顔出しオンラインイベントはもう飽きた…!? 人形劇+ラジオ風に進行してみました。

人間が物事に慣れる速さってなかなか恐ろしいものがあります。

「モニター越しに会議ができるなんて便利!」と喜んでいたのも束の間、「人の顔がずらっと並ぶオンライン会議の画面、もう見飽きた。なんだか疲れる」なんて声がときどき聞こえてきませんか?

確かにリアルな場だったらそんなに顔ばかり注視する(される)こともないわけで、ストレスを感じるのも分かります。毎回30人前後がZoom越しに参加する「ジムジム会」でも、この「顔出しオンラインイベントに疲れた問題」はひとつの課題でした。

そこで、第4回でやってみたのがこちらです。まずは動画をご覧ください。

そう、人形劇+ラジオ風に進行してみました。

2時間の勉強会イベントで司会者がずっと人形姿……というなかなか突飛な演出でしたが、「声に集中できる」「アナログ感にほっこりする」と好評だったので、簡単にその工夫ポイントをご紹介します。

✅ 人形はちょっと下手なぐらいが親しめる

オンラインイベントの落とし穴は、うっかりすると「テレビ番組みたいな放送」や「YouTuber みたいな動画」を目指しそうになること。でも映像的品質を追いかけていくとキリがないし、本末転倒になりかねません。そこで今回の「人形劇」では、いかにも手作りで“下手っぴ”な人形を用意しました。そのぐらいのほうが親しみも湧きますし、画面のこちら側とあちら側を分断せずにすみます(おそらく)。

✅ アナログなアイテムを上手に使う

アナログな世界ではデジタルがカッコよく見えるし、デジタルな世界ではアナログが暖かく見えるもの。ということで、人形に合わせてコーナータイトルやちょっとしたキーワードも手書きで用意し、その場で書画カメラに写しながら演出してみました。デジタルでやればテレビ映像的になる演出も、人形+手書き文字だとほっこり優しく伝わります

✅ デジタルテロップも上手に使う

一方でジムジム会は勉強会ですから、情報をしっかり正確に伝えることも重要です。人形と手書き文字だけでは伝えきれない情報は、いつものイベントと同様にスライドで表示しました。たとえば下のような場面では、ビデオスイッチャーの合成機能を使って、書画カメラ映像の上にサイズを変えたスライド表示させています。

✅ 音を効果的に差し込むとラジオらしくなる

音響面でいうと、ラジオ風にするには音楽が欠かせません。コーナーの切り替えで音楽を差し込んだり、司会が話すシーンでは薄くBGMをかけ続けたりしました。このときに音源は、NCSBensoundなどのフリー音源サイトから楽曲を使っています(※使用する際には表記ルールなどもあるので利用規約を必ず確認してください)。また配信時の音声は、オーディオミキサーを使ってマイクとBGMの音量を調整しています。

✅ ラジオ台本はコーナーごとに印刷する

そしてラジオといえば台本。いつものジムジム会は流れだけ決めてアドリブで喋るようにしてきましたが、今回は台本もしっかり書いてみました。このとき、コーナーごとに印刷すると見やすいし、読み間違えもありません。また、コーナー変更のきっかけとなるセリフは赤字や太字にするなどして、音響担当とタイミングを合わせるために共有しておきます。

✅ 照れずに堂々と進行し、リハーサルもしっかりやる

そして最も大切なことは照れないこと。堂々とやりきること。いい大人が人形劇でラジオ風……冷静になったら終わりです。楽しく、明るく、当たり前の顔をしてやりきることが、モニター越しの参加者によい空気を届けます。ちなみにリハーサルもしっかり本気で何度もやりました。

実際のスタジオの様子。司会担当+人形担当+音響担当の編成

顔出しに飽きたら人形になろう!?

以上、人形劇+ラジオ風演出の実験でした。顔出しが当たり前になった今日この頃だからこそ、例えばこんな演出もアリなのでは? というご提案です。よかったら試してみてくださいね!

