共通: 年度: 2018
自分の足で「あるく みる きく」ために 知ること、表現すること、伝えること、そしてまた知ること(=生きること)
アーティストの現場に触れながら、生きるための支えとしての「表現」を深める
わたしたちの社会は、複雑かつ高速に変化し、そして感情的な側面をもっています。この感情的な社会において、実は情念や情動は、真っ向から否定されるべきものではなく、むしろ理性を駆動させるエンジンとして重要です。そしてその情念や情動は、表現を経ることで、より洗練されていきます。表現された情念は、一般的に考えられる狭義の「理性」や「合理性」を、超えていくことすらあるかもしれません。
このプロジェクトのテーマは、生きることの支えとしての「表現」を参加者それぞれが探し出すこと。ゲストアーティストの大西暢夫さん(写真家/映画監督)、花崎攝さん(シアター・プラクティショナー/野口体操講師)、揚妻博之さん(アーティスト)の表現の現場に触れながら、あるいはともに、参加者自らが制作と表現を行います。
ただし、「アーティスト」になることや作品づくりを行うこと、方法を教えることが目的ではありません。ナビゲーターの宮下美穂(NPO法人アートフル・アクション 事務局長)とチューターが活動日以外の学びもサポートしていきます。
このプロジェクトの名前は、かつて、民俗学者の宮本常一が主宰した月刊誌『あるく みる きく』(*)に由来します。出来事や状況を安易に価値化せず、人が世界と向き合うその人自身の目を失わないように、考え、やってみて、また考えてみる。身体全体を使い、潜在する見えにくいものを丁寧に感知する。その手法を丁寧に考える。停滞することを厭わず、何であれ一つ知り得たことが次の動きの標(しるべ)となるように、一人ひとりがじっくりと立ち止まって考え、やってみる。その過程を経験する場をつくることで、日々のたくさんの気づきが表現の礎であることを学びます。
*民俗学者の宮本常一が主宰した近畿日本ツーリスト株式会社・日本観光文化研究所が発行していた月刊誌(1967〜1988年)。
詳細
スケジュール
9月16日(日)
第1回 新しい出会い
10月6日(土)
第2回 ブラインドウォークと小枝
10月27日(土)
第3回 山形、徳山、くじら山
11月18日(日)
第4回 思い出の場所を描く
12月2日(日)
第5回 基本的なあり方が生まれた「転換点」
12月22日(土)
第6回 おいしい年末
1月12日(土)
第7回 スパイシーな甘酒
1月19日(土)
第8回 その人の取りやすい姿勢
2月10日(日)
第9回 忘れられない些細な他者
2月24日(日)
第10回 報告会 ぐだぐだ、あるいは迷うこと
進め方
- ゲストアーティストはスタディ期間を通してリサーチや制作を行う
- ゲストのリサーチや制作に直接触れるワークショップを月1~2回程度開催。リサーチの考え方、対象や主題の捉え方、アプローチの仕方を参照し、参加者自らのリサーチや制作に反映していく
- 制作やリサーチを支える身体について考えるワークショップを行う
- ゲストアーティストや参加者とのワークショップ、ミーティングで自身のリサーチや制作の進捗を共有し、助言を得て、それぞれの制作に戻っていく。この動きを繰り返し、年度末にはその時点での状況を共有する場を設ける(展示、もしくは活動紹介を予定)
- 会場のシャトー2Fに、情報を集積させたライブラリーやスタジオ機能を設ける
会場
小金井アートスポット シャトー2F(東京都小金井市本町6-5-3 シャトー小金井2階)
参加費
一般30,000円/学生20,000円
関連サイト
関連レポート
ナビゲーターメッセージ(宮下美穂)
たとえば、深い暗闇の中で光を探し求めるのか、暗闇のなかで、縮こまらずに心と体を開いて自分をとりまく世界を感知して闇の中を生きてみることを試みるのか? どちらかというと、今回の試みは、後者なのかもしれません。
私は私たちが複雑で速い速度で変化して行く、そして感情的な社会を生きているように感じられます。この感情的な社会において、情念や情動は、否定されるべきものではなく、むしろ理性を駆動させるためのエンジンとして重要だと思います。しかし、その一方で、情念や情動は戦禍や暴力に向けた強力なエンジンともなり得ます。情動と理性のどちらかに優位性があるのではなく、洗練された情動は一般的に考えられる狭義の「理性」や「合理性」よりも、理性的で真の意味で合理性をもつように思えます。
目の前の答えあるいは光に拙速に飛びつくのではなく、闇の中にある濃淡に丁寧に触れ、生きていくことをもちこたえる心と体、そして技(わざ)あるいは術(すべ)について、つくることを通して考えます。
