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ひとりの悩みをひらいたら、みんなでつくる学び合いの場になった。大事なのはいきおいと、いつでも立ち止まる勇気。(続・ジムジム会)

2021.03.15

執筆者 : 雨貝未来

ひとりの悩みをひらいたら、みんなでつくる学び合いの場になった。大事なのはいきおいと、いつでも立ち止まる勇気。(続・ジムジム会)の写真

2021年1月29日、東京アートポイント計画に参加する9団体が互いに学び合う「事務局による事務局のためのジムのような勉強会」こと「ジムジム会」から派生した「続・ジムジム会」の第2回が開催されました。今回のホストは、東京アートポイント計画の「異端児」を自称するHAPPY TURN/神津島の事務局チーム。「聞いて!アートプロジェクトに関わる人!」をテーマに、他の事務局のみなさんに、神津島の事務局チームが今考えていること・知りたいことや悩みを聞いてもらい、一緒に考えてもらっちゃおう!という企画になりました。

「もしも野菜が3種類しか育たない島に移住するなら、何が育つ島に行く?」というちょっとかわったアイスブレイクにはじまり、事務局の飯島さんがフリップで繰り出す悩みや疑問に、参加者がひたすらチャットで答える「チャットで答えて!」や、参加者が次の回答者を指名して次々に発言する「リレーで答えて!」、事前アンケートをもとに、飯島さんがじっくり話を聞きたい参加者と1対1で話す「話して!聞かせて!」など、オンラインのやりとりの設計にさまざまな工夫をすることで、多様なインタラクションが生まれました。コーナーとコーナーの間では、会の間じゅう島の中を移動し続けている事務局の中村さんとテレビの生中継スタイルでつなぎ、神津島のさまざまなスポットを、ひとり寸劇をしたり、ひたすら走ったり、海に飛び込んだり(!)しながら体をはって紹介する「島内やーい!」で小休止。ある参加者から「ジェットコースターのような」と評された、神津島と事務局チームの、いきおいと、個性と、魅力たっぷりの2時間となりました。

自称・東京アートポイント計画の「異端児」

島で暮らしている人はもちろん、かつて島で暮らしていた人、島暮らしに興味をもっている人、島外で島を支援する人……様々な立場から島に関わる人とつながり、それぞれの暮らしや考え方を学び合うことで、「幸せなターン」のかたちを探っていきます。故郷との距離や、異なる地域で生きることについて考え、悩み、良くしようとしている多くの人とともに、これからの生き方のヒントを集めていくことを目指しています。(HAPPY TURN/神津島 プロジェクトステイトメントより)

このステイトメントからもわかる通り、HAPPY TURN/神津島は、一番最初から「アートプロジェクト」を目指してはじまったものではなく、事務局チームの来し方も、鉄道会社社員や教師、専門学校職員などさまざまです。2020年は新型コロナウイルスの影響で本州との行き来がしにくい状況。ジムジム会も全てオンライン開催になったことで、他事業との距離感が広がり、アートプロジェクトの「参照点」に接する機会が少なくなっていました。だから実は「異端児」というのは、引け目みたいな感覚や、自信のなさのような気持ちもまじった、ちょっと複雑な自称でもあったのです。

さて、そんな事務局チームが今回、どうやって「アートプロジェクト事務局の学び合いの場」をつくっていったのか。ホストを担った飯島さん、中村さんたちと同じくらい、いやそれ以上に戸惑いながら制作に伴走する中で気がついた、いくつかのポイントをご紹介します。

point 1:ホストが一番たくさんのことを持ち帰れるようにすべし。

神津島の事務局チームは、ものすごくサービス精神旺盛な人たちです。人を楽しませることや、よろこばせることが上手で、得意で、そのためのアイディアが次から次へと出てきます。

今回の企画を考える中でも、最初は「どうやって参加者を楽しませるか」という視点で、たくさんのアイディアが出ていました。企画会議はエンターテインメント・コンテンツづくりの方向に突っ走り(もちろん、それはそれで楽しいのですが)、そのたびに「あれ、でもなぜそれをやるんだっけ?」「学び合うってどういうことだろう?」という問いに立ち戻ることを何度か、繰り返しました。

そのやりとりの中で少しずつ共有されていったのは「ホストである自分たちが一番たくさんのことを持ち帰れるようにしよう」という軸。飯島さんは日々の悩みを聞いてもらい、アートプロジェクトをもっと知りたいと思う今の気持ちにこたえてもらおう。中村さんは、得意のパフォーマンスで大好きな神津島を紹介して、神津島いいね!ってみんなに言ってもらおう。そのためにできること・やりたいことを詰め込んで、会の構成がなんとかかたちになったのは1月13日。本番まであと2週間と少しという時でした。

point 2:ホストはできるだけラクをすべし。

次の企画会議には、HAPPY TURN/神津島のプログラムディレクター岩沢兄弟と、続・ジムジム会の発案者で第1回目のホストでもあるファンタジア!ファンタジア!ー生き方がかたちになったまちー(通称:ファンファン)事務局が参加してくれました。このときにファンファンの青木さんが投げかけた「ホストだけががんばるんじゃなくて、参加する人みんながつくる学び合いの場にしたい」ということばが、今回の続・ジムジム会をつくる上での太い柱になりました。

