アーティストは何をつくっているのか?
執筆者 : 関川歩
2020.02.27
文化事業には時間が必要です。土地のことを知る。人と人との関係を築く。いろんな方法を試す。そうして、ゆっくりと醸成される価値があります。とはいえ、そこに至るまでの道のりは、さまざまな人と「ことば」を介して事業の意義を共有し、一つひとつの実践を積み重ねていくことが求められます。
2009年に始動した「東京アートポイント計画」は2018年に10年目を迎えました。都内の47のNPOとともに38件のアートプロジェクトを展開してきました。プロジェクトの立ち上げから複数年をかけて、年間を通した持続可能な活動を支援すること。それぞれの活動には、専門スタッフであるプログラムオフィサーが伴走し、個々の事業だけでなく、中間支援の仕組みづくりも行ってきました。
今回は、東京アートポイント計画の10年にわたる試行錯誤をまとめた『これからの文化を「10年単位」で語るために―東京アートポイント計画2009-2018―』に登場する「ことば」について語り合います。ゲストとともに議論を深め、時間をかけて文化事業を育むための新たな「ことば」づくりも試みます。
東京アートポイント計画とは何か? アートプロジェクトの現場では何が起こっているのか? よりよい実践につなげるために必要なこととは? これまでの実践から見えてきた、さまざまな「条件」を、約200冊のドキュメントを紹介しながら、共有します。
文化事業の背景にある文化政策の流れを意識しながら、東京アートポイント計画の10年の歴史を読み解きます。そして、他地域の文化政策の歩みと重ねてみることで時間をかけることで生まれる実践の可能性をディスカッションします。
ゲスト:鬼木和浩(横浜市文化観光局文化振興課 施設担当課長(主任調査員))
アーティストは、一体、何をつくっているのでしょうか? 複数年の時間をかけることで現場では何が起こるのか? 新しい手法や未見の表現を扱う「創造」活動を軸に掲げる文化事業において、どのように「アート」を語っていけばよいのか? 現場の風景から紐解きます。
ゲスト:アサダワタル(文化活動家)
3331 Arts Chiyoda 3F ROOM302(東京都千代田区外神田6-11-14-302)
各1,000円
今年の春に『これからの文化を「10年単位」で語るために―東京アートポイント計画2009-2018―』(以下、本書)を発刊しました。わたしたちが2009年から取り組んできた「東京アートポイント計画」の10年の試行錯誤から獲得した知見を収録した一冊です。今回のレクチャーシリーズは本書の「ことば」を使い倒そうという企画です。
本書はわたしたちの軌跡を伝えるだけでなく、それが各地の実践の後押しになることを願ってつくりました。すでに取り組んだ実例として使ってもらうことで、これからの実践に踏み出す足掛かりにしてほしいと思っています。
たとえば、
実践するとこんなこと起こるんです。なので、やってみましょう!
持続的な活動にはこんなものが必要なんです。なので、用意しましょう!
成果が出るには、このくらい時間がかかるんです。なので、続けましょう!
そういう会話が本書を介して生まれてほしい。今回のレクチャーシリーズにかける想いも同様です。
レクチャー第1回は、大内伸輔(アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー)がスピーカーを務めます。東京アートポイント計画の設立当初から事業を担ってきた大内より、本書のセクション1「中間支援の9の条件」を中心に、普段はなかなか見えにくい東京アートポイント計画の中間支援の仕組みやアートプロジェクトの現場をつくる条件にまつわる「ことば」をひらきます。本書に収まり切らなかった実例も交えてお送りします。
第2回は、ゲストに鬼木和浩さん(横浜市文化観光局文化振興課 施設担当課長(主任調査員))をゲストにお迎えします。本書のセクション2「これまでの歩み2008→2018」を使い、東京アートポイント計画の歩みを文化政策とのつながりから振り返ります。鬼木さんより文化政策の流れや横浜での実例を伺いながら、文化事業と文化政策の影響関係や紐づけるための「ことば」を探ります。
第3回は、アサダワタルさん(文化活動家)をゲストにお迎えし、ご自身が携わるアートプロジェクトを立ち上げ、動かすときに、どのような「ことば」を使っているのかをお伺いします。本書に収録した東京アートポイント計画の現場の「アート」や「アーティスト」にも触れながら、「創造」を軸とした文化事業の語り方を深めます。
各回で募集はしていますが、全回通しで受講いただくのがおすすめです。参加者のみなさんとも「ことば」を交わす時間を取りたいと思っています。ぜひ、ふるってのご参加をお待ちしております!
以下のテキストも活用していく予定です。