スタディマネージャーメッセージ(佐藤李青)
何かをつくろうとする態度をもつことで世界の捉え方は変わる。
アルベルト・ジャコメッティが矢内原伊作をモデルに描こうと試みた苦闘の最中(さなか)。「良い仕事ができた」というジャコメッティの言葉に画面を覗いた矢内原はすべてが消されたタブローを発見する。満足げなジャコメッティに矢内原は驚く。でも、ジャコメッティは肖像を描こうとするなかで矢内原への理解を深め、何かを掴んだのだろう。宮下さんは、そう推察する。好きな逸話なのだと聞いたのは対談シリーズの収録中だった。
このスタディは抽象的なようで、とても具体的な作業の積み重ねになるはずです。身体を動かし、やってみる。だからといって、できあがったもので判断はしない。何かをつくる過程に安心して身を投じられる場が、ここにはあると思います。
Music For A Space 東京から聴こえてくる音楽
音楽産業と公共空間における音楽、両者が融合する可能性を議論する
2010年代に入り、音楽を取り巻く環境や産業構造は大きな転換期にあり、既存の音楽体験や聴取環境を超えていくような、さまざまな模索がはじまっています。一方、公共空間で展開するアートプロジェクトでは、音楽の可能性を拡張する試みがまちなかで行われています。
このプロジェクトでは、音楽産業と公共空間における音楽のあり方や融合の可能性を探ることを目指し、さまざまな角度から音楽に携わるゲストを招きディスカッションを重ねます。
ナビゲーターは、音楽ビジネスとアートプロジェクトを往来し続ける清宮陵一です。音楽産業が牽引するポップミュージックと、アートプロジェクトで用いられるパブリックサウンド。この両者のハイブリッドなあり方を、「経済活動」「社会活動」「実践」「消費」などの視点から音楽の現在地を表す座標軸を探り、「これまでと違う仕組みの音楽のありようをつくる」ことに挑みます。
詳細
スケジュール
9月19日(水)19:30〜22:00
第1回 音楽史と個人史を交差させる
10月12日(金)19:30〜22:00
第2回 参加型プロジェクトを紐解く
ゲスト:和田永(アーティスト/ミュージシャン)
10月25日(木)19:30〜22:00
第3回 ふたりのライターが見つめるもの
ゲスト:杉原環樹(ライター/インタビュアー)
名小路浩志郎(宮内俊樹)(音楽ライター)
11月14日(水)19:30〜22:00
第4回 フェスという形式の未来像
ゲスト:安澤太郎(野外フェスティバル『TAICOCLUB』オーガナイザー)
12月18日(火)19:30〜22:00
第5回 音と音楽、美術と音楽の境目
ゲスト:蓮沼執太(音楽家)
12月19日(木)19:30〜22:00
第6回 広告から公共へ音楽を展開する
ゲスト:ブルース・イケダ(クリエイティブスタジオJKD Collective 代表取締役社長)
1月17日(木)19:30〜22:00
第7回 振り返りながら足元を確認する
1月31日(木)19:30〜22:00
第8回 公共空間で音楽を響かせるために
ゲスト:白勢竜彦(Peatix Japanコミュニティ・マネージャー)
飯石藍(公共R不動産 コーディネーター)
2月13日(水)19:30〜22:00
第9回 オルタナティブという探究心
ゲスト:平野敬介(クリエイティブマンプロダクション)
2月14日(木)19:30〜22:00
第10回 音楽=魔法の起こる現場
ゲスト:zAk(エンジニア)
2月21日(木)19:30〜22:00
第11回 10回の活動を振り返って
2月24日(日)
第12回 報告会「現在地」を共有する
進め方
- メンバー全員でのディスカッションを月2回程度開催する
- スタディの進捗に合わせて、都内でゲストトークやフィールドワークを実施
- ROOM302を拠点とし、メンバーはROOM302の開室日に自主活動を行うことができる
会場
ROOM302(東京都千代田区外神田6-11-14-302 [3331 Arts Chiyoda 3F])
参加費
一般30,000円/学生20,000円
関連サイト
関連レポート
ナビゲーターメッセージ(清宮陵一)
たったひとつのフレーズや考え方が、音という波に乗って直接人々の心に突き刺さる、音楽。ブライアン・イーノはアンビエントという仕組みをつくり『Music For Airports』で、聴取という行為に革命を起こしました。
それからちょうど40年、音楽を聴取する環境は多様化し細分化し、近頃は音楽を聴く行為と奏でる行為とが接近しているように感じています。だれもがふと音の中から音楽を見出し、それらを伝え残すことができたら、豊かな音楽が世界に溢れかえるのではないでしょうか。
