Serendipity in Japanese Art Projects: 11 Years of Memorial Rebirth Senju by Shinji Ohmaki Our project story, participant voices, and project evaluations

現代美術家・大巻伸嗣の《Memorial Rebirth(通称:メモリバ)》は、1分間に最大1万個のシャボン玉を生み出す装置を数十個並べて、無数のシャボン玉で見慣れたまちを一瞬にして光の風景へと変貌させるアートパフォーマンスです。足立区千住では、『アートアクセスあだち 音まち千住の縁』の一環として、2012年にいろは通りにはじまり、区内の小学校や公園など毎年場所を変えながら、リレーのバトンのように次に手渡され、展開してきました。

このPDFは、「Memorial Rebirth 千住」が歩んだ約10年を絵物語、事業にかかわってきた人の声、そして多様な評価分析の手法で紐解いた書籍『アートプロジェクトがつむぐ縁のはなし 大巻伸嗣「Memorial Rebirth 千住」の11年』を英訳したものです。

In the early spring of 2012, Memorial Rebirth began in the Senju area of Adachi City, Tokyo. That was about 10 years ago. Memorial Rebirth, commonly called “Memoriba,” is an art performance that changes the landscape by releasing many soap bubbles. This is a story of how soap bubble art weaves connections between people.

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目次

Opening with an illustrated story

  • Story: Sumiko Kumakura Illustrations: 目[mé]

Hear a voice

  • Introduction: Social sculpture using soap bubbles?  Sumiko Kumakura
  • What is “Memorial Rebirth Senju”?
  • Cross Talk “Art? I don’t get it!”   Kazuhiro Yoshikawa / Junko Takahashi / Shinji Ohmaki / Tsukasa Mori / Sumiko Kumakura
  • The Voices of Memoriba: Before & After
  • Living flexibly during the coronavirus pandemic: A record of activities of the Otomachi Project Office and Ohmaki Denki K.K.   Rei Fujieda
  • Shinji Ohmaki and the future of Memorial Rebirth  Shinji Ohmaki

Lessons in Evaluation

  • On the Evaluation of Art Projects  Naoya Sano / Saya Makihara
  • What value was created by Memorial Rebirth Senju?  Naoya Sano
  • Memorial Rebirth: The Stakeholders of Senju  Mina Shinohara
  • The logic model as a “memory backup”: A case study of 10 years of Memorial Rebirth Senju  Saya Makihara

Artpoint Reports 2022→2023

『Artpoint Reports 2022→2023』は、一年を振り返りながら、ちょっと先の未来について語るレポートです。ウィズ・コロナにシフトしつつある社会の変化に応答した、2022年度の取り組みを、ディレクターとプログラムオフィサーが語りました。

アートの人が自分の得意と考えるゾーンがあるとしたら、いま新しくアートに関心をもつ人が魅力を感じるのは、その部分ではないこともある。そのとき、我々がいつの間にか身につけた既成概念や価値観を上手に脱がないと、いつまでも両者は溶け合うことができません。

(p.22)
もくじ

About

  • 東京アートポイント計画とは
  • メンバー紹介

Project reports 事業報告2022

News 2022の取り組み

Voices 2022→2023について語る

  • 公共性が育まれる場所
  • 「わたし」を起点にしたネットワーキング
  • 「表現」を使いこなす
  • 協働の広がりを支える
  • まずは歩いてみることから

Annual costs 事業予算

Projects 事業一覧

Information お知らせ

これからのウェブサイトの姿を想像する|「Tokyo Art Research Lab」ウェブサイト制作振り返り座談会(前編)

自分たちの取り組みを伝えたい、成果を必要な人たちに活用してもらいたい。さまざまな思いをのせて情報を届けようとするとき、どのようにウェブサイトの制作に取り組んでいけばいいのでしょうか。

2022年12月、「Tokyo Art Research Lab(TARL)」のウェブサイトが、アートプロジェクトの担い手のためのプラットフォームとしてリニューアルオープンしました。

7年ぶり3回目となる今回のリニューアルでは、約1年の制作期間をかけて、アートプロジェクトに関心のある人やプロジェクト運営に携わる人、研究者まで、TARLが蓄積してきた知見や情報にアクセスし、活用することのできるウェブサイトを目指しました。

新サイトのトップページのキャプチャ画像。現在のおすすめコンテンツが大きく表示されている
新サイトのトップページ。「プロジェクト」「資料室」「ひとびと」という3つの軸を明確にして、ユーザー目線で情報を手に入れるまでの導線を整理した。
旧サイトのトップページのキャプチャ画像。これまでTARLにかかわった人々の顔写真が横2列で並んでいる
旧サイトのトップページ。TARLの過去のウェブサイトは「国立国会図書館インターネット資料収集保存事業(WARP) 」のアーカイブから見ることができる

今回は、TARLウェブサイトの改修プロジェクトに携わった5名が集まり、座談会を行いました。1990年代初期にウェブサイトが登場してから30年余りが経つなかで、ウェブサイトとわたしたちの関係性にも変化が生まれています。前編ではウェブサイトそのものの変遷や耐久年数、そして未来の姿などに思いを馳せつつ、後編では実際の改修について、アクセシビリティに関する取り組みへの感触を交えて振り返ります。

挑戦的な表現の場から生活インフラに

―― はじめに、ウェブサイトというメディアそのものについてお聞きしたいのですが、この30年余りの間に、ユーザーと、ウェブサイトの関係性はどのように変わりつつありますか?

