Art Support Tohoku-Tokyo 2011→2021

Art Support Tohoku-Tokyo 2011→2021は、東日本大震災の経験を未来につなげるメディアです。震災をきっかけに育まれてきた、さまざまな経験や技術を振り返り、受け渡したい。新型コロナウイルスの感染が拡大し、世界中が変わりゆくなか、東北にこころを寄せてきた人たちとともに、いまとこれからについて考えたい。
東日本大震災から10年目。この先もこれまで各地で育まれてきた関係性が続いていくように、2020年6月から2021年3月11日まで、人に出会い、声と向き合い、土地の風景と出会い直す場をつくりました。

もくじ

特集|10年目のわたしたち
東日本大震災から10年目、いま何を考えていますか?
震災後、地図を片手に歩きはじめる
10年目の手記
こどもだったわたしは
あのとき あのまちの音楽から いまここへ

連載|東北からのたより
10年目をきくラジオ モノノーク
復興カメラ 今月の一枚
2020年リレー日記

ひとびと
わたしたちについて

ほやほや通信 第3号

岩手県釜石市にある「かまいしこども園」の活動紹介と、こどもたちへの遊びのきっかけを盛り込んだフリーペーパーです。

「ホヤ」といえば、釜石市民にお馴染みの海産動物を思い浮かべるかもしれませんが、「ほやほや」という言葉には、「でき上がったばかりで、柔らかく湯気の立っているさま」「その状態になったばかりであるさま」「声を出さず、にこやかに笑うさま。ほくほく」といった意味があります。園とこどもたちが生み出す、「ほやほや」な出来事をお召し上がりください。

もくじ

座談会 | 点と点がつないだ縁 ~10年の軌跡を振り返る~
川原康信さん・上野育恵さん(NPO法人@リアスNPOサポートセンター)
× 阿部美香子さん(釜石市民ホール TETTO)× 藤原けいと園長(かまいしこども園)
× 熊倉純子教授(東京藝術大学教授)× 渡邉梨恵子さん(一般社団法人 谷中のおかって)

かまいしこども園のうたの誕生のヒミツ
「みらい」との通信|大西健太郎

子どもたちの応援団
かまいしこども園の先生たち/いっしょに読んでみよう!
生活がアート!~0歳児から学ぶこと~/りんめいさんのミックスクッキング/4コマ漫画

活動報告 | リモート版 ぐるぐるミックスレポート
[年表] ASTT(東京都による芸術文化を活用した被災地支援事業)をめぐる釜石・大槌との10年の歩み

集えない状況でどう集う? 各アートプロジェクトの状況を共有しよう

2020年5月13日、2020年度第1回目のジムジム会を開催しました。テーマは「集えない状況でどう集う? お互いの状況を共有しよう」です。レポートをお届けします!

まずは互いの状況共有から

5月13日の東京都は、いまだ緊急事態宣言下でした。東京アートポイント計画に参加している9つのアートプロジェクトの事務局もまた、イベントの開催はもとより、事務局メンバーが対面で活動することもストップしている最中。

この状況でプロジェクト事務局はどのように過ごしてきたのでしょうか? 企画の立て直しやスケジュールの変更、関係者間のコミュニケーションはどんな状況になっているのでしょうか? 互助会のような勉強会を目指すジムジム会ではまず、それぞれの状況を共有することからはじめました。

アーティストと実験してみる!

たとえば、足立区で展開しているアートプロジェクト「アートアクセスあだち 音まち千住の縁」(通称:音まち)では、集えないなかでもアーティストとともに意欲的な実験を重ねているようです。10年に渡り地域の縁をつむぐ活動をしてきた音まちらしい展開です。(報告:特定非営利活動法人音まち計画 櫻井駿介さん、今井迪代さん、吉田武司さん)

実験その1:Zoomで「だじゃれ音楽研究会」

音楽家・野村誠さんと2011年から続けてきた、だじゃれと音楽を組み合わせたプログラム「千住だじゃれ音楽祭」。市民による有志の音楽団体「だじゃれ音楽研究会」を結成し、毎月1〜2回の活動(近況報告、話し合い、即興セッションなど)を中心に集まってきました。

コロナ対応下で集まることが難しくなって以降は、Zoom上で集まり作曲や即興演奏を試みるようになりました。(例えば、上の画像は、指揮者役の人の手の動きに合わせてメンバーが動物の鳴き声をあげる即興セッションの試み)

