座談会:ミュンスター彫刻プロジェクト2017を振り返る→2027

「ミュンスター彫刻プロジェクト」は、ドイツ北西部の都市・ミュンスターで10年おきに開催されている芸術祭。1977年から始まり、昨年に5回目が開催されました。日本のアートプロジェクトの歴史のなかでも、ミュンスター彫刻プロジェクトから影響を受けていると述べられることが多々あります。会期中は世界中から人々が作品を見に訪れ、日本の作家としてはこれまでに川俣正さん、曽根裕さん、荒川医さん、田中功起さんなどが出展しています。

そんなミュンスター彫刻プロジェクトへの招聘を目指すスタディ、「2027年 ミュンスターへの旅」が9月にスタートします。ナビゲーターを担当する佐藤慎也と居間 theaterが、昨年それぞれ現地に行き、体験して来た「ミュンスター彫刻プロジェクト2017」の振り返りをおこないつつ、スタディに向けた興味関心・目指すところを話しました。

>座談会メンバー
 佐藤慎也居間 theater(東彩織、稲継美保、宮武亜季、山崎朋) *稲継はスカイプにて参加。

・掲載写真は、全て居間 theater、佐藤慎也撮影によるものです。

芸術祭を巡る時間

 私たち居間 theaterは、昨年(2017年)の「ミュンスター彫刻プロジェクト」で初めてミュンスターを訪れました。3ユーロの地図を買って、みんなで美術館の横のレンタサイクルで自転車を借りて、1日中回りました。(佐藤)慎也さんとは残念ながら数日違いで出会えませんでしたが、帰って来て感想を話したとき、率直な感想として「楽しかった!」がありましたよね。今でもみんなで写真を見返して思い出に浸るという(笑)

佐藤 僕もミュンスターは初めて訪れたけど、街の中に彫刻(パブリックアート)を10年おきにつくっていくこのプロジェクトが、日本のアートプロジェクト(の歴史)とどう関係があるのか、今まで不思議に思っていました。行ってようやく分かったのだけど、ここで彫刻と呼んでいるものは、狭義の意味の彫刻を街に置くということだけではなかった。

確かに最初は、例えば初回の1977年につくられたドナルド・ジャッドの作品のように、パブリックアートのような彫刻作品だったのかもしれないけど、その後、場所との関係や街の人たちとの関係が変化していって、それに伴って「彫刻」はさまざまな拡がりを持ってきたのだろうなと改めて思いました。

いわゆる彫刻的なものはもちろんのこと、場所と一体となった映像インスタレーションだったり、毎回決まった時間におこなわれるパフォーマンスだったり、現代的な美術の動きが確実に反映されていたように思います。それが10年という準備時間を使って街の中に実現していき、それを街の人たちがさまざまに向き合い、受け入れたり、反発していきながら、また次の10年に向かっていくのだろうな、と。もはや彫刻は、その話し合いのための触媒でしかないようにも見えました。

Donald Judd 《Ohne Titel [Untitled]》1977

宮武 私も、10年かけて作品が街の人のものになっているんだなと感じました。パブリックアートが居場所になっている。先ほど例に出たジャッドの作品を見に行ったら、普段からよくそこに来るという男性が、「どこから来たの?」と声をかけてくれたことが印象的でした。きっと彼にとってそこは自分の居場所でもあり、外の人との出会いの場でもあるのだろうな〜と。ほかにも、家族で水辺の風景を楽しんでいたり、カップルのデートスポットになっていたり、落書きがされていたり。

 やっぱり、時間の感覚が面白かったですよね。新作だけでなく、10年、20年、30年、40年前につくられて、そのまま街に残されている作品もたくさんあって。私たちは過去の作品を自転車でめぐりましたけど、場所を移動する(横移動)のと同時に時間も遡っている(縦移動)ような感覚になったりして、散歩やサイクリング的なことも相まってか、時間を旅しているような「気持ちいい」感じがよかった。

サイクリングをしながら作品をめぐる。素朴な顔で見上げる一行。
これを眺めていたのでした。 Ilya Kabakov 《”Blickst du hinauf und liest die Worte…” [“Looking Up. Reading the Words…”]》1997

稲継 そう。思い返すと、ミュンスターでの体験にとって「移動」ってすごい大事だったんだな〜、って。自分の足で、街を捉える感覚が点から面になっていくのと、作品鑑賞とがセットになっていたことがとっても面白いポイントだったんだなぁ。
自転車で通り過ぎるスピードと、車で通り過ぎるスピードでは、当たり前だけど全然目も耳も状態が違う。地図片手に本気を出せば全部チャリで回れるっていう規模感(空間、作品数)が、個人的にとても好みだったんだなって。