ウェブディレクター 萩原俊矢(以下、萩原):かつてウェブサイトやSNSはデジタルに強い人が率先して使うものだったのですが、スマートフォンの普及やユーザーの成熟もあって、多世代にとって身近なものになりましたよね。さまざまな属性の人々がさまざまな用途でウェブサイトをつくるようにもなって、わたしたちの生活インフラとして定着した感覚があります。

編集者 川村庸子(以下、川村):2000年代のウェブサイトを思い出すと、「表現」の場でしたよね。そのため、ビジュアルや動きによっては読み込みに時間がかかって。使うものというより、そのウェブサイトとしての表現が前面に出ていた気がしますね。

萩原:当時から、ウェブサイトがシステム的にアクセシビリティをまったく無視していたわけではないのですが、川村さんがおっしゃるように、近年はウェブサイトが「表現」から、誰もが使う「ツール」へと移り変わってきていると思います。

―― なるほど。ウェブサイトが「表現」から「ツール」へと変化するなかで、みなが等しく情報を受け取れるように、アクセシビリティの担保が課題として現れはじめているんですね。

「表現」と「ツール」のバランス

―― 2022年12月にデジタル庁が「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」ベータ版を公開し、国内向けのウェブアクセシビリティの方針が示されました。萩原さんから見て、ウェブ業界的にも「アクセシビリティ」はホットトピックですか?

手ぶりをまじえ話す萩原俊矢さん
萩原俊矢 ウェブディレクター。体制づくりや各ページの設計などを統括した。

萩原:やはり業界的にもデジタル庁ができたのは大きいですし、関心が高まっているのは間違いないと思います。実は既にあるWCAGのようなアクセシビリティガイドラインは、非常に詳細につくられていますし、これ以前からアクセシビリティを大切にしようと唱えてきた人も多くいらっしゃいます。

しかし、ウェブサイトの制作現場を個別に見ていくと、アクセシビリティを重んじるよりも、動きのあるかっこいいもの、スペクタクルを求めた演出を積極的に取り入れる傾向は現在も多分にあります。それ自体が悪いということではないですが、しかし、この5年ほどで制作者のなかからも「それってほんとうに必要な人に情報を届けられるウェブサイトになっているの?」という問いが投げかけられるようになってきました。クライアントとなる企業の担当者も、アクセシビリティやSDGsの考え方が業務に落とし込まれてきて、その必要性を意識する場面が増えてきているようです。そうしたクライアントの姿勢に応じて、ウェブサイトの制作に携わる人も、考え方やつくり方をアップデートしている最中なのでしょう。

―― これからはウェブサイトの評価軸として、アクセシビリティの担保が大きな位置を占めそうですね。

萩原:僕が難しいと思っているのはウェブサイト上での「表現」と「ツール」のバランスです。斬新な画面の動きや新しいデザインの提案は、アクセシビリティの観点からは使いにくいことが多い。ただ、チャレンジする人がいなければ、新しいものは生まれない。なのでどちらを悪ともせず、両方をそれぞれ適材適所でやっていくべきだと思います。

「表現」と「ツール」が交わるところに位置する媒体が、ウェブサイトでありウェブデザインなので、悩ましいですね。今回改修したTARLウェブサイトは、多様なアートプロジェクトの担い手が使う「ツール」としての使命があるので、そういった「表現」は控えめに、むしろアクセシビリティについて検討する方向性で攻めたほうがいいのではないかと思っていました。

川村庸子さんが笑顔で制作メンバーに話している
川村庸子 編集者。各ページの構造整理や、ルールづくり、テキスト制作などを担った。

川村:わたしも改修作業をしながら、ウェブサイトにおいて、今後アクセシビリティを担保することが当たり前になっていったらどうなっていくのかと考えていました。スプーンやフォークのように使いやすさを追い求めていくと、いずれ「型」が見えてくると思うんですよね。それはもちろん目指すべき状態ですが、クリエイションとしてチャレンジする部分はどこに生まれるのだろう、と。

萩原:すべてのウェブサイトがアクセシブルになって、かつかっこいいのが理想的ですが、両立することはなかなか難しい。新しいデザインや表現を追い求めるウェブサイトにも引き続き挑戦しつつ、そこからアクセシビリティの向上に使えそうな技術が生まれたら、お互いに共有できるような関係をつくりたいですよね。

川村:全体的なアクセシビリティの底上げをしつつも、そこから360度、それぞれがいろんな方向に進化していくということですね。

未来のウェブサイトについて考えてみる

―― 人々の価値観や社会情勢が変化していくなかで、ウェブサイトはどれくらいの頻度でアップデートを考えるべきなのでしょうか?

アーツカウンシル東京 櫻井駿介(以下、櫻井):萩原さんがナビゲーターを務めたTARLの勉強会「これからのウェブサイトについて考える」でも、たびたびこの「ウェブサイトの耐久年数」というトピックについて議論してきました。大規模な改修は、組織をあげてさまざまな人が携わりコストがかかりますから、なにか目安があるといいですよね。

メンバーに話しかけている櫻井駿介さん
櫻井駿介 アーツカウンシル東京 Tokyo Art Research Lab/東京アートポイント計画 プログラムオフィサー。本プロジェクトの担当者で今回の旗振り役。

萩原:そうですね。ここ10年ほどでいえば、ウェブサイトの耐久年数は伸びてきている印象です。すこし前までは、ウェブサイトを表示する端末や機器の進化が凄まじく、そこに対応させるための改修作業が必要でした。2006年頃にスマホが登場して、ウェブサイトがスマホに対応しはじめたのが2011年頃。タブレットなどの端末も多様化して、PCモニターの解像度も向上しましたから、その前につくられたウェブサイトは、当時の技術でしっかりつくられていても、そろそろ限界を迎えているものも多いです。

