小グループに分かれて議論したい! Zoom「ブレイクアウトルーム」を使うときの工夫

どうしたら2時間に渡るオンライン勉強会が、有意義になるでしょう? 聞いているだけでは集中力が持たないし、何か発表するにも40人全員となると時間がかかる……やっぱり、話しやすい人数で議論したい!

と、いうことで、オンラインで開催中の勉強会シリーズ「ジムジム会」では、第2回以降から小グループに分かれたディスカッションタイムを取り入れることにしました。

Zoomでイベント開催をされている方にはお馴染みの「ブレイクアウトルーム機能(※時間を区切って少人数のグループごとにバーチャル会議室を分けられる機能)」を使っています。

今回はジムジム会でブレイクアウトルームを使う際にやってみた工夫を簡単にご紹介します。

※機能の詳細についてはZoom公式サイトを参照ください。

ブレイクアウト ルームを有効にする

ブレイクアウト ルームの管理

✅ 「ブレイクアウトルームマスター」を決める

ブレイクアウトルーム機能でちょっとややこしいのは、グループ分け作業です。ランダム振り分けで良ければ簡単なのですが(グループ数を設定するだけ)、ジムジム会ではテーマと人を紐付けて分けたかったので、運営メンバーの中から専任担当(マスター)を置きました。イベントを進める裏でマスターにグループ分けをしておいてもらい、司会の号令とともにグループが分かれる魔法のような流れはマスターのおかげ!

休憩時間中に真剣にブレイクアウトルームを設定しているマスター

✅ 参加者に前後の流れを事前説明する

ブレイクアウトルームでは、小グループに分かれている時間を設定することができます。参加者は「強制的に少人数のグループに振り分けられる→グループで議論する→時間になったら全体に戻る」という体験をするわけですが、これがなかなか唐突なので、毎回、前後の流れを説明するようにしています。安心して議論をしてもらうための工夫です。

ざっくりでも前後の流れがわかったほうが安心

✅ グループごとに連絡担当を置く

ジムジム会の場合は、30〜40人の参加者を7グループ程度に分けることが多いです。その場合、ブレイクアウトルームに入って以降は全体宛に何かアナウンスをすることが難しくなるので(※ブレイクアウトルーム中は参加者からホストへのチャット機能が使えない)、各グループにアーツカウンシル東京のスタッフを振り分け、連絡担当として配置しています。ゆるやかに議論の進行もしてもらいつつ、何かあったら連絡用のチャット(Facebook Messengerを使っています)で質問してもらう方式です。

✅ グループごとにテーマを設定する

ジムジム会では積極的に議論に参加してもらうため、グループごとに異なるディスカッションテーマを設け、参加者が好きなテーマを選べるようにしています。事前アンケートをとってあらかじめグループリストをつくったこともありますし、イベント中にGoogleフォームで「話したいテーマ」を募り、その場で振り分けた回もありました。(後者の場合は、10分休憩の間に運営チームの連携プレイでグループ分け→ブレイクアウトルーム設定をしました)

テーマにバリエーションがあったほうが話しやすい

✅ グループは4〜5人に絞る

2回ほどディスカッションタイムを設けての感触ですが、20分で議論しようとすると、4〜5人ぐらいの規模が話しやすいようです。6人以上になると自己紹介だけでも時間をとられてしまう印象なので、グループごとの人数は少なめがオススメ。

連絡&進行担当+4〜5名ぐらいがちょうど良い

✅ 議論したことを共有する時間をつくる

小グループでの議論は盛り上がります。ジムジム会の場合は特に、「アートプロジェクトの運営をしている」という共通項で集まった参加者ばかりなので、課題意識も近く、有意義な情報交換がされている様子。その議論を咀嚼し、他グループのキーワードを拾うためにも、ディスカッションタイム後に全体共有の時間を設けています。各グループごと一人ずつ報告者を決め、3〜5分程度でどんな内容だったかを振り返ってもらいます。気になるキーワードが出たら、その後の時間で取り上げるなど、進行にも活かせます。

✅ 運営はブレイクアウトルーム中にブレイク(休憩)する

そしてブレイクアウトルーム中はどのルームにも入らず、元のバーチャル会議室に残ることもできます。2時間のオンラインイベントはなかなか集中力のいる仕事。なので、運営メンバーはディスカッションにあえて入らず、参加者が議論している間にブレイク(休憩)するのも、ジムジム会的な工夫のひとつ。

ある日の休憩タイム。STUDIO302にて。

以上、ブレイクアウトルーム機能を使うときの工夫でした。他にもどんな使い方ができるのか、いろいろ実験してみたいと思います!

