アートプロジェクトの現場から外国ルーツの若者の支援について考える
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現在、多くの人がインターネットによって、調べればすぐある程度の答えを得ることができます。しかしそれは、経験や体感が伴わないまま「他者の情報を、あたかも自分のもののようにふるまえる時代になった」と、言うこともできるのではないでしょうか。
このプロジェクトでは、「いま」「東京」で、メンバーそれぞれの関心を持ち寄り、一斉に調べ、徹底的に共有し、可視化するラボを立ち上げます。部屋に集い、話し合う。部屋を出て、身体を通してリサーチしたことを、また部屋に持ち込み、メンバーとの共有を繰り返します。メンバー全員でラボの方法や機能づくりにも取り組みます。
リサーチは「人の話を聞く」という方法に重点を置きます。何かを知ろうとするとき、まずは本や資料にあたり、インターネットの検索からはじめることも多いでしょう。しかし、一歩外へ出て、人に話を聞いてみると、自分の予想とは違う言葉や反応が返ってくることがあります。いままでの経験では受け止めきれないことかもしれません。そういったとまどいを引き受け、身体を通して情報へ触れる方法、それを誰かと共有することについて繰り返し議論をしていきます。
ナビゲーターは、東日本大震災以降、仙台を拠点に土地と協働しながら記録をつくる一般社団法人NOOKの瀬尾夏美(アーティスト)、小森はるか(映像作家)、磯崎未菜(アーティスト)が務めます。
「いま知りたいことを、より立体的に知るための技術」を、メンバーがそれぞれに開発し、実践していくことを目指します。そして、このラボから、長い時間をかけた新たな表現やプロジェクトが生まれていくことを期待します。
ゲスト:早乙女勝元(作家/東京大空襲・戦災資料センター館長)
山本唯人(社会学者/東京大空襲・戦災資料センター主任研究員)
ゲスト:奈良朋彦(「江東区の水辺に親しむ会」メンバー)
ゲスト:田中沙季(演劇ユニットPort B 制作・リサーチ担当)
ROOM302(東京都千代田区外神田6-11-14-302 [3331 Arts Chiyoda 3F])
一般30,000円/学生20,000円
途方もなく広く、無数の人たちがいる東京も、複数人で歩けば心強いし、効率的かもしれない。東京という場所にラボを立ち上げ、メンバーがそれぞれの関心を持ち込み、話し合って問いを共有し、組織的かつ自律的にリサーチを進めていく。そうすることで、調べた情報たちが交差し、繋がり、あわよくば“東京”もしくは、同時代に変容する社会の像の片鱗が見えてくるかもしれません。
そこには、「だれかが聞いてきた話や持ってきた資料を共有するときに、どのような作法が必要か」という問いがついてきます。だれの言葉も容易に自分のもののように振る舞えてしまう時代に、本当に何が起きているのかを知るためには、徹底的に「聞く」身体づくりが必要なように思えるのです。
表現のつくりかたが変化している。震災後の東北で育まれている、さまざまな実践に触れながら、そう感じています。仙台を拠点とするNOOKは、その新たなありようを模索する表現者たちが集った組織です。
身を委ねる。深く潜る。遠くに飛ばす。そうした誰かの経験に身を傾けることから生みだす表現の作法を共有し、その実践を先に進め、支えるための動き方をつくりだす。他者とのかかわりに真摯に向き合い、ふたたび自らを変容させていく仕掛けづくりを試みます。
異質で身近な他者と、ひとつの場を共有する方法をつくりだせるだろうか。この問いを抱えるスタディは、小さな「社会」(と運用の方法)をつくる試みともつながっているのだと思います。