現在はそうした技術の進歩も、ある程度落ち着いてきましたね。スマホなどの携帯端末がいくら小型化する技術を獲得したとしても、それより先に「これ以上文字が小さいと読めない」という人間の知覚的な限界がありますし、8Kの高画質モニターが一般家庭用に普及するようなフェーズでもないですし。

ウェブサイトは建築と似ているので、できたら放っておいていいものではなく、空き家にも風を通さないと傷んでしまうように、定期的なメンテナンスやアップデートが必要です。そうしたことを踏まえて、さらに今回のTARLウェブサイトのように数年先を見据えたつくり方をしたものは、しっかり長持ちするのだと思います。

笑顔で話す井山桂一さん
井山桂一 デザイナー。ウェブサイト全体のデザイントーンの設計や、各ページのデザインを担当。

―― それでは、ウェブサイトは将来どのようなことができるようになっていくのでしょうか。

萩原:この10年の変化を誰も想像できなかったように、未来のことを語る難しさがありますが、ユーザー自身が機器の設定をカスタマイズして、個別のニーズに合わせるような仕組みも実装されてきていますね。そうすると、ウェブサイトも同じようにユーザーが自分にあったかたちで情報を手に入れられるような、さまざまなバージョンのシステムが生まれてくるだろうと思います。データベースにあるコンテンツが、特定のタイミングや機器の性能、カスタマイズに応じて、最適化されて現れる。

例えば、老眼や弱視の方が見るときには大きい文字で表示されて、日本語が母語でない方が見たら「やさしい日本語」へ変換される。ウェブデザインがどんどん柔軟に姿を変化させていくことが、未来のスタンダードになっていくのかもしれませんね。

デザイナー 井山桂一(以下、井山):現在のウェブデザインの大半は、デザイナーが「ここには、こういう動きをつけて、これくらいの大きさで置く」などの意匠を指定して、エンジニアがデザインを満たすようなプログラムコードを書くという、いくつかの段階を踏んでつくられています。こうした作業分担が、技術の進化によって徐々に埋まっていく気がしています。いまもさまざまなサービスがありますが、今後はさらに自由度の高いウェブサイトが、プロに依頼しなくても、もっと気軽に直感的につくれるようになっていくのかなと。

川村:おもしろいですね。出版業界でもZineやリトルプレスなどが広がり、自分の声や経験をかたちにするハードルが以前より低くなっていますよね。では、本をつくるプロが不要になるのかといえばそうではなく、自分がつくるからこそプロのすごさがわかるし、それぞれのよさがあって、ともに存在している。ウェブサイトも同じように、もっと多様になっていくのかもしれませんね。

一方で、最近はTwitterやnoteなどのプラットフォームごとに文体が均質化しているように感じます。言葉は思考をつくるので、知らず知らずのうちに思考そのものが貧しくなってしまうのではないかと。だからお二人がおっしゃったように、自由度の高いウェブサイトが気軽につくれるようになれば、言葉や思考も同時に解放されていくのかもしれないなと思いました。

現在のウェブサイトの動向、そして未来のウェブサイトの姿に思いを馳せたメンバー。後編では、今回のTARLウェブサイトで具体的にどのような改修に取り組んだのか、体制づくりやペルソナの設定など、いくつかのポイントを振り返ります。

レポート後編へ続く

「Tokyo Art Research Lab」ウェブサイトはこちら

>ウェブディレクターの萩原さんが監修したウェブサイト制作のポイントをまとめた冊子『アートプロジェクトのためのウェブサイト制作 コ・クリエイションの手引き』はこちら

「Tokyo Art Research Lab」ウェブサイト」改修のポイントをまとめた記事はこちら

(撮影・仲田絵美)

届けようと想像する、巻き込みながら磨く|「Tokyo Art Research Lab」ウェブサイト制作振り返り座談会(後編)

前編で、これまでのウェブサイトの動向や、未来のウェブサイトのあり方に思いを馳せた制作メンバーたち。後編では、Tokyo Art Research Lab(TARL)ウェブサイトの改修で取り組んだアクセシビリティ向上の取り組みや、カスタマージャーニーマップの制作などについて振り返ります。

デジタル上でも「空気感」を共有する

―― TARLウェブサイトの改修について打診があった際、体制や進め方についてどのようなことを意識していましたか?

萩原:どんなチームで臨もうとしたのかでいえば2点ほど。まずは、TARLは専門的かつテーマが多岐にわたるプロジェクトや資料が特徴なので、それをユーザーにわかりやすく、使いやすくひらくとなると、TARLの活動やアートプロジェクト業界に精通していながら、言葉選びに長けた編集者が必要だと考えて。これまでもアーツカウンシル東京が発行した書籍などを手掛けており、TARLの空気感も知っていた川村さんに声をかけました。

もう一つ、今回の改修では、アクセシビリティへの対応について早期から取り掛かりたかったんですよね。デザインやシステムについての変更や指摘が多くなることはある程度想定していたので、デザイナーやエンジニアは柔軟に対応してくれる人がいいなと考えていました。

ウェブサイトの改修について話す萩原さんと、笑顔で相槌をうつプロジェクトメンバー

川村:進め方でいえば、チームメンバー全員が出席するオンラインミーティングを毎週定例化しましたよね。萩原さんたちとご一緒するのは3回目ですが、この頻度は初めてだったなと。大型のプロジェクトは同じようにいつも定例ミーティングを実施しているんですか?

