バラバラなものをバラバラなままに。結果を急がず、遍在するものの可能性を丁寧に感知することが必要。——宮下美穂「小金井アートフル・アクション!」インタビュー〈後篇〉

アートプロジェクトを運営する人たちへの取材を通して、その言葉に、これからのアートと社会を考えるためのヒントを探るインタビュー・シリーズ。今回お話を伺ったのは、小金井市で「小金井アートフル・アクション!」を展開するNPO法人アートフル・アクション事務局長宮下美穂さんです。

参加する人たちと関わるなかで、分かりやすい答えの前で立ち止まり、何度でも本質を問うことを大切にしてきたという宮下さん。その具体的な手つきとは、いったいどのようなものなのでしょうか? 活動の伴走者であり、宮下さんの運営手法に関心を持っているという東京アートポイント計画ディレクター・森司とともに話を訊きました。

〈前篇〉答えのまえで立ち止まり続ける。市民の生態系と問いかけが生むプロジェクト——宮下美穂「小金井アートフル・アクション!」インタビュー〈前篇〉

待つことの大切さ

——宮下さんが以前、「表現というのは中空に浮いて考え続けることを支える技術」とおっしゃっていて、面白い言い回しだなと感じたんです。それはいまのお話にもつながっていますよね。

宮下:そうですね。こどもと接していると、見たものにとても国語的な読み解きをするんです。たとえば、桜井哲夫というハンセン病患者について書いた本(権徹著『てっちゃん: ハンセン病に感謝した詩人』)の帯に「ライになって、よかった」と書いてある。それでこどもに、「なぜ、てっちゃんはライになって良かったと言ったんだと思う?」と聞くと、「病気を代表して伝える役割を担ったから」と答える。それは国語的には「正解」だと思います。でも、「あなたならどう?」と、さらに問うと、「あ、おれ、いやだ」と、本音も出てくる。

その一方で、誰かがぽっと「どっちもありだ!」と。ここで、「答えはひとつではなくて、正しい/正しくないでは分けられない」とこどもたちが言い出した。そこでこのチームは、最終的に教室の真ん中に複数の椅子を背中合わせにおいて、天井からたくさんの写真や言葉、多摩全生園(以下、全生園)で見学した道具などをつくって吊り下げ、視点がつねに相対化される場をつくりました。

——面白いアウトプットですね。

宮下:普通、大人からしたら、ただの再現の方が可愛げがあるじゃないですか。でも、ドアを開けたらこどもたちが背中合わせに座っているわけですよ(笑)。

——ははは。

宮下:ここで大切なのは、「問いかけたあと、人が発話するまで待つ」ということでした。全生園のプログラムでサポートに入った大人のメンバーに求めたのは、造形能力ではなくて、待つことでした。みんな答えがすぐに欲しい。その欲求はますます高くなっていると思う。答えが出ないのは辛いし、誰も支えてくれない。それでも、待つことの大事さをみんなで分かり合いたいとは考えています。

東村山市立南台小学校での準備風景。

:アートだけではなくて、どの分野でもプロの人間というのは、その宙ぶらりんの状態を日々過ごしていると思うんです。医者でも法律家でも、白黒で分けられない世界を生きている。そして、それが苦痛かと言えば、案外気持ち良かったりする。アートはそれを分かりやすく見せる世界ですが、宙吊り状態はアートの特権ではない。その前提を忘れると「アートは答えがないからいい」という一般論になるけれど、その答えのなさは実は多くの人が共有するもの。それに気づくことは、とても大事なことですよね。

——とはいえ、メンバーには待つ時間の曖昧さや、プログラムの複雑さに耐えられない人も多いのでは?