>「ジムジム会って?」と気になった方はこちらをどうぞ!

Border Crossings: Discovering What Lies Beyond Borders + The Pen-tomo Project ーDepicting Our Imaginary Landscapes

Koganei Artfull-action! is launching the Pen-tomo Project with artist Haji Oh. This small leaflet has been prepared as a memorandum to record its starting point from which various projects and studies will develop. This will provide an ongoing platform to which people can always return to, discuss and update.

Contents
  • Border Crossings: Discovering What Lies Beyond Borders/Miho Miyashita
  • [Interview] The Pen-tomo Project
    Depicting Our Imaginary Landscapes: Point of Departure of the Project

    • Haji Oh (Artist)
    • Risei Sato (Program officer, Arts Council Tokyo)
    • Miho Miyashita (Artfull-action, Non-profit organization)
  • The Pen-tomo Project – Depicting Our Imaginary Landscapes/Haji Oh
  • Would You Like to Participate in the Pen-tomo Project?
  • Triangular Letter Exchange by Wi, Haji and Nozawa
  • Appendix: Letter Pad

観察し、ほどき、解し、理解の緒を見出していくこと―2019年度 小学校連携授業の記録

本書は、2019年度に『小金井アートフル・アクション!』が実施した二つの小学校との連携授業の記録です。
小金井市立前原小学校での「スライム自由研究の記録」、小金井市立本町小学校での「小学生のためのプログラミング入門」のほか、インタビューを収録しています。

目次
  • スライム自由研究の記録(小金井市立前原小学校)
  • いきいきと遊び、観察し、展開する―算数をめぐって|須之内元洋(札幌市立大学講師)
  • 先生たちとやってみた! スライム自由研究のしおりとドキュメンテーション
  • 世界の見方と算数――スライム実験の経験から
  • 好奇心をもって自分で理解すること 木下 晋(画家)インタビュー
  • 小学生のためのプログラミング入門(小金井市立本町小学校)
  • ドキュメンテーション――気づき
  • 読み書きとしてのプログラミング|久保田晃弘

アーティスト・クロストーク《オンライン》(音まち10年目特別企画)

アートプロジェクト『アートアクセスあだち 音まち千住の縁』(通称:音まち)では、まちなかを舞台に多彩な分野で活躍するアーティストを招聘し、10年にわたって市民参加型プログラムを展開してきました。それらの作品づくりの過程には、アーティストのみならず、まちの人びとが参加者として関わっています。

「アーティスト・クロストーク」は、2020年度に活動10年目を迎える音まちが企画するトークシリーズです。音まちでプロジェクトを展開している野村誠さん(作曲家)、大巻伸嗣さん(現代美術家)、アサダワタルさん(文化活動家)が、活動の垣根を超えた様々なゲストと雑談のように語らいながら、トークテーマを掘り下げていきます。

詳細

#01 ひょうたんから駒が出るようなはなし ―まち、人を動かす、名づけられない「作品づくり」について―

  • アーティスト:野村誠
  • ゲスト:Nadegata Instant Party
  • モデレーター:熊倉純子(解説)、櫻井駿介

アーカイブ映像はこちら

#02 大巻伸嗣×地域アート?『アートなんてわかんねぇ!』

  • アーティスト:大巻伸嗣
  • ゲスト:山出淳也、市民チーム「大巻電機K.K.」の皆さん、 「水郷ひた芸術文化祭2018」市民スタッフ
  • モデレーター:熊倉純子(解説)、森司

アーカイブ映像はこちら

#03 会えない日々と、気配のゆくえ

  • アーティスト:アサダワタル
  • ゲスト:山川冬樹
  • モデレーター:Lana Tran、冨山紗瑛

アーカイブ映像はこちら

IMM東京2020 オンライン美術館 アーティスト・インタビュー

アートプロジェクト『アートアクセスあだち 音まち千住の縁』の一環である「イミグレーション・ミュージアム・東京」(通称:IMM東京)は、活動10周年を迎えた2020年度に期間限定でオンライン美術館を公開しました。