萩原:案件に応じて決めています。定例ミーティングにはいい面もそうでない面もあります。いい面は、毎週予定を調整する煩雑さを回避できること。また期日が近い分、タスクに対して意識的になれること。ですが、毎週打ち合わせをするために、短いスパンで議題をまとめて進めるのもそれはそれでエネルギーを使います。ウェブサイトの制作現場に限ったことではないと思いますが、いつでも「定例問題」はつきものですね。

櫻井:定例ミーティングには萩原さんや川村さんだけではなく、デザイナーの井山さんも参加していましたね。デザイナーはもうすこし要件がかたまって、ビジュアルに落とし込む準備ができた段階からかかわりが深くなるものだと思っていました。

萩原:そうですよね。僕はディレクターも、デザイナーも、もちろん編集者も、すべからく編集的な視点が必要だと考えているんです。みんなで協働して一つのものをつくる「コ・クリエイション」という考え方があるように、一体感を生み出すためにはみんなでプロセスを共有しておく必要があります。

僕が好きなやり方の一つが、すべてをオープンにするという方法です。例えば、いまでは多くの人が使っているSlackなどのコミュニケーションツールでの業務連絡はもちろん、ソフトウェア開発などで用いられるGitHubを使ったエンジニアとの開発のやりとりまで、クライアントにもすべて筒抜けにします。プロセスを共有することで、クライアントも現在地点や検討事項について納得感がもてるし、デザイナーや編集者も自分にバトンが回ってくるまでの様子が間接的にわかります。「あの辺で盛り上がってるな」「時間がかかりそう」というのが漏れ聞こえてくるような、リアルなオフィスと同じ状況をデジタル上でもつくれるよう工夫しました

櫻井:制作チームが縦割りで分業するのではなく、全員で改修前のTARLウェブサイトの読み込みからはじめましたね。さらに、参考になる事例のリサーチやコンセプトづくりなど、プロジェクトの根幹からじっくりメンバーで話し合っています。そうした段階から一緒に歩み出すことで、役割を越えて言葉を交わす空気感ができていたのではないでしょうか。

「この人に届けたい」をチームで決めてモノサシにする

―― 先程「コ・クリエイション」という言葉も出ましたが、チーム全体で共通認識をつくるためにどんなことをしたのか、ポイントがあれば聞かせてください。

萩原:主には、ウェブサイトを一番利用してもらえるであろうユーザーの属性を想定する「ペルソナ」の策定と、かれらがサイトを巡りながらどんな感想を抱くかを洗い出す「カスタマージャーニーマップ」の制作でしょうか。

3人のペルソナについて書かれた図。「福祉をテーマにしたプロジェクトに参加して、自分でも企画をつくりたくなった福祉施設職員」を1人想定し「ライトユーザへの発信」として30%の比重を、そして「自分のキャリアがちょっと心配な、都外アートプロジェクトの現場スタッフ(40%)」と「国内のアートプロジェクト事例を知りたい若手研究者(30%)」の2人を「現場で活動しているユーザへの発信」として70%の比重で想定している
今回のプロジェクトで立てられたペルソナは3人。架空の人物でありながら、年齢やキャリア、ウェブサイトを訪れる目的やインターネットの使用頻度、趣味や好きなアーティストなどを細かく設定している。

櫻井:改修プロジェクトでは、初期にペルソナづくりから時間をかけて取り組んだことが、とても印象的です。はじめに設定した3人の顔が、改修作業をしながらずっと浮かんでいましたね。このウェブサイトを使う人たちがどんな思考をもっているのかを想像して、仮面をかぶって画面を見ていると「あの人、多分ここの説明わからないだろうな」と、誰がどこにつまずきそうか、客観的に課題や疑問点が浮かんできました

ただ、最初は「ターゲットを絞る」ことに、背徳感や違和感を覚えることもありました。わたしたちはTARLの培ってきた知見をひらいたり、プロジェクトへの参加の機会をつくったりしながら、さまざまな人がアートプロジェクトの視点や取り組みに触れられるようにしたい。だからペルソナを限定することで、そうしたかかわりの裾野を広げることと相反してしまわないか、と葛藤もあったんです。

萩原:その葛藤、わかります。ペルソナを立ててカスタマージャーニーをはじめる前には必ずといってもいいほど、「ほかの人にも届けたい」や「みんなに届けたいからターゲットなんて絞れない」という意見が出ます。ですが、対象を定めずに「みんな」に届けようとすると、結局制作チームメンバーの意見や考えの方向性がバラバラになってしまうんです。いいウェブサイトをつくるためにも「この人にまず見てもらいたい、その人が満足するものだったら、この周辺の人もきっと満足する」という認識をモノサシとして、ターゲットを定める必要があるんです。

櫻井:「ターゲットを絞る」ことと「アクセシビリティについて考える」ことは、別のレイヤーにある観点なんだと、あらためて考えましたね。

萩原:そうですね。画面を拡大して読む人や、音声読み上げソフトを使う人といった多様な身体的・心理的な特性と、その人の属性をわけて捉えるということです。その人はテレビゲームが大好きかもしれないし、アートプロジェクトに参加することが趣味かもしれない。

混同してしまいがちですが、アクセシビリティはあくまで「土台」です。もちろん誰にでも使いやすいウェブサイトを目指すことは達成すべきだという前提があって、その上で誰に届けたいのかを考えられるといいと思います。実際に達成するのはとても難しいですが。

