アートプロジェクト運営の手始め

アートプロジェクトの「いろは」を学び、クリエイティブな運営を目指す

アートプロジェクトは既存の手法や枠組みにとらわれず新たな価値を生み出す活動です。その運営も、プロジェクトの展開に合わせて、新たな方法を開拓しながら変化させ続けるべきでしょう。

運営の担い手が向き合うタスクは多岐にわたります。企画をつくって実施することにとどまらず、企画を生むための土壌を耕したり、人や組織を育てたり、活動を価値化し仲間を増やしたり、さらなる進化を目指して勉強や実験をしたり。そもそもそれらの方法を生み出したり……。

「やるべきこと」をあげると際限なく出てきますが、今回はアートプロジェクト運営の入門編として、運営ビギナーが、まずおさえるべきトピックを取り上げます。運営の基本サイクル(企画、準備、実施、報告、検証・評価)を見渡しながら、広報や記録にもフォーカスし、現場で必要な技術やアプローチについて考えます。クリエイティブな運営を行うことで、アートプロジェクトそのものの創造性を鍛えていきましょう。

詳細

スケジュール

9月5日(水)19:00〜21:30
第1回 運営入門

  • アートプロジェクトの運営とは|「運営=イベントの実施」だけではない
  • 座組|運営体制図を書いてみる(ワークショップ)
  • 企画4点セット|企画・人・お金・時間
  • 会議で動かす|構想する・議論する・共有する・調整する
  • 進行管理|プロジェクトに振り回されないために
  • リスク管理|人や活動を守るためにリスクを洗い出す(ワークショップ)

9月12日(水)19:00〜21:30
第2回 広報入門

  • 広報とは|「広報=チラシ制作」ではない
  • アートプロジェクトと広報|ミッションとアクションをつなぐ
  • いちからはじめる広報基本セット|戦略・素材・データベース
  • 広報力の鍛え方|見つける・言葉にする・つなげ続ける
  • 事例から学ぶ広報|タイミング・メディア・コンテンツ
  • プロジェクトを素材に広報施策を考えてみる(ワークショップ)

9月26日(水)19:00〜21:30
第3回 記録入門

  • 記録とは|「使える記録」を残そう
  • アートプロジェクトと記録|活動を続けるための大切な資産
  • 記録の種類|自分で残す・依頼して残す
  • チームで始める記録基本セット|道具・ルール・ストレージ
  • プロに記録を依頼する|発注・ディレクションのポイント
  • プロジェクトを素材に記録方法を考えてみる(ワークショップ)

会場

ROOM302(東京都千代田区外神田6-11-14-302 [3331 Arts Chiyoda 3F])

参加費

5,000円

部屋しかないところからラボを建てる 知らない誰かの話を聞きに行く、チームで思考する

「いま知りたいことを、より立体的に知るための技術」の獲得を目指す

現在、多くの人がインターネットによって、調べればすぐある程度の答えを得ることができます。しかしそれは、経験や体感が伴わないまま「他者の情報を、あたかも自分のもののようにふるまえる時代になった」と、言うこともできるのではないでしょうか。

このプロジェクトでは、「いま」「東京」で、メンバーそれぞれの関心を持ち寄り、一斉に調べ、徹底的に共有し、可視化するラボを立ち上げます。部屋に集い、話し合う。部屋を出て、身体を通してリサーチしたことを、また部屋に持ち込み、メンバーとの共有を繰り返します。メンバー全員でラボの方法や機能づくりにも取り組みます。

リサーチは「人の話を聞く」という方法に重点を置きます。何かを知ろうとするとき、まずは本や資料にあたり、インターネットの検索からはじめることも多いでしょう。しかし、一歩外へ出て、人に話を聞いてみると、自分の予想とは違う言葉や反応が返ってくることがあります。いままでの経験では受け止めきれないことかもしれません。そういったとまどいを引き受け、身体を通して情報へ触れる方法、それを誰かと共有することについて繰り返し議論をしていきます。

ナビゲーターは、東日本大震災以降、仙台を拠点に土地と協働しながら記録をつくる一般社団法人NOOKの瀬尾夏美(アーティスト)、小森はるか(映像作家)、磯崎未菜(アーティスト)が務めます。