活動を共にするゲストを多数お迎えして、これからの音楽について、じっくり考えてみたいと思います。
スタディマネージャーメッセージ(大内伸輔)
アートプロジェクトや芸術祭は多様化してきたけれど、その起源は美術にあって、未だ音楽は単発のイベントとして置かれることが多いのではないでしょうか。しかし、音楽家による独自の視点、リサーチ力、瞬発力、コンポジション(構造設計)の力は、まだまだ公にひらいていける、何かを発見できる、揺るがしていける。まだ見ぬ地平があるはずです。ともにその可能性について考え、新たな回路を身に着けていきましょう。
東京プロジェクトスタディ アーカイブサイト
東京プロジェクトスタディは、Tokyo Art Research Lab「思考と技術と対話の学校」で展開する、アートプロジェクトの核をつくるための実践です。“東京で何かを「つくる」としたら”という投げかけのもと、ナビゲーターが参加者とともにチームをつくり、スタディ(勉強、調査、研究、試作)を重ねます。
2018年度は、アーティスト、ディレクター、プロジェクトの事務局など、関心や属性の異なる5組の「つくり手」がナビゲーターを担当。それぞれのスタディには、東京アートポイント計画のプログラムオフィサーが伴走し、学びのサポートをしました。このウェブサイトでは、それぞれのスタディがどのように「何かをつくる手前の時間」を過ごしたのかを記録しています。
何を、誰と、どのように向き合ったのか。スタディの活動と、同時期に並走するナビゲーターたちの創作活動に目を向け、各活動日のレポート記事や関連資料をはじめ、スタディを進めるなかで出てきたキーワードやつぶやきなども掲載しています。
制作振り返り座談会
徹底解体! アートプロジェクト
アートプロジェクトの30年を「表現」と「仕組みや環境」を軸に振り返り、次の10年を探るゼミ
アートプロジェクトとは何か?
どのように現場はつくられているのか?
いま、どのような方法が可能なのか?
1990年代にはじまり、現在も各地で盛んに展開されているアートプロジェクト。さまざまな担い手による、多彩な約30年を通じて、アートプロジェクトの効用が各所へ浸透しつつあります。そうしたアートプロジェクトの軌跡を、「アートプロジェクト」という単語でひとくくりにせず、トピックの一つひとつを手に取り直して「自らに習う」ことで、次の10年が見えてくるかもしれません。
ナビゲーターは、北澤潤(美術家)と佐藤李青(アーツカウンシル東京プログラムオフィサー)。立場の異なるふたりの対話を通して、「表現」と「仕組みや環境」の視点を軸に、アートプロジェクトのこれまでの歩みを振り返ります。豊富な事例や背後に潜む「つくり手」の問題意識に触れながら、現場の動きを学び、これまでのありようを問い直し、現状を更新する「その先」のつくり方を議論するための土壌を耕します。
また、参加者のみなさんを「自らの学び」へと誘う仕掛けのひとつとして、会場のROOM302に、一時的なスタディルーム(STUDY ROOM)を立ち上げます。ナビゲーターからのインプットをふまえながら、新たな企て(プロジェクト)をつくることも試みます。
詳細
スケジュール
第1回 プロジェクトとコンセプト:はじまり(1990年代以降)
第2回 現場の動き方:国際展・トリエンナーレの時代(2000年代前後)
第3回 プロジェクトを超えて(2010年代以降)
会場
ROOM302(東京都千代田区外神田6-11-14-302 [3331 Arts Chiyoda 3F])
参加費
5,000円
ナビゲーターメッセージ(北澤潤)
STUDY ROOM
いつからか、
「アートプロジェクト」という言葉を使うことに躊躇しはじめた。
というか、最近はあまり使わないようにしている。
地域を現場にした新しい企てのはじまりは、
実は、「企て」というほど意図的ではなく、
もう僕らの中では地域で仕掛けることが普通の感覚だった、ように思える。
ただその現場で相対した人びとから求められるのは、
「こちら」の希求とは時にずれた、「明快な意味」だったりした。
その要求に折れず、大切なわからなさを保ったまま、
何かを伝えられる可能性がある言葉として積極的に選択した言葉が
「アートプロジェクト」だったことは間違いがない。
その当時、僕らは「わからなさ」のなかを漂っていた。
それが単純に面白かった。
いまの躊躇をあえてはっきり言うならば、
「アートプロジェクトがわかってしまった」ことが原因だと思う。
それは個々人だけでなく、「社会が」わかってしまっている。
もはや、この単語にこだわる必要はないと思う。