川村:あと、今回のペルソナの妙は「ライトユーザーへの発信が30%」「現場で活動しているユーザーへの発信が70%」と、優先度をパーセンテージで定めたことですよね。ペルソナにはバリエーションが必要なので複数の属性を立てますが、結局誰がメインなのか、届ける相手を明らかにしたことも大事だったと思います。

ユーザーに届く言葉へ変換する

―― そこで決まった3人のペルソナに向けて、編集者である川村さんが主導してウェブサイトで使用する「キーワード」を決めていったそうですね。

TARLウェブサイトのキーワードについて説明するページのキャプチャ画像
TARLウェブサイトでは新たに、ユーザーの興味関心に合わせた「運営する」「伝える」「つくる」「考える」「知る」の5グループからなる34のキーワードから、該当するプロジェクトや資料を探すことができるようになった。

川村:このときに意識したことは、TARLの知見を直感的にわかるようにすることです。そこで、大きく4つの特性にわけて考えることにしました。初期の頃に力を入れていた「アートマネジメント」に必要な技術。次に、近年注力している「災間・災害」や「多文化」といった時代に応答するようなテーマ。それらからはこぼれ落ちてしまう「言葉を編む」「ひらき方」「つくり方」など、TARLならではの試行錯誤。最後に「アートプロジェクト史」や「TARLの歩み」などの歴史。これらを伝えるために、TARLとユーザー双方の接点を探って、言語化しました。

櫻井:このキーワード群は、このあとに取り上げるアクセシビリティ向上に関するユーザーレビューでも「とてもわかりやすくプロジェクトが探せる」と好評でした。編集といえば、特にTARLが実施してきた個別のプロジェクトページについても、本文のトンマナだけではなくページの構造そのものから検討しています。

萩原:ウェブページは紙のように物理的な制約を受けないので、どこまでも情報が載せられることがいいところではあるのですが、見出しや画像の下に入るキャプションといった、ウェブサイトのインターフェースならではの構造がありますよね。それを使いやすく、でも読みたいときにはしっかり読めるというバランスはなかなか難しかったのではないでしょうか?

TARLウェブサイトで公開している、プロジェクトの情報が掲載されたページのキャプチャ画像
それぞれのプロジェクトページでは、開催方法や実施形式、回数、関連人物などを右枠にまとめた。本文は、プロジェクトを要約した見出しと、プロジェクトで扱うテーマや問いに関する解説文がつづく。

川村:そうですね。ウェブサイトは「時空間」なので、ユーザーの欲しい情報をそのつど適切に出していくことに苦心しました。ページの冒頭にはプロジェクトの概要が簡単にわかるように40字ほどの見出しがあって、その下にはもっと詳しく知るために600字ほどの詳細を置いて……と、情報を段階的に手渡せるようにテキストを整えていきました。

なので、テキストのリライトというよりは、今後更新していくプログラムオフィサーのみなさんが使う「フォーマット」を考えた、という方が実際にやったことに近いですね。

TARLと連動した事業「東京アートポイント計画」の英語ページのキャプチャ画像
今回のプロジェクトでは、東京アートポイント計画の国際的な事業発信に向けた英語ページも作成した。英語ページ 総合ディレクション 那波佳子(リレーリレーLLP)、翻訳 William Andrews。

アーツカウンシル東京 小山冴子(以下、小山):今回のウェブサイト改修では、都内でNPOとアートプロジェクトを実施する「東京アートポイント計画」のウェブサイトも改修し、TARLとの連動性が見えるようにしましたね。また、東京アートポイント計画を説明するための英語ページを新たにつくりました。

改修プロジェクトについて話す小山冴子さん
小山冴子 アーツカウンシル東京 Tokyo Art Research Lab/東京アートポイント計画 プログラムオフィサー。主に英語ページの制作を担当した。

そのときには、日本のアートプロジェクトに関心のある海外の研究者や、わたしたちと近しい活動をしている団体というユーザーを想定しましたね。東京アートポイント計画の特徴は何なのか、どんな情報を届けるといいのか、どんなことを疑問に思うかなど、コンテンツの順番も意識しながら検討を重ねました。

さまざまな人を巻き込んでサイトを磨き上げる

―― 座談会の前編でも「アクセシビリティ」についての話題が挙がりましたが、今回の改修では誰もが使いやすいウェブサイトを目指すために、障害者専門クラウドソーシングサービス「サニーバンク」と協働して、ウェブアクセシビリティの向上に取り組みました。障害当事者の方々に実際にウェブサイトを閲覧してもらうサービスですが、制作プロセスのどの段階で行われることが多いのでしょうか?

萩原:まず、当事者の方に見て頂ける機会は貴重ですよね。通常の「アクセシビリティ診断」では、専門業者に診断を依頼し、JIS規格への対応と対策をレポートしてもらうというやり方になります。ウェブサイト公開直前に実施される場合がほとんどではないでしょうか。しかし、公開間際になって改善点が見つかったとしても、対応が間に合わない状況であることも少なくはないです。アクセシビリティと聞くとハードルが高く思えてしまって、なかなか本質的な改善にまで踏み出すことができない人もいると思います。

僕はむしろ、普段は見逃してしまうような、発想することのできないアイデアをもらえる機会と捉えて、サニーバンクさんと積極的に協働してみたいと思っていました。さまざまな人を巻き込んで、よいサイトを一緒につくる「発想法」に近い感覚なら、モチベーションも高くアクセシビリティに取り組めるのではないかと思います。