>ファンファンチームがホストを担った「続・ジムジム会#01」。岡野POによるレポートはこちら

事務局チームのやりたいことを詰め込んだプランに岩沢兄弟は、「だいぶ詰め込んだね。それだと本番中、機器の操作や進行のことで頭がいっぱいになって、自分たちが十分に学べないと思う。もっとラクしよう。」と、やりたいことを実現しつつ運営の負荷を減らすための、さまざまな工夫やヒントをくれました。なるほど、ホストはもてなす/提供するほうで、参加者はもてなされる/受け取るほう、というのが一般的な認識。でも、続・ジムジム会のホストと参加者は、そこからはなれた新しい関係を目指したほうがいいんじゃないだろうか。ファンファンチームの投げかけと、それをちがうことばで表現した岩沢兄弟のアドバイスで、もうひとつの大事な軸が見えてきました。1月18日のこと。本番まであと10日、大急ぎでタイムラインをつくり、台本を用意し、準備を進めます。

point 3:違和感に気がついたら、いつでも立ち止まるべし。

準備も佳境の本番2日前、1月27日の朝。別件で飯島さんに電話をしたら、「そういえば今日送るはずの台本、まだできてないんですよ」。昨夜、台本を書こうとしていたらふと「ひょっとしたら自分は、アートプロジェクトを知りたい、わかりたいと思い込もうとしているだけなんじゃないか」という、今回の企画の根本をくつがえしかねない疑問が湧いてきた。そこからぐるぐる悩みはじめて、ひと晩ドツボにはまり、今日は朝から何も手につかないのだ、と。繰り返しますが本番2日前。悩んでしまったことはちょっと横に置いておいて、さらっと本番をこなすこともできなくはない。でも飯島さんは立ち止まって、それをことばにしようとしていました。勇気のいることです。電話口で飯島さんがたぐりよせることばを聞きながら、本番もきっといい時間になるんだろう、と思いました。

point 4:「ついやってしまうこと」のいきおいを大事にすべし。

そのころ中村さんは「島内やーい!」の準備を、まるで8月31日に宿題をやっているみたいな気分で進めていたのではないかと思います。会の途中途中で、島内の5か所からビデオ通話でつなぎ、テレビの生中継のような演出で島の魅力を伝えるこのコーナー。実際には「島の魅力を伝える」なんて月並みなことばでは表現しきれない、中村さんの個性と瞬発力が大爆発した企画だったのですが……。5か所の中継ポイントの場所以外、実は何も知らされていなかった私は、本番冒頭の「中継」で、強い西風が吹きすさぶ中、真冬の海にいきなり飛び込んだ中村さんを見て、画面を拠点「くると」の飯島さんに切り替えるのも忘れ、絶句していました。

そんな、いまだかつてないエネルギーで始まった本番がどんなようすだったかは、ご想像におまかせします。終了後のアンケートで、参加した他団体の事務局メンバーから寄せられたコメントをいくつか紹介します。

飯島さんと中村さんのバランスといいハッピーターンにしかできない会でした!このままの感じでプログラム作っていってほしい!

全体の構成がすごく良く、勉強になり楽しかったです。
島の名所の中継も素敵で、また行きたくなりました。(中略)またホストやってほしいです。

飯島さんの切実な問いかけから、他のプロジェクトメンバーの回答を聞く会は聞き入ってしまって。それぞれが大事にしている部分を開いてもらった感じでよかったです。濃厚な時間でした!

私もアートプロジェクトに関わり続けている理由を考えるいい機会でした。色んな話を聞いて、飯島さんがどう感じたのか気になる!
島の地理を活かした配信さすがです、、中村劇場お疲れさまでした!!

HAPPY TURNのみなさんおつかれさまでした。とっても楽しかったです、ありがとうございました。みなさんが丁寧に楽しく準備されていたんだなと感じられて感動しました。人の心を動かせるってすごいです。尊敬です。

point 5:「プロセス」を振り返り、たしかな自信にすべし。

会が終わって数日経った頃、飯島さんから「今回の続・ジムジム会がどうやってできたか、その資料を公開したいと思うんですけど、確認してもらえますか」と、大量のデータが送られてきました。打ち合わせ議事録や台本、タイムテーブルをはじめ、当日のチャット記録(飯島さん、中村さんからのお返事つき)や事前アンケートなどが、丁寧に整えられた資料でした。資料の中に、「最後に飯島より みなさんへ」というタイトルの、数ページのテキストがありました。そのテキストには、本番2日前にドツボにはまり何も手につかなくなった日のことと、それに対する飯島さんの暫定的な答え(のようなもの)が書かれ、最後はこうしめくくられていました。

最初はジムジム会のホストだなんてできるわけない!と思っていた、私たちのこの一連の思考や今回のできごとが、どこかで私やHAPPY TURN/神津島だけのものではなく、みなさんのためにもなっていたら嬉しいです。

そういえばその後、神津島の事務局チームから「異端児」ということばを聞かないような気もします。たまたま、かもしれませんが。

もっともっと、ほめあおう。続・ジムジム会#03開催!

さて、3月はいよいよ、第3回目の「続・ジムジム会」が開催されます。東京アートポイント計画の共催9団体が、いろいろあったこの1年、ジムジム会、続・ジムジム会で鍛えた「筋肉」を披露しておたがいに褒めあう「ボディビル大会」のようなものになる予定。「それいいね」「すごいね」というシンプルなことばの滋養を、しみじみ味わう時間になるといいなと思います。

>ジムジム会のnoteはこちら

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