人形担当という新しい仕事が生まれました

オンライン報奏会(ほうそうかい)2020

福島と東京、それぞれの場所でつながり続ける

2020年4月、緊急事態宣言が発出されて以降、多くのアートプロジェクトが中断し、同時にオンラインを含む新たな手法を検討すべきなのか、議論を余儀なくされました。アートプロジェクトの現場へ足を運ぶことが難しい状況で、それぞれの場所にいながら、プロジェクトを成立させるために、どのような手立てがあるのでしょうか。

アサダワタルさん(文化活動家)を中心に、福島県いわき市にある県営復興団地・下神白(しもかじろ)団地で行われているプロジェクト「ラジオ下神白 あのときあのまちの音楽からいまここへ」も、現地訪問が困難になり、オンラインでの開催方法を模索しています。

2016年からはじまったこの取り組みでは、住民が住んでいたかつてのまちの記憶を、馴染み深い音楽とともに収録するラジオ番組を制作し、それらをラジオCDとして住民限定に配布・リリース。こうした活動を軸に、立場の異なる住民同士やふるさとの交流を試みています。

また2019年には、住民の「メモリーソング」のバック演奏を行う「伴奏型支援バンド(BSB)」を結成。関東在住のミュージシャンが団地住民のもとに伺い、現地から遠く離れているからこそ音楽を通じた「想像力」で、住民との関係を深めてきました。

そして2020年。コロナ禍においてオンライン訪問を継続しつつ、「会えない」という状況だからこそできる「表現×支援」の関係をより深く見つめながら、3回シリーズの報告会を行います。音楽をかけながら行うラジオ風トークを軸に、記録映像の上映、またBSBによる演奏、住民との中継コーナーなどを実施。「報」告会でありながら、演「奏」会でもあるオンラインの場づくりです。

詳細

スケジュール

9月22日(火)14:00〜16:00
第1回 2017年〜2018年の報奏

12月27日(日)14:00〜16:00
第2回 2019年の報奏 とりわけ伴奏型支援バンド(BSB)編

2月23日(火)14:00〜16:00
第3回 表現・想像力・支援編

ゲスト:いとうせいこうさん

関連サイト

ラジオ下神白プロジェクトウェブサイト

ろう者と聴者の文化の違いを知る。「7月中」はどんなイメージ?|レクチャー「手話と出会う」第2回

Tokyo Art Research Lab(TARL)「思考と技術と対話の学校」では、アートプロジェクトを「つくる」という視点を重視し、これからの時代に求められるプロジェクトとは何かを思考し、かたちにすることができる人材の育成を目指しています。2020年度は、実践的な学びの場「東京プロジェクトスタディ」、アートプロジェクトの可能性を広げる「レクチャー」、プロジェクトを行う上で新たなヒントを探る「ディスカッション」の3つのプログラムを展開。レクチャー「手話と出会う〜アートプロジェクトの担い手のための手話講座(基礎編)」の様子や実施するなかでの気づきを、モデレーターを務める担当プログラムオフィサーの視点で綴ります。

前回は、手話に慣れること、サイレントな状態に慣れていくことを目指したレクチャー「手話を出会う」の第1回の様子を書きました。今回は、いつも何気なく言っている伝え方がコミュニケーションのズレを生んでしまう可能性があること、ろう者と聴者の文化の違いに触れた第2回の様子について綴ります。

前回のレポートはこちら

▼第2回|手話は「イメージ」が大事

第1回から、河合祐三子さんは何度も「どんなイメージ?」と参加者に尋ねるのが印象的だった。名前の表し方のときも「桜はどんなイメージ?」「川はどんなイメージ?」というように。

第2回(7/8)は、日常生活でよく使われることばや単語を通して、手話の表し方の背景にあるイメージについて学ぶ時間となった。例えば、赤色(=口紅を塗るイメージ)、青色(=男性の髭剃りのあと)、黒色(=髪の毛の色)や、月曜日(=三日月のかたち)、火曜日(=火が燃えるイメージ)、水曜日(=水の流れ)、木曜日(=木が根っこから生えていく様子)、金曜日(=コインのお金)、土曜日(=土を掴んでパラパラと落とすイメージ)、日曜日(=カレンダーの日付表示が赤色のため、赤色と休みの手話を合わせる)など。手話で表しながら、頭のなかでそのイメージを重ね合わせていく。

また、時代によって手話の表し方も変化していく話も興味深かった。例えば「洗濯する」という手話は、昔は洗濯板を使って洗っている表現だったが、現在は洗濯機で洗う様子で表すのだそう。「電話」も今ではスマートフォンが主流だから、四角く平たいものを持って耳に当てる表現が若年層では増えているらしい。「でも、私は親指と小指を立てて耳に当てる(ハワイ語の[アロハ]のような手を耳に当てる)表現がしっくりくるの」と河合さん。

