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「東京プロジェクトスタディ」の試みを共有する

2018.10.19

「東京プロジェクトスタディ」の試みを共有するの写真

Tokyo Art Research Lab「思考と技術と対話の学校」では、今年度の新設プログラムとして「東京プロジェクトスタディ」がスタートしました。

今回は、9月24日(月・祝)、アーツ千代田3331 アーツカウンシル東京ROOM302にて開催した合同会の様子をお届けします。

「東京プロジェクトスタディ」(以下、スタディ)は、ナビゲーターと参加者がチームを組み、“東京で何かを「つくる」としたら”という投げかけのもと、アートプロジェクトを巡る“スタディ”(勉強、調査、研究、試作)に取り組むプログラムです。
「東京プロジェクトスタディ」の特徴とは?

9月から5つのスタディが始動。参加者はおよそ50名。20代~60代まで、アートに限らずさまざまな専門性や経験を持った方が参加しています。スタディメンバーが集まる活動日には、それぞれが持つ興味関心を共有したり、フィールドワークを行ったりしています。今回はスタディのキックオフとして、また、それぞれの活動やメンバーについて全体で共有することを目的に開催しました。本スタディは、5つそれぞれに展開するのではなく、所属を超えて、ナビゲーターや参加者が出会ったり意識しあったりしながら、「つくる」コミュニティを育てることを目指しています。
合同会では、スタディの目指すところや、進め方、各スタディの活動の様子について共有しました。

(撮影:加藤甫)

「思考と技術と対話の学校」校長メッセージ(森司)

今年度の「思考と技術と対話の学校」では、活動の現場と学びの現場をより近づけていくことを目指しています。このスタディは、「東京アートポイント計画」との連動を意識して事業の設計を行いました。ナビゲーターは「東京アートポイント計画」事業にも携わっている方々で、アーツカウンシル東京のプログラムオフィサーがスタディマネージャーを務めます。

このスタディは、「東京でつくる」というテーマを掲げていますが、現在の東京について考えることだけでなく、オリンピック後やさらにその先の社会を見据えたうえで、どのように応答するのかを考えていきます。

今回は、仮に「100時間でプロジェクトをつくる」と設定し、参加者それぞれが主体的にテーマを持って学んでいきます。100時間あれば、何らかの発想の種だったり、思考のしかただったり、ヒントが手に入ると思っています。

このスタディをよりよい学びと経験の場にするため、決められたやり方を提示するのではなく、参加者のみなさんからフィードバックを受け、ともに考えながら進めていきます。

スタディ1 「東京でつくる」ということ―前提を問う、ことばにする、自分の芯に気づく

ナビゲーター:石神夏希(劇作家/左)、スタディマネージャー:嘉原妙(アーツカウンシル東京プログラムオフィサー/右)。

「東京でつくること」を入口に、参加者それぞれが抱えている課題や関心を軸に徹底的に対話し、議論を生み出す方法を身体化していくことを試みます。

このスタディでは、活動日の後に毎回エッセイを書いています。演劇やアートプロジェクトに限らず、さまざまなジャンルの方が参加しているので、「東京でつくる」を巡るエッセイが、それぞれの視点から毎回書き溜められていく仕組みです。最終的には、エッセイ集をつくる予定です。

初回活動日には、「東京」との距離感や「東京」についてどのように思っているかという現在地を、参加者のみなさんがインタビューし合いながら聞いていきました。
今後、ゲストを迎えてディスカッションを重ねるなかで、さまざまな問いが生まれる場になりそうです。

スタディ1の詳細はこちら

スタディ2 2027年ミュンスターへの旅

ナビゲーター:佐藤慎也(プロジェクト構造設計/右から2番目)、居間 theater[東彩織、稲継美保、宮武亜季、山崎朋](パフォーマンスプロジェクト/右から3番目が稲継)、スタディマネージャー:坂本有理(「思考と技術と対話の学校」教頭、アーツカウンシル東京プログラムオフィサー/一番右)。

このスタディでは、2027年に開催される第6回「ミュンスター彫刻プロジェクト」に、ナビゲーターの「居間 theater」が招聘されることを目指して準備を始めます。

