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「紡ぐ人」へ──思考と技術と対話の学校 森校長からのメッセージ

2017.06.03 レポート

今年度より、アートプロジェクトを社会とつなぐ「紡ぐ人」の育成へプログラム内容を一新した「思考と技術と対話の学校」。アートプロジェクトを他者に伝えるための力を養う「言葉を紡ぐ」と、アートプロジェクトを社会とつなぐ新たなアプローチを探る「体験を紡ぐ」の2コースの受講生の募集も始まりました。

連続講座の名前にもなっている「紡ぐ人」へ、思考と技術と対話の学校の森司校長からのメッセージです。


「思考と技術と対話の学校」が今年度からリニューアルします。
これまでの3年間は、新たなアートプロジェクトを思考し実施するために必要な基礎を学ぶことに主眼を置いてきました。2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を間近に控えたいま、各地で文化プログラム、文化事業は急増しており、それらに携わる人材の育成、確保は急務です。現場のマネジメント人材の育成を目的としたスクールプログラムも全国で活発になされています。そのような状況下において、アートプロジェクトを実践する現場では、プロジェクトを生み出し展開する事と同時に、なぜ今そのような文化事業が必要なのかを説き、参加者や鑑賞者に対して、プログラムをより深く楽しみ味ってもらうための準備をしていくことが求められます。現場の担い手たちは、マネジメントのための言葉だけでなく、アートプロジェクトの魅力を他者に伝えるための言葉を携える必要があるのです。

今年度から始動する、アートプロジェクトを社会とつなぐ「紡ぐ人」の育成とは、まさにアートプロジェクトの必要性や作家たちが展開する個別のアートプロジェクトの意味、意義、楽しみ方までも含めた包括的な解説、つまりアートプロジェクトを物語れる人の育成を標榜するものです。

たとえば美術館では、他者との対話をとおして作品を「観る」・「考える」ことを繰り返すビジュアル・シンキングをベースとした作品鑑賞手法などの実践があります。まずは作品をしっかりと観るという体験、そして対話をしながら鑑賞者から言葉を引き出し、それらを共有し、そこから導き出された解釈のあり方を経験し、作品との向き合い方の基本を体感する、その導き役を担うのは鑑賞ナビゲーターと呼ばれる人たちです。

「紡ぐ人」のイメージは、そのような専門教育を受けた美術館における鑑賞ナビゲーターの方、あるいは、自然や生態系に関して同じように専門知識を有し、その場の理解を深め楽しませてくれる、ネイチャーガイドのような人たち。そして、アートプロジェクトを味わい語るための場やメディアを生み出す人たちなどです。紡ぐという視点で、これまでにない新たな領域に挑戦する人の活躍にも期待しています。さらに加えると、「紡ぐ人」の活動は、ボランティアではなく、将来的には有償の活動になることを理想とする、言い換えれば、それだけの専門性を要する、アートプログラムにおいて重要な職能であると考えています。

体験したアートプロジェクトについて、語り合う。体験を経験にするための「言葉」の用意を「紡ぐ人」を介してなすことができた鑑賞者、参加者のみなさんが、日常生活の場においてアートを語り合う。「次はどのアートプロジェクトを観に行こうか」あるいは「今回の作品良かったね」と語り合う。アートプロジェクトがより身近となり、多くの人々によってより豊かに語られるようになることを目指し、その出発点として「紡ぐ人」の育成を始めます。この新しい取り組みを皆さんとともに形にしていけたらと思っています。

思考と技術と対話の学校
校長 森 司

「思考と技術と対話の学校」森 司 校長(Photo : Kazue Kawase)
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