現代日本における「移住と移民・多文化社会」をアーティストたちはどのように見つめ、作品を制作しているのでしょうか。本映像では、IMM東京を主宰する岩井成昭さんが、李晶玉さん、岩根愛さん、高山明さんをゲストアーティストに迎えてインタビューを実施し、現代美術を通じたそれらのアプローチを紐解きます。

「100日後」がやってきた(ことばの足音を追いかける〈3〉)

アートプロジェクトの現場で出会った、気配を残しては去っていくことばたち。どんな姿をしているのか。どんな道を進んでいくのか。その姿をちょっと追いかけてみるシリーズ、お届けします。

「100日後だね」。東京アートポイント計画の係会(チームのミーティング)で、そんなつぶやきが漏れたのは先月、6月頭のこと。7月頭(=4月1日から100日後)に向けたチームの動きを確認しているとき、東京アートポイント計画の立ち上げ当初から関わるプログラムオフィサー、大内伸輔が発したことばでした。

4月・5月は、東京アートポイント計画の各プロジェクトで、外向けのイベントやオフラインでの活動が制限されていました。そして6月の頭は、徐々に活動再開に入る直前の時期。ROOM302での配信スタジオ施工が始まる前、各プロジェクト拠点の段階的な再開が始まる前、Tokyo Art Research Labの講座参加者募集が始まる前、各プロジェクトではリモート企画の準備が進み、noteは立ち上げから2週間。今年予定していた事業計画を見直し、実施内容や再開の判断基準を少しずつ決めていきながら、動き出せるところから手探りで動きはじめた、ウォームアップのようなタイミングでした。

プロジェクトが動き出してしまうと、目の前のものを「やる」ことに忙しくなり、「少し先(あるいはもっと先)」からつい目線がずれがち。でも、「少し先」を見ようとすることは、リスク回避、事業の方向性整理などにつながります。
例えば、「段階的に拠点を開けていく」ときに、次の段階、次の次の段階、をどう設定するのか。そもそも何のために、どうなってほしいから拠点を開けるのか。オンラインの集まりからオフラインに移行することで変化することは何だろうか(それを「戻る」と呼んでいいのだろうか)。
動き出す前だからこそ、落ち着いて少し先の未来を想像してみる。あのタイミングで出た「100日」ということばは、少し先を見据える設定方法の一つだったように思います。

プロジェクトに伴走するプログラムオフィサーの姿勢を先を見据えて間に立つと表現したのは大内でした。見ようと思わないと見えない、時間の区切り。チェックポイントの設定。日々変化し、基準がないいまだからこそ、少し先の未来を見据える意識が、我々にはより要されているように思うのです。

昨年度末、世間をにぎわせていたのは「100日後」のゴールが設定された某漫画でした。「100日後」に向けて世間が沸いていた年度末から、“非常”の新年度を迎え、いま、静かに行われた「年度最初の100日」から「次の100日」へのバトンパス。
この次の100日後は10月半ば。本来ならば東京アートポイント計画ではイベント目白押しで、一年でも忙しい時期ですが、今年は各事業とも、そのとき実施できるであろうかたちを日々探っているところです。

今度はどんなバトンパスができるか。またここで、お知らせできればと思います。


※追伸:100日というのは、短いようでひとつのプロジェクトが誕生から終わりまでを向かえることもあります。
(同じく大内が執筆した『10年を伝えるための101日 「東京アートポイント計画 ことばと本の展覧会」ドキュメントレポート』をご参照ください。一つの展覧会のアイディアが生まれてから会期が終了するまでの「101日間」の記録が綴られています)

あの手この手で繋がるには? コロナ状況下でのアートプロジェクトを考える

全国の緊急事態宣言は解除され、東京都と近県をまたぐ移動の自粛要請もあと2日で終わり。それでも、人が集まることのリスクは高いまま。

そんな状況下の2020年6月17日、アートプロジェクトの事務局による事務局のためのジムのような勉強会「東京アートポイント計画 ジムジム会」の第2回を開催しました。

今回もオンライン上で開催したジムジム会。参加者による活動の共有やディスカッションを展開しました。当日の内容をレポートします!