宮下:私はけっこうちゃぶ台返しをするからね(笑)。市民スタッフのメンバーは、みんな真面目だから、プログラムの準備をしながらしっかりと積み上げていくんです。でも、その何ヶ月もかけた企画やアウトプットに、私は「なんか違う」と言う。べつに撹乱したいわけではなくて、問いたいのは「本質は何か?」ということです。もちろん、最終的に私が考えるものにならなくて良くて、問いを続けることでまた違う選択が生まれることが大切だと思います。

:宮下さんは、「NO」を言う人が多い方が健全だとも言っていますよね。もちろん、反対意見を言えるメンバーは貴重だけど、そういう人ばかりになったらプログラムが回らないでしょう?

宮下:「NO」と言われ、それを引き受けた方が楽しいです。「NO」のなかには濃淡がある。たとえば全生園を訪れたとき、あるメンバーが「ここには私たちが失った自治があって、外よりもはるかに豊かな暮らしがある」と言ったんです。これは、普通はなかなか言えないことですし、直接的ではないけれど、当時私が考えていたことへの「NO」でした。結果として、この意見はプログラムの考え方を大いに拡張してくれました。絶対的な「正解」は無いから、それぞれの人の生活経験で「これがいい」と思うことをつきつめてやればいい。そうした相対化が、自分にとっての本質を考えさせるきっかけにもなります。ときにはとても鋭い「NO」になりますが、それはとても創造的でもあります。

東村山市立南台小学校での展示風景。「正しさは一つじゃない!」を空間で表現した。

会期のまえに源流はある

——これまでのお話からも、「小金井アートフル・アクション!」の分かりづらさが伝わりますが、アートポイント計画がそうした取り組みと共催を続けている理由とは何なのでしょうか?

:なぜやり続けているかといえば、それは「小金井アートフル・アクション!」にアートがきっちり入っているからなんです。普通、アートと言うと思い浮かべるのは形としての作品だけど、本来、アートとは形もなくどこにでも偏在しているもの。それが奇跡的に形になったものが作品だと捉えた方が良い。そして、宮下さんには生態系の人として、この偏在するものをちょっと突いてあげれば、勝手に動き始めるという経験値がある。その思考自体がすでにアート的だから、分かりやすい形がなくてもアートプロジェクトだと言うことできるんです。

宮下:バラバラなものをバラバラなままにしておく、みたいな感覚に近いかもしれない。中央集権的に何かを集めて力技で結果にするのではなく、結果を急がずに遍在するものの可能性を丁寧に感知することが、いろいろな可能性を捨ててしまわないために必要な気がします。

:自己認識しづらいアート的な感覚に、プロジェクトのプロセスを通していかに気づくのか。下手なアーティストだと現場を変にまとめちゃうけれど、ここで「小金井と私 秘かな表現」というプログラムを3年間やって、いまもオフィスをシェアしているアサダワタルくんなんかは、その「気づき」と「まとめなさ」のバランスがとても上手いなあと感じます。

「小金井と私 秘かな表現」はアサダワタル(文化活動家・アーティスト)をゲストディレクターとして2015年度から3年間のプロジェクトとして実施された。

——まえにアサダさんから、「小金井と私」に参加したある市民の方が、プログラムの会期後にこどもの通う保育園の園長先生を自宅に招いて、小さなイベントを開いたと聞いて驚きました。それこそプログラムが川の支流のように日常に溶け込んでいる、偏在するものになっているのだなと。

宮下:その方はマキさんといって、もともと「こどもがどんな場所で育つのか」にとても関心がある方なのですが、会期中に第二子の出産や、お義母さんの死を経験されたんです。それで、会期後に以前から気になっていた保育園の園長先生を招いて、こどもを育てる場所について考え始めています。でも、こうした変化はいろんな人に起きています。そして重要なのは、このプログラムがゼロをイチにしたわけではないことです。そうではなくて、もともとその人が持っていたものがどこかの契機で発現して、つながっているということだと思うんですね。

:つまり、「小金井と私」の3年間は、いわば「手続きとしての会期」だということですよね。手続きがなければ、その思考は可視化されなかったかもしれない。だから手続きは必要だけど、そこがスタート地点ではないと。

