動会》(いちはらアート×ミックス、2014年〜)、地元のお母さんたちがつくった食事を鑑賞者が味わうまでの一連の動きを演劇に仕立てた『上郷クローブ座レストラン』(大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ、2015年〜)など、これまで様々な地域でアートプロジェクトを行ってきたEAT&ART TAROさん。

去る10月22日まで開催されていた「奥能登国際芸術祭2017」では、《さいはての「キャバレー準備中」》を出品。会場にしたのは、見晴らしの良い海の眺望と、アールヌーボー調のしつらえが特徴の元レストランです。準備中のキャバレーという設定で飲食店の形態をとりつつ、アーティストが前面に出るのではなく、地元住民、観光客など、そこに集う人々のコミュニケーションや新たな活動を誘う場を生み出しました。興味深いのは、会期を終えてもこの場を残すことを目指し、地元住民が継続していける方法を模索している点です。今回はこの取り組みを事例として、アートプロジェクトの経緯や仕組みづくり、地元住民の反応や持続的にかかわる方法、今後のあり方などについて、お話を伺います。