今回のウェブサイト改修では、アクセシビリティに関する規格に厳密に準拠することを目指すのではなく、障害のある当事者の方によるユーザーレビューを制作途中の段階で複数回実施することで、アクセシビリティの向上をサポートいただきました。デザインが組み上がった段階で1回、ウェブサイトとして各ページの挙動が仕上がってきた段階で2回、合計3回実施しています。そのように、さまざまな人に実際に触れてもらいながら、改善点を細かく確認して公開に向かうことを意識しましたね。

櫻井:サニーバンクの担当者の方も、一つのウェブサイト制作に伴走して、各段階でチェックを行うという経験はなかなか少ないと話していましたね。

―― なるほど。そもそもウェブサイトにはアクセシビリティに関する規格があるけれど、そこに準拠するだけが選択肢ではないということですね。

萩原:ウェブサイトにおけるアクセシビリティの基準として「JIS X 8341-3:2016」という産業規格があります。自治体のウェブサイトも準拠するような厳格なものなので、JIS規格を満たしているウェブサイトをつくるとなると、一つひとつのルールをクリアするためにもかなりの時間や労力がかかります。また、先に制約ばかりが見えていると自由度が下がったような気持ちになって制作メンバーのパフォーマンスも下がってしまうかもしれない。そう考えて、JIS規格の準拠よりも、実際のユーザーの声を反映させたアクセシビリティ対応へ切り替えました。

もちろんJIS規格に準拠できればそれが一番ですし、あるいは今回のウェブサイトも、審査すればある程度の水準でよい結果がいただけるのではないかと思っています。

―― アクセシビリティ向上の取り組みについて、具体的な流れと、対応の方法について教えてください。

萩原:ユーザーレビューでは、視覚障害や精神障害、発達障害などさまざまな障害のある方が参加して、各回3~5人がそれぞれの使い方でウェブサイトを確認し、気になったことやつまずいたことについて意見をもらいました。さまざまな部分に多角的に指摘が入るので、対応の難易度や優先度も一緒に確認しましたね。

改修プロジェクトのときに使ったタスク管理ツールを指さす萩原さん
それぞれの指摘事項を順次タスクに落とし込んで、細かく記録を残すようにした。

川村:1回のレビューで60個ほどの修正が出たこともありましたよね。各回の最後には、スタッフだけが残って個々の意見を振り返りましたが、アドバイザーの方からアクセシビリティを考えるときに大事にしたい、指針となるような言葉を聞くことができました。

萩原:振り返りのなかで、アクセシビリティを考える上で大事なポイントについても共有しながら優先して改善すべきポイントはどれか、相談にのってもらえたのもよかったですね。

―― 実際にどんな意見が上がりましたか?

TARLウェブサイトのプロジェクト一覧ページのキャプチャ画像
プロジェクト一覧ページの右枠には、キーワードや参加募集中かどうかなど、特定の条件で絞り込みできる機能がついている。

井山:いろいろありますが、プロジェクトや資料の一覧にある検索の絞り込み方法についても勉強になりました。当初は絞り込み枠の一番下にある「この条件で探す」というボタンがなくて、項目にチェックを入れると順次自動で検索結果が反映される仕組みになっていました。

萩原:このようなシステムは世の中には多々あって「ユーザーも慣れているだろうし、それでいいか」と思っていましたが、読み上げソフトや拡大鏡を使っている人は、クリックするときには検索窓のある右側に焦点があるから、自動的に左側でコンテンツが変わってしまうと、何が起きているのかわからないことがある。なので、自分のタイミングで絞りたい項目を選び、ボタンをクリックして検索を実行する、この2段階のプロセスを経る仕組みに変更しました。

川村:あるとき「ページ全体を把握してから詳細にうつりたい」という意見の人と「全体像が最初にわかってしまったら量が多くて不安になる」人で、意見がわかれたときがありましたよね。そのときアドバイザーの伊敷政英さんが「そもそも興味のない人は見ないし押さないのだから、その人が自分で判断できるようになっていることが大切」とおっしゃっていたことが印象的でした。個々の障害特性や環境、好みなどの差異はあっても、最後はいち個人が選択できる状況が担保されていること。そして、障害がある人とそうでない人の間に情報量の差が生まれないようにする、それがフェアな状況づくりなのだなと。

櫻井:わたしたちが過度にサービスを提供するのではなく、それぞれが自身の使いやすい方法を選べるように環境を整える。それこそ、制作に向き合うときの「土台」となる考え方を手に入れたと思います。

小山:読み上げソフトを使ってウェブサイトを見ている人は「どういう世界が見えているのか」、このウェブサイトは一見一つに見えるけど、実はいろいろな見え方が同時に存在しているということを垣間見ることができました。

自分の指針が更新される瞬間

―― 皆さん、アクセシビリティ向上の取り組みを通して自分のなかでどんな変化がありましたか?