宮下:ポテンシャルがゼロの人なんかいないじゃないですか。だから、むしろ私たちがそれに沿わせてもらっているというのが正しい。もともといろんな人生経験をした人がいて、その人たちがこの機会に出会って、またそれぞれの場所に戻っていく。あるいは別の場所に動いていく。私たちはそれに立ち会わせてもらっている。

——川の例で言えば、源流はこのプログラムにあるわけではなく、もっと前にあると。

宮下:そうですね。源流が違うからこそ面白いんだと思うんです。さまざまな源流を持った人たちが寄り集まって、合流したりすれ違ったりしながらまた分かれていくんだけど、それは源流が違うから分かれていけるわけで。その意味で、じつは会期の3年間というのは大したことじゃないんですよ。それぞれの人にそれぞれの人生があるからね。

小金井アートスポット シャトー2F

みんなで持っている曖昧な場所

——そうした市民の人たちの小さな営みは、いわゆる「アート」の世界からすると、とてもマージナルなものに見えると思います。でも、森さんが言うように、それこそアートの本来の姿かもしれない。「小金井アートフル・アクション!」の活動の根底には、そんなアートへの転換的な考え方が流れているように感じます。

:もうひとつあるのは、拠点にしているこのシャトー小金井という場所の存在でしょう。この場所は孵化器のようですよね。メンバーがふらっと立ち寄れる場所であり、アサダさんをはじめとするいろんな人のスタジオでもある。活動の拠点であり、それを根本から支えてくれる場所でもある。場所と活動が、表裏一体だという感じがあります。

「小金井アートスポット シャトー2F」にはさまざまな出来事や人が行き交っている。ポーランドから来日したアーティストと学生たちによるパフォーマンスをつくるためのミーティング風景。
時々行われるシャトーの掃除。こどもも大人も手伝いに参加してくれる。

宮下:公共的な場所というと公民館などが浮かびますが、そうではなくて、みんなで持っている曖昧な場所のことだと思うんです。人が生きるうえで、白黒つけない場、所有、非所有を超えた場所というのは必要で、曖昧だけど保証された場所があるからこそ、人は何か形のない、前例のないことも試みることができる。ここを訪れる人の動機というのは本当にバラバラで、お母さん同士がこどもについて話しているかと思えば、違う場所ではアーティストたちが話していたりする。みんなそれぞれ違うことをしていて、それでいいと思うんです。

:普通、日本だと場はすぐ整然とするけど、ここは不思議なくらい隙間が多い(笑)。「来る」というよりも、「居る」場所という感じですよね。「アジール」という言葉が合っているかな。

宮下:私、この場所にずっといるわけではないんです。むしろ、門番みたいに誰が来たかなんていちいち知りたくなくて、来たい人が来て、好きにしてくれていた方がいいなと思っています。

:こういう良い場やプログラムが成り立つのは、べつに奇跡ではなくて、宮下さんの手繰り寄せる力があるからだと思う。だけど、分かりやすい何かに飛びつかずに偏在するものを手繰り寄せるのは大変なことですよね。最後に聞きたいんだけど、そうした宮下さんの個人的な性質はどこから来ているのですか? 「造園家だから」と言ったら、ほかの造園家は困っちゃうでしょう。

——たしかに、すべての造園家がこうではないですからね(笑)。

宮下:「これ」という理由は分からないけれど、「もっとも本質的なことは何か」ということは癖のようにいつも考えているし、人様の人生に介入はしないけど、一緒に何かをやる人に対しても同じことを何度も聞いています。そうしないと、どんどん目先の解答で済ませてしまうようになる。だから、途中でやめないで問い続ける。本質と思うものも、もちろん変わっていくけれど、問い続ける中で、既存の回路では見つからない何かが出現することもある。見えない回路がつながる。それは問わないと、やってみないと見えてこない気がします。それから、自問だけでは答えは出ない。やってみること、問うことを繰り返すのかな。「さすがにしつこいよ」と言われることもあるんだけど(笑)。