Zoomならではのタイミングのズレや、コミュニケーションの間なども創作の面白みとして取り入れ、「だじゃれ音楽研究会」らしいオンライン活動でのありかたを探っています。

実験その2:動画であそびを共有する「メモリバ学校の昼やすみ」

美術作家・大巻伸嗣さんと2011年より展開してきた、無数のシャボン玉で風景を変貌させるアートプログラム「Memorial Rebirth 千住(通称:メモリバ)」。毎年恒例となったこのプログラムは、市民チームが主体的に運営に関わっています。ただし、今年は当初予定していた4月の開催を見送り、来年3月に延期することになりました。

そんな中、次回開催までにオンラインでできることはないかとはじまったのが、「メモリバ学校の昼やすみ」です。いままでメモリバに関わってきた様々なメンバーが「シャボン玉」「メモリバ」などから想起されるおうちでできる「あそび」を実験し、動画として公開。実際にあそんでみた人にはSNSでハッシュタグをつけて投稿してもらいます。

どんな状況でも関わりのバトンをつなごう、アートの視点を日常に持ち込もうという企画です。もともとコロナ禍以前から「やってみたい」と考えてきたアイデアのひとつで、この機会にオンラインで展開することになりました。

>メモリバ学校の昼やすみ動画:【親子でチャレンジ】割れにくいシャボン玉でちょっと変わった遊び方

他にも続々と動画を公開中です!

実験その3:窓際で収録する音の文通

2016年にスタートした、文化活動家・アサダワタルさんとのプログラム「千住タウンレーベル」。市民メンバーとともにまちの音を収録し、その音をまちなかで味わうような活動を重ねてきました。

プログラム4年目で訪れた今回の状況。そこで、自宅でできる音のプログラム実験として「声の質問」をはじめました。これは、作曲家で寺山修二の秘書であった田中未知さんの著書『質問』にインスパイアを受け始まったプロジェクトです。

最近会えていない知人宛にオリジナルの質問を音声で送り、音声で答えてもらうという試み。生活音や息遣いも含めた音を通して、会えない状況でも相手の存在を確かめることができるやりとり。現在はメンバー間で実験中ですが、この先の公開プログラムや新たな企画のヒントになることを目指しています。

新たなコミュニケーションを考える!

また、墨田区を中心に活動するアートプロジェクト「ファンタジア!ファンタジア!−生き方がかたちになったまち−」(通称:ファンファン)からは事務局内での情報共有の工夫が報告されました。ちょっとした気づきをとりこぼさず、アイデアにつなげるコミュニケーションの仕組みづくりをしているそう。(報告:一般社団法人うれしい予感 青木彬さん)

仕組みその1:Slackで続ける#FYI

もともとチーム内の情報共有としてつかっていたSlackのなかの「#FYI(For Your Information)」チャンネル。対面で集まらなくなってからは、気になった情報やニュースをシェアするこの掲示板が活発になっているそう。

仕組みその2:Google Keepで日々のことをメモ

新たにはじめたのは、Google Keepでの情報共有。「毎日のこと」「失ったもの」「ラジオのこと」「作業日」などのタグをつけ、毎日メンバーの誰かが投稿して読む習慣ができているそう。ちょっとした気づきをとりこぼさない仕組みです。

仕組みその3:ラジオ番組風に10分トーク

5月5日からはじまったのは、事務局内ラジオ。Zoomをビデオ無しで使用し、音声の収録をしています。「聞き手」と「話し手」に別れ、10分ずつそのとき気になっているものについて語り、音声を共有する仕組み。

ファンファンでは今後、これまで展開してきたプログラムをオンラインで実施するための動画をつくったり、手で配ってきた定期レターを近隣店舗のテイクアウトの流通経路に乗せるような企画も進めています。

ファンファンではジムジム会に合わせ、バーチャル背景ならぬ“アナログ前景”的なキット(印刷した紙を切り貼りしてカメラ前に垂らす)も発明。ナイスアイデア!と、他チームからも好評でした。

「集わず集う」ことを発明したい

東京アートポイント計画では都内各地で9つのプロジェクトを展開していますが、今回あらためて、それぞれがそれぞれの規模や地域にあった動きをしていることがわかりました。

「このアイデアはうちでもやってみたい!」「企画がはじまったら続きが知りたい」など開催後には前向きなコメントが集まっています。

一方で、「オンラインイベントのノウハウがわからない」「新しい出会いが生まれにくい」「オンライン環境から遠い人を取り残さないためには」などの課題もあることがよくわかりました。

今後のジムジム会ではこういった悩みをひとつひとつ取り上げながら、「集わず集う」ことの新たな方法を試行錯誤していきます。

(執筆:きてん企画室)

2020年度ジムジム会第1回はZoom開催。40人超の会になりました!