井山:デザインの基本的なルールとしてのアクセシビリティは、ある程度知っているつもりでいたのですが、今回のレビューを経て、自分が思っていた「アクセシビリティ」と、実際の姿には差異があったなと感じます。

あらゆるユーザーが使いやすいウェブサイトのためにウェブアクセシビリティがある。その基本理念に触れて、使いやすいウェブサイトとはなにか、初心に帰る場面が多かったですね。無意識のうちに「ここは大体これくらいでいいだろう」と思い込んでいたところにも指摘が入って、ほんとうにとてもよい勉強になりました。

櫻井:レビューを複数回行ったことで、前回からの修正箇所に対して「あ、ここがよくなってる!」と声が上がる場面もありました。

改修プロジェクトについて話す井山さん

井山:そのときは心の底からうれしかったです。前のバージョンで情報の優劣をつけるために、グレーの色の文字を多用していたのですが、「色が薄くてまったく読めない」という意見があり、思い切ってフォントサイズの大小だけでデザインを組み直しました。そういう細かなところもしっかり見つけて「改善されていますね!」と言葉をもらえて、いままでにない経験でした。

川村:わたしもアクセシビリティについてここまでしっかり取り組むのは初めてで、やや身構えていました。井山さんの言うように、音声読み上げソフトの違いなど知識的なことは別として、斜め上を行く意見というよりは、ちょっと気になるけれどまあいいか、と思っていたことを指摘されて「ああ、やっぱりそうですよね。すみません……」と恥ずかしくなることが多かったです。そこまで重要ではないとしてしまえる時点で特権があるのだと、あらためて自分の判断基準を問われる機会になりました。

ジェスチャーを交えて話す川村さん

もう一つ、ユーザーレビューの最中には「ほっとする」や「気持ちいい」「不安になる」という言葉をよく耳にしました。感覚的に「あ、ここを押すんだな」「必要な情報は右側にまとまっているのか」とわかれば、楽で、迷わず、安心していられる。また来たいと思う。誰でも使えることを目指すときに、理論やシステムから考えるだけではなく、いちユーザーとしてもっと感覚的に向き合う必要があるなと。こうした自分自身の指針が更新される瞬間がたくさんありました。もう、この経験の前には戻れないな、と思います。

萩原:僕は、サニーバンクとの協働を通じて、かれらは「観察のプロ」だと感じました。ウェブサイトをつくっている当の本人である僕たちも、ここまでじっくり見る機会は少ないと思います。僕たちとは異なる速度で、丁寧にウェブサイトを観察する。そうすると障壁になっている箇所や、わかりにくい部分があらためて見つかる。当たり前に聞こえるかもしれませんが、ウェブサイトをちゃんと見ることの大切さを感じました。

ジェスチャーを交えて話す萩原さん

ディレクターもデザイナーも編集者も、みんなが漠然ともっていた「アクセシビリティとはこういうこと」という先入観が、当事者の方々と言葉を交わすことでそれぞれに実感を伴って更新されたんだと思います。

これからのものづくりに挑むときに

――皆さんのクリエイションにも影響のあるエピソードが多かったようですね。

川村:ウェブサイトだけでなく、何かをつくるときには、クリエイターは団体や活動の「翻訳」を担います。これからの時代、わたしたちクリエイターが翻訳を行うとき、内容だけでなく、そこに取り残されている人がいないかについても常に意識的でなくてはいけないなと。情報保障やアクセシビリティは「知る権利」に直結するもので、当たり前に取り組むべきもの。しっかり必要な時間とお金をかけて、クリエイションの前提にしていきたいですね。

それから、自分とは異なる人について学び、想像しようとすると同時に、自分もいちユーザーだということを忘れないようにしたいなと思いました。自分自身をもう少し信じるというか、自分の感覚を掴んでいるからこそ、他者にも手を伸ばすことができるなと。いろんな人と真っ直ぐに意見を交わしながら一緒にものをつくる、ありがたい経験をすることができました。

井山:これからもかしこまらずにアクセシビリティに向き合うことができそうです。基本的なところさえ守れば、ある程度自由度も高いですし、アクセシビリティを担保するためにおもしろいデザインができなくなるとは思いません。アクセシビリティに重点を置く仕事も増えてきているので、ときどき今回のことを思い出しながら、初心に帰りつつ、今後につなげていきたいです。

萩原:ローレンス・レッシグというアメリカの法学者が『CODE―インターネットの合法・違法・プライバシー』という書籍のなかで、サイバー空間では「コード」すなわちプログラミングやハードウエアが法であり規制する力をもつと述べています。それ以来、ウェブサイト制作に携わる自分も気をつけなくてはと思っていましたが、編集やデザインにおいても似たような側面があることに気づきましたね。なにげないあしらいが無意識に排除をつくりだしてしまうことや、「これくらいで伝わるだろう」と思い込むあやうさが見えてきて。やはりそういう意識をもって、ものづくりに挑まなくてはいけないですし、今後のチャレンジにはさまざまな人の視点を受け止めていく謙虚さが重要だとあらためて思いました。

―― 今後は、さらにアクセシビリティやユーザーを想定したウェブサイトづくりが広がっていきそうですね

萩原:アクセシビリティに重きを置いたウェブサイトをつくりたい場合、今回もお話したように専門家との協働が必要です。もし、そこまでできない場合でも、制作プロセスに身の回りにいる障害のある方や、老眼の方、日本語を母語としない方、さまざまな人を巻き込んで、ウェブサイトのあり方を検討することもポイントだと思います。最後までつくりきってから見せるのではなく、つくっている最中から思考をひらいていくと、だんだんチームの視点がチューニングされて、使いやすいものになっていくのではないでしょうか。

あらためてになりますが、ウェブサイトは建築とよく似ています。僕たちは「箱」をつくったにすぎないので、そこに住まう人たちがどう使っていくかが重要になります。僕たちクリエイターチームも引き続き学びを得ながら、伴走の方法を更新していきたいですね。

TARLウェブサイトが映った大型モニターの前に並ぶプロジェクトメンバー。手前左側から萩原さん、井山さん、川村さんが座り、その後ろに左から櫻井さんと小山さんが並んでいる

これからのウェブサイトのあり方を考えることからはじまり、チームメンバーそれぞれの感覚が問い直された今回の「Tokyo Art Research Labウェブサイト」制作。プロジェクトメンバーの気づきや声がまた、どこかで行われているウェブサイトづくりのヒントや背中を押すものになれば幸いです。

