共通: 年度: 2018
揚妻博之
大西暢夫
渡辺智穂
瀬尾夏美
磯崎未菜
花崎攝
居間 theater[東彩織、稲継美保、宮武亜季、山崎朋]
部屋しかないところからラボを建てる 知らない誰かの話を聞きに行く、チームで思考する
「いま知りたいことを、より立体的に知るための技術」の獲得を目指す
現在、多くの人がインターネットによって、調べればすぐある程度の答えを得ることができます。しかしそれは、経験や体感が伴わないまま「他者の情報を、あたかも自分のもののようにふるまえる時代になった」と、言うこともできるのではないでしょうか。
このプロジェクトでは、「いま」「東京」で、メンバーそれぞれの関心を持ち寄り、一斉に調べ、徹底的に共有し、可視化するラボを立ち上げます。部屋に集い、話し合う。部屋を出て、身体を通してリサーチしたことを、また部屋に持ち込み、メンバーとの共有を繰り返します。メンバー全員でラボの方法や機能づくりにも取り組みます。
リサーチは「人の話を聞く」という方法に重点を置きます。何かを知ろうとするとき、まずは本や資料にあたり、インターネットの検索からはじめることも多いでしょう。しかし、一歩外へ出て、人に話を聞いてみると、自分の予想とは違う言葉や反応が返ってくることがあります。いままでの経験では受け止めきれないことかもしれません。そういったとまどいを引き受け、身体を通して情報へ触れる方法、それを誰かと共有することについて繰り返し議論をしていきます。
ナビゲーターは、東日本大震災以降、仙台を拠点に土地と協働しながら記録をつくる一般社団法人NOOKの瀬尾夏美(アーティスト)、小森はるか(映像作家)、磯崎未菜(アーティスト)が務めます。
「いま知りたいことを、より立体的に知るための技術」を、メンバーがそれぞれに開発し、実践していくことを目指します。そして、このラボから、長い時間をかけた新たな表現やプロジェクトが生まれていくことを期待します。
詳細
スケジュール
9月23日(日)
第1回 関心の共有からはじまる
9月24日(月・祝)
合同会
10月14日(日)
第2回 被災経験を聞くこと、伝えること
ゲスト:早乙女勝元(作家/東京大空襲・戦災資料センター館長)
山本唯人(社会学者/東京大空襲・戦災資料センター主任研究員)
11月11日(日)
第3回 他者を通して自分の関心を知る
ゲスト:奈良朋彦(「江東区の水辺に親しむ会」メンバー)
11月24日(土)
第4回 オープンラボデイ
12月9日(日)
第5回 ラボを利用して話を聞く
ゲスト:田中沙季(演劇ユニットPort B 制作・リサーチ担当)
12月20日(木)
第6回 オープンラボデイ
1月13日(日)
第7回 年末年始に「聞いた」ことを持ち寄る
2月17日(日)
第8回 メンバーに対して「聞く」
2月24日(日)
第9回 聞くためのラボを再現する
進め方
- 関心を出し合って、問題系を探る
- それぞれリサーチを行う
- 集まって、徹底的に共有し、課題を洗い出す
- チーム内の情報精度をあげ、オープンソース化を目指す
- リサーチと共有を繰り返す
- 情報を使い合い、企画や表現が立ち上がる
会場
ROOM302(東京都千代田区外神田6-11-14-302 [3331 Arts Chiyoda 3F])
参加費
一般30,000円/学生20,000円
関連サイト
関連レポート
ナビゲーターメッセージ(一般社団法人NOOK)
途方もなく広く、無数の人たちがいる東京も、複数人で歩けば心強いし、効率的かもしれない。東京という場所にラボを立ち上げ、メンバーがそれぞれの関心を持ち込み、話し合って問いを共有し、組織的かつ自律的にリサーチを進めていく。そうすることで、調べた情報たちが交差し、繋がり、あわよくば“東京”もしくは、同時代に変容する社会の像の片鱗が見えてくるかもしれません。
そこには、「だれかが聞いてきた話や持ってきた資料を共有するときに、どのような作法が必要か」という問いがついてきます。だれの言葉も容易に自分のもののように振る舞えてしまう時代に、本当に何が起きているのかを知るためには、徹底的に「聞く」身体づくりが必要なように思えるのです。
スタディマネージャーメッセージ(佐藤李青)
表現のつくりかたが変化している。震災後の東北で育まれている、さまざまな実践に触れながら、そう感じています。仙台を拠点とするNOOKは、その新たなありようを模索する表現者たちが集った組織です。
身を委ねる。深く潜る。遠くに飛ばす。そうした誰かの経験に身を傾けることから生みだす表現の作法を共有し、その実践を先に進め、支えるための動き方をつくりだす。他者とのかかわりに真摯に向き合い、ふたたび自らを変容させていく仕掛けづくりを試みます。
異質で身近な他者と、ひとつの場を共有する方法をつくりだせるだろうか。この問いを抱えるスタディは、小さな「社会」(と運用の方法)をつくる試みともつながっているのだと思います。
「東京でつくる」ということ 前提を問う、ことばにする、自分の芯に気づく
なぜ「東京でつくる」のか。前提を問うなかで思考の軸を捉え直す
大切だとわかっていても、なかなか容易く行えないのが、「前提を問う」ことではないでしょうか。なぜこうなっているのか、一心に考え、聞き、言葉にする。これを繰り返し他者と共有することは、時間も労力もかかりますが、ものを生み出していく上で、非常に重要な「筋力」です。