佐藤 一方で僕は、プロジェクト側が用意した完璧なナビアプリを使って回ったことで、街を把握しにくかった、という贅沢な悩みもあった。それを見て自転車さえ漕げば、目的地に着いてしまうから。やっぱり、日常の近くにあって、気が向いたら作品を見る、みたいな感じが理想なのかな? 観光客として行くと、どうしても効率を重視してしまう。どうやったら効率から距離を取れるか、とか。

山崎 私は街の第一印象が記憶に残ってて。駅を挟んで反対側の「盛えている方面じゃないほう」に出てしまったからか、さびれていて治安のよくない街なのかと思ってしまいました。宿泊したホテルのすぐそばでは、昼間から酒瓶をもったおじさんたちがうろうろしていたり。ただ、それらは必ずしもネガティブな印象というわけではなくて、そのような土地で芸術祭がおこなわれてきたというのは一体どういうことなのだろう? 街と芸術祭との関係は? その歴史は? と、興味がわいた経験でした。結局そのあと、旧市街や広場や教会のある方面へ行ったので、この第一印象はすぐに塗り替えられることになったのだけど……。

旧市街である中心街の様子。切妻造りの建物が並ぶ。まちの中心には教会。

佐藤 ちなみに、ミュンスターは第二次世界大戦で大きな被害を受けて、旧市街のほとんどが破壊されたけど、その後に住民の要望があって、一部が復元されたそうです。その中で残った歴史的な建築物としては旧市庁舎が有名で、昨年のプロジェクトでは、パフォーマンス的作品の会場として使われていました。

稲継
 パフォーマンスは私たちも見ました。こんな重要文化建築みたいなところでやるのか! って。

 たしか、「壁に寄りかかったり装飾に触らないよう気をつけてね」と言われたよね。結構ラフな感じだった思い出がありますが……(笑)

旧市庁舎でのパフォーマンス。パフォーマーが空間全体を動き回る。 Alexandra Pirici 《Leaking Territories》2017

佐藤 一方、現代建築としては、ボレス+ウィルソンの代表作であるミュンスター市立図書館があり(ジュリア・ボレス・ウィルソンはミュンスター生まれ)、そこの地下にも映像作品が展示されていました。ほかにも、中世の要塞跡が、ナチスの秘密警察によって拷問や処刑のための場として使われていて、そこにもとても印象的なレベッカ・ホルンの作品が常設されていたりする。本当に街のあちこちに彫刻が埋め込まれているという感じでした。

ミュンスター市立図書館。奥の教会との対比が印象的。
Rebecca Horn 《Das gegenläufige Konzert [Concert in Reverse]》1987/97

稲継 「ドクメンタ」で有名なカッセルも、ミュンスターも、第二次世界大戦で一度街が破壊されてるんだねぇ……。

山崎 あと、芸術祭がおこる発端となったのが、彫刻(ジョージ・リッキー「三枚の正方形」)を街におくことをめぐる論争だったということで、観光や地域活性を目的としてつくられた日本の芸術祭とは性質が違うのだろうけども、しかし、私は結局「観光客」としてしか街に行けていないので実感がもてない部分もある。そのあたり実際どうなのかな? という関心があります。

おおらかな運営と質の担保

佐藤 そうそう、会期中の開館時間の長さにも驚きました。毎日、朝の10時から夜の20時まで開いていて、金曜日なんて夜の22時まで開いている。だから見る側は、朝から晩までヘトヘトになるまで回ることができる。見る側も大変だけど、何よりその時間を運営しているほうも非常に大変だと思う。

宮武 実際にどう運営されているのか、という興味はかなりありますよね。それと見る側にも運営側にもおおらかさがあるというか。突然現れて道を封鎖した作品(パフォーマンス)にも、みんななんだかんだいって手伝ったり。人気作品はオープン前から並び始めるけどスタッフはいなくて。列の統制がされていない長蛇の列も、そこにいる人同士で情報交換しながらみんなで待つ、みたいな光景がよく見られて。見る側と運営側になんとなくのコンセンサスがあるような。でもそれも、40年の蓄積なのかなとか、一方で問題は色々あるのかな、とか……。

中心街で突然、「アートのメジャー」と書いてある大きな定規を広げ始める。かなりでかいので、スタッフだけでなく周りの人が手伝っている。

 昔の作品に普通に落書きされてて、しかも「ちょうどいいから」って感じでスケボー練習の場みたくなってるけど、でもそのことに誰も「キー!」ってなってない感じとか。

山崎 廃スケートリンクでのピエール・ユイグの作品は長蛇の列ができていて、入場するまでに1時間ほど待ったのだけど、入ってみると場内は思いのほかお客さんが少なく閑散としていて。でもそれは観客の鑑賞体験の質をきちんと担保するために必要なコントロールなのだとわかった。劇場にしろ美術館にしろそれ以外の場所にしろ、作品を観たりつくったりするときにはいつもこの体験を思い出します。