「いま知りたいことを、より立体的に知るための技術」を、メンバーがそれぞれに開発し、実践していくことを目指します。そして、このラボから、長い時間をかけた新たな表現やプロジェクトが生まれていくことを期待します。

詳細

スケジュール

9月23日(日)
第1回 関心の共有からはじまる

9月24日(月・祝)
合同会

10月14日(日)
第2回 被災経験を聞くこと、伝えること

ゲスト:早乙女勝元(作家/東京大空襲・戦災資料センター館長)
山本唯人(社会学者/東京大空襲・戦災資料センター主任研究員)

11月11日(日)
第3回 他者を通して自分の関心を知る

ゲスト:奈良朋彦(「江東区の水辺に親しむ会」メンバー)

11月24日(土)
第4回 オープンラボデイ

12月9日(日)
第5回 ラボを利用して話を聞く

ゲスト:田中沙季(演劇ユニットPort B 制作・リサーチ担当)

12月20日(木)
第6回 オープンラボデイ

1月13日(日)
第7回 年末年始に「聞いた」ことを持ち寄る

2月17日(日)
第8回 メンバーに対して「聞く」

2月24日(日)
第9回 聞くためのラボを再現する

進め方

  • 関心を出し合って、問題系を探る
  • それぞれリサーチを行う
  • 集まって、徹底的に共有し、課題を洗い出す
  • チーム内の情報精度をあげ、オープンソース化を目指す
  • リサーチと共有を繰り返す
  • 情報を使い合い、企画や表現が立ち上がる

会場

ROOM302(東京都千代田区外神田6-11-14-302 [3331 Arts Chiyoda 3F])

参加費

一般30,000円/学生20,000円

関連サイト

東京プロジェクトスタディウェブサイト

関連レポート

ナビゲーターメッセージ(一般社団法人NOOK)

途方もなく広く、無数の人たちがいる東京も、複数人で歩けば心強いし、効率的かもしれない。東京という場所にラボを立ち上げ、メンバーがそれぞれの関心を持ち込み、話し合って問いを共有し、組織的かつ自律的にリサーチを進めていく。そうすることで、調べた情報たちが交差し、繋がり、あわよくば“東京”もしくは、同時代に変容する社会の像の片鱗が見えてくるかもしれません。

そこには、「だれかが聞いてきた話や持ってきた資料を共有するときに、どのような作法が必要か」という問いがついてきます。だれの言葉も容易に自分のもののように振る舞えてしまう時代に、本当に何が起きているのかを知るためには、徹底的に「聞く」身体づくりが必要なように思えるのです。

スタディマネージャーメッセージ(佐藤李青)

表現のつくりかたが変化している。震災後の東北で育まれている、さまざまな実践に触れながら、そう感じています。仙台を拠点とするNOOKは、その新たなありようを模索する表現者たちが集った組織です。

身を委ねる。深く潜る。遠くに飛ばす。そうした誰かの経験に身を傾けることから生みだす表現の作法を共有し、その実践を先に進め、支えるための動き方をつくりだす。他者とのかかわりに真摯に向き合い、ふたたび自らを変容させていく仕掛けづくりを試みます。

異質で身近な他者と、ひとつの場を共有する方法をつくりだせるだろうか。この問いを抱えるスタディは、小さな「社会」(と運用の方法)をつくる試みともつながっているのだと思います。

説明会映像

「東京でつくる」ということ 前提を問う、ことばにする、自分の芯に気づく

なぜ「東京でつくる」のか。前提を問うなかで思考の軸を捉え直す

大切だとわかっていても、なかなか容易く行えないのが、「前提を問う」ことではないでしょうか。なぜこうなっているのか、一心に考え、聞き、言葉にする。これを繰り返し他者と共有することは、時間も労力もかかりますが、ものを生み出していく上で、非常に重要な「筋力」です。

このプロジェクトでは、「東京でつくる必然性」を問うためのグループワークを行います。カリキュラムを通じてものごとに向き合い他者と出会うとき、自らの思考の「軸」や「態度」を捉え直すことができるかもしれません。さまざまな背景をもつ参加者の課題や関心をきっかけに、徹底的な対話を進め、それぞれの考えの違いに戸惑い、思考のゆらぎを感じながら、繰り返し議論を進めます。こうした思考実験の場で、参加者の「つくる姿勢」の体幹を鍛えます。

