解決のヒントはおとなりさんがもっている。ジムジム会をひらいてみよう。
執筆者 : 大内伸輔
2021.04.28
2020年5月13日、2020年度第1回目のジムジム会を開催しました。テーマは「集えない状況でどう集う? お互いの状況を共有しよう」です。レポートをお届けします!
5月13日の東京都は、いまだ緊急事態宣言下でした。東京アートポイント計画に参加している9つのアートプロジェクトの事務局もまた、イベントの開催はもとより、事務局メンバーが対面で活動することもストップしている最中。
この状況でプロジェクト事務局はどのように過ごしてきたのでしょうか? 企画の立て直しやスケジュールの変更、関係者間のコミュニケーションはどんな状況になっているのでしょうか? 互助会のような勉強会を目指すジムジム会ではまず、それぞれの状況を共有することからはじめました。
たとえば、足立区で展開しているアートプロジェクト「アートアクセスあだち 音まち千住の縁」(通称:音まち)では、集えないなかでもアーティストとともに意欲的な実験を重ねているようです。10年に渡り地域の縁をつむぐ活動をしてきた音まちらしい展開です。(報告:特定非営利活動法人音まち計画 櫻井駿介さん、今井迪代さん、吉田武司さん)
音楽家・野村誠さんと2011年から続けてきた、だじゃれと音楽を組み合わせたプログラム「千住だじゃれ音楽祭」。市民による有志の音楽団体「だじゃれ音楽研究会」を結成し、毎月1〜2回の活動(近況報告、話し合い、即興セッションなど)を中心に集まってきました。
コロナ対応下で集まることが難しくなって以降は、Zoom上で集まり作曲や即興演奏を試みるようになりました。(例えば、上の画像は、指揮者役の人の手の動きに合わせてメンバーが動物の鳴き声をあげる即興セッションの試み)
Zoomならではのタイミングのズレや、コミュニケーションの間なども創作の面白みとして取り入れ、「だじゃれ音楽研究会」らしいオンライン活動でのありかたを探っています。
美術作家・大巻伸嗣さんと2011年より展開してきた、無数のシャボン玉で風景を変貌させるアートプログラム「Memorial Rebirth 千住(通称:メモリバ)」。毎年恒例となったこのプログラムは、市民チームが主体的に運営に関わっています。ただし、今年は当初予定していた4月の開催を見送り、来年3月に延期することになりました。
そんな中、次回開催までにオンラインでできることはないかとはじまったのが、「メモリバ学校の昼やすみ」です。いままでメモリバに関わってきた様々なメンバーが「シャボン玉」「メモリバ」などから想起されるおうちでできる「あそび」を実験し、動画として公開。実際にあそんでみた人にはSNSでハッシュタグをつけて投稿してもらいます。
どんな状況でも関わりのバトンをつなごう、アートの視点を日常に持ち込もうという企画です。もともとコロナ禍以前から「やってみたい」と考えてきたアイデアのひとつで、この機会にオンラインで展開することになりました。
>メモリバ学校の昼やすみ動画:【親子でチャレンジ】割れにくいシャボン玉でちょっと変わった遊び方
他にも続々と動画を公開中です!
2016年にスタートした、文化活動家・アサダワタルさんとのプログラム「千住タウンレーベル」。市民メンバーとともにまちの音を収録し、その音をまちなかで味わうような活動を重ねてきました。
プログラム4年目で訪れた今回の状況。そこで、自宅でできる音のプログラム実験として「声の質問」をはじめました。これは、作曲家で寺山修二の秘書であった田中未知さんの著書『質問』にインスパイアを受け始まったプロジェクトです。
最近会えていない知人宛にオリジナルの質問を音声で送り、音声で答えてもらうという試み。生活音や息遣いも含めた音を通して、会えない状況でも相手の存在を確かめることができるやりとり。現在はメンバー間で実験中ですが、この先の公開プログラムや新たな企画のヒントになることを目指しています。
また、墨田区を中心に活動するアートプロジェクト「ファンタジア!ファンタジア!−生き方がかたちになったまち−」(通称:ファンファン)からは事務局内での情報共有の工夫が報告されました。ちょっとした気づきをとりこぼさず、アイデアにつなげるコミュニケーションの仕組みづくりをしているそう。(報告:一般社団法人うれしい予感 青木彬さん)
もともとチーム内の情報共有としてつかっていたSlackのなかの「#FYI(For Your Information)」チャンネル。対面で集まらなくなってからは、気になった情報やニュースをシェアするこの掲示板が活発になっているそう。
新たにはじめたのは、Google Keepでの情報共有。「毎日のこと」「失ったもの」「ラジオのこと」「作業日」などのタグをつけ、毎日メンバーの誰かが投稿して読む習慣ができているそう。ちょっとした気づきをとりこぼさない仕組みです。
5月5日からはじまったのは、事務局内ラジオ。Zoomをビデオ無しで使用し、音声の収録をしています。「聞き手」と「話し手」に別れ、10分ずつそのとき気になっているものについて語り、音声を共有する仕組み。
ファンファンでは今後、これまで展開してきたプログラムをオンラインで実施するための動画をつくったり、手で配ってきた定期レターを近隣店舗のテイクアウトの流通経路に乗せるような企画も進めています。
東京アートポイント計画では都内各地で9つのプロジェクトを展開していますが、今回あらためて、それぞれがそれぞれの規模や地域にあった動きをしていることがわかりました。
「このアイデアはうちでもやってみたい!」「企画がはじまったら続きが知りたい」など開催後には前向きなコメントが集まっています。
一方で、「オンラインイベントのノウハウがわからない」「新しい出会いが生まれにくい」「オンライン環境から遠い人を取り残さないためには」などの課題もあることがよくわかりました。
今後のジムジム会ではこういった悩みをひとつひとつ取り上げながら、「集わず集う」ことの新たな方法を試行錯誤していきます。
(執筆:きてん企画室)
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