稲継 「体験」としてのクオリティを守るためには、見たい人は何時間だって待たせるけど、日本的な「お待たせして申しわけありません」というノリのスタッフはひとりもいなくて、並んでる最中はノーケアで、最後の最後に「もうすぐ順番だよー、やったね!」的なスタンスだったね(笑)

入口で入場制限がされていて、一組が出ると一組入る。外には待機列ができている。 Pierre Huyghe 《After ALife Ahead》2017

10年という時間軸で考える

稲継 ところで、いま滞在制作で「越後妻有 大地の芸術祭」に来ているんですけど、ミュンスターを経験したあとに越後妻有を経験すると、単純に、これまでより面白く感じることがたくさんあるし、考えるアンテナが増えたような感じです。当然、問題にしている点もテーマもモチベーションも、芸術祭を取り囲む財源やらあらゆる状況も違うわけで、比較することにそんなに意味はないのかもしれないけど……。でも、初回の作品なんかは2000年につくられて18年たった現在、かなり作品が自然に還っていて、素直に感動しました。これ、つくられた当初のものと随分佇まいが違うんだろうなー、とか。「時間」のこととか、より精度の高い気持ちで見られるというか。

佐藤 そういう意味でも、最初の話に戻るけど、10年という時間の単位を考えることには意味があると思います。一般的な芸術祭は3年おきに開催されることに対し、10年という時間を取ることはどういうことなのか。しかも「彫刻」という概念は、10年という時間によって少しずつ変化していっているわけだし。

 「公共」というテーマは一貫しつつ、2017年のミュンスターは、デジタル化時代における身体性・公共対個人の領域の関係性、などが大きなテーマとしてもあったと、記事で読みました。

宮武 2017年の作品は、映像やパフォーマンスも含め屋内のものも多かったけれど、どの作品がどんな風に10年後やその先に残されていく・いかないのかというのも気になりますよね。パフォーマンスを主に扱う居間 theaterにとっても、何をつくって何を残せるのかを考えることは重要だと思います。

山崎 コレクションとして残されていくものはやはり物質として残るものとしての「彫刻」で、映像インスタレーションやパフォーマンスはそこには含まれないのだろうか、とか。10年後に再設置・再演というのは技術的には可能だろうけど、この芸術祭においてそれがどのくらい意味のあることなのだろう……。やはり10年という時間、その場所にずっとあるということに重要性があるのではないかとか、考えます。その間、とくに注目はされなかったとしても。

稲継 そう考えると、やっぱり「移動」とか「体験にまつわる時間」とかをどういう風にこちらから提案するか、というのはとっても大事だと改めて思った。というか、実は芸術祭において「作品」そのものはもちろんインパクトとして残るけど、一方で移動や鑑賞してない時間をどう過ごすか、というのはその芸術祭の決め手だな、とすら……。

 そういう意味では、例えばミュンスターと越後妻有での時間感覚は違うだろうし、10年という時間単位でも街の歳のとり方はそれぞれだと思います。これから私たちが始めようとしているスタディは東京からスタートしますが、東京の時間感覚はそれこそ違うはずで、東京における「公共」の考えかたもミュンスターとは違うのかもしれない……。ミュンスターを考えることで、様々な都市の10年まで見えて来たら面白いですね! そのスタディを、2018年の東京で始めることにこのスタディの醍醐味がある気がします!

佐藤 それが、9年後の彫刻(美術)のあり方を考えることにもなる。居間 theaterが、いま東京でやっていることは、間違いなくそこにつながっていると思う。だからこそ、このスタディでは、本当に9年後のミュンスター行きを目指すためにも、これまでのミュンスターや芸術祭、それに僕自身は建築が専門なので、美術館を含めた美術のための場を振り返りながら、これからのことを、居間 theaterや参加する皆さんと考えてみたいと思います。そんな貴重な時間になるのではないかと期待しています。

2027を目指したスタディ

宮武 初回は、(ミュンスターで4日間かけて、いま残っているすべての作品を見てきた)佐藤慎也さんによる、ミュンスターを含む芸術祭の歴史をめぐるレクチャーをおこないます。また2回目には、ミュンスターの話を聞くにはこの人しかいない! ということで、美術ジャーナリストの村田真さんをゲストに呼んでお話を伺います。ほかにもゲストを呼ぶ予定ですが、次回のゲストは村田さんと相談しながら決めようと思っています。

稲継 テレフォンショッキング方式や!(笑)

宮武 私たちも先が見えないスタディを楽しむために、毎回のライブ感を大事にしていこうという目論見です。そのほか、実際にミュンスターの事務局に送る手紙をみんなで考えたり、PR動画をつくったり……ということも考えています。予定調和にならないように、みんなでスタディをつくっていけたらと思います。

山崎 途中には、私たちが進めているプロジェクトの現場の様子も覗いていただきます。地理人さんとやっているプロジェクトとか、いろいろと計画しているところです。
 
 われわれはまだミュンスター彫刻プロジェクトの初心者です。これからスタディを重ねることで、パフォーマンス・美術など垣根を越えて、芸術祭やアートプロジェクトについて改めて学んでいけたらと思います。一緒に勉強したいかた、ぜひご応募くださいね!