お互いの実践から、活動のヒントを見つけよう

多様な人が関わり合い、表現を紡ぐアートプロジェクト。その根っこである「集うこと」ができない状況下で、いかにして人と人は出会い、繋がればいいのでしょうか。

東京アートポイント計画では3月以降、各プロジェクトの事務局会議も含め、実際に集まることは控えてきました。でも、だからといって活動そのものを止めていたわけではありません。こんな状況だからこそ、ますますアートプロジェクトは必要なはず。

そう信じ、あの手この手を駆使して行ったアクションや、新たな工夫を共有するところから第2回をスタートしました。テーマは「これからの活動のありかたを考える」です。

シニア世代のクラブ活動をオンライン化

最初に実践報告をしてくださったのは、小金井で市民とともに活動するアートプロジェクト「小金井アートフル・アクション!」の運営に関わる伊藤安寿華さん。

小金井では、「えいちゃんくらぶ(映像メモリーちゃんぽんくらぶ)」という活動を2018年度からスタートしました。参加者は70歳前後の人を中心としたシニア世代。映像をつくったり、遊んだりするクラブです。

本来であれば2月29日、3月1日に作品上映会を予定していたのですが、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて中止に。その代わりに立ち上がった企画が、オンラインでの作品発表会「ONLINEえいちゃんふぇす」です。その名の通り、オンラインで映像作品を公開したり、トークを展開したりする催しです。

▲過去のえいちゃんくらぶの様子。

●課題:オンライン化に対する抵抗感

シニア世代の人が中心となると、インターネットに親しんでいる度合いも人それぞれです。「ONLINEえいちゃんふぇす」では、一人ひとりと話し合いながら発表方法を決めました。詳しくは伊藤さんの日報にも書かれていますが、すぐに参加表明をしてくれる人もいれば、インターネットに公開するのは嫌だと考える人、実名公開は避けたい人など様々でした。公開を希望された人の作品は、動画サービス「Vimeo」を使い、期間限定で配信。当初の上映会とはまた違う形での公開となりましたが、発見も多かったといいます。

●工夫:電話でトークをつなぐ!

そしてオンライン化にあたってもうひとつ工夫したのは、ラジオ形式のトーク企画。えいちゃんくらぶの講師である角尾宣信さんがパーソナリティとなり、テーマごとにゲストを交え、合間にメンバーの方に電話でコメントを聞く形でトークを収録・配信しました。電話という馴染み深い方法を使うことで、自然かつリアリティのあるトークになるよう心がけました。

●挑戦:メーリングリストの丁寧な導入

こういった「ONLINEえいちゃんフェス」の他、新たにメンバー間のGoogleメーリングリストをつくり、情報共有する仕組みにも挑戦。使い方のわからないメンバーとはメールでフォローするなど試行錯誤を重ねました。

結果、メーリングリスト上では、おすすめの映画の共有や近況報告、あたたかい言葉のやりとりなどが交わされているそう。「えいちゃんくらぶ」は、映像を中心に地域内のゆるやかなつながりを生む活動だと改めて認識しました。

今後は、ネットに不慣れな人でも参加しやすいアナログ寄りの企画や、外出自粛のなかで孤独感を深めた人をフォローするような企画も展開していきたいとのことでした。

▲報告と今後の展望をはなしてくださった伊藤さん。

ビデオレターで離島の外と中をつなぐ試み

続いての発表は、東京都の離島のひとつ、神津島(こうづしま)で展開するアートプロジェクト「HAPPY TURN/神津島」(以下、「HAPPY TURN」)。事務局の中村圭さんと飯島知代さんから報告をいただきました。

HAPPY TURNもまた、今回の緊急事態宣言以降、プロジェクト拠点「くると」を閉鎖するなど、活動内容を変更してきました。そうした“集えない”中で生まれた新たなアイデアが、動画インタビュー企画です

神津島は、仕事や学業、家族の事情で島を離れる人が少なくありません。そんな元島民から、現在も島に暮らす人に向けたビデオレターを送ってもらい、交流をしてみてはどうかと考えました。

●工夫:テレビ編集経験のある移住者の力を借りる

島を離れる人もいる一方、様々な移住者も毎年やってきます。神津島にもまた、東京と大阪で10年以上、テレビ番組の編集を手掛けてきたなしこさんがいました。今回はなしこさんのディレクションのもと、Zoomの録画機能も駆使し、ビデオレター「やーい!」を完成させました。

