ディスカッション「災間の社会を生きる術を探る」|ナビゲーターメッセージ(佐藤李青)
現在、参加者募集中(7/28申し込み締切)のディスカッション「災間の社会を生きる術(すべ/アート)を探る」。本プログラムのナビゲーター・佐藤李青(アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー)のメッセージをお届けします。
2011年の東日本大震災の後から、ずっと抱えている感情に“怒り”があります。それは震災後に身の回りで起こったことが「すでに知っていたこと」だったのではないかという気持ちが拭いされないからだと思います。怒りの矛先は震災が起こる「以前」の自分に向いています。震災は平時にあった課題を露呈させたに過ぎない。分かっていただろう、と。
平時から非常時のことを考えたい(いまはコロナ禍という渦中ですが)。非常時について議論することから、平時のありようを変えていきたい。そう思うのは、わたしがArt Support Tohoku-Tokyo(東京都による芸術文化を活用した被災地支援事業)を担当していたこともかかわっています。震災後に、いち早く動き出した人たちの活動は、震災以前から地続きの理念や行動に支えられていました。震災は、平時での活動の真価を明らかにしたのだと思います。
誰もが災害の「前」にあり、「後」になる可能性をもつ。いま、わたしたちは、そうした災害の「間」に生きているのではないでしょうか。社会学者の仁平典宏さんは「厄災が何度でも回帰しうることを前提」とした「災間の思考」において、一度の「ショック」で社会を変えようとするのではなく、「持続可能でしなやかな社会を構想」し、「社会に様々な『溜め』や『隙間』や<無駄>を作り、リスクを分散・吸収させることが重要になる」と指摘しています(※)。この「災間」という言葉を手がかりに、平時と非常時を行き来するような「術」について議論をしたいと思っています。
今回、心強いナビゲーターのおふたりと、経験豊富なゲストのみなさんと、たっぷり時間をかけて議論を重ねます。災害復興への「かかわり」がテーマになりますが、参加にあたって経験の有無は問いません。異なる技術や経験をもった人たちが出会い、それぞれに思考や手法の選択肢を増やしていく。それが「災間の社会を生きる術」を探るための近道なのだと思います。みなさんのご参加お待ちしております。
※ 仁平典宏「<災間>の思考ーー繰り返す3.11の日付のために」『「辺境」からはじまるーー東京/東北論』(赤坂憲雄、小熊英二編著)明石書店、2012年。

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