石神夏希(劇作家)をナビゲーターに、ゲストを招いたワークショップ形式のディスカッションや、映像フィールドワークなどを実施します。各回終了後には参加者が自分の意見や所感をエッセイにまとめ、記録として残していきます。実践的な思考の場でありながら、ここでの議論が何年か経ち、それぞれが迷ったときに立ち戻れる道標となることを目指します。

詳細

スケジュール

9月22日(土)13:00~17:00
第1回 「東京」で「つくる」を考えるために

10月26日(金)19:00〜21:30
第2回 日本から、東京から離れた場所で

ゲスト:井上知子(俳優)

11月16日(金)19:00〜21:30
第3回 東京/地方で「つくる」意味

ゲスト:吉田雄一郎(城崎国際アートセンター(KIAC)プログラムディレクター)
イシワタマリ(山山アートセンター主宰・美術家)

12月15日(土)13:00~17:00
第4回 戸惑いながら、共同で「つくる」

ゲスト:久保田テツ(NPO法人記録と表現とメディアのための組織[remo]メンバー)

1月19日(土)13:00~17:00
第5回 プライベートを語る、聞くこと

2月8日(金)19:00〜21:30
第6回 報告の形式の「前提を問う」

2月24日(日)
第7回 報告会「東京でつくる」をめぐるQ&A

進め方

  • メンバー全員での定例ディスカッションを月1回開催する
  • 自身の考えや問いを整理し、思考の変遷を記録するために、毎回必ずエッセイを書く(計7本予定)
  • ゲストトークやフィールドワークを実施(日程は参加者と相談、場所は都内を予定)
  • ROOM302を拠点とし、メンバーはROOM302の開室日に自主活動を行うことができる

会場

ROOM302(東京都千代田区外神田6-11-14-302 [3331 Arts Chiyoda 3F])

参加費

一般30,000円/学生20,000円

関連サイト

東京スタディプロジェクトウェブサイト

関連レポート

ナビゲーターメッセージ(石神夏希)

屏風の虎をふんじばる

「東京でつくる」に戸惑っています。
そんな私の戸惑いをケーススタディとして、
参加者の皆さんと共に「東京でつくる」ことの必然性や、
一体何をどうつくればいいのか、
ということを考えるプログラムです。

企画にあたって、スタディマネージャーの嘉原妙さんと話しているとき「東京ってフィクションなのかもしれない」という言葉が出ました。それはさほど新しい発見ではないと思いますが、私は演劇をやっている人間なので、フィクションを身体化することに関心があります。そして身体化されたフィクションつまり「上演」には、制度を相対化する力があります。

いま、東京で芸術文化に関わろうとするとき、このことについてよくよく考えてみる必要があるのではないか、と思います。「いま」は何時で「東京」は何処のことなのか。そんな「屏風の虎」みたいなフィクショナルな何かをふんじばろうとする格闘と、メンバーそれぞれの身体から発したごく個人的な実感とのあいだを行き来しながら、その過程を言葉にしていくことに挑戦したいです。

ゲストとして私がこれまで、あるいは現在進行形で一緒に「つくる」をやってきた人々にも議論に参加してもらいます。彼らはいま、どこで、何をつくっているのか。「東京でつくる」ことをどう思っているのか。ありていに言えば「スタディ」を口実に信頼するつくり手であり友人でもある彼らにこの戸惑いを吐露し、参加者の皆さんの知恵もお借りして、なんとか手がかりを見つけたい、という目論見です。

そう、つまり切実です。切実なだけ、ケーススタディとしては惜しみなく素材をさらけ出します。参加する皆さんにとっても実践的な思考の場になることを、そしてここでの議論が何年か経って、それぞれが迷った時に立ち戻れる道標となることを目指します。

スタディマネージャーメッセージ(嘉原妙)

石神さんの戸惑いは、他者の人生(物語)の一端に触れながら演劇に取り組んできたからこそ感じる戸惑いのように思います。日々の営みの延長に積層された時間や風景、何気ないいつもの所作が、「場所と物語」として立ち上がり演劇になる。その可能性を模索し続けている彼女が、いま、東京に腰を据えてつくることに向き合おうとして迷っています。