元島民の中には、疎遠になってしまっていた人もいます。それでも今回の取材を通して画面越しに再会し、改めて「島への想い」を伺う貴重な機会になりました。

オンラインで収録し、テレビ番組風に編集した楽しい内容。告知用CM動画も制作した。

●課題:公共放送での放映叶わず…

元島民による熱い想いとメッセージ。これをなるべくたくさんの現島民に届けるのが、HAPPY TURNチームの目論見でした。そこで企画当初より目指していたのは、島独自の公共放送「神津TV」での放映です。

早速完成したビデオレターを持ち込み、放映の依頼に伺いました。……が、残念ながら、調整が折り合わず、放映できないことに。残念ではありますが、今回は頭を切り替えて、再開後の拠点「くると」で特別放映することにしました。今後の展開を見据え、さまざまな準備を進めています。

「次の課題は地元行政との連携」と、飯島さん。

実際に会うことや、密に集うことができない今、各アートプロジェクトでは、あの手この手で「集まる」「つながる」方法を探っています。後半のセッションでは、Zoomの「ブレイクアウトルーム機能」を使ってこれらの課題について議論を重ねました。

詳しくはまた次のレポートにてご報告します!

(執筆:きてん企画室)

スタジオをインストールするーSTUDIO302にはユーモアが必要だ。

東京アートポイント計画プログラムオフィサーの上地(うえち)です。
先日、アーツカウンシル東京の拠点として活用しているROOM302の一角に「STUDIO302」を開設いたしました!

企画・構想〜完成までの期間は約1ヶ月。この記事では、モノとアイデアがROOM302という「部屋」に持ち込まれ、スピード感をもってスタジオがつくられていく現場における、担当としての気づきや驚きをお伝えしていければと思います。
(*STUDIO302のはじまりについては、以下の記事をぜひご覧ください。)

新プロジェクト【STUDIO302】始動!

空間づくりのパートナーは「岩沢兄弟」

今回のスタジオ空間づくりは、岩沢兄弟をパートナーに迎えて企画を進めていきました。岩沢兄弟は、その空間にいる人が触れたくなったり、参加したくなったりする仕掛けを組み込むことが得意なお二人です。過去にはArtpoint Meeting のゲストとしてお招きしたことも。
(*当日の様子は、下記レポートにてご覧いただけます。)

地域の人々が活動に参加したくなる空間とは?(APM#06)

STUDIO302は、「いわゆるスタジオ空間をつくるだけ」ではない依頼でした。例えば、
・気軽に集うことが難しくなった社会状況に呼応して始動した、これからのアートプロジェクトのかたちを試行錯誤していくための緊急対応プロジェクトであり、制作するスピード感が重要
・さまざまな試行錯誤を重ねていくための場として、プロジェクトによって使いかたを開発していくような余白がほしい
・収録、配信について専門的な知識を持っていない人も使えるようにしたい
などなど。

こんな構想を一緒にかたちにしてくれるパートナーとはを考えたとき、兄は空間設計、弟は映像配信技術に明るい空間デザインユニットである岩沢兄弟はまさにぴったりでした。
それは専門性が高いからだけではなく、彼らが手がける空間は、使う人自身が使いかたのアイディアを考えられるような「余白」が残されていたり、空間にあるモノに触れたり動かしたりしやすいように、あえて完成形にしないように場をつくっていくという特徴があったというのも決め手のひとつ。
岩沢兄弟とパートナーを組むからこそ、新しい試みが生まれる場を立ち上げることができるはず。そんな期待を持ちながら、どうつくりこんでいけるのかプランを詰めていきました。

2020年6月15日、施工スタート!

2020年6月15日、STUDIO302の着工日。プロジェクトの構想から、企画・調整を経て、いよいよこの日を迎えました。
空間設計・設営にいわさわひとし(兄)さん・土田誠さん、機材周りの設計・設営にいわさわたかし(弟)さん・池田匠(匠音響)さん、の専門家を交えたチームで動いていきます。
(岩・沢・土・池・田…なんとも豊かな生態が育まれそうな座組みです。)

単管を組み上げるチーム。その一方で..

収録・配信を行うための機材チェック。

池田さんは、オリジナルのマイク台座を設計中!

