アートプロジェクトの現場から外国ルーツの若者の支援について考える
- オンライン
「2027年ミュンスターへの旅」リサーチの様子、2018年(撮影:加藤甫)
1977年にドイツではじまった10年に1度のアートイベント「ミュンスター彫刻プロジェクト」は、日本におけるアートプロジェクトに大きな影響を与えています。今回は、東京でミュンスター彫刻祭のような「『東京彫刻計画』という芸術祭が、10年に1度行われている」という設定のもと、わたしたちの周りにあるさまざまな彫刻をゼミ形式でリサーチします。2018年度に行なったプロジェクト「2027年ミュンスターへの旅」の発展版です。
東京における「公共」をどのように捉えるか。アートはいかにアプローチしていくのか。アートプロジェクトも演劇もまちなかで盛んに行われているいま、彫刻のもつ時間感覚や、彫刻をつくる人の身体、あるいは彫刻に接するわたしたちの身体感覚、まちのなかで存在することの意味などさまざまな要素が、何かをつくり、考えるためのヒントになるのではないかと考えています。
ゲストに、ストリートアートに詳しい毛利嘉孝さん(社会学者/東京藝術大学教授)と、まちの成り立ちに精通している今和泉隆行さん (空想地図作家)を迎え、「公共」に対する考えを深めます。また、フィールドリサーチを通してパフォーマンスの視点から公共彫刻を探り、最終的に小規模の作品創作を目指します。
ゲスト:毛利嘉孝(東京藝術大学教授/社会学者)
ゲスト:今和泉隆行(空想地図作家)
ROOM302(東京都千代田区外神田6-11-14-302 [3331 Arts Chiyoda 3F])ほか
一般30,000円/学生20,000円
このスタディは昨年、「2027年のミュンスター彫刻プロジェクト招聘を目指す」というアイディアからはじまりました。
なぜそんなことを考えたかというと。
ナビゲーターを担当するにあたり、私たちは、東京における「公共」のことを想いました。公共というものをどう捉えるか、またアートはそれにどうアプローチしていくのか。アートプロジェクトも演劇も街なかで盛んに行われている昨今、あらためて考えたい(考えるべき)と思ったのです。
ただ、東京の中にいながら東京のことを考えるのはとても難しい。
私たちは2017年に初めてミュンスターを訪れました。
ミュンスター彫刻プロジェクトの面白いところのひとつは、街と作品の関係です。
作品と場所、作品と街の人、さまざまな関係性があり、それらは時間とともに変化していく。10年に1度の芸術祭は、街と作品の変化を定期観測するような存在のようにも感じられます。
そこで、東京を考えるために、ミュンスターの経験から始めてみることにしました。
一年間のスタディを経て、芸術祭のことだけでなく彫刻自体もとても面白いということがわかってきました。そして、さまざまな彫刻が東京の街なかに点在していることも。
居間 theaterは彫刻のプロでは全くありません。ただ、彫刻のもつ時間の感覚や、彫刻をつくるひとのからだ、あるいは彫刻に接する私たちのからだの感覚、素材の感覚、彫刻と周りの空間の関係、街のなかで存在することの意味、そういったさまざまな要素は、何かをつくったり考えたりするための、とても面白いヒントになるような気がします。
参加していただく方も、もちろん彫刻のプロではなくて構いません(もちろんプロも歓迎、むしろいろいろ教えてください!)。
私たちの周りにすでにある、東京の彫刻を出発点として何かをつくる。
そのプロセスを一緒に面白がって進めていければなによりです。
作品のための場である美術館や劇場に対し、生活の場である街に作品を置くことには、豊かさとともに難しさが存在します。40年以上前の作品がいまだに街に残るミュンスターでは、10年おきという長い間隔で開催されることにより、街と作品との関係が十分に考えられているとともに、作品に時代の変化がはっきりと現れています。次のミュンスターを考えるという馬鹿馬鹿しい問題設定は、目の前にある時代や街に対しても、重要なスタディとなることでしょう。
そんなことから考えはじめた昨年のスタディの中で、あらためて東京の街にも多くの作品があることに気づきました。そして、その制作年に注目して、10年おきにつくられた作品を見ていくと、やはり、作品や、作品と街との関係の変化が見えてきました。そこで、ミュンスターに倣い、東京において10年おきに行われてきた架空の彫刻をテーマとした芸術祭を妄想することで、東京、彫刻、芸術祭を考えるための新しいスタディが立ち現れてきました。そんな、昨年の紆余曲折を踏まえつつ、今年の紆余曲折に向けて、スタディをはじめます。