このプロジェクトでは、「東京でつくる必然性」を問うためのグループワークを行います。カリキュラムを通じてものごとに向き合い他者と出会うとき、自らの思考の「軸」や「態度」を捉え直すことができるかもしれません。さまざまな背景をもつ参加者の課題や関心をきっかけに、徹底的な対話を進め、それぞれの考えの違いに戸惑い、思考のゆらぎを感じながら、繰り返し議論を進めます。こうした思考実験の場で、参加者の「つくる姿勢」の体幹を鍛えます。
石神夏希(劇作家)をナビゲーターに、ゲストを招いたワークショップ形式のディスカッションや、映像フィールドワークなどを実施します。各回終了後には参加者が自分の意見や所感をエッセイにまとめ、記録として残していきます。実践的な思考の場でありながら、ここでの議論が何年か経ち、それぞれが迷ったときに立ち戻れる道標となることを目指します。
詳細
スケジュール
9月22日(土)13:00~17:00
第1回 「東京」で「つくる」を考えるために
10月26日(金)19:00〜21:30
第2回 日本から、東京から離れた場所で
ゲスト:井上知子(俳優)
11月16日(金)19:00〜21:30
第3回 東京/地方で「つくる」意味
ゲスト:吉田雄一郎(城崎国際アートセンター(KIAC)プログラムディレクター)
イシワタマリ(山山アートセンター主宰・美術家)
12月15日(土)13:00~17:00
第4回 戸惑いながら、共同で「つくる」
ゲスト:久保田テツ(NPO法人記録と表現とメディアのための組織[remo]メンバー)
1月19日(土)13:00~17:00
第5回 プライベートを語る、聞くこと
2月8日(金)19:00〜21:30
第6回 報告の形式の「前提を問う」
2月24日(日)
第7回 報告会「東京でつくる」をめぐるQ&A
進め方
- メンバー全員での定例ディスカッションを月1回開催する
- 自身の考えや問いを整理し、思考の変遷を記録するために、毎回必ずエッセイを書く(計7本予定)
- ゲストトークやフィールドワークを実施(日程は参加者と相談、場所は都内を予定)
- ROOM302を拠点とし、メンバーはROOM302の開室日に自主活動を行うことができる
会場
ROOM302(東京都千代田区外神田6-11-14-302 [3331 Arts Chiyoda 3F])
参加費
一般30,000円/学生20,000円
関連サイト
関連レポート
ナビゲーターメッセージ(石神夏希)
屏風の虎をふんじばる
「東京でつくる」に戸惑っています。
そんな私の戸惑いをケーススタディとして、
参加者の皆さんと共に「東京でつくる」ことの必然性や、
一体何をどうつくればいいのか、
ということを考えるプログラムです。
企画にあたって、スタディマネージャーの嘉原妙さんと話しているとき「東京ってフィクションなのかもしれない」という言葉が出ました。それはさほど新しい発見ではないと思いますが、私は演劇をやっている人間なので、フィクションを身体化することに関心があります。そして身体化されたフィクションつまり「上演」には、制度を相対化する力があります。
いま、東京で芸術文化に関わろうとするとき、このことについてよくよく考えてみる必要があるのではないか、と思います。「いま」は何時で「東京」は何処のことなのか。そんな「屏風の虎」みたいなフィクショナルな何かをふんじばろうとする格闘と、メンバーそれぞれの身体から発したごく個人的な実感とのあいだを行き来しながら、その過程を言葉にしていくことに挑戦したいです。
ゲストとして私がこれまで、あるいは現在進行形で一緒に「つくる」をやってきた人々にも議論に参加してもらいます。彼らはいま、どこで、何をつくっているのか。「東京でつくる」ことをどう思っているのか。ありていに言えば「スタディ」を口実に信頼するつくり手であり友人でもある彼らにこの戸惑いを吐露し、参加者の皆さんの知恵もお借りして、なんとか手がかりを見つけたい、という目論見です。
そう、つまり切実です。切実なだけ、ケーススタディとしては惜しみなく素材をさらけ出します。参加する皆さんにとっても実践的な思考の場になることを、そしてここでの議論が何年か経って、それぞれが迷った時に立ち戻れる道標となることを目指します。
スタディマネージャーメッセージ(嘉原妙)
石神さんの戸惑いは、他者の人生(物語)の一端に触れながら演劇に取り組んできたからこそ感じる戸惑いのように思います。日々の営みの延長に積層された時間や風景、何気ないいつもの所作が、「場所と物語」として立ち上がり演劇になる。その可能性を模索し続けている彼女が、いま、東京に腰を据えてつくることに向き合おうとして迷っています。
私は、この戸惑いを無視しない態度こそ、物事に取り組むときに必要な姿勢ではないかと思っています。それは、アーティストのみならずアートに携わる人にとって必要なものです。なぜ、ここで、つくるのか。その必然性を問い、具体的にどうアクションしていくのか。一人の劇作家の切実な想いと取り組みをケーススタディに、逡巡しながらも言葉にすることを諦めず、思考の姿勢を切磋することに挑戦したいと思います。