日常生活のなかにあるもの、暮らしの動作のイメージが反映されどんどん言語化されているのだと実感する。そして、「こうやって表す」というルールに縛られるのではなく、自分にしっくりくる表現を使うというのも大事なのだと知った。ことばは生き物だ。手話も同じ、常に変化し続けていくもの。でも、「電話」は親指と小指を立てて耳に当てる表現が誰かと電話している感じがあって、私も好きだなぁと思う。

たくさんの手話表現に触れる

数字、曜日、今日、昨日、明日、1日、2日、3日、来週、先週、1週間、2週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、◯時◯分など、この日は、日常生活でよく使われる時制の表し方について一気に触れたものだから、ものすごい数の単語とそれぞれのイメージのシャワーを浴びているようだった。60分講座の内容としては、かなりのボリュームだと思う。でも、赤ちゃんがことばを覚えていくときも、知らないことばを日々たくさん浴びて過ごして少しずつ発話できるようになるように、手話学習もとにかく知らない手話表現に触れていくことが大事なのだ、と河合さんが教えてくれた。

時間は、腕時計(してる、してないに限らず)を指差し、その後、時間の数字を表し、1日は、自分の体を軸にして太陽が登って沈む様子を表したりと、ここでも物や動作のイメージがつながっていく。時間を表す練習をしながら、参加者からこんな質問があった。

数字の「5」を表すときは手の平、手の甲のどちらを相手側に見せるのが正しいですか?

すると「どちらの方がやりやすいですか?」と河合さん。数字は手の甲を相手側に見せることが多いらしいが、手首をがんばって捻ろうとせず、やりやすい方、身体の動作の流れのなかで負担なく表せる方で良いようだ。また、自分の利き手を動かすことが多いのだそう。

手話は自分が「見たまま」を表せばいい

これはなるほど!と思った。例えば、「1時間」だったら、人差し指を立て「1」を表し、腕時計の側で自分から見て「時計回り」にぐるっと1周させる。相手に向かって反時計回りに見せる必要はない。その他の表現も同じように、自分が「見たまま」を表せば良い(ものによっては、逆転して表現する場合もあるらしいが、多くは自分が見たままで大丈夫とのこと)。

それを聞いて、普段の会話のイメージは、向かい合ってキャッチボールするような絵を思い描いていたが、手話の会話は相手の隣に座って同じ方向からイメージを眺めながら会話しているような、相手の視線に自分の視線を重ね合わせて話をしているような絵を思い浮かべた。まだなんとも上手く言えないのだけど、誰かの話を聴く、話を伝えるときの何か大切な身体性のヒントがあるような気がしている。

ろう者と聴者の文化の違い「ゆみこ&ゆうこりん劇場」開幕

第2回の最後、時間の捉え方に関するろう者と聴者の文化の違い、イメージの違いについて、河合さん、瀬戸口裕子さんそれぞれの経験をもとに芝居形式で伝える新たな試みを行った。その名もおふたりの名前を題して「ゆみこ&ゆうこりん劇場」!

●待ち合わせの時間

ふたりは、「明日、3時10分前にここに集合ね」と約束をして別れる。次の日、「まだ来ないなぁ…遅いなぁ…」と集合場所で待っている瀬戸口さん。そこに「やぁやぁ〜!」と元気よくやって来た河合さんに向かって、「遅いよ〜!」と瀬戸口さん。

河合さん「え?いま、3時7分だから、ちょうどぴったりの時間だよね?」

瀬戸口さん「違う〜!3時10分前だから、2時50分の意味だよ〜!」

「え〜!」とがっくり肩を落とす、河合さん。

この時間の捉え方の違いは、「〜前」という手話表現が、「3時10分」の「前」という表し方になるために起こるのだそう。聴者は何気なしに「◯時前集合」と言って少し曖昧な表現で時間を伝えることがある。その感覚のまま手話で伝えるとこうしたズレが生まれてしまうのだ。ろう者に伝えるときは「具体的に伝えることが大事」と河合さんと瀬戸口さん。「〜の前」という声のことばのイメージと手話表現のイメージの違いを知った。

