現在位置

  1. ホーム
  2. /
  3. レポート
  4. /
  5. 2019年、3つの東京プロジェクトスタディが掲げたテーマや、その背景とは

2019年、3つの東京プロジェクトスタディが掲げたテーマや、その背景とは

2020.05.15

執筆者 : 村上愛佳

2019年、3つの東京プロジェクトスタディが掲げたテーマや、その背景とはの写真

Tokyo Art Research Lab「思考と技術と対話の学校」にて、2年目を迎えた「東京プロジェクトスタディ」。2019年度は「ことば」「パフォーマンス」「映像エスノグラフィー」を軸とした3つのスタディを展開しました。

東京プロジェクトスタディでは、スタディごとにチームを結成後、アートプロジェクトの核をつくるための実践を重ねていきます。3つのチームがどのような活動を展開してきたのか、詳細な活動レポートや参考資料などは現在公開中のアーカイブサイトにてぜひご覧ください。
詳しくはこちら

ここでは、約半年間にわたる活動のなかでも、スタディ間での横断的なコミュニケーションの場を生み出すことを試みた「合同共有会」についてご紹介します。合同共有会は、個々の活動内容だけではなく、成果や悩み、進めていく上で工夫したことやリサーチ状況などを共有することで、次の一歩を進めていく手がかりとなるような場を目指して開催しました。

前篇となる今回は、「共有会1」(2019年11月10日)にて語られたスタディテーマの背景や初動、進める上で大切にしている視点について触れていきます。

【執筆:前篇/村上愛佳(アーツカウンシル東京)、後篇/染谷めい】

*東京プロジェクトスタディについて
東京プロジェクトスタディとは、“東京で何かを「つくる」としたら”という投げかけのもと、関心や属性の異なる「つくり手」であるナビゲーターと参加者がともにチームをつくり、それぞれが向き合うテーマに沿ってスタディ(勉強、調査、研究、試作)を重ねるプログラムです。
実施期間:2019年8月〜2020年2月

スタディ1 続・東京でつくるということ―「わたしとアートプロジェクトとの距離を記述する」

(左から)記録スタッフ:高須賀真之(書くひと)、ナビゲーター:石神夏希(劇作家/ペピン結構設計/NPO法人場所と物語 理事長/The CAVE 取締役)、スタディマネージャー:嘉原妙(アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー)。

スタディ1は、「アートプロジェクトは誰のもので何処を目指すべきなのか」というアートプロジェクトに関わる多くの人が直面する問いから、“記述する”ことを主軸に「つくる」ことへの思考を深め、各々で設定したテーマで最終的に1本のエッセイを書き上げます。
共有会1では、「何について書きたいか/何のために書きたいか/書いた結果どうなってほしいか」という問いをもとに、スタディ1参加者が現時点で思考していることを紹介し、それに対して他のスタディ参加者がリアクションする対話型ワークショップを実施しました。ナビゲーターの石神夏希からは、アートプロジェクトの現場では地域の人々にプロジェクトの説明を行わなければならない場面も多く、他者からフィードバックを得ながら自分のテーマや企画趣旨を語ることの大切さが語られました。今回の共有会1を通じて、スタディ1参加者各自のテーマに、他者からの新たな視点が加わったことで、これから“記述する”ことに何か変化が起きていく予感が感じられる時間となりました。

スタディ1の詳細はこちら

「何について書きたいか/何のために書きたいか/書いた結果どうなってほしいか」という問いを軸に、参加者同士で対話型ワークショップを行った。

スタディ2 東京彫刻計画―2027年ミュンスターへの旅

(左から)ナビゲーター:東彩織、山崎朋、宮武亜季(居間 theater)、スタディマネージャー:坂本有理(アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー、「思考と技術と対話の学校」校長)。

スタディ2は、昨年度のスタディ「2027年ミュンスターへの旅」から生まれた「『東京彫刻計画』という芸術祭が、10年に1度東京で行われている」というフィクションを入口に、パフォーマンスをつくることを目指します。
共有会1では、「東京」「公共」「彫刻」「芸術祭」というキーワードを軸に、まちなかの彫刻を巡るフィールドワークの様子や、ゲストを招いたレクチャーについて報告。活動を重ねるなかで、「東京の劇場外の演劇の動き」や「委任されたパフォーマンス」、「ストリートアートの現在」などについて議論を交わしてきたそうです。“公共空間でどのようなことが出来るのか”という問いに対して、さまざまな角度からナビゲーターと参加者が反応し、次へのアクションにつなげていったプロセスが写真とともに共有されました。

スタディ2の詳細はこちら

まちなかにある彫刻を巡りながら、チーム内でのディスカッションを重ねている。写真は、お茶の水周辺でのフィールドワークの様子(撮影:加藤甫)。

スタディ3 ‘Home’ in Tokyo―確かさと不確かさの間で生き抜く

(左から)ナビゲーター:大橋香奈(映像エスノグラファー)、スタディマネージャー:上地里佳(アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー)。

スタディ3は、自身や他者にとっての‘Home’のありようを理解するための方法を学び、映像エスノグラフィーの手法を用いて、“調査協力者との協働”によって映像作品(プロトタイプ)をつくることを試みます。活動日には、社会学や建築学、デザインリサーチといった分野のゲストを招いて、‘Home’の捉えかたの手法やディスカッションを重ねてきました。
共有会1では、他者を理解するためのリサーチ手法のひとつとして「タイム・コラージュ」というワークショップを実施。このワークショップは、身の回りのものを1つ決めて、1日のなかでそれに関連した自分の動きを書き出していくものです。スタディ3の参加者が、他のスタディの参加者に話を聞きながら互いの日常生活を振り返ることで、普段何気なくしていた行動や、意識していなかった習慣に気づく手がかりをつかむ試みとなりました。

スタディ3の詳細はこちら

スタディ3の活動日で行った他者を理解するためのリサーチ手法「タイム・コラージュ」を、スタディ1・2の参加者を交えて実施した。

共有会1は、それぞれのスタディの関心領域や進捗の共有だけでなく、参加者がスタディの枠を越えて交流し、共有会後も意見交換が弾む場となりました。参加者からは「それぞれ違うテーマのスタディだけれど、考えている“コア”の部分は似ているように思った。自分とは何か、東京はどんな印象か、などインスパイアされることが多かった」との感想が聞かれました。
共有会レポート後篇では、共有会1を経て、各スタディがどのような展開をしていったのかご紹介します。

共有会レポート後篇はこちら

東京プロジェクトスタディ アーカイブサイト
各スタディの活動内容については、アーカイブサイトにてご覧いただけます。活動日のレポートのほか、関連イベントや参考資料なども公開しています。どのような「つくる」プロセスを歩んできたのか、ぜひ追体験してみてください。

執筆:村上愛佳(アーツカウンシル東京)
写真:齋藤 彰英(撮影者クレジットが入っているものを除く)

SHARE