佐藤慎也と居間 theaterがナビゲーターをつとめる「2027年 ミュンスターへの旅」は8月26日応募〆切!
スタディは月1〜2回程度のミーティングや、フィールドワークを行います。ミュンスター彫刻プロジェクトをはじめ、さまざまな芸術祭に造詣の深いゲストをお呼びし、お話も伺います。

スタディ2:2027年ミュンスターへの旅 
お申込み・詳細はこちら

*ミュンスター彫刻プロジェクトの詳しいフォトレポートが、Tokyo Art Beatのサイトに掲載されています。

アートプロジェクトを4つの視点から振り返る(北澤潤×佐藤李青)

みなさま、はじめまして、レクチャーシリーズ「徹底解体!アートプロジェクト」レポート担当の高木諒一と申します。このレポートでは、前半に講義内容の一部をピックアップし、後半は参加者として私がレクチャーから考えたことをお届けします。このレポートを通して、少しでもアートプロジェクトについて考えるきっかけやヒントをお伝え出来ればと思います。

このレクチャーシリーズでは「徹底解体!アートプロジェクト」の看板通り、「アートプロジェクト」という言葉から「表現」と「それを支える環境」を軸に過去30年の実践を振り返り、これからの実践を考えていきます。ナビゲーターを担当するのは、現代美術家の北澤潤とアーツカウンシル東京の佐藤李青です。

まず、レクチャーはコンセプトについて、ナビゲーターメッセージを確認することからスタートしました。
北澤潤 ナビゲーターメッセージ
佐藤李青 ナビゲーターメッセージ

北澤のナビゲーターメッセージにあるように会場のROOM302は「STUDY ROOM」として空間づくりがなされており、たくさんの資料に囲まれたなか、あたかも図書館の一角で行うゼミのような雰囲気となりました。

さて、今回のレクチャーでは事例の対象範囲を90年代に設定し、その10年間のアートプロジェクトを見ていきました。ただ事例を扱うのではなく、コンセプト、目線や論点についても触れながら2人の対話は進められました。前半はアートプロジェクトを次の4つの視点から、いくつかの事例を振り返りました。

  1. プロジェクトのはじまり
  2. パブリックアートからアートプロジェクトへ
  3. 続けること、委ねること 仕掛けとしてのアートプロジェクト
  4. アートプロジェクトの転換点としての1999年
レクチャー前半の板書。

「プロジェクトのはじまり」では大規模化したアート作品としてのプロジェクトとして、クリスト&ジャンヌ=クロード、蔡國強を紹介しました。プロジェクトの期間、規模、経費が大きくなる中で、作家がどのように状況をつくったのか、また参加者、鑑賞者などオーディエンスの立場が変容していることなどが語られました。

「パブリックアートからアートプロジェクトへ」では都市とアートの関係について「ファーレ立川」、「新宿アイランドアート計画」を取り上げました。野外彫刻の展開と都市・社会状況の文脈からの議論に触れながら、「プロジェクトのはじまり」でも取り上げた作家との比較も行われました。たとえば、ここでのパブリックアートの作品はプロジェクト型の作家ではなく、空間に設置するだけで完結するものが多かったなどです。その文脈からの転換点として、たほりつこ『注文の多い楽農園』に触れ、作品に住民が参加すること、それに対する参加者の認識やプロジェクトの継続を議論するポイントとして取り上げました。

「続けること、委ねること 仕掛けとしてのプロジェクト」では川俣正、藤浩志の活動について、ナビゲーターの北澤は「作品と社会の境界線みたいなところでの試み」を行い、それが「活動のリソースになっている」と話を始めました。アートと教育や医療などの領域を横断し、その交じり合いを言葉にしていく試みを行っていたのではないかと、ナビゲーターの読み解きが広がりました。作品や場をつくっていくプロセスを重要視し、トークやアーカイブという手法を使うことで言葉を追いかける、そうした態度があるのではないか、という話も出ました。

「アートプロジェクトの転換点としての1999年」ではアートプロジェクトのイメージが確立した地点を1999年に設定し、東京藝術大学先端芸術表現研究科、取手アートプロジェクト、ミュージアム・シティ・プロジェクトとヴォッヘンクラウズールの活動などに触れました。課題解決のためにアートの手法を利用するソーシャリー・エンゲージド・アートといわれる欧米の実践と日本のアートプロジェクトの重なるところと異なるところの議論が、この頃に先行して起きていたのではないかというやり取りも行われました。