●書類の提出締切日について

瀬戸口さんは、河合さんに書類作成を依頼したが、提出締切日の捉え方に違いがあった様子。

瀬戸口さん「この書類を7月中に作成して、提出してください」

河合さん「7月中ですね…OKです」

|7月15日に河合さんが書類を提出しに瀬戸口さんのところに来ました。

瀬戸口さん「わ〜!早いですね〜!」

河合さん「え!でも、提出締切は7月15日まで、ですよね?」

瀬戸口さん「いやいや、7月31日までの間に提出するので大丈夫ですよ」

河合さん「え〜!そうだったの!」

これは、瀬戸口さんがお知り合いから聞いた話。「7月中」という手話の表現は、カレンダーの真ん中あたりのイメージになるため、「7月15日」が提出締切だと思っていたというお話だった。

そのお知り合いの方は、市役所に書類を提出する際に、窓口職員から「◯月中に提出してください」と言われ、約50年間「◯月中」=「◯月15日」だと思って提出していたのだそう。このストーリーからも、ろう者と聴者の時間の捉え方、時間のイメージの違いがよく伝わってくる。

想起するイメージが異なるというのは、まさに文化が異なるということだ。アートプロジェクトの担い手たちは、日々、文化や価値観の違いに触れ、ときには戸惑ったりしながらも、「知らないことを知る」喜びを持っている人たちだと思う。レクチャー第1回、第2回で、参加者たちが、ろう者と聴者の文化の違いを知るという入口に立ち、ここからどんなふうに一人ひとりが手話を、手話の表現を掴んでいくのかとても楽しみだ。もちろん、私自身も。

レクチャー「手話と出会う」の導入編の最後にあたる第3回(7/15)では、日常生活の動作に関わる手話表現を学んだ。それについては、また次回に。

つづく…

オンラインイベント「リアルタイム議事録」のススメ。3つの方法で試してみました。

オンラインのセミナーや講座がすっかり当たり前になった今日このごろですが、モニタを通して話に集中し続けるのは難しいもの。ときどき聞き逃してしまったりしませんか?

そこで、勉強会シリーズ「ジムジム会」では、毎回必ず記録係がその場でメモをとって公開する「リアルタイム議事録」を提供しています。

参加者からも好評なリアルタイム議事録。これまでに3種類の方法を試してみたので、簡単にまとめますね。

ドキュメントツールで記録&共有する!

最もシンプルな方法は、Google ドキュメントなどのクラウドテキストツールをつかってメモをとる方法。参加者には「閲覧のみ」の権限を付与し、URLをチャット等で共有します。それぞれ別のウィンドウで開いたり、手元のスマートフォンなどで確認してもらうかたち。

あらかじめイベントの流れにそって項目を立てておくと記録がとりやすいです。記録係的には「とにかく書きやすい!」とのこと。のちのちのレポート記事をつくるときにも便利です。難点があるとすればちょっと地味なところ……でしょうか。

マインドマップで記録&共有する!

続いて試してみたのはマインドマップで記録する方法。キーワードごとにツリー構造でつなげていく様子をクラウド上で共有します。ジムジム会ではオンラインサービスの「Mind Meister」を使ってみました。Googleドキュメントと同じように特定のURLにアクセスすると閲覧できます。

話が構造的に記録されていく様子は見ていて飽きず、オンラインイベントとの相性は抜群です。その場で議論のポイントが整理されるのもいいところ。一方でキーワードだけの羅列では繋がりがわかりにくく、後から欠席者に内容を共有したりレポート記事の素材にするには少し不十分かもしれません。

手書きで記録&共有する!

三番目の方法はアナログです。講義ノートをとるように白い紙に手書きで記す方法。「かっこいいグラフィックレコーディングをやろう!」と気合を入れるとなかなか大変なので、あくまで要点を文字でメモしながら、余裕があれば色をつけたりイラストを添えたりする程度を目指しました。共有方法は、USB接続できる書画カメラを使ったZoom上の直接表示です。

オンラインイベントにアナログ要素が混ざると雰囲気が暖かくなります。「後からでも読む気が湧くし雰囲気も伝わる!」と参加者からも好評でした。一方で書く情報量に限りがあること、記録者に向き不向きがあることはデメリットかもしれません。(ジムジム会の記録係は楽しかったようです)

リアルタイム議事録のススメ

以上、実験してみた3つの方法でした。リアルタイム議事録は、音だけで情報を得ることが難しい人や、ベタ付きで参加できない参加者の方にもサポートになる方法です。やってみる場合は、専任の記録係をつけ、事前に流れをしっかり共有しておくとスムーズです。

また、他にもいい方法があればぜひ教えてください。 ツール情報などお待ちしています。

おまけ。手書き議事録の様子。書画カメラはなかなか便利です。

第1回のジムジム会では自動文字起こしツールも使ってみました。

次回は第4回ジムジム会のレポートをお届けします!