ユーモアをたずさえる

STUDIO302の空間づくりが進んでいくなか、たかしさん(弟)から一言。
「なんか悪ふざけが足りない」。

岩沢兄弟がつくるものは、機能的な中にもくすっと笑える要素が散りばめられているのが魅力のひとつ。これまで私が関わったプロジェクトでいうと、例えば、岩沢兄弟がプログラムディレクターとして関わっている東京アートポイント計画「HAPPY TURN/神津島」での「達磨スピーカー」。

そのモノがもつ特性やイメージをうまくいかしながらも、予想外な機能や使いかたにアップデートしてコミュニケーションを生み出します。
思わずくすっと笑ってしまい、ついあちこち触ってみたくなる空間は、その場の空気を和やかにすることもあれば、初めましての方とのコミュニケーションの糸口も生まれやすくなるように思います。

「悪ふざけが足りない」。
その一言を起点にして生まれたのは、この「トルゾーくん」です。

トルソーの頭部分がカメラになっているのが分かりますか? このカメラ「MEVO」は小型でありながらも4Kでの撮影が可能で、YouTubeへのライブ配信はもちろん、Wi-fiでiPadと接続して映像ズームやスイッチングを手元で操作できるという優れもの。
カメラとトルソーが組み合わさっただけなのに、ふっと笑ってしまうような感じがありませんか? 色んなポーズができるので、現場に合わせて楽しめるのも面白さのひとつです。一気にトルゾーくんへの愛着が湧きます。

数週間後の暮らしがどうなっているのかも予測がつかない社会状況において、アートプロジェクトはどのようにさまざまな人や価値観との出会いをつくっていけるか。STUDIO302という場を活かして、アートプロジェクトの新たな展開や情報発信の企画構想など、これまでとは違った手法を積極的に試みていきたくなる実験室のような場を目指して、完成までもう少し。

▼空間づくりのようすはタイムラプスでご覧いただけます。
少し長めにはなりますが、部屋の一角にスタジオ空間が立ち上がっていくようすをご覧いただけます。(いわさわひとしさんの背中がいい感じです)
ぜひお楽しみください!

レクチャー「手話と出会う〜アートプロジェクトの担い手のための手話講座(基礎編)〜」はじまりました

Tokyo Art Research Lab(TARL)「思考と技術と対話の学校」では、アートプロジェクトを「つくる」という視点を重視し、これからの時代に求められるプロジェクトとは何かを思考し、かたちにすることができる人材の育成を目指しています。2020年度は、実践的な学びの場「東京プロジェクトスタディ」、アートプロジェクトの可能性を広げる「レクチャー」、プロジェクトを行う上で新たなヒントを探る「ディスカッション」の3つのプログラムを展開。レクチャー「手話と出会う〜アートプロジェクトの担い手のための手話講座(基礎編)」の様子や実施するなかでの気づきを、モデレーターを務める担当プログラムオフィサーの視点で綴ります。

はじめてづくしの第1回を迎えるまでに

2020年7月1日(水)、いつもより朝早くに家を出て、3331 Arts Chiyodaに向かう。つい先日、ROOM302内に完成したばかりの「STUDIO302」には、真新しい機材が並び、蛍光灯も新調されて空間全体がなんだかピカピカと眩しい。この日は、アーツカウンシル東京として本格的にSTUDIO302をはじめて使う日で、「思考と技術と対話の学校」のはじめてのオンライン講座開講日でもあり、そして、はじめて「手話講座」に取り組むという「はじめてづくし」の1日だった。

レクチャー「手話と出会う〜アートプロジェクトの担い手のための手話講座(基礎編)〜」は、7月1日から9月30日までの全12回(8月9日、8月12日は休み)、毎週水曜日の朝10時から11時(第4回以降は11時30分まで)に開講する。ちょうどレクチャーの立ち上げ準備をしていた頃、日本国内でも新型コロナウイルス感染症の感染拡大の報道が日毎に増えていたときだった。だから、レクチャーの実施については悩んだ。もちろんすぐにオンライン講座の方向性は出ていたし、東京アートポイント計画・Tokyo Art Research Lab(TARL)チーム内でも実施する方向で議論は進んではいた。