会場にはレクチャーの関連資料も配架されていた。

レクチャーの後半は、ナビゲーター北澤自身のプロジェクトとコンセプトについて振り返りました。こへび隊として関わった「越後妻有アートトリエンナーレ 大地の芸術祭」や『明後日新聞社文化事業部』での五代目編集長としての経験といった原体験から始まり、『浮島』『リビングルーム』『DAILY LIFE』といったプロジェクトが話題となりました。現場を積み重ねるなかで試していたことやその経過から気付いたこと、そして、それらを言葉にしていくことについて語られました。

レクチャー後半の板書。
北澤の退任挨拶が掲載された『明後日新聞』。

今回のレクチャーを受けて、私は「アートプロジェクトの整理、体系化をこのレクチャーの「言葉」を使用して進めること」を実践してみたいと思いました。レクチャーに参加した実感と、北澤潤のナビゲーターメッセージから振り返って考えてみると、このレクチャーは「『アートプロジェクト』という言葉が時間をかけて構築されていく上で、肉付けとなった多くの実例を、『現場、評価、批評などの実践での言葉』を切っ先として解体していた」と思います。

レクチャーではアートプロジェクトを4つの視点に分類しましたが、2人のナビゲーターの対話には、ほかにもトピックとなる言葉がたくさん使われていました。たとえば「プロジェクトの主体は誰か」「作品・プロジェクトは完結しているか、続いていくのか、どこで終わるのか」「記録の方法はどうか」「鑑賞者・参加者はどこまで、何を見ることができるのか」などです。

このトピックは取り上げた各々のプロジェクトの特徴について語られたものですが、これは他の事例をみるポイントにもなります。今後のレクチャーで「アートプロジェクトの整理、体系化をこのレクチャーの「言葉」を使用して進めること」、そしてまた、トピックを自分で考え、設定することで自身の関心や興味を再認識していきたいと思いました。

参加者には当日の資料を入れるためのフォルダが配布された。
印字された日付は北澤が『DAILY LIFE』で使っているもの。
「自習」のための数多くの資料が用意されていた。
参加者は自由に書き込み、レクチャー終了後に回収、スキャン後に返却された。

(執筆:高木諒一/写真:CULTURE

2018年、5つの「東京プロジェクトスタディ」がスタート

Tokyo Art Research Lab「思考と技術と対話の学校」では、今年度の新設プログラムとして「東京プロジェクトスタディ」を開講します。今回は、8月4日(土)、アーツ千代田3331 アーツカウンシル東京ROOM302にて開催した説明会の様子をお届けします。

「東京プロジェクトスタディ」は、ナビゲーターと参加者がチームを組み、“東京で何かを「つくる」としたら”という投げかけのもと、アートプロジェクトを巡る“スタディ”(勉強、調査、研究、試作)に取り組むプログラムです。

説明会では、「思考と技術と対話の学校」校長の森司、ナビゲーターとスタディマネージャーから、いま、なぜこのテーマに取り組むのか、どのように実践していくのか、それぞれのスタディの内容や特徴についてお話しました。

(撮影:川瀬一絵)

「思考と技術と対話の学校」校長メッセージ(森司)

今年度は、これまでの学校のやり方を一新し、「東京プロジェクトスタディ」を始動させます。アーツカウンシル東京(以下ACT)が、アートNPOと共催で展開する「東京アートポイント計画」事業等のつくり手の方々にナビゲーターを担っていただき、現場との連動性をはかることで、より実践的な学びの場を生み出すことを目指します。それぞれのスタディには、ACTのプログラムオフィサーが伴走しスタディを組み立てていきます。

このプログラムでは、キーワードとして「つくる」ということばを掲げています。プロジェクトを「する」のではなくて「つくる」。「する」というのは、プロジェクトのやり方がわかった上で、ゴールに向けて進めていくことだと思います。しかし、ゼロから「つくる」となると、「何をするか」から考えなければなりません。
2020年のオリンピックまで2年ほどとなりました。それは、その先を見据えた東京都の文化事業を考えていく上で残された時間といえます。新たな活動を「つくる」ことがより一層求められるでしょう。そのような状況をふまえ、「つくる」ための筋力を鍛える5つのスタディを立ち上げました。

新しいプログラムなので、参加者のみなさんと意見交換をしながらともにつくっていきたいと思います。積極的なご参加をお待ちしております。

スタディ1 「東京でつくる」ということ―前提を問う、ことばにする、自分の芯に気づく(石神夏希)

ナビゲーター:石神夏希(劇作家/写真左)、スタディマネージャー:嘉原妙(アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー/写真右)。

