現在位置

  1. ホーム
  2. /
  3. プロジェクト
  4. /
  5. 続・東京でつくるということ 「わたしとアートプロジェクトとの距離を記述する」

続・東京でつくるということ 「わたしとアートプロジェクトとの距離を記述する」

誰もいないプールに光が差しているイメージ写真

エッセイを書くことを通して「東京でつくる」輪郭を探る

アートプロジェクトは、あらゆる時間軸で、複数の人間がそれぞれに影響を与え合いながら、つくられていきます。そうしたさまざまな立場の人がかかわることも「作品」に内包されます。それを提示された鑑賞者はもちろん、ライターや編集者、批評家も純粋な観察者ではいられません。こうした場面では、文化人類学等で用いられる「参与観察」という手法が参照されますが、その際、観察者が自身の背景や身体性と向き合い、対象との距離を明らかにすることが大切とされています。つまり「プロジェクトを観察・記述する」と同時に「自分を観察・記述する」ことが必要になるのです。

このプロジェクトでは、2018年から続く「東京でつくる」と「東京で暮らす」の続編として、参加者それぞれの「いま東京でつくる理由」を考えます。事例は、ナビゲーターである石神夏希(劇作家)がかかわるアートプロジェクト。参加者それぞれが「記述する」ことを軸に、ゼミ形式で執筆したエッセイの共有やゲストを招いたディスカッションを行います。

アートプロジェクトは誰のもので、何を目指すのか。多くの人が現場で直面するこの問いについて、「記述する」ことを通して考えます。

詳細

スケジュール

8月24日(土)
第1回 からだとことばで、はじめまして

9月4日(水)
第2回 何を書く? なぜ書く?

9月7日(土)
第3回 雑司が谷のまちで過ごしてみる

10月3日(木)
第4回 他者とことばを共有する

10月16日(水)~18日(金)
アートプロジェクト『Oeshiki Project ツアーパフォーマンス 《BEAT》』参加

10月26日(土)
第5回 体験からアートプロジェクトを考える

11月10日(日)
合同共有会

11月23日(土)
第6回 まちは、東京は、誰のもの?

ゲスト:韓亜由美(アーバニスト)

12月7日(土)
第7回 東京でつくってきた人の話を聞く

ゲスト:熊倉敬聡(芸術文化観光専門職大学教授)
長島確(ドラマトゥルク/翻訳家)

1月11日(土)
第8回 最後の活動日、それから

1月19日(日)
合同共有会(互いのことばを朗読し合うパフォーマンス実施)

会場

ROOM302(東京都千代田区外神田6-11-14-302 [3331 Arts Chiyoda 3F])

参加費

一般30,000円/学生20,000円

関連サイト

東京プロジェクトスタディウェブサイト

関連レポート

ナビゲーターメッセージ(石神夏希)

鹿、山、わたし

大学生の頃、私の在籍していた美学の専攻では「芸術作品を記述する」という必修科目がありました。絵画や彫刻などを分析して論文を書くために、まず作品を言葉で描写するのです。

課題として取り上げられたのは、たしか水墨画か何かだったと思います。「前景には鹿が描かれ、後景には山が……」というように、描かれているものを言語化していくのですが、私は一行も書けませんでした。なぜか? 私には、鹿と山のどちらを先に書けばいいのか、分からなかったからです。

より正確にいえば、その順番を私が決めてしまうのは、あまりに恣意的だと感じました。だって、てにをはひとつでも、与える印象はずいぶん違います。絵画を描写した私の言葉が、むしろ絵画そのものを決定的に損なってしまうように感じて、怖くて書き始められませんでした(手法そのものを批判しているわけではありません。私の幼さや拙さが、むしろ要因としては大きかったわけですが)。