手話は目で覚える。間違えても忘れても大丈夫。何度も繰り返し、繰り返しやってみる。|レクチャー「手話と出会う」第1回

Tokyo Art Research Lab(TARL)「思考と技術と対話の学校」では、アートプロジェクトを「つくる」という視点を重視し、これからの時代に求められるプロジェクトとは何かを思考し、かたちにすることができる人材の育成を目指しています。2020年度は、実践的な学びの場「東京プロジェクトスタディ」、アートプロジェクトの可能性を広げる「レクチャー」、プロジェクトを行う上で新たなヒントを探る「ディスカッション」の3つのプログラムを展開。レクチャー「手話と出会う〜アートプロジェクトの担い手のための手話講座(基礎編)」の様子や実施するなかでの気づきを、モデレーターを務める担当プログラムオフィサーの視点で綴ります。

前回、「はじめてづくしの第1回を迎えるまで」について書きました。今回は、手話に慣れること、サイレントな状態に慣れていくことを目指したレクチャー「手話を出会う」の第1回の様子を振り返りながら綴ります。

前回のレポートはこちら

▼第1回|まずは、自己紹介。でも、その前に大事なこと。

第1回(7/1)は、自己紹介からスタート。でもその前に、参加者のみなさんに、講師の河合祐三子さんから大事なお願いが伝えられた。

「必ず、反応を示してください。分かる、分からないを示してほしい」

会話をしているとき、相手の反応がないと、伝わっているのかな?と不安になるのは誰だって同じ。聴者同士だと、表情が見えなくても相手の声だけでその反応を受け取ることもあるが、ろう者は目で相手の表情や仕草を見て反応をキャッチしている。だから、うんうんと首を縦に振ったり、笑顔でOKサインを示したり、ううんと困った顔で首を横に振ったりして、相手に対してしっかり反応を示すことが大事なのだと教わった。なんだかそれは、自分自身の聴く態度、他者との向き合い方そのものについて考えさせられることだなと思う。

自己紹介の方法は、まず河合さんが参加者の名前が書かれたカードをランダムに引き、その人の名前を手話で表して伝えていくというもの。例えば、名前に「桜」や「藤」と付く人は、まさにその花が咲いているイメージを表す手話だったり、「近」は人が近づく動き、「田」や「井」は、漢字を手指で表現する手話もあった。私は「よしはら」なので、鼻の前でグーをつくって軽く押し出し(=「良い」という手話)、その後に、お腹の前あたりに原っぱをイメージしながら手で水平に円を描く(=「原っぱ」という手話)ように表す。「〜です」というのは、うん、と頷くので良いらしい。

頭のなかに浮かぶもののイメージや人の動作のイメージが手話という言葉につながっていくのを実感しながら、一人ひとりの名前を私もなぞるように表してみる。ふとZoomのギャラリービューに目をやると、同じように河合さんが示す手話の動きを追いかけながら練習する参加者の姿が見えた。

次に、河合さんから「あなたの名前はなんですか?」と手話で尋ねられ、「私の名前は___です」と答えてもらった後、この手話講座に参加した理由について一人ひとりにお話を聞いた。子供が難聴で前々から手話を習っている人、以前、手話を習っていたが挫折してしまった人、ろうの子供たちと一緒に取り組めるようなワークショッププログラムを考えようとしている人、芸術祭などで手話の鑑賞プログラムを開発しようとしている人、最近、ろう者との出会いが増えもっと手話で美術の話がしてみたいと思った人、手話は身近なところにあるのに自分自身が何も知らなくて学んでみたいと思った人などなど…。「アートプロジェクトの担い手のための手話講座」ということもあって、美術館やアートプロジェクトの現場で新たな取り組みにチャレンジしようとしている人が多い。

うんうん、そうなんだ、へぇ〜、なるほど〜、といった相槌は手話でどう表すんですか?

