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応答するアートプロジェクト|アートプロジェクトと社会を紐解く5つの視点

応答するアートプロジェクト|アートプロジェクトと社会を紐解く5つの視点の写真

撮影:港千尋

この10年を俯瞰し、アートプロジェクトと社会との関係を考える

この10年で、わたしたちを取り巻く社会状況はめまぐるしく変化しました。これまでの考え方では捉えきれないような状況が次々と発生し、新たに炙り出される課題に応答するように、さまざまなアートプロジェクトが生まれました。しかしこのような状況は、どこかで一区切りつくようなものではなく、わたしたちはこれからもまた新しい状況に出会い、そのたびに自分たちの足元を見直し、生き方を更新する必要に迫られるでしょう。激しく変化し続けるこれからの時代に求められるアートプロジェクトとは、一体どのようなものなのでしょうか。

「新たな航路を切り開く」シリーズでは、アートプロジェクトの10年を振り返りつつ、これからの時代を考え、新たにプロジェクトを立ち上げる担い手や状況を生み出すための、4つの講座を展開します。ナビゲーターは、いくつもの芸術祭を手掛け、各地のアートプロジェクトをつぶさに見てきた芹沢高志(P3 art and environment 統括ディレクター)です。

ここでは、独自の視点で活動を行う5名の実践者を招き、2011年からいまへと続くこの時代をどのように捉えているのか、これから必要となるものや心得るべきことについて伺います。これからの社会状況の変化や、それに応答して発生するアートプロジェクトのあり方について議論するゲストは、港千尋さん(写真家)、佐藤李青(アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー)、松田法子さん(建築史・都市史研究者)、若林朋子さん(プロジェクト・コーディネーター/プランナー)、相馬千秋さん(NPO法人芸術公社代表理事/アートプロデューサー)です。この10年を大きく俯瞰し、アートプロジェクトと社会の関係を紐解きます。

詳細

スケジュール

視点1 前に走ってうしろに蹴る
ゲスト:港千尋(写真家)

群衆や記憶など文明論的テーマを持ちつつ、時代とイメージのかかわりについてさまざまな角度から考察してきた港さんとともに、変容する時代の新たな捉え方や世界の見方について議論する。

視点2 3.11からの眺め
ゲスト:佐藤李青(アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー)

2011年より10年間、Art Support Tohoku-Tokyo(東京都による芸術文化を活用した被災地支援事業)に携わった佐藤とともに、この10年の間に東北に生まれたアートプロジェクトの変遷と広がりについて議論する。

視点3 生環境構築史という視点
ゲスト:松田法子(建築史・都市史研究者)

地球に生存する人類の歴史とその未来を、構築様式(=Building Mode)という新しい歴史観から捉え直そうとする「生環境構築史」を展開している松田さんとともに、あらためて人間と環境の関係を眺め、アートプロジェクトはいかに応答すべきかを議論する。

視点4 企業・行政・NPOとの応答
ゲスト:若林朋子(プロジェクト・コーディネーター/プランナー)

人々の表現活動や芸術創造が社会において成立するための環境整備や支援のあり方を研究し、さまざまなプロジェクトに伴走してきた若林さんとともに、2011年以降の企業、行政、NPO等とアートプロジェクトのかかわり方の変化や今後のあり方について議論する。

視点5 フェスティバルの変容
ゲスト:相馬千秋(NPO法人芸術公社代表理事/アートプロデューサー)

領域横断的な同時代芸術のキュレーション、プロデュースを専門とし、世界演劇祭/テアター・デア・ヴェルト2023のプログラム・ディレクターに選出された相馬さんとともに、この激動の時代のなか世界規模で進行するフェスティバルの変容について議論する。

関連サイト

「新たな航路を切り開く」note

「新たな航路を切り開く」に寄せて(芹沢高志)

来るべきディレクター、プロデューサーに向けて

2020年春、非常事態下のローマで、作家パオロ・ジョルダーノは「パンデミックが僕らの文明をレントゲンにかけている」と言っていた。まったくその通りで、新型コロナウイルス感染症パンデミックは、これまで私たちが見ないふりをしてきたさまざまな問題を世界中で炙り出している。
エコノミスト、モハメド・エラリアンは、リーマン・ショック(2009)以降の世界経済は、たとえ景気が回復したとしても、以前のような状態には戻らないとして、「ニューノーマル」の概念を提唱し、これまでの考えではとらえることのできない時代の到来を予告していた。その彼が今、今回のコロナ・ショックをうまく乗り切ったとしても、世界経済のかたちを変えてしまうような新たな世界「ニューノーマル2.0」の時代がやってくるだろうと予測している。つまり、自らが提唱した「ニューノーマル」という新たな世界像さえ、次のステージに入って更新されねばならないような地殻変動が、現在、進行しているというのである。これは経済分野での指摘だが、確かに私たちは、東日本大震災と福島第一原子力発電所事故、新型コロナウイルス感染症パンデミック、ロシアによるウクライナ軍事侵攻と世界の分断と、激動する時代のなかで、ものの見方から行動様式に至るまで、さまざまな局面で本質的な更新を余儀なくされている。それはアート・プロジェクトについても同様で、私たちは今、アート・プロジェクトのあり方や進め方に関して、新たな時代に対応する変更を求められている。
しかしもちろん、これは現在進行形の設問であり、出来上がった解答があるわけではない。本スクールは、次代を担うアート・プロジェクトのディレクター、プロデューサーたちに向けて、今生まれるべきアートプロジェクトの姿を学び合い、新たな航路を探し出し、自らの姿勢を確立してもらうために企画されたものである。
ニューノーマル2.0時代のディレクター、プロデューサーが、アートプロジェクトの新たな時代を切り開いていかねばならない。本スクールはそうした来るべきディレクター、プロデューサーたちの、旅立ちのための港になっていきたいと願っている。

「応答するアートプロジェクト|アートプロジェクトと社会を紐解く5つの視点」イントロダクション
港千尋|前に走ってうしろに蹴る(前編)
佐藤李青|3.11からの眺め(前編)
松田法子|生環境構築史という視点(前編)
若林朋子|企業・行政・NPOとの応答(前編)
相馬千秋|フェスティバルの変容(前編)
港千尋|前に走ってうしろに蹴る(後編)
佐藤李青|3.11からの眺め(後編)
松田法子|生環境構築史という視点(後編)
若林朋子|企業・行政・NPOとの応答(後編)
相馬千秋|フェスティバルの変容(後編)

新たな航路を切り開く シリーズ

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