初回から定例ミーティングを2回終えて、「ミュンスター彫刻プロジェクト」の作品をのべ200点見ていきました。時代順に追いながら、どんな作品があるのか、受験勉強的に傾向と対策を検討した結果、それだけでは目的を達成できないことを再確認しました。作品の質まで検証する必要があるのです。今後、オリンピックやその先まで通用する作品をつくるにはどのような方法があるのか、参加者のみなさんと考えていきます。

スタディ2の詳細はこちら
座談会:ミュンスター彫刻プロジェクト2017を振り返る→2027

スタディ3 Music For A Space—東京から聴こえてくる音楽

ナビゲーター:清宮陵一(NPO法人トッピングイースト理事長/左)、スタディマネージャー:大内伸輔(アーツカウンシル東京プログラムオフィサー/右)。

昨今、まちなかを舞台に音楽の可能性を拡張する試みが行われるなか、このスタディでは音楽の地平をさらに探ることを目的として、音楽産業と公共空間の音楽の両方の世界からゲストを招いて展開します。

初回活動日では参加者に、人生で最も影響を受けた曲と最近よく聴く曲を持ってきてもらいました。それぞれにエピソードがあり、普通の自己紹介であれば出てこないような、ぐっと踏み込んだ話を聞くことができました。

これからこのスタディでは、最前線の現場にどんどん行く予定です。2回目の活動日には、清宮さんとプロジェクトに取り組むアーティスト・和田永さんの制作現場を見るため、「鉄工島フェス2018」の会場を訪れました。現場ではどんなものづくりが行われているのかを見たり、アーティストのことばを聞いたりします。

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スタディ4 部屋しかないところからラボを建てる—知らないだれかの話を聞きに行く、チームで思考する

ナビゲーター:一般社団法人NOOK瀬尾夏美(アーティスト/右から3番目)、小森はるか(映像作家/右から2番目)、礒﨑未菜(アーティスト)〕、スタディマネージャー:佐藤李青(アーツカウンシル東京プログラムオフィサー/一番右)。

このスタディでは、ROOM302を「ラボ」として活用し、参加者それぞれの関心に基づき、話を聞くという調査方法で情報を集め、共有します。そうしたプロセスを通して、今の「東京」や今の私たちが生きている場所について見えてくるものを模索します。

初回は2日間連続で活動し、ほとんどの時間を自己紹介に充てました。それぞれの関心はバラバラですが、全員で集まって話すと意外に問題が共通しているとわかりました。
今後は、それぞれの関心を深めること、その情報を共有する方法を参加者とともに考えていきます。『ラボ通信』といったメディアをつくることにも挑戦します。

スタディ4の詳細はこちら

スタディ5 自分の足で「あるく みる きく」ために―知ること、表現すること、伝えること、そしてまた知ること(=生きること)

チューター:村松真文(NPO法人アートフル・アクションスタッフ/中央)、スタディマネージャー:佐藤李青(一番右) ※合同会当日は、チューター役として関わっている村松真文さんが、ナビゲーターの宮下美穂さんの代わりに登壇しました。

生きることの支えとしての「表現」を参加者それぞれが探し出すことをテーマに取り組みます。3人のゲストアーティストが、参加者と並走して活動を進めていきます。

初回活動日は、ゲストアーティストと参加者の自己紹介を行いました。大西暢夫さん(写真家/映画監督)は、これまでどのように作品をつくってきたかについて話しました。花崎攝さん(シアター・プラクティショナー/野口体操講師)は、野口体操の考え方や手法を説明し、参加者は身体をほぐすワークを体験しました。ドイツ在住の揚妻博之さん(アーティスト)はスカイプでの参加。ご自身の作品の紹介やこれからつくろうと思っていることを参加者と共有しました。

参加者は、それぞれの表現の手法や考え方、制作プロセスに触れたり、一緒に作品をつくったり、自ら表現を模索したりします。それぞれのアーティストの活動情報などを適宜共有し、ナビゲーターと数名のチューターが活動日以外の学びもサポートしていきます。

スタディ5の詳細はこちら

今回の合同会は、それぞれのスタディの動きやテーマだけでなく、お互いの興味や現在の活動について共有する場となりました。これから活動を重ねるなかで、2月に開催予定の報告会に向けて、各々の関心をさらに深めていくとともに、「つくる」コミュニティとしての横断的な活動が生まれていきそうです。

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