私は、この戸惑いを無視しない態度こそ、物事に取り組むときに必要な姿勢ではないかと思っています。それは、アーティストのみならずアートに携わる人にとって必要なものです。なぜ、ここで、つくるのか。その必然性を問い、具体的にどうアクションしていくのか。一人の劇作家の切実な想いと取り組みをケーススタディに、逡巡しながらも言葉にすることを諦めず、思考の姿勢を切磋することに挑戦したいと思います。

説明会映像

自分の足で「あるく みる きく」ために 知ること、表現すること、伝えること、そしてまた知ること(=生きること)

アーティストの現場に触れながら、生きるための支えとしての「表現」を深める

わたしたちの社会は、複雑かつ高速に変化し、そして感情的な側面をもっています。この感情的な社会において、実は情念や情動は、真っ向から否定されるべきものではなく、むしろ理性を駆動させるエンジンとして重要です。そしてその情念や情動は、表現を経ることで、より洗練されていきます。表現された情念は、一般的に考えられる狭義の「理性」や「合理性」を、超えていくことすらあるかもしれません。

このプロジェクトのテーマは、生きることの支えとしての「表現」を参加者それぞれが探し出すこと。ゲストアーティストの大西暢夫さん(写真家/映画監督)、花崎攝さん(シアター・プラクティショナー/野口体操講師)、揚妻博之さん(アーティスト)の表現の現場に触れながら、あるいはともに、参加者自らが制作と表現を行います。

ただし、「アーティスト」になることや作品づくりを行うこと、方法を教えることが目的ではありません。ナビゲーターの宮下美穂(NPO法人アートフル・アクション 事務局長)とチューターが活動日以外の学びもサポートしていきます。

このプロジェクトの名前は、かつて、民俗学者の宮本常一が主宰した月刊誌『あるく みる きく』(*)に由来します。出来事や状況を安易に価値化せず、人が世界と向き合うその人自身の目を失わないように、考え、やってみて、また考えてみる。身体全体を使い、潜在する見えにくいものを丁寧に感知する。その手法を丁寧に考える。停滞することを厭わず、何であれ一つ知り得たことが次の動きの標(しるべ)となるように、一人ひとりがじっくりと立ち止まって考え、やってみる。その過程を経験する場をつくることで、日々のたくさんの気づきが表現の礎であることを学びます。

*民俗学者の宮本常一が主宰した近畿日本ツーリスト株式会社・日本観光文化研究所が発行していた月刊誌(1967〜1988年)。

詳細

スケジュール

9月16日(日)
第1回 新しい出会い

10月6日(土)
第2回 ブラインドウォークと小枝

10月27日(土)
第3回 山形、徳山、くじら山

11月18日(日)
第4回 思い出の場所を描く

12月2日(日)
第5回 基本的なあり方が生まれた「転換点」

12月22日(土)
第6回 おいしい年末

1月12日(土)
第7回 スパイシーな甘酒

1月19日(土)
第8回 その人の取りやすい姿勢

2月10日(日)
第9回 忘れられない些細な他者

2月24日(日)
第10回 報告会 ぐだぐだ、あるいは迷うこと

進め方

  • ゲストアーティストはスタディ期間を通してリサーチや制作を行う
  • ゲストのリサーチや制作に直接触れるワークショップを月1~2回程度開催。リサーチの考え方、対象や主題の捉え方、アプローチの仕方を参照し、参加者自らのリサーチや制作に反映していく
  • 制作やリサーチを支える身体について考えるワークショップを行う
  • ゲストアーティストや参加者とのワークショップ、ミーティングで自身のリサーチや制作の進捗を共有し、助言を得て、それぞれの制作に戻っていく。この動きを繰り返し、年度末にはその時点での状況を共有する場を設ける(展示、もしくは活動紹介を予定)
  • 会場のシャトー2Fに、情報を集積させたライブラリーやスタジオ機能を設ける

会場

小金井アートスポット シャトー2F(東京都小金井市本町6-5-3 シャトー小金井2階)

参加費

一般30,000円/学生20,000円

関連サイト

東京プロジェクトスタディウェブサイト

関連レポート

ナビゲーターメッセージ(宮下美穂)