だからでしょうか。数年後に文化人類学、特に「参与観察」というフィールドワークの技法を学んだとき、新鮮な驚きとともに「あ、そうだよね」とホッとしました。

観察する自分を「透明なまなざし」ではなく、肉体を持つ存在として視野に入れること。対象が(絵の鹿ならともかく)生きている人間であれば、対象と観察者である自分とが影響を及ぼし合わずにはいられない、と認めること。そして、自分は常に変化する「不確かな観察者」であるという前提から始めること。

昨年から続くこのスタディでは、「東京でつくる」と「東京で暮らす」との関わりを通して、参加者それぞれの「いま東京でつくる理由」を考えています。今年は特に、具体的なアートプロジェクトを事例として、参加者の皆さんそれぞれが観察し、記述することを一緒にやっていきます。

ただし、アートプロジェクトや作品の記録は最終目的ではありません。「書く」を通じて「見つめる」ために、さらには「見つめている自分(の肉体)」を発見するために、書いていきます。

初めて集まるメンバー同士、共通言語をつくるため、10月には私が取り組んでいるアートプロジェクトも体験していただきます。ですが実際に「書く」対象としては、自分で主宰していたり、興味を持っていたりするプロジェクトを選んでいただいて構いません。

いずれにせよ、手ぶらで来て大丈夫です(銭湯みたいですね)。第1回と第2回では、たくさん話をする場を持ちます。そして、それぞれが何を考えているのか、何を感じているのか、今回は何を「書く(見つめる)」のかを一緒に考えていきます。私も先生や講師ではなく、自分の思考や過程を皆さんに開いて、もやもや、うろうろしていくつもりです。そんな迷い道・回り道を、一緒に歩いてくれる仲間をお待ちしています。

東京プロジェクトスタディ シリーズ

アートプロジェクトの現場から外国ルーツの若者の支援について考える

これから求められる外国ルーツの若者に対する支援や仕組みづくりを考える
  • オンライン

これからのウェブサイトについて考える Webサイトは必要か? できること/できないこととその可能性を探る

「そもそもウェブサイトは必要なのか?」という問いを起点に、もやもやに向き合い、ウェブサイトづくりを再考する
  • オンライン

わたしの、あなたの、関わりをほぐす〜共在・共創する新たな身体と思考を拓く〜

異なる感覚をもつ他者との新たなコミュニケーションの回路をひらく
  • オンライン
  • 対面

Cross Way Tokyo 自己変容を通して、背景が異なる他者と関わる

メディアづくりを通して、自分とは異なるルーツをもつ人とかかわる
  • オンライン
  • 対面

トーキョー・スカルプチャー・プロジェクト 2027年ミュンスターへの旅

コロナ禍の東京で、いま可能なパフォーマンスのかたちを見つけ出す
  • オンライン
  • 対面

共在する身体と思考を巡って 東京で他者と出会うために

非言語のコミュニケーションやその身体性について議論を深める
  • オンライン
  • 対面

‘Home’ in Tokyo 確かさと不確かさの間で生き抜く

東京で‘Home’の感覚を保つ、日々の工夫を映像化する
  • 対面

東京彫刻計画 2027年ミュンスターへの旅

架空の芸術祭を通して、東京における「公共」について考える
  • 対面

2027年ミュンスターへの旅

ミュンスター彫刻プロジェクト招聘を目指して、まず東京で学び、試みる
  • 対面

部屋しかないところからラボを建てる 知らない誰かの話を聞きに行く、チームで思考する

見知らぬ誰かの話を聞き、「いま知りたいことを、より立体的に知るための技術」の獲得を目指す
  • 対面

「東京でつくる」ということ 前提を問う、ことばにする、自分の芯に気づく

なぜ「東京でつくる」のか。前提を問うなかで思考の軸を捉え直す
  • 対面

自分の足で「あるく みる きく」ために 知ること、表現すること、伝えること、そしてまた知ること(=生きること)

アーティストの現場に触れながら、生きるための支えとしての「表現」を深める
  • 対面

Music For A Space 東京から聴こえてくる音楽

音楽産業と公共空間における音楽、両者が融合する可能性を議論する
  • 対面
SHARE