参加者から良い質問があった。反応を示すことの重要性について、冒頭に河合さんが語られていたからこそ相槌の表現はどんどん知りたい。例えば「なるほど」は顎に親指を付け、伸ばした人差し指を2回ほど折り曲げる表し方があるが、でもまずは、「顔の表情」が大事だと河合さんは言う。手話で表さなくっちゃ!と思うよりもまず、素直に自分自身の反応・感情を表情で示すことが大事なのだと。それは、コミュニケーションの「姿勢」そのものだなと改めて気づく。

次に、こんな質問があった。

手話講座を受けているときは、どうしてもメモを取ることができません。何か手話を覚えるときのコツはありますか?

手話は手指、顔の表情、身体を使って表すので、書き写すということができない。手話の表し方を思い出しながら絵に描いてという方法もあるかもしれないが、それだと会話のスピードに追いつかないし、ものすごく時間もかかる。では、どうやって覚えていくのか。

「まずは、目で覚えること。そして間違えてもいいので、繰り返し繰り返しやってみること。忘れてもいいんですよ。何かが体のなかに残っていくから大丈夫。繰り返しやってみることで、記憶させ、また思い出しての積み重ねが大事です」

と河合さん。

初心者にとって、なんて心強いことばだろう。うまく表現できなくても、忘れても大丈夫!繰り返し、繰り返し、身体で覚えていこうと私も思った。

あなたの名前はなんですか?と河合さんが尋ねている様子

「目で覚える」手話の学びの環境づくり

とは言え、これはどうやって表すのだったかな?とすぐに確認したくなる気持ちもとてもよくわかる。そのため、本レクチャーでは、毎回、講座の様子を映像収録し、次回までに各自で自習・復習ができるように記録動画を参加者限定で共有している。繰り返し「目で見て覚える」学びの環境づくりも工夫していることのひとつだ。

その他にも、毎回レクチャーの終わりにZoomをつないだまま、その場で簡単なアンケートを参加者のみなさんに書いてもらっている。今日のレクチャーの気づきや感想を書き記してもらってからZoomを退出してもらうという方法だ。これは、東京アートポイント計画で取り組んでいる「ジムジム会(事務局による事務局のためのジムのような勉強会)」で行っている方法で、各回の気づきや感想、質問などを講座が終わった後すぐにフィードバックを受け取ることができる。毎度レクチャー終了後には、講師の河合さんと手話通訳士の瀬戸口裕子さんたちと一緒にアンケートの回答を見返しながら、各回の振り返りや次の講座内容に活かすための企画会議を行っている。終わった直後の熱を帯びた感想や疑問は、どこが気になるポイントだったのか、こういうシーンの会話や単語を知りたいという要望などをすぐ確認できるのが良いし、企画運営側としても参加者一人ひとりの反応にすぐ触れられるのは嬉しい。

レクチャー第2回(7/8)も引き続き、手話に慣れること、サイレントな状態に慣れていくことを目指しながら、ろう者と聴者の文化の違いに触れる新しい試みをはじめた。それについては、また次回に。

つづく…

緊急事態宣言から4ヶ月、アートプロジェクトの現場で起きたこと。

こんにちは、東京アートポイント計画です。
毎日猛暑が続き、二重の意味で身を守るための「ステイホーム」をしている気がします。

さて、2020年4月7日に緊急事態宣言が発令されてから、4ヶ月と少し。この度東京アートポイント計画では、「この4ヶ月で、アートプロジェクトの現場で起きたこと」の一部をタイムラインでまとめてみました。

東京アートポイント計画は、「日常の営みに穏やかに寄り添い、まち・人・活動をつなぐアートプロジェクト」です。オフラインでの活動や大規模なイベントができない状況下でも、各プロジェクトでは知恵を絞り、そのときできる活動や次の動き出しへの準備を行っていました。

これまで行ってきた活動を、かたちを変えて行うプロジェクトあり、オンラインに移行するプロジェクトあり、新しい活動を立ちあげるプロジェクトあり。社会の出来事とともに、ご覧ください。

※タイムラインでは、東京アートポイント計画および、それと連動して実施されているTokyo Art Research LabArt Support Tohoku-Tokyoの事業について紹介しています。​

■2020年4月~7月のタイムライン■

7月以降の最新情報は、SNSやメールニュース等で配信しています。ぜひご登録ください!