レポート前編はこちら

「Tokyo Art Research Lab」ウェブサイトはこちら

>ウェブディレクターの萩原さんが監修したウェブサイト制作のポイントをまとめた冊子『アートプロジェクトのためのウェブサイト制作 コ・クリエイションの手引き』はこちら

「Tokyo Art Research Lab」ウェブサイト」改修のポイントをまとめた記事はこちら

(撮影・仲田絵美)

HAPPY TURN CHRONICLE

東京都神津島村を舞台にしたアートプロジェクト『HAPPY TURN/神津島』の変遷を、5年間の年表と、チラシや図面などの印刷物や記録写真、そして活動の裏側やこぼれ話を集めた“当事者”年表によってまとめました。

年表や関連資料はさまざまなサイズの紙面で構成され、それらをリングファイルに綴じることで1つのアルバムになります。さらに、このファイルを手にとった人々が思い思いに「神津島」と自身をつなぐメモ書きや写真などの資料をはさむことで、自分だけのアルバムが完成します。

これはもう相当大変でしたね。

(2018年9月)
目次

かたづけて/おりかえす いわさわたかし
はじめに
このアルバムの使い方
2022年度年表
2021年度年表
2020年度年表
2019年度年表
2018年度年表
わかりあえないままでいること 飯島知代
場が生きること 中村圭
「HAPPY TURN/神津島」の日々に寄せて 櫻井駿介

○ZINE -エンジン- ACKT01

アートやデザインの視点を取り入れた拠点づくりやプログラムを通じて、国立市や多摩地域にある潜在的な社会課題にアプローチするプロジェクト『ACKT(アクト/アートセンタークニタチ)』。このフリーペーパーは、まちに住む人に情報を発信、収集することで、これまでになかった縁がつながり、これからの活動のきっかけとなることを目指しています。

第1号のテーマは「文教都市・くにたち」。古来から先人の知恵を継いできた谷保・青柳や、理想の学問を求め拓かれた国立駅周辺など、さまざまな教育が息づいている地域の活動をつなぎ、多様な学びについて考えていきます。

活動しながら思ったのは、まちに興味がある人と話す機会はあるんですけど、興味ない人と話す機会がないんです。

(p.17)
目次

ACKT(アクト)について
谷保天満宮
NPO法人くにたち農園の会
一橋大学
国立音楽大学附属幼稚園
社会福祉法人滝乃川学園/ロボットプログラミング教室ProgLab
まちライブラリーくにたちダイヤ街/ベースクール
くにたち郷土文化館で学ぶ近代史 次の世代に生活を引き継ぐ
ACKT’s ACTION ① 「・と -TENTO-」Vol.1
ACKT’s ACTION ② 「さえき洋品●」
エンジンルームこちら企画会議 〜○ZINEを載せてACKTはどこへ向かう!?〜
堀道広「たまたまブラブラ散歩」
国立高校「私たち国高新聞部」
「CAST」vol.2 坂根知里(スナック水中代表/ママ)
「LAND」vol.2 500年のCOMMONを考えるプロジェクト「YATO」

DOCUMENT302 アートプロジェクトの担い手たちのラボ ROOM302の記録 2009-2022

「ROOM302」は、東京都千代田区のアートセンター・アーツ千代田3331にあった活動拠点です。アーツカウンシル東京が運営し、イベントやレクチャー、展覧会、アーカイブ、打ち合わせ、あるいはさまざまな実験的な活動の舞台となりました。

2023年3月、アーツ千代田3331との契約終了に伴い、惜しまれながらもROOM302の運用に終止符を打ちました。本書では、14年にわたる「ROOM302」のありようを、数々の写真と、各年度の出来事をまとめたテキスト、この場所にゆかりのある人々からの寄稿によって辿ります。

この場所が常に完璧な環境だったわけではなく、整わせ過ぎない場所であったことが共通しているように思います。そしてまた、そうした“しつらえ”によってアートプロジェクトに必要となるコミュニケーションを運営者側に考えさせる役割を果たし続けていたのではないかと感じています。

(p.79)
目次

はじめに(櫻井駿介)
足跡を辿る(大内伸輔)
言葉を編む(鄭禹晨/長島確/瀬尾夏美/工藤安代/鈴木雄介/いわさわたかし/坂本有理/太下義之/齋藤彰英/佐藤慎也)
あとがきにかえて(森司)

ファンタジア!ファンタジア!ー生き方がかたちになったまちーとは

それまで当たり前だと思っていた考えを解きほぐす「対話」を生み出し、地域の文化資源の活用から「学びの場」 を創出する『ファンタジア!ファンタジア!―生き方がかたちになったまち―(通称ファンファン)』。つくることを楽しむための拠点「藝とスタジオ」や、これまで開発してきた一人一人の創造力と向き合うコミュニケーションプログラムなど、ファンファンの取り組みを紹介するパンフレットです。

オンライン座談会「誰かと一緒にウェブサイトをつくるために必要なことはなんだろう?」

ウェブサイト制作のプロセスや、それぞれの段階で押さえておくべき課題、チームで制作に取り組むポイントをまとめたガイドブック『アートプロジェクトのためのウェブサイト制作 コ・クリエイションの手引き』の内容をもとにしたオンライン座談会です。

それぞれの立場からウェブサイト制作に関わる人々が集まり、日頃感じる「もやもや」を持ち寄りながら「誰かと一緒にウェブサイトをつくる」ことについて考えます。