:その過剰さは言い換えるとオーバークオリティ、質への探求ですよね。過剰さがアートの現場には必要だし、諦めないことで手繰り寄せているものは多いと思います。

宮下:答えが出なくても、考えたり知ろうとしたりすることで、明日をどう生きるが変わる。このあいだもテレビで福島の放射能汚染の問題を見たのですが、科学的なことはむずかしいけれど、それがどういうことかを考える。できれば行ってみる、風や空気を感じてみる。大問題だけではなく、些細なことでも身をもって考えなければただ時間が過ぎていくだけなんですけどね。でも、どうせならできるだけ誠意を持って生きた方が楽しいと私は思っているんです。

Profile

宮下美穂(みやした・みほ)

NPO法人アートフル・アクション 事務局長
2011年から小金井アートフル・アクション!の事業運営に携わる。事業の多くは、スタッフとして市民、インターン、行政担当者、近隣大学の学生や教員などの多様な形の参加によって成り立っている。多くの人のノウハウや経験が自在に活かし合われ、事業が運営されていることが強みである。日々、気づくとさまざまなエンジンがいろいろな場所で回っているという状況に感動と感謝の気持ちをいだきつつ、毎日を過ごしている。編み物に例えると、ある種の粗い編み目同士が重なり合うことで目が詰んだしなやかで強い布になるように、多様な表現活動が折り重なり、洗練されて行く可能性を日々感じている。

NPO法人アートフル・アクション

東京都小金井市内を中心に、企画展、イベント、講演、ライブなど、様々なアート活動を行っているNPO法人。目指しているのは、アートと出会った人が自分自身の新しい可能性を発見し、豊かな生き方を目指していくきっかけや場をつくること。現在、市民、自治体、学校、他のNPO、企業などと連携しながら、「地域におけるアート」の可能性を追求している。
https://artfullaction.net/about/

小金井アートフル・アクション!

NPO法人アートフル・アクションの一部事業は、2009年4月に「誰もが芸術文化を楽しめるまち~芸術文化の振興で人とまちを豊かに」という理念を目指して始まった「小金井市芸術文化振興計画推進事業(小金井アートフル・アクション!)」として推進されている。
「小金井アートフル・アクション!」は、2011年度から、東京都、アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)、小金井市、NPO法人アートフル・アクションの4者共催により「東京アートポイント計画」の一環として実施。
https://artfullaction.net/

2018年、5つの「東京プロジェクトスタディ」がスタート

Tokyo Art Research Lab「思考と技術と対話の学校」では、今年度の新設プログラムとして「東京プロジェクトスタディ」を開講します。今回は、8月4日(土)、アーツ千代田3331 アーツカウンシル東京ROOM302にて開催した説明会の様子をお届けします。

「東京プロジェクトスタディ」は、ナビゲーターと参加者がチームを組み、“東京で何かを「つくる」としたら”という投げかけのもと、アートプロジェクトを巡る“スタディ”(勉強、調査、研究、試作)に取り組むプログラムです。

説明会では、「思考と技術と対話の学校」校長の森司、ナビゲーターとスタディマネージャーから、いま、なぜこのテーマに取り組むのか、どのように実践していくのか、それぞれのスタディの内容や特徴についてお話しました。

(撮影:川瀬一絵)

「思考と技術と対話の学校」校長メッセージ(森司)

今年度は、これまでの学校のやり方を一新し、「東京プロジェクトスタディ」を始動させます。アーツカウンシル東京(以下ACT)が、アートNPOと共催で展開する「東京アートポイント計画」事業等のつくり手の方々にナビゲーターを担っていただき、現場との連動性をはかることで、より実践的な学びの場を生み出すことを目指します。それぞれのスタディには、ACTのプログラムオフィサーが伴走しスタディを組み立てていきます。

このプログラムでは、キーワードとして「つくる」ということばを掲げています。プロジェクトを「する」のではなくて「つくる」。「する」というのは、プロジェクトのやり方がわかった上で、ゴールに向けて進めていくことだと思います。しかし、ゼロから「つくる」となると、「何をするか」から考えなければなりません。
2020年のオリンピックまで2年ほどとなりました。それは、その先を見据えた東京都の文化事業を考えていく上で残された時間といえます。新たな活動を「つくる」ことがより一層求められるでしょう。そのような状況をふまえ、「つくる」ための筋力を鍛える5つのスタディを立ち上げました。