たとえば、深い暗闇の中で光を探し求めるのか、暗闇のなかで、縮こまらずに心と体を開いて自分をとりまく世界を感知して闇の中を生きてみることを試みるのか? どちらかというと、今回の試みは、後者なのかもしれません。

私は私たちが複雑で速い速度で変化して行く、そして感情的な社会を生きているように感じられます。この感情的な社会において、情念や情動は、否定されるべきものではなく、むしろ理性を駆動させるためのエンジンとして重要だと思います。しかし、その一方で、情念や情動は戦禍や暴力に向けた強力なエンジンともなり得ます。情動と理性のどちらかに優位性があるのではなく、洗練された情動は一般的に考えられる狭義の「理性」や「合理性」よりも、理性的で真の意味で合理性をもつように思えます。

目の前の答えあるいは光に拙速に飛びつくのではなく、闇の中にある濃淡に丁寧に触れ、生きていくことをもちこたえる心と体、そして技(わざ)あるいは術(すべ)について、つくることを通して考えます。

スタディマネージャーメッセージ(佐藤李青)

何かをつくろうとする態度をもつことで世界の捉え方は変わる。

アルベルト・ジャコメッティが矢内原伊作をモデルに描こうと試みた苦闘の最中(さなか)。「良い仕事ができた」というジャコメッティの言葉に画面を覗いた矢内原はすべてが消されたタブローを発見する。満足げなジャコメッティに矢内原は驚く。でも、ジャコメッティは肖像を描こうとするなかで矢内原への理解を深め、何かを掴んだのだろう。宮下さんは、そう推察する。好きな逸話なのだと聞いたのは対談シリーズの収録中だった。

このスタディは抽象的なようで、とても具体的な作業の積み重ねになるはずです。身体を動かし、やってみる。だからといって、できあがったもので判断はしない。何かをつくる過程に安心して身を投じられる場が、ここにはあると思います。

説明会映像

Music For A Space 東京から聴こえてくる音楽

音楽産業と公共空間における音楽、両者が融合する可能性を議論する

2010年代に入り、音楽を取り巻く環境や産業構造は大きな転換期にあり、既存の音楽体験や聴取環境を超えていくような、さまざまな模索がはじまっています。一方、公共空間で展開するアートプロジェクトでは、音楽の可能性を拡張する試みがまちなかで行われています。

このプロジェクトでは、音楽産業と公共空間における音楽のあり方や融合の可能性を探ることを目指し、さまざまな角度から音楽に携わるゲストを招きディスカッションを重ねます。

ナビゲーターは、音楽ビジネスとアートプロジェクトを往来し続ける清宮陵一です。音楽産業が牽引するポップミュージックと、アートプロジェクトで用いられるパブリックサウンド。この両者のハイブリッドなあり方を、「経済活動」「社会活動」「実践」「消費」などの視点から音楽の現在地を表す座標軸を探り、「これまでと違う仕組みの音楽のありようをつくる」ことに挑みます。

詳細

スケジュール

9月19日(水)19:30〜22:00
第1回 音楽史と個人史を交差させる

10月12日(金)19:30〜22:00
第2回 参加型プロジェクトを紐解く

ゲスト:和田永(アーティスト/ミュージシャン)

10月25日(木)19:30〜22:00
第3回 ふたりのライターが見つめるもの

ゲスト:杉原環樹(ライター/インタビュアー)
名小路浩志郎(宮内俊樹)(音楽ライター)

11月14日(水)19:30〜22:00
第4回 フェスという形式の未来像

ゲスト:安澤太郎(野外フェスティバル『TAICOCLUB』オーガナイザー)

12月18日(火)19:30〜22:00
第5回 音と音楽、美術と音楽の境目

ゲスト:蓮沼執太(音楽家)

12月19日(木)19:30〜22:00
第6回 広告から公共へ音楽を展開する

ゲスト:ブルース・イケダ(クリエイティブスタジオJKD Collective 代表取締役社長)

1月17日(木)19:30〜22:00
第7回 振り返りながら足元を確認する

1月31日(木)19:30〜22:00
第8回 公共空間で音楽を響かせるために

ゲスト:白勢竜彦(Peatix Japanコミュニティ・マネージャー)
飯石藍(公共R不動産 コーディネーター)