グリーンバックに、牛を発見!【STUDIO302】 壁面制作プロセス公開

こんにちは。東京アートポイント計画 プログラムオフィサーの村上です。
先月、アーツカウンシル東京の拠点として活用しているROOM302の一角に誕生したオンライン収録・配信スタジオ「STUDIO302」。スタジオ開設に合わせ、ROOM302の壁面もリニューアルすることになりました。
今回は、そのリニューアルの様子を、写真盛りだくさんでご紹介いたします!

BEFORE
AFTER

今回のリニューアルを手がけたのは東京アートポイント計画のプロジェクトにも何度か関わっていただいている、美術家 関川航平さん。

ROOM302向かって左側には大きな緑の牛の壁画。右側はごあいさつ文や、来場者がSTUDIO302で配信された動画やアーツカウンシル東京のイベント情報をキャッチすることが出来る、インフォメーション面に。
全体は、グリーンを基調とした色味でまとめられています。

グリーンバックの牛…!?

そもそも、なぜスタジオ302に牛が描かれたのでしょうか?
制作者である関川さんは「オンラインへの(一時的な)引っ越し」を、意図しています。
関川さんはまずはじめに、スタジオの部屋番号である「302」から、インターネットのステータスコードの一つで「サイトURL変更の際の転送処理」を示す「302リダイレクト」を連想したようです。
サイトのURLの場所が変わった時に表示されるステータスコードで代表的なものに「301」と「302」があるのですが、「301」は完全にサイトが移転したことを示す番号で、「302」は一時的な引越しを示す番号になっています。

メンテナンス中などの一時的な引越しを示す「302リダイレクト」と、コロナウイルスの影響によりこれまでのようにアートプロジェクトを展開することが難しい状況の中、オンラインに場所を移して活路を開こうとする「STUDIO302」のあり方が偶然にも重なる部分がありました。

そこから考えを進めて、オンラインとオフラインのそれぞれの要素を併せ持つ壁面としてデザインしたいということで、オンラインの要素として映像撮影などの背景として使われる「グリーンバック」というモチーフを、そしてオフラインの要素として、ラスコーの壁画から着想して「牛」をモチーフとして選びました。

グリーンバックというものは通常の使われ方としては撮影後の編集でそこに別の映像を挿入したりして、グリーンバックそのもの自体はモノとしての存在が消されます。しかしここでは、壁面すべてを着色した漆喰を使って描画することで凹凸のある素材感が強調されています。
オンライン上での機能や存在意義と、オフラインで実際目の前にしたり手で触れることのできる距離にいる時のモノとしての存在感を両立させるデザインになりました。

この「グリーンバック」の「牛」というものは、私たちがこの「スタジオ302」を運用しながら考えて行く姿勢とも重なります。

現場を覗いてみましょう

鉛筆の下絵の周りから緑で囲んでいきます。
素材はすべて漆喰です!

ヘラで一層目を塗った後、手を使って毛並み感を出していきます。

そして右側の壁面のロゴやごあいさつ文も、実は漆喰です。

QRコードまで・・・細かい!
(ちゃんと読み取れます)

最後はチラシラックを作り、終了です。

関川さん、おつかれさまでした!

パフォーマンスやテキストを扱う作品の他に、デザインもこなす関川さん。実は関川さんにこの壁面改装の依頼をしてから、制作が終わるまでは約1ヶ月ほどしかありませんでした。何度もアイディアを練り直しながら、ROOM302の新しい顔が生まれました。

以上、STUDIO302に出来た新たな一面のご紹介でした。
アーツ千代田3331にお越しの際は、是非3階のアーツカウンシル東京のSTUDIO302に足をお運びください。
いつでも、牛がお出迎えいたします。

小グループに分かれて議論したい! Zoom「ブレイクアウトルーム」を使うときの工夫

どうしたら2時間に渡るオンライン勉強会が、有意義になるでしょう? 聞いているだけでは集中力が持たないし、何か発表するにも40人全員となると時間がかかる……やっぱり、話しやすい人数で議論したい!