スタディテーマについて

石神さんは、神奈川県を拠点に、国内外のさまざまな土地に赴いて作品を制作している劇作家。その場所に蓄積されている、場所や人の物語を触って紡ぎながら、日常の延長に立ち上がってくる演劇の可能性を探っています。

このスタディでは「東京でつくる」ことを入り口に、現在進行形で展開する石神さんの現場をケーススタディとして、つくることをもう一度捉え直していきます。

「この1~2年、東京での仕事が増え、『東京でつくる』ことに戸惑っている」と石神さんは言います。これまで、おもに東京以外の都市で、ローカルな場所性や共同体を素材にしたサイトスペシフィックな作品を手がけ、自分の身体で歩いたり触ったり体感できる大きさの場所を扱ってきました。しかし、「東京」という場所ははかなり漠然としたフィクショナルなもの。もっと小さな地域に分ければ掴むことはできるかもしれないけれど、それでは「東京」という主語で語られ、起こっている事象と対峙できないのではないか。そこで、少し無茶かもしれないが、東京という大きなものを触ることに、参加者のみなさんとチャレンジしたい、と語ります。

スタディ1は、自分の実感とフィクショナルな「東京」のあいだをつなぐ身体性を獲得するための稽古場になるイメージです。

特徴

毎月1回程度行うディスカッションのあと、参加者には必ず作文(エッセイ)を書いてもらいます。自分で考えたことをすぐにことばにするのは難しいかもしれませんが、気づきや違和感を自分から引きはがしてことばにしていく過程を、半年間繰り返します。それによって自分で考えたりつくったりする起点となる芯を見つけます。
また、実際に石神さんのプロジェクトの現場に立ち合い、身体を動かして考えていきます。

>スタディ1の詳細はこちら

スタディ2 2027年ミュンスターへの旅(佐藤慎也、居間 theater)

ナビゲーター:佐藤慎也(プロジェクト構造設計/写真右)、スタディマネージャー:坂本有理(アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー、「思考と技術と対話の学校」教頭/写真左)。

スタディテーマについて

建築家の佐藤さんは、これまで美術や演劇の制作やアートプロジェクトの構造設計に携わってきました。ここでいう構造設計とは、アートプロジェクトをどのような仕掛けで進めていくかを考えること。アートプロジェクトは美術館のなかではなく、まちなかなどで行われるため設計が必要です。居間 theaterは、演劇やダンスを背景にもつ4人で構成され、劇場ではできないパフォーマンスのあり方を考えるパフォーマンスプロジェクト。両者はこれまでにも、カフェ区役所などの公共空間にて、ともにプロジェクトをつくり上げてきました。

今回のテーマにあるミュンスターとは、ドイツのまちのひとつで、1977年から「ミュンスター彫刻プロジェクト」という芸術祭が10年おきに開催されています。日本でも、2000年頃からさまざまな芸術祭が催されていますが、「ミュンスター彫刻プロジェクト」の影響を受けているのではないかと、佐藤さんは指摘します。

昨年第5回が開催され、ナビゲーターたちは現地を訪れました。そこで、「日本で僕らがやっていることと近いのではないか」、「日本にとどまらず、世界にも挑戦できるのではないか」と感じたそうです。その強い思いから、2027年のミュンスターに居間 theaterがアーティストとして招聘されることを目指すスタディが構想されました。

特徴

「ミュンスター彫刻プロジェクト」を考察すると、10年ごとの時代の変化、美術やパフォーマンスの変遷が見えてきます。国際的な芸術祭に関わる多彩なゲストとともに、そうした歴史や変化を辿ります。また、居間 theaterが出演するプロジェクトの現場に足を運び、フィールドワークも行います。それらの活動をとおして、2027年のミュンスターにふさわしいプロジェクトの構造を設計していきます。さまざまな芸術祭・アートプロジェクトに興味をもっているひと、ユーモアをもって、制作のプロセスを探りたいひと、夢を大きくもちたいひと、ぜひ一緒にミュンスターを目指しましょう。

>スタディ2の詳細はこちら

スタディ3 Music For A Space―東京から聴こえてくる音楽(清宮陵一)

ナビゲーター:清宮陵一(NPO法人トッピングイースト 理事長/写真左)、スタディマネージャー:大内伸輔(アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー/写真右)。

スタディテーマについて

清宮さんは、音楽の現場やCDをつくるためのプロデューサーを務めています。音楽産業に従事する立場に加え、「東京アートポイント計画」での共催事業「トッピングイースト」のディレクターも担っています。これまで、公共空間や特別な場所でのプロジェクトを手がけてきました。