2月13日(水)19:30〜22:00
第9回 オルタナティブという探究心

ゲスト:平野敬介(クリエイティブマンプロダクション)

2月14日(木)19:30〜22:00
第10回 音楽=魔法の起こる現場

ゲスト:zAk(エンジニア)

2月21日(木)19:30〜22:00
第11回 10回の活動を振り返って

2月24日(日)
第12回 報告会「現在地」を共有する

進め方

  • メンバー全員でのディスカッションを月2回程度開催する
  • スタディの進捗に合わせて、都内でゲストトークやフィールドワークを実施
  • ROOM302を拠点とし、メンバーはROOM302の開室日に自主活動を行うことができる

会場

ROOM302(東京都千代田区外神田6-11-14-302 [3331 Arts Chiyoda 3F])

参加費

一般30,000円/学生20,000円

関連サイト

東京プロジェクトスタディウェブサイト

関連レポート

ナビゲーターメッセージ(清宮陵一)

たったひとつのフレーズや考え方が、音という波に乗って直接人々の心に突き刺さる、音楽。ブライアン・イーノはアンビエントという仕組みをつくり『Music For Airports』で、聴取という行為に革命を起こしました。
それからちょうど40年、音楽を聴取する環境は多様化し細分化し、近頃は音楽を聴く行為と奏でる行為とが接近しているように感じています。だれもがふと音の中から音楽を見出し、それらを伝え残すことができたら、豊かな音楽が世界に溢れかえるのではないでしょうか。
活動を共にするゲストを多数お迎えして、これからの音楽について、じっくり考えてみたいと思います。

スタディマネージャーメッセージ(大内伸輔)

アートプロジェクトや芸術祭は多様化してきたけれど、その起源は美術にあって、未だ音楽は単発のイベントとして置かれることが多いのではないでしょうか。しかし、音楽家による独自の視点、リサーチ力、瞬発力、コンポジション(構造設計)の力は、まだまだ公にひらいていける、何かを発見できる、揺るがしていける。まだ見ぬ地平があるはずです。ともにその可能性について考え、新たな回路を身に着けていきましょう。

説明会映像

徹底解体! アートプロジェクト

アートプロジェクトの30年を「表現」と「仕組みや環境」を軸に振り返り、次の10年を探るゼミ

アートプロジェクトとは何か?
どのように現場はつくられているのか?
いま、どのような方法が可能なのか?

1990年代にはじまり、現在も各地で盛んに展開されているアートプロジェクト。さまざまな担い手による、多彩な約30年を通じて、アートプロジェクトの効用が各所へ浸透しつつあります。そうしたアートプロジェクトの軌跡を、「アートプロジェクト」という単語でひとくくりにせず、トピックの一つひとつを手に取り直して「自らに習う」ことで、次の10年が見えてくるかもしれません。

ナビゲーターは、北澤潤(美術家)と佐藤李青(アーツカウンシル東京プログラムオフィサー)。立場の異なるふたりの対話を通して、「表現」と「仕組みや環境」の視点を軸に、アートプロジェクトのこれまでの歩みを振り返ります。豊富な事例や背後に潜む「つくり手」の問題意識に触れながら、現場の動きを学び、これまでのありようを問い直し、現状を更新する「その先」のつくり方を議論するための土壌を耕します。

また、参加者のみなさんを「自らの学び」へと誘う仕掛けのひとつとして、会場のROOM302に、一時的なスタディルーム(STUDY ROOM)を立ち上げます。ナビゲーターからのインプットをふまえながら、新たな企て(プロジェクト)をつくることも試みます。

詳細

スケジュール

第1回 プロジェクトとコンセプト:はじまり(1990年代以降)
第2回 現場の動き方:国際展・トリエンナーレの時代(2000年代前後)
第3回 プロジェクトを超えて(2010年代以降)

会場

ROOM302(東京都千代田区外神田6-11-14-302 [3331 Arts Chiyoda 3F])

参加費

5,000円

ナビゲーターメッセージ(北澤潤)