と、いうことで、オンラインで開催中の勉強会シリーズ「ジムジム会」では、第2回以降から小グループに分かれたディスカッションタイムを取り入れることにしました。

Zoomでイベント開催をされている方にはお馴染みの「ブレイクアウトルーム機能(※時間を区切って少人数のグループごとにバーチャル会議室を分けられる機能)」を使っています。

今回はジムジム会でブレイクアウトルームを使う際にやってみた工夫を簡単にご紹介します。

※機能の詳細についてはZoom公式サイトを参照ください。

ブレイクアウト ルームを有効にする

ブレイクアウト ルームの管理

✅ 「ブレイクアウトルームマスター」を決める

ブレイクアウトルーム機能でちょっとややこしいのは、グループ分け作業です。ランダム振り分けで良ければ簡単なのですが(グループ数を設定するだけ)、ジムジム会ではテーマと人を紐付けて分けたかったので、運営メンバーの中から専任担当(マスター)を置きました。イベントを進める裏でマスターにグループ分けをしておいてもらい、司会の号令とともにグループが分かれる魔法のような流れはマスターのおかげ!

休憩時間中に真剣にブレイクアウトルームを設定しているマスター

✅ 参加者に前後の流れを事前説明する

ブレイクアウトルームでは、小グループに分かれている時間を設定することができます。参加者は「強制的に少人数のグループに振り分けられる→グループで議論する→時間になったら全体に戻る」という体験をするわけですが、これがなかなか唐突なので、毎回、前後の流れを説明するようにしています。安心して議論をしてもらうための工夫です。

ざっくりでも前後の流れがわかったほうが安心

✅ グループごとに連絡担当を置く

ジムジム会の場合は、30〜40人の参加者を7グループ程度に分けることが多いです。その場合、ブレイクアウトルームに入って以降は全体宛に何かアナウンスをすることが難しくなるので(※ブレイクアウトルーム中は参加者からホストへのチャット機能が使えない)、各グループにアーツカウンシル東京のスタッフを振り分け、連絡担当として配置しています。ゆるやかに議論の進行もしてもらいつつ、何かあったら連絡用のチャット(Facebook Messengerを使っています)で質問してもらう方式です。

✅ グループごとにテーマを設定する

ジムジム会では積極的に議論に参加してもらうため、グループごとに異なるディスカッションテーマを設け、参加者が好きなテーマを選べるようにしています。事前アンケートをとってあらかじめグループリストをつくったこともありますし、イベント中にGoogleフォームで「話したいテーマ」を募り、その場で振り分けた回もありました。(後者の場合は、10分休憩の間に運営チームの連携プレイでグループ分け→ブレイクアウトルーム設定をしました)

テーマにバリエーションがあったほうが話しやすい

✅ グループは4〜5人に絞る

2回ほどディスカッションタイムを設けての感触ですが、20分で議論しようとすると、4〜5人ぐらいの規模が話しやすいようです。6人以上になると自己紹介だけでも時間をとられてしまう印象なので、グループごとの人数は少なめがオススメ。

連絡&進行担当+4〜5名ぐらいがちょうど良い

✅ 議論したことを共有する時間をつくる

小グループでの議論は盛り上がります。ジムジム会の場合は特に、「アートプロジェクトの運営をしている」という共通項で集まった参加者ばかりなので、課題意識も近く、有意義な情報交換がされている様子。その議論を咀嚼し、他グループのキーワードを拾うためにも、ディスカッションタイム後に全体共有の時間を設けています。各グループごと一人ずつ報告者を決め、3〜5分程度でどんな内容だったかを振り返ってもらいます。気になるキーワードが出たら、その後の時間で取り上げるなど、進行にも活かせます。

✅ 運営はブレイクアウトルーム中にブレイク(休憩)する

そしてブレイクアウトルーム中はどのルームにも入らず、元のバーチャル会議室に残ることもできます。2時間のオンラインイベントはなかなか集中力のいる仕事。なので、運営メンバーはディスカッションにあえて入らず、参加者が議論している間にブレイク(休憩)するのも、ジムジム会的な工夫のひとつ。

ある日の休憩タイム。STUDIO302にて。

以上、ブレイクアウトルーム機能を使うときの工夫でした。他にもどんな使い方ができるのか、いろいろ実験してみたいと思います!

>「ジムジム会って?」と気になった方はこちらをどうぞ!