清宮さんは、音楽産業に携わるなかで、「最近さまざまなストリーミングサービスが出てきたため、CDが全然売れなくなってしまった。音楽がものとして求められていない感じがビシビシする」と語ります。しかし、実は音楽を聴く機会そのものは減っていません。ただ、音楽を買う行為が減るということは、アクティブな部分が少しそぎ落とされているように感じられるそうです。あらたにリスナーをつくっていく、音楽を聴く・触れる機会をもっといろいろな場面で増やすことが必要です。音楽家にとっても、音楽を聴く・触れるポイントをつくることは、ダイレクトなユーザーや、音楽を聴きたいと思っている人たちを、どうやって引っ張り込むかという実験になります。

特徴

音楽家の和田永さんや蓮沼執太さんなど、音楽に関わる専門家をゲストとして多数お招きし、普段の活動や考えていること、実践していることを伺い、議論していきます。また、空間的な音楽体験をしてもらうために、性能のよいスピーカーで音楽を聴いてもらいます。「音楽ってこんなにいい音で聴けるものなんだ」というのを体感してもらいたいと思います。

音楽産業とアートプロジェクトを考えていくので、音楽に携わっている方はもちろん、アートプロジェクトに関わっている方のご参加もお待ちしております。

>スタディ3の詳細はこちら

スタディ4 部屋しかないところからラボを建てる―知らないだれかの話を聞きに行く、チームで思考する(一般社団法人NOOK)

ナビゲーター:瀬尾夏美(アーティスト/写真右から2番目)、小森はるか(映像作家/写真左)、高橋創一(編集者/写真左から2番目)、スタディマネージャー:佐藤李青(アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー/写真右)。

スタディテーマについて

一般社団法人NOOKは、仙台を拠点に活動している、映像作家や編集者、技術者、アーティストなど7人のメンバーによるチームです。映像や記述による記録、そのための調査や展覧会の企画、イベントや場づくりをしています。

これまで、震災後の東北を拠点に活動し、地域の人たちに話を聞いたり、自分たちの足で歩いて記録やリサーチをしてきたNOOK。「”東京でつくる”といったときに、一体何をすればよいのかという思いはあります。けれども、東京だからこそできる調査のしかたがある気がする」と瀬尾さんは語ります。

東北の経験で気づかされたのは、「小さな社会を細かく見ていけば大きな社会が見えてくる」ということでした。今回は東京という場所で、同時代的に動いているさまざまな問題に触っていける、複数人のチームで行う調査のしかたを考えていきたいそうです。それぞれが調べて得たことを共有するプロセスを経て、ふたたび個人の欲望にかえったりしながら、企画や表現に繋がる調査を重ねていきます。

特徴

このスタディでは「人の話を聞く」「それを共有する」ことを重視します。ナビゲーターのほか、ファシリテーター役として小屋竜平さん、記録と編集の担当として高橋創一さんも参加します。

月1回程度、ROOM302に集まり、各自調べたことを共有していきます。いかにして共有する方法をつくるかも重要となります。それぞれの持ち寄った情報を場所にインストールしたり、「ラボ通信」といったメディアをつくることも試みます。
現代はインターネットが発達し、人に触れずに情報を得ることができてしまう時代です。しかし、人にあたってみると、問題の本質が見えてきたり、話を聞くことで情がわいたり、自分の身体も変わっていきます。ここでしかできない実践を一緒に行うメンバーを募集します。

>スタディ4の詳細はこちら

スタディ5 自分の足で「あるく みる きく」ために―知ること、表現すること、伝えること、そしてまた知ること(=生きること)(宮下美穂)

ナビゲーター:宮下美穂(NPO法人アートフル・アクション 事務局長/写真右)、スタディマネージャー:佐藤李青(アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー/写真左)。

スタディテーマについて

このスタディはサテライト会場として、武蔵小金井駅から徒歩7分程の「小金井アートスポット シャトー2F」を拠点に展開します。この場所は、普段から宮下さんがNPOアートフル・アクションの活動を行っている場でもあります。

宮下さんは、この数年、世の中が大きく変わったと感じていました。「これが正しくて、目標はこうだ」といった今までの価値観が揺らぎ、身体も心もかなり追い詰められたような状態なのではないかとたびたび感じたそうです。そういうなかで、どのように生きていけばよいのかと考えたときに、ものをつくることや表現すること、あるいはそのために人と出会ってみることが大事だと、宮下さんは考えています。

このスタディは、ゲストアーティスト(揚妻博之さん大西暢夫さん花崎攝さん)の活動とともに進んでいきます。この3人を選んだのは、東京をちゃんと外から見られる人、東京や自分をきちんと相対化できる人であることが理由でした。今のすごく厄介な世の中を少しずらして見ることがスタディに必要だと考えたからです。一度身に着けたことを一回はがしてみる。手放すことはとても大事なのですが、それはとても勇気のいることです。それをこのスタディで実践したいと考えているそうです。