STUDY ROOM

いつからか、
「アートプロジェクト」という言葉を使うことに躊躇しはじめた。
というか、最近はあまり使わないようにしている。
地域を現場にした新しい企てのはじまりは、
実は、「企て」というほど意図的ではなく、
もう僕らの中では地域で仕掛けることが普通の感覚だった、ように思える。
ただその現場で相対した人びとから求められるのは、
「こちら」の希求とは時にずれた、「明快な意味」だったりした。
その要求に折れず、大切なわからなさを保ったまま、
何かを伝えられる可能性がある言葉として積極的に選択した言葉が
「アートプロジェクト」だったことは間違いがない。
その当時、僕らは「わからなさ」のなかを漂っていた。
それが単純に面白かった。
いまの躊躇をあえてはっきり言うならば、
「アートプロジェクトがわかってしまった」ことが原因だと思う。
それは個々人だけでなく、「社会が」わかってしまっている。
もはや、この単語にこだわる必要はないと思う。
むしろ、言葉と現場、もしくは批評や評価の実践によって
逆に生成されてきた境界線、そのバウンダリーへ
意識を向けるときかもしれない。
越境しうるほどの意味がアートプロジェクトにあったのか、
と自問することからこの10年が別の意味に変わる気もする。
躊躇の向こう側に足が向かいそうな今だからこそ、
あらためて振り返ってみてもいい。
さまざまなアーティストたちの言葉や試み、
マネジメントの現場やプロデュースの手法、
アートの形式の変容と社会の移り気な要請。
そしてアートプロジェクトをつくってきた自分自身の実践。
「自らに習う」
そんな態度が、ときどき必要だ。
だから、思い立ったときに立ち上がる「ひらかれた自習室」
をつくってみることにした。
はじめてみるには悪くないタイミングだと思っている。

ナビゲーターメッセージ(佐藤李青)

この数年で急激に社会が変容しているように感じています。客観的な事実というよりも肌感覚に近いものです。いまは表現のありようを、その動き方から考えていく必要があるのではないかと思っています。もう少し正確にいえば考えるよりも先に何かをしなければならないのではないかという焦燥感すらあります。人は30代から50代の間で「中年の危機」というものを経験するそうです。最近聞いた言葉ですが、どうやら理由はそれだけでもなさそうです。

例えば、同時代を生きる遠くの誰かに会いにいくような感覚で、時間を隔てた他者に、その実践に出会い直すことはできるだろうか。過去のことだと線を引くのではなく、同じ実践の地平に立つ試みとして捉えてみる。そうした「先に行われた」実践から立ち上がる風景を後から追うことは、変貌するいまを捉え、これから先をつくるために十分価値のある作業なのだと思っています。方法的な工夫も少し試みるつもりです。

今回のレクチャーシリーズでは「アートプロジェクト」という言葉をよすがに、まずは過去約30年の実践を振り返ります。この言葉に対する問題意識は、もうひとりのナビゲーターの北澤潤さんのメッセージにしっかりと表現されているので、そちらをぜひご一読ください。

ナビゲーター同士でも徹底的に議論できればと思っています。遠慮はなしです。少し置いてけぼりにしてしまうかもしれません。それでも損はしないと思います。議論に結論は出ないでしょう。それは何らかの実践で取り組むべき回答なのかもしれません。だからこそ、今回のシリーズをきっかけに、これから一緒に何かをはじめることのできる方との出会いも楽しみにしています。

追伸:
今回のレクチャーシリーズは学びの「入り口」づくりとして、さまざまな参考資料を紹介予定です。手はじめに、この数年の拙稿と北澤さんのインタビュー記事を共有します。

・「芸術祭とアートプロジェクトは、新たな制度となりうるか? ――プロジェクトからインスティテューションへ」『文化政策の現在2 拡張する文化政策』東京大学出版会、2018年
・「はじめに|アートプロジェクトを動かす「ことば」を紡ぐ」(実践編「アートプロジェクト」)ネットTAM、2017年
・『アートプロジェクトのつくりかたー「つながり」を「つづける」ためのことば』フィルムアート社、2015年

・「北澤潤――日本でのアートプロジェクト 10年の実践から、インドネシア、その先へ」国際交流基金アジアセンター、2018年

Artpoint Meeting 2018

社会とアートの関係性を探るトークイベント

「まち」をフィールドに、人々の営みに寄り添い、アートを介して問いを提示するアートプロジェクトを紐解き、最新のテーマを追求するトークイベント。アートプロジェクトに関心を寄せる人々が集い、社会とアートの関係性を探り、新たな「ことば」を紡ぎます。