むしろ、言葉と現場、もしくは批評や評価の実践によって
逆に生成されてきた境界線、そのバウンダリーへ
意識を向けるときかもしれない。
越境しうるほどの意味がアートプロジェクトにあったのか、
と自問することからこの10年が別の意味に変わる気もする。
躊躇の向こう側に足が向かいそうな今だからこそ、
あらためて振り返ってみてもいい。
さまざまなアーティストたちの言葉や試み、
マネジメントの現場やプロデュースの手法、
アートの形式の変容と社会の移り気な要請。
そしてアートプロジェクトをつくってきた自分自身の実践。
「自らに習う」
そんな態度が、ときどき必要だ。
だから、思い立ったときに立ち上がる「ひらかれた自習室」
をつくってみることにした。
はじめてみるには悪くないタイミングだと思っている。
ナビゲーターメッセージ(佐藤李青)
この数年で急激に社会が変容しているように感じています。客観的な事実というよりも肌感覚に近いものです。いまは表現のありようを、その動き方から考えていく必要があるのではないかと思っています。もう少し正確にいえば考えるよりも先に何かをしなければならないのではないかという焦燥感すらあります。人は30代から50代の間で「中年の危機」というものを経験するそうです。最近聞いた言葉ですが、どうやら理由はそれだけでもなさそうです。
例えば、同時代を生きる遠くの誰かに会いにいくような感覚で、時間を隔てた他者に、その実践に出会い直すことはできるだろうか。過去のことだと線を引くのではなく、同じ実践の地平に立つ試みとして捉えてみる。そうした「先に行われた」実践から立ち上がる風景を後から追うことは、変貌するいまを捉え、これから先をつくるために十分価値のある作業なのだと思っています。方法的な工夫も少し試みるつもりです。
今回のレクチャーシリーズでは「アートプロジェクト」という言葉をよすがに、まずは過去約30年の実践を振り返ります。この言葉に対する問題意識は、もうひとりのナビゲーターの北澤潤さんのメッセージにしっかりと表現されているので、そちらをぜひご一読ください。
ナビゲーター同士でも徹底的に議論できればと思っています。遠慮はなしです。少し置いてけぼりにしてしまうかもしれません。それでも損はしないと思います。議論に結論は出ないでしょう。それは何らかの実践で取り組むべき回答なのかもしれません。だからこそ、今回のシリーズをきっかけに、これから一緒に何かをはじめることのできる方との出会いも楽しみにしています。
追伸:
今回のレクチャーシリーズは学びの「入り口」づくりとして、さまざまな参考資料を紹介予定です。手はじめに、この数年の拙稿と北澤さんのインタビュー記事を共有します。
・「芸術祭とアートプロジェクトは、新たな制度となりうるか? ――プロジェクトからインスティテューションへ」『文化政策の現在2 拡張する文化政策』東京大学出版会、2018年
・「はじめに|アートプロジェクトを動かす「ことば」を紡ぐ」(実践編「アートプロジェクト」)ネットTAM、2017年
・『アートプロジェクトのつくりかたー「つながり」を「つづける」ためのことば』フィルムアート社、2015年
・「北澤潤――日本でのアートプロジェクト 10年の実践から、インドネシア、その先へ」国際交流基金アジアセンター、2018年
Artpoint Meeting 2018
社会とアートの関係性を探るトークイベント
「まち」をフィールドに、人々の営みに寄り添い、アートを介して問いを提示するアートプロジェクトを紐解き、最新のテーマを追求するトークイベント。アートプロジェクトに関心を寄せる人々が集い、社会とアートの関係性を探り、新たな「ことば」を紡ぎます。
2018年度は、アートプロジェクトならではの拠点づくりのアプローチや、創造的なメディアのつかいかたについて議論を深めます。
詳細
スケジュール
2018年7月29日開催
Artpoint Meeting #06 プロジェクトを育てる「活動拠点」のつくりかた
- ゲスト:岩沢兄弟
- 会場:TOT STUDIO
2019年1月26日開催
Artpoint Meeting #07 プロジェクトを拡げる「メディア」のつかいかた
- ゲスト:森若奈、中田一会
- 会場:東京文化会館 4階 大会議室
森若奈
岩沢兄弟
NPO法人アーティスト・コレクティヴ・フチュウ
Words Binder 2018/Box+Letter
多種多様な形態で、それぞれ異なる目的をもつドキュメントブックを、どのように届ければ手に取ってくれたり、効果的に活用したりしてもらえるのか。アートプロジェクトから生まれた発行物の届け方を研究・開発して生まれた、「言葉」を届けるためのメディアです。