特徴

月に2回ほどアーティストに来てもらい、実作をもとにお話してもらう機会を設けます。参加者は、ゲストアーティストの表現や対象の捉え方に触れて、自らも積極的に制作をしていきます。ナビゲーターからお題を出すのではなく、アーティストのワークショップに参加したりアーティストと本気で話したり、インタビューしたり作品を見たりして、自分なりの方法論や表現したいこと、やりたいこと、テーマを見つけてほしいと思います。
時間をかけてじっくり考え、ものをつくりながら、人と出会い、自分自身と出会い直しの機会をつくります。

>スタディ5の詳細はこちら

ナビゲーターと参加者がともに学び合い、プロジェクトの「核」をつくる実践的な学びの場となる「東京プロジェクトスタディ」。募集締め切りは、2018年8月26日(日)です。みなさんとお会いし、学んでいけることを楽しみにしております!
>お申し込み・詳細はこちら

*アーツカウンシル東京ブログ「東京アートポイント計画通信」にて、東京アートポイント計画やTARLの情報を掲載しています。ぜひご覧ください。

個別相談を受け付けています!

「東京プロジェクトスタディ」では、随時相談を受け付けています。スタディの内容をもっと詳しく知りたい、どれが自分に合うのかわからず迷っているなど、お気軽にご相談ください。

*申込方法
メールtarl@artscouncil-tokyo.jpまでお申し込みください。件名を「個別相談」とし、本文に以下をご記入ください。

・氏名(よみがな)
・電話番号
・参加人数
・相談希望日(第一希望日、第二希望日)※平日 10:00-18:00
・相談内容(検討しているスタディなど)

*会場
アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)(東京都千代田区九段北4丁目1-28九段ファーストプレイス8階)

※お預かりした個人情報は、本事業の運営およびお知らせのみに使用します。
※参加申込みにあたり、説明会や個別相談への参加は必須ではありません。

説明会記録映像

スタディ1 「東京でつくる」ということ(石神夏希)

スタディ2 2027年ミュンスターへの旅(佐藤慎也、居間 theater)

スタディ3 Music For A Space(清宮陵一)

スタディ4 部屋しかないところからラボを建てる(一般社団法人NOOK)

スタディ5 自分の足で「あるく みる きく」ために(宮下美穂)

アートプロジェクト運営の手始め

アートプロジェクトの「いろは」を学び、クリエイティブな運営を目指す

アートプロジェクトは既存の手法や枠組みにとらわれず新たな価値を生み出す活動です。その運営も、プロジェクトの展開に合わせて、新たな方法を開拓しながら変化させ続けるべきでしょう。

運営の担い手が向き合うタスクは多岐にわたります。企画をつくって実施することにとどまらず、企画を生むための土壌を耕したり、人や組織を育てたり、活動を価値化し仲間を増やしたり、さらなる進化を目指して勉強や実験をしたり。そもそもそれらの方法を生み出したり……。

「やるべきこと」をあげると際限なく出てきますが、今回はアートプロジェクト運営の入門編として、運営ビギナーが、まずおさえるべきトピックを取り上げます。運営の基本サイクル(企画、準備、実施、報告、検証・評価)を見渡しながら、広報や記録にもフォーカスし、現場で必要な技術やアプローチについて考えます。クリエイティブな運営を行うことで、アートプロジェクトそのものの創造性を鍛えていきましょう。

詳細

スケジュール

9月5日(水)19:00〜21:30
第1回 運営入門

  • アートプロジェクトの運営とは|「運営=イベントの実施」だけではない
  • 座組|運営体制図を書いてみる(ワークショップ)
  • 企画4点セット|企画・人・お金・時間
  • 会議で動かす|構想する・議論する・共有する・調整する
  • 進行管理|プロジェクトに振り回されないために
  • リスク管理|人や活動を守るためにリスクを洗い出す(ワークショップ)

9月12日(水)19:00〜21:30
第2回 広報入門

  • 広報とは|「広報=チラシ制作」ではない
  • アートプロジェクトと広報|ミッションとアクションをつなぐ
  • いちからはじめる広報基本セット|戦略・素材・データベース
  • 広報力の鍛え方|見つける・言葉にする・つなげ続ける
  • 事例から学ぶ広報|タイミング・メディア・コンテンツ
  • プロジェクトを素材に広報施策を考えてみる(ワークショップ)

9月26日(水)19:00〜21:30
第3回 記録入門

  • 記録とは|「使える記録」を残そう
  • アートプロジェクトと記録|活動を続けるための大切な資産
  • 記録の種類|自分で残す・依頼して残す
  • チームで始める記録基本セット|道具・ルール・ストレージ
  • プロに記録を依頼する|発注・ディレクションのポイント
  • プロジェクトを素材に記録方法を考えてみる(ワークショップ)

会場

ROOM302(東京都千代田区外神田6-11-14-302 [3331 Arts Chiyoda 3F])

参加費

5,000円