2018年度は、アートプロジェクトならではの拠点づくりのアプローチや、創造的なメディアのつかいかたについて議論を深めます。

詳細

スケジュール

2018年7月29日開催
Artpoint Meeting #06 プロジェクトを育てる「活動拠点」のつくりかた

  • ゲスト:岩沢兄弟
  • 会場:TOT STUDIO

2019年1月26日開催
Artpoint Meeting #07 プロジェクトを拡げる「メディア」のつかいかた

  • ゲスト:森若奈、中田一会
  • 会場:東京文化会館 4階 大会議室

東京アートポイント計画の10年史(仮)制作プロジェクト

プログラムオフィサーの中間支援の知見をまとめる

2009年度に始動した「東京アートポイント計画」の10年を振り返る「年史」を制作します。過去の実績を伝えるだけでなく、10年で獲得した中間支援の知見を、どのように広く共有していくのか。自らをケーススタディとして、中間支援の担い手であるプログラムオフィサーの知見を言語化することが目的です。

文化事業が社会に向き合い、体制や仕組みを整え、日常に根づくには時間がかかります。先行事例や過去の資料を検証し、関係者へのインタビューを通して、これからの文化を生み出していく人々が参照できる書籍を目指します。

詳細

進め方

  • 目的、現状の課題、目指すことなどの確認
  • 広報計画・スケジュールなど整理
  • 先行事例調査
  • これまでの企画書・議事録などを精読
  • 関係者インタビュー
  • 企画
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Tokyo Art Research Lab 2010-2017 実績調査

事業成果を調査し、複数年にわたる文化事業の成果指標を探る

複数年にわたる文化事業の成果を調査・検証するとき、どのような観点が大切なのでしょうか。今回は、2010年度に始動した人材育成事業「Tokyo Art Research Lab(TARL)」の8年間の取り組みを、事業の結果(アウトプット)、成果(アウトカム)、波及効果(インパクト)の3つを軸に調査検証を行います。

研究メンバーは、調査等を通してアートと社会の橋渡しを行っているNPO法人アートNPOリンクの大澤寅雄さん(ニッセイ基礎研究所芸術文化プロジェクト室/文化生態観察)と吉澤弥生さん(社会学者)です。 この調査を通じて、TARLと同じように複数年にわたる文化事業において定量・定性の両面から成果をどのように捉えるべきなのか、そのあり方を議論します。

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進め方

  • Tokyo Art Research Labの事業実績の分析(プロジェクト数、プログラム数、参加者数、ゲスト講師数、発行物数)
  • 主な事業関係者8名に対するヒアリング
  • 「思考と技術と対話の学校」の受講生に対するアンケート調査
  • 調査結果と8か年の成果についての議論

 

関連資料

『東京アートポイント計画 2009-2016 実績調査と報告』

メディア/レターの届け方 2018→2019

多種多様なドキュメントブックの「届け方」をデザインする

近年、各地で増加するアートプロジェクトでは、毎回さまざまなかたちの報告書やドキュメントブックが発行されています。ただし、それらの発行物は、書店販売などの一般流通に乗らないものも多いため、制作だけでなく「届ける」ところまでを設計することが必要です。東京アートポイント計画も、毎年度末にその年の事業の成果物をまとめて関係者に送付しています。

多種多様な形態で、それぞれ異なる目的をもつドキュメントブックを、どのように届ければ手に取ってくれたり、効果的に活用したりしてもらえるのか? 資料の流通に適したデザインとは何か?

そこで、2016年度から川村格夫さん(デザイナー)とともに、さまざまな発行物をまとめる「メディア/レターの届け方」をデザインするプロジェクトを行っています。東京アートポイント計画が取り組む4事業22冊の発行物を、どのように送るのが効果的か。受け取る人のことを想像しながら、パッケージデザインや同封するレターを開発します。

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進め方

  • 同封する発行物の仕様を確認する
  • 発送する箱の仕様や梱包方法の検討
  • 発送までの作業行程の設計
  • パッケージと同封するレターのデザイン・制作