手話と出会う〜アートプロジェクトの担い手のための手話講座 基礎編2020〜

アートプロジェクトの現場で使える手話の基礎を学ぶ

異なる背景をもつ人々が集い、語り合い、ともに活動するアートプロジェクトでは、日々さまざまなやりとりが交わされています。プロジェクトの場や時間をより豊かにしているのはその多様なコミュニケーションである、と言っても過言ではありません。視覚身体言語である「手話」も、そのひとつです。

このオンライン講座は、アートプロジェクトの運営にかかわっていて、手話や身体言語を用いたコミュニケーション力を磨きたい人や、プロジェクトの説明やコミュニケーションをより円滑に行う技術を深めるためのものです。

手話・身体表現ワークショップ講師である河合祐三子さんと、手話通訳士の瀬戸口裕子さんとともに、「伝える」と「伝わる」の違いを知り、全身をつかって表現することを体験し、アートプロジェクトの現場で活用できる手話を身につけることを目指します。また、アートプロジェクトにおけるコミュニケーションやアクセシビリティに関する課題についても考えていきます。

詳細

スケジュール

7月1日(水)、8日(水)、15日(水)10:00~11:00
第1回〜3回 手話の基礎表現

  • 自己紹介
  • 日時と曜日
  • 1日のスケジュールなどについて伝える

7月22日(水)、29日(水)、8月5日(水)10:00〜11:30
第4回〜6回 自己表現してみよう

  • 天候や趣味、交通についての表現を知る

8月26日(水)、9月2日(水)、9日(水)10:00〜11:30
第7回〜9回 コミュニケーションに必要な表現を学ぼう

  • 自分がかかわっているアートプロジェクトを紹介する

9月16日(水)、23日(水)、30日(水)10:00〜11:30
第10回〜12回 実際にコミュニケーションをしよう

  • アート/アートプロジェクトについてのミニプレゼンテーション
  • イベント運営のシミュレーション
  • 手話を交えたオンライン会議の実践
  • ろう者の参加を想定したプロジェクト運営のポイント、注意点について

参加費

10,000円

YATOの山野草 秋/冬

「谷戸(やと)」と呼ばれる、丘陵地が浸食されて形成された谷状の地形をもつ町田市忠生地域にて、その土地の歴史や文化をリサーチしながら、500年後に続く人と場の在り方の仕組みを考える『500年のcommonを考えるプロジェクト「YATO」』。地域を知り学ぶ取り組みの一つとして、山野草を通じて、こどもたちとともに地域の自然に触れ親しむワークショップの成果をまとめました。

地図のような水彩画の表面は、簗田寺を囲むように茂る野草たちの情景を表現したもの。ワークショップ当日に歩きながら感じた印象を伝えるように抽象化して描かれています。植物図鑑のような裏面は、そのとき見つけた植物を描き並べたもの。何気ない風景のなかに、意識しないと気づかずに通り過ぎてしまうほどささやかな、けれども、とても豊かな色やかたちをもつ植物があることに気づいたときの驚きとともに表現されています。

秋の簗田寺をめぐり、YATOの生態系に触れる。
この土地の自然とともに暮らす齋藤美智子さんの導きで出会った山野草の数々と、目にした風景、そして感じた色模様を、アーティスト 小川哲さんが心象地図として描きあげました。

(「YATOの山野草 秋/冬」表面より)

その時、ファンファンは!?

それまで当たり前だと思っていた考えを解きほぐす「対話」を生み出し、地域の文化資源の活用から「学びの場」を創出する『ファンタジア!ファンタジア!―生き方がかたちになったまち―』。本書は、2020年度に実施したプログラムの裏側で、事務局がどのようなことを考えていたのかを振り返る、副音声風のリーフレットです。

「ファンタジア!ファンタジア!―生き方がかたちになったまち―2020ドキュメント」と併せてご覧ください。