でも、本当にできるのだろうかと不安は拭えなかった。なぜなら、手話は話す相手の目を見て、手だけでなく顔の表情や身体の動き、その人の気配、なんと言うかその人を取り巻く空気全体を伴っての身体言語だと思っていたから。オンラインミーティングに慣れはじめたとはいえ、小さなパソコンの画面越しで、視線が合うという実感はなかなか持てない。そんな状態で、手話講座としてもちゃんと成り立つのか心配だった。

どうすればできるか、新しい方法を一緒に話し合って考えてみたい。

その不安を軽くしてくれたのが、講師の河合祐三子さんと手話通訳士の瀬戸口裕子さんの一言だった。事前打ち合わせのやりとりをするなかで、河合さんは、すでに他の手話講座の仕事がオンラインになり不慣れながらもなんとか進めていること、瀬戸口さんはオンラインでの手話通訳をやってみてできる実感を持てたことを教えてくれた。そして、TARLのレクチャーは、どうすればできるか、新しい方法を一緒に話し合って考えてみたい、チャレンジしてみたいと言ってくれた。そのことばを受けて、よし、まずは初回の準備に集中しよう、実施する度に少しずつ更新していこうと腹が決まった。

配信テスト、テスト、テスト!

第1回に向けて準備は入念に行った。講師や手話通訳士の立ち位置はどうするか、モデレーターの位置はどこか。カメラはどこから撮影し、スタジオのモニターはどのように使うか。もし接続できない人がいたら、こちらが接続が不安定になったらどうするか。具体的にシミュレーションしながら、実際にテスト配信をした。これら配信・機材関係を一挙に対応してくれているのは、NPO法人Art Bridge Institute齋藤彰英さん。本レクチャー記録・運営担当として、毎回サポートしてくれている。オンライン講座では、何かあったときに即座に対応できる運営体制が必須だ。とても心強い。

講師の立ち位置からの風景。テストすると改善点がいろいろ見つかる。
画面上で講師はどう見えるか、代役を立ててのテスト。

アートプロジェクトの担い手のための手話講座スタート

こうして準備万端で迎えた初日。河合さんから「時計はどこにありますか」と一言。スタジオの講師のポジションに立つと、ちょうどモニターに被って壁掛け時計が見えにくいことが分かった。配信のことばかりに注意が向いて、実際のフィジカルなスタジオへの視点が抜けていた。動き出すとなんと気づくことが多いことだろう。フィジカルとオンラインとを行き来しながら、場づくりについて今一度目を見開いて注意を向けなくちゃ、と思う。急遽、その日はラップトップの画面を覆い尽くすくらいにまんまる大きなアナログ表示の時計を映し出し、卓上時計の代わりとした。

9時59分、参加者が全員と接続したことを確認して、正面のカメラに視点を合わせた。「おはようございます!」と声をかけて見たモニターには、10名の参加者の表情が映っていた。いよいよ「はじめてづくし」のレクチャーがはじまった。

サイレントな状態に慣れていく

参加者は都内にお住まいの方が中心だが、中には都外から参加している方もいる。こうして遠方の人ともはじめましてと出会い、共に学びを深めていけるのはオンラインならではの良さなのかもしれない。でも、やっぱり会ってその人の表情や気配を感じながら手話で会話してみたいなと思う。それは、いったいいつになるのだろう。まだまだ先のことは全く分からない。だから今は、最大限何ができるのかを考え、いろいろと工夫を重ねながら、このスタジオで新しい方法を発見していくことに注力してみようと思う。

レクチャーは、第1回〜第3回までは手話に慣れること、サイレントな状態に慣れていくことを目指す内容になっている。「手話と出会う」の導入編といった感じだろうか。本レクチャーを通して、「手話」の基礎を学びながら、だんだんとアートプロジェクトの現場で活用できる手話を身につけていけるようなカリキュラムとなっている。具体的にアートプロジェクトやワークショップ、イベントの現場で交わされる会話を想定した対話型の手話のワークショップも検討中だ。さらに、手話の基礎を学ぶだけでなく、アートプロジェクトにおけるコミュニケーションやアクセシビリティについても視野を広げていけるような機会にしたいと考えている。先週、第3回を終えたばかりだが、普段何気なくやっていたコミュニケーションがズレを生む可能性があることを知った。知らなかったということを知る体験が毎週、毎週、起こっている。そんなレクチャー第1回〜第3回の様子については、また次回に。

つづく…