新しいプログラムなので、参加者のみなさんと意見交換をしながらともにつくっていきたいと思います。積極的なご参加をお待ちしております。

スタディ1 「東京でつくる」ということ―前提を問う、ことばにする、自分の芯に気づく(石神夏希)

ナビゲーター:石神夏希(劇作家/写真左)、スタディマネージャー:嘉原妙(アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー/写真右)。

スタディテーマについて

石神さんは、神奈川県を拠点に、国内外のさまざまな土地に赴いて作品を制作している劇作家。その場所に蓄積されている、場所や人の物語を触って紡ぎながら、日常の延長に立ち上がってくる演劇の可能性を探っています。

このスタディでは「東京でつくる」ことを入り口に、現在進行形で展開する石神さんの現場をケーススタディとして、つくることをもう一度捉え直していきます。

「この1~2年、東京での仕事が増え、『東京でつくる』ことに戸惑っている」と石神さんは言います。これまで、おもに東京以外の都市で、ローカルな場所性や共同体を素材にしたサイトスペシフィックな作品を手がけ、自分の身体で歩いたり触ったり体感できる大きさの場所を扱ってきました。しかし、「東京」という場所ははかなり漠然としたフィクショナルなもの。もっと小さな地域に分ければ掴むことはできるかもしれないけれど、それでは「東京」という主語で語られ、起こっている事象と対峙できないのではないか。そこで、少し無茶かもしれないが、東京という大きなものを触ることに、参加者のみなさんとチャレンジしたい、と語ります。

スタディ1は、自分の実感とフィクショナルな「東京」のあいだをつなぐ身体性を獲得するための稽古場になるイメージです。

特徴

毎月1回程度行うディスカッションのあと、参加者には必ず作文(エッセイ)を書いてもらいます。自分で考えたことをすぐにことばにするのは難しいかもしれませんが、気づきや違和感を自分から引きはがしてことばにしていく過程を、半年間繰り返します。それによって自分で考えたりつくったりする起点となる芯を見つけます。
また、実際に石神さんのプロジェクトの現場に立ち合い、身体を動かして考えていきます。

>スタディ1の詳細はこちら

スタディ2 2027年ミュンスターへの旅(佐藤慎也、居間 theater)

ナビゲーター:佐藤慎也(プロジェクト構造設計/写真右)、スタディマネージャー:坂本有理(アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー、「思考と技術と対話の学校」教頭/写真左)。

スタディテーマについて

建築家の佐藤さんは、これまで美術や演劇の制作やアートプロジェクトの構造設計に携わってきました。ここでいう構造設計とは、アートプロジェクトをどのような仕掛けで進めていくかを考えること。アートプロジェクトは美術館のなかではなく、まちなかなどで行われるため設計が必要です。居間 theaterは、演劇やダンスを背景にもつ4人で構成され、劇場ではできないパフォーマンスのあり方を考えるパフォーマンスプロジェクト。両者はこれまでにも、カフェ区役所などの公共空間にて、ともにプロジェクトをつくり上げてきました。

今回のテーマにあるミュンスターとは、ドイツのまちのひとつで、1977年から「ミュンスター彫刻プロジェクト」という芸術祭が10年おきに開催されています。日本でも、2000年頃からさまざまな芸術祭が催されていますが、「ミュンスター彫刻プロジェクト」の影響を受けているのではないかと、佐藤さんは指摘します。

昨年第5回が開催され、ナビゲーターたちは現地を訪れました。そこで、「日本で僕らがやっていることと近いのではないか」、「日本にとどまらず、世界にも挑戦できるのではないか」と感じたそうです。その強い思いから、2027年のミュンスターに居間 theaterがアーティストとして招聘されることを目指すスタディが構想されました。

特徴

「ミュンスター彫刻プロジェクト」を考察すると、10年ごとの時代の変化、美術やパフォーマンスの変遷が見えてきます。国際的な芸術祭に関わる多彩なゲストとともに、そうした歴史や変化を辿ります。また、居間 theaterが出演するプロジェクトの現場に足を運び、フィールドワークも行います。それらの活動をとおして、2027年のミュンスターにふさわしいプロジェクトの構造を設計していきます。さまざまな芸術祭・アートプロジェクトに興味をもっているひと、ユーモアをもって、制作のプロセスを探りたいひと、夢を大きくもちたいひと、ぜひ一緒にミュンスターを目指しましょう。

>スタディ2の詳細はこちら

スタディ3 Music For A Space―東京から聴こえてくる音楽(清宮陵一)

ナビゲーター:清宮陵一(NPO法人トッピングイースト 理事長/写真左)、スタディマネージャー:大内伸輔(アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー/写真右)。

スタディテーマについて

清宮さんは、音楽の現場やCDをつくるためのプロデューサーを務めています。音楽産業に従事する立場に加え、「東京アートポイント計画」での共催事業「トッピングイースト」のディレクターも担っています。これまで、公共空間や特別な場所でのプロジェクトを手がけてきました。

清宮さんは、音楽産業に携わるなかで、「最近さまざまなストリーミングサービスが出てきたため、CDが全然売れなくなってしまった。音楽がものとして求められていない感じがビシビシする」と語ります。しかし、実は音楽を聴く機会そのものは減っていません。ただ、音楽を買う行為が減るということは、アクティブな部分が少しそぎ落とされているように感じられるそうです。あらたにリスナーをつくっていく、音楽を聴く・触れる機会をもっといろいろな場面で増やすことが必要です。音楽家にとっても、音楽を聴く・触れるポイントをつくることは、ダイレクトなユーザーや、音楽を聴きたいと思っている人たちを、どうやって引っ張り込むかという実験になります。

特徴

音楽家の和田永さんや蓮沼執太さんなど、音楽に関わる専門家をゲストとして多数お招きし、普段の活動や考えていること、実践していることを伺い、議論していきます。また、空間的な音楽体験をしてもらうために、性能のよいスピーカーで音楽を聴いてもらいます。「音楽ってこんなにいい音で聴けるものなんだ」というのを体感してもらいたいと思います。

音楽産業とアートプロジェクトを考えていくので、音楽に携わっている方はもちろん、アートプロジェクトに関わっている方のご参加もお待ちしております。

>スタディ3の詳細はこちら

スタディ4 部屋しかないところからラボを建てる―知らないだれかの話を聞きに行く、チームで思考する(一般社団法人NOOK)

ナビゲーター:瀬尾夏美(アーティスト/写真右から2番目)、小森はるか(映像作家/写真左)、高橋創一(編集者/写真左から2番目)、スタディマネージャー:佐藤李青(アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー/写真右)。

スタディテーマについて

一般社団法人NOOKは、仙台を拠点に活動している、映像作家や編集者、技術者、アーティストなど7人のメンバーによるチームです。映像や記述による記録、そのための調査や展覧会の企画、イベントや場づくりをしています。

これまで、震災後の東北を拠点に活動し、地域の人たちに話を聞いたり、自分たちの足で歩いて記録やリサーチをしてきたNOOK。「”東京でつくる”といったときに、一体何をすればよいのかという思いはあります。けれども、東京だからこそできる調査のしかたがある気がする」と瀬尾さんは語ります。

東北の経験で気づかされたのは、「小さな社会を細かく見ていけば大きな社会が見えてくる」ということでした。今回は東京という場所で、同時代的に動いているさまざまな問題に触っていける、複数人のチームで行う調査のしかたを考えていきたいそうです。それぞれが調べて得たことを共有するプロセスを経て、ふたたび個人の欲望にかえったりしながら、企画や表現に繋がる調査を重ねていきます。

特徴

このスタディでは「人の話を聞く」「それを共有する」ことを重視します。ナビゲーターのほか、ファシリテーター役として小屋竜平さん、記録と編集の担当として高橋創一さんも参加します。

月1回程度、ROOM302に集まり、各自調べたことを共有していきます。いかにして共有する方法をつくるかも重要となります。それぞれの持ち寄った情報を場所にインストールしたり、「ラボ通信」といったメディアをつくることも試みます。
現代はインターネットが発達し、人に触れずに情報を得ることができてしまう時代です。しかし、人にあたってみると、問題の本質が見えてきたり、話を聞くことで情がわいたり、自分の身体も変わっていきます。ここでしかできない実践を一緒に行うメンバーを募集します。

>スタディ4の詳細はこちら

スタディ5 自分の足で「あるく みる きく」ために―知ること、表現すること、伝えること、そしてまた知ること(=生きること)(宮下美穂)

ナビゲーター:宮下美穂(NPO法人アートフル・アクション 事務局長/写真右)、スタディマネージャー:佐藤李青(アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー/写真左)。

スタディテーマについて

このスタディはサテライト会場として、武蔵小金井駅から徒歩7分程の「小金井アートスポット シャトー2F」を拠点に展開します。この場所は、普段から宮下さんがNPOアートフル・アクションの活動を行っている場でもあります。

宮下さんは、この数年、世の中が大きく変わったと感じていました。「これが正しくて、目標はこうだ」といった今までの価値観が揺らぎ、身体も心もかなり追い詰められたような状態なのではないかとたびたび感じたそうです。そういうなかで、どのように生きていけばよいのかと考えたときに、ものをつくることや表現すること、あるいはそのために人と出会ってみることが大事だと、宮下さんは考えています。

このスタディは、ゲストアーティスト(揚妻博之さん大西暢夫さん花崎攝さん)の活動とともに進んでいきます。この3人を選んだのは、東京をちゃんと外から見られる人、東京や自分をきちんと相対化できる人であることが理由でした。今のすごく厄介な世の中を少しずらして見ることがスタディに必要だと考えたからです。一度身に着けたことを一回はがしてみる。手放すことはとても大事なのですが、それはとても勇気のいることです。それをこのスタディで実践したいと考えているそうです。

特徴

月に2回ほどアーティストに来てもらい、実作をもとにお話してもらう機会を設けます。参加者は、ゲストアーティストの表現や対象の捉え方に触れて、自らも積極的に制作をしていきます。ナビゲーターからお題を出すのではなく、アーティストのワークショップに参加したりアーティストと本気で話したり、インタビューしたり作品を見たりして、自分なりの方法論や表現したいこと、やりたいこと、テーマを見つけてほしいと思います。
時間をかけてじっくり考え、ものをつくりながら、人と出会い、自分自身と出会い直しの機会をつくります。

>スタディ5の詳細はこちら

ナビゲーターと参加者がともに学び合い、プロジェクトの「核」をつくる実践的な学びの場となる「東京プロジェクトスタディ」。募集締め切りは、2018年8月26日(日)です。みなさんとお会いし、学んでいけることを楽しみにしております!

個別相談を受け付けています!

「東京プロジェクトスタディ」では、随時相談を受け付けています。スタディの内容をもっと詳しく知りたい、どれが自分に合うのかわからず迷っているなど、お気軽にご相談ください。

*申込方法 (終了しました)

・氏名(よみがな)
・電話番号
・参加人数
・相談希望日(第一希望日、第二希望日)※平日 10:00-18:00
・相談内容(検討しているスタディなど)

*会場
アーツカウンシル東京(公益財団法人東京都歴史文化財団)(東京都千代田区九段北4丁目1-28九段ファーストプレイス8階)

※お預かりした個人情報は、本事業の運営およびお知らせのみに使用します。
※参加申込みにあたり、説明会や個別相談への参加は必須ではありません。

説明会記録映像

スタディ1 「東京でつくる」ということ(石神夏希)

スタディ2 2027年ミュンスターへの旅(佐藤慎也、居間 theater)

スタディ3 Music For A Space(清宮陵一)

スタディ4 部屋しかないところからラボを建てる(一般社団法人NOOK)

スタディ5 自分の足で「あるく みる きく」ために(宮下美穂)

アートプロジェクト運営の手始め

アートプロジェクトの「いろは」を学び、クリエイティブな運営を目指す

アートプロジェクトは既存の手法や枠組みにとらわれず新たな価値を生み出す活動です。その運営も、プロジェクトの展開に合わせて、新たな方法を開拓しながら変化させ続けるべきでしょう。

運営の担い手が向き合うタスクは多岐にわたります。企画をつくって実施することにとどまらず、企画を生むための土壌を耕したり、人や組織を育てたり、活動を価値化し仲間を増やしたり、さらなる進化を目指して勉強や実験をしたり。そもそもそれらの方法を生み出したり……。

「やるべきこと」をあげると際限なく出てきますが、今回はアートプロジェクト運営の入門編として、運営ビギナーが、まずおさえるべきトピックを取り上げます。運営の基本サイクル(企画、準備、実施、報告、検証・評価)を見渡しながら、広報や記録にもフォーカスし、現場で必要な技術やアプローチについて考えます。クリエイティブな運営を行うことで、アートプロジェクトそのものの創造性を鍛えていきましょう。

詳細

スケジュール

9月5日(水)19:00〜21:30
第1回 運営入門

  • アートプロジェクトの運営とは|「運営=イベントの実施」だけではない
  • 座組|運営体制図を書いてみる(ワークショップ)
  • 企画4点セット|企画・人・お金・時間
  • 会議で動かす|構想する・議論する・共有する・調整する
  • 進行管理|プロジェクトに振り回されないために
  • リスク管理|人や活動を守るためにリスクを洗い出す(ワークショップ)

9月12日(水)19:00〜21:30
第2回 広報入門

  • 広報とは|「広報=チラシ制作」ではない
  • アートプロジェクトと広報|ミッションとアクションをつなぐ
  • いちからはじめる広報基本セット|戦略・素材・データベース
  • 広報力の鍛え方|見つける・言葉にする・つなげ続ける
  • 事例から学ぶ広報|タイミング・メディア・コンテンツ
  • プロジェクトを素材に広報施策を考えてみる(ワークショップ)

9月26日(水)19:00〜21:30
第3回 記録入門

  • 記録とは|「使える記録」を残そう
  • アートプロジェクトと記録|活動を続けるための大切な資産
  • 記録の種類|自分で残す・依頼して残す
  • チームで始める記録基本セット|道具・ルール・ストレージ
  • プロに記録を依頼する|発注・ディレクションのポイント
  • プロジェクトを素材に記録方法を考えてみる(ワークショップ)

会場

ROOM302(東京都千代田区外神田6-11-14-302 [3331 Arts Chiyoda 3F])

参加費

5,000円

メディア/レターの届け方 2018

多種多様なドキュメントブックの「届け方」をデザインする

近年、各地で増加するアートプロジェクトでは、毎回さまざまなかたちの報告書やドキュメントブックが発行されています。ただし、それらの発行物は、書店販売などの一般流通に乗らないものも多いため、制作だけでなく「届ける」ところまでを設計することが必要です。東京アートポイント計画も、毎年度末にその年の事業の成果物をまとめて関係者に送付しています。

多種多様な形態で、それぞれ異なる目的をもつドキュメントブックを、どのように届ければ手に取ってくれたり、効果的に活用したりしてもらえるのか? 資料の流通に適したデザインとは何か?

そこで、2016年度から川村格夫さん(デザイナー)とともに、さまざまな発行物をまとめる「メディア/レターの届け方」をデザインするプロジェクトを行っています。各事業の成果物とともに、2018年度の取り組みを届けます。

詳細

進め方

  • 同封する発行物の仕様を確認する
  • 発送する箱の仕様や梱包方法の検討
  • 発送までの作業行程の設計
